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レポート「人事評価制度を活用した人材確保と賃金向上」を発表

中小企業が抱える人手不足の解消・生産性向上の解決策を提言 https://www.tiwamoto.jp/report/

 慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授は、レポート「人事評価制度を活用した人材確保と賃金向上」を発表しましたので、お知らせいたします。




【サマリー】


現状の課題                                           中小企業にとって、人材の確保は困難な経営課題のひとつであり、この状態を放置すると下記の二点が懸念される。                                            ・「今後、中小企業の大学新卒者採用は10年に1人の採用となり、実質ゼロとなる」         ・「事業承継の後継者難による中小企業250万社(国内企業の2/3)の倒産・廃業」          
着目した解決策
人事評価制度を導入することで、以下の効果をもたらす。
・労使間での情報の非対称性を是正し、公正な関係性を構築
・目標意識の高まり・従業員の能力伸長による生産性の向上
導入によって人材確保や賃金上昇に繋がった事例もあり、企業が抱える人手不足を解消する有効手段となる。                                               
提言
2019年度より始まる「働き方改革関連法案」の施行までに中小企業は、企業内を整備し、生産性を向上させるべきである。国として、生産性向上の有効性の高い施策である人事評価制度普及において施策の実施が求められる。

《現状の課題》


中小企業の人材不足課題 

中小企業の近年目立つ課題として企業の内部環境における「人材不足の深刻化」(※1)があり、少子高齢化の進行に伴い、人材確保がより困難になります。最新の大卒求人倍率調査では、中小企業の求人倍率は9.91倍(※2)となり、10年に1人しか採用できない採用難にあります。更に、事業継承において、企業の後継者不在は国内企業の3分の2(※3)にあたるとされている為、実質250万社の中小企業が後継者難であり、2025年頃までに650万人の雇用と約22兆円のGDP(※4)が失われると試算されます。

[画像1: https://prtimes.jp/i/34602/3/resize/d34602-3-757932-5.jpg ]



(※1):日本政策金融公庫「2017年の中小企業の景況見通し」
(※2):リクルートワークス研究所 「第35回ワークス大卒求人倍率調査 2019年卒
(※3):帝国データバンク「2017年後継者問題に関する企業の実態調査」
(※4):経済産業省中小企業庁調査室 2016年版・2017年版中小企業白書概要

人材不足に対する国の政策

政府は、「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」で人材不足について検討を重ね、報告書・アクションプランを2018年3月に発表しました。本報告書から、企業は「積極的な人材投資と柔軟な人事制度・公平な人事評価設計」が求められています。
※参考「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」発表資料
報告書:http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180319001_1.pdf
アクションプラン:http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180319001_2.pdf

《着目した解決策》


人事評価制度導入によるメリット

 人事評価制度導入による労働環境や職場環境へ与える影響は非常に大きく、1.企業の方向性2.目標管理3.査定が視覚化され、従業員の目に見える状態となります。

[画像2: https://prtimes.jp/i/34602/3/resize/d34602-3-602865-3.png ]




人事評価制度導入によって生産性や離職率が改善された中小企業の事例

様々な業種・業態の中小企業が人事評価制度導入により、業績の改善・労働時間の短縮に成功しています。

導入事例|株式会社ヒラノ
・事業内容:種豚・肉豚の生産および販売
・人事評価制度導入によるメリット
 -子豚の育成プロセスを社員一人一人が意識し、行動目標として掲げることで、高値での豚の販売を実現し、収益アップ
 -豚の販売価格の交渉をチームで行い、それを適切に評価することで、単価の上昇を実現し、売上に貢献
[画像3: https://prtimes.jp/i/34602/3/resize/d34602-3-768054-4.jpg ]




人事評価制度導入によるGDPへの影響

人事評価制度導入によるGDPへの影響は導入による付加価値額の向上を15%(期間は5年)と仮定し試算すると、約34兆円のGDPインパクトとなり、約55兆円の経済波及効果となります。


人事評価制度導入促進に関する現在の施策

 2018年4月より、人材確保のための助成金として、「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)」
が運用開始されており、社内制度の整備を実施した場合と、「生産性の向上」「賃金の増加」「離職率の低下」の目標を達成した場合、それぞれ下記の手順で助成金が支給されます。
[画像4: https://prtimes.jp/i/34602/3/resize/d34602-3-965357-6.png ]

 ただし、中小企業では旧来の日本型雇用システムから脱却できず、人事評価制度を整備する概念・モチベーションを持ち 合わせていない経営者・経営層がまだまだ多く見られます。実際に、人事考課制度(※5)の導入有無に関する調査によると、30〜100人以下の企業で人事考課制度のない企業は6割程度という結果となっています。(※6)
(※5)人事評価制度の構成要素のひとつ。業務能力考課・業績考課・執務考課の3つを含む。
(※6) 厚生労働省の平成14年雇用管理調査


《提言》
 人事評価制度をより普及させるため、以下3つの施策提言を行います。

人事評価制度の啓発活動を行う  ⇒健康経営普及活動で行っている「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」「DBJ健康経営格付」を参考に、人事評価制度を取り入れることを促す取組を発信していくべきである。
人事評価制度の就業規則への明文化を法律導入する         ⇒労使間の情報の非対称や労務リスクから自社を守る観点から、法的推進力を用いて整備を徹底していく。
中小企業への人事評価制度導入におけるインセンティブの用意                    ⇒人事評価制度の導入を行い、一定の成果を挙げた企業に対して金銭面での優遇措置や負担軽減、助成金の
拡充を用意する。前年度比で規定の賃上げを行うことで法人税を軽減できる制度「賃上げ税制」をはじめとする既にある税額控除・助成金制度を活用する。


執筆者プロフィール

[画像5: https://prtimes.jp/i/34602/3/resize/d34602-3-542276-7.jpg ]


岩本 隆 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授
http://www.kbs.keio.ac.jp/faculty/iwamoto_t.html
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。
 日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータを経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。「技術」「戦略」「政策」を融合させた「産業プロデュース論」を専門領域として、様々な分野の新産業創出に携わる。
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