白色腐朽菌が好気的に水素を産生していることを発見!
[23/07/01]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
― 次世代エネルギーである水素をキノコで作るといった新たな提案 ―
静岡大学グローバル共創科学部の平井浩文教授の研究グループは、キノコの仲間である白色腐朽菌が、木質バイオマスを原料に、好気的に水素を産生していることを、世界で初めて発見しました。
【研究のポイント】
・白色腐朽菌の多くが、木材腐朽時に水素を産生していることを発見した。
・特に産生能が優れていたTrametes versicolor K-41株(カワラタケ)の水素産生特性を調査した
結果、好気的に水素を産生していることが判明した。
・本菌による水素産生経路を解析した結果、有機酸であるシュウ酸・ギ酸代謝系と共役して水素
を産生していることが推測された。
本研究は、キノコの仲間である白色腐朽菌が、木材腐朽時に好気的に水素を産生していることを、世界で初めて発見した報告である。特に産生能の高かったT. versicolor K-41株を用いて、本菌による水素産生経路を解析した結果、白色腐朽菌において産生が認められているシュウ酸の代謝とリンクしており、シュウ酸をギ酸へと分解し、ギ酸を二酸化炭素へ変換する際に生じる電子を使って水素を産生していることを明らかにした。
水素は燃焼しても水にしかならないことから、次世代燃料の筆頭格として注目されているが、その製造方法は未だ定まってはいない。環境調和型水素産生方法としては、嫌気性微生物による水素発酵が挙げられるが、発酵槽を嫌気にする必要があり、実用化の妨げとなっている。本研究成果は、通常の(嫌気でない)発酵槽で木材等の非可食性バイオマスを原料として水素を製造可能となるポテンシャルを秘めており、微生物による新たな水素製造法につながると期待されます。
なお、本研究成果は、2023年6月27日に、Frontiersの発行する国際雑誌「Frontiers in Fungal Biology」に掲載されました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/96787/22/resize/d96787-22-c579466581dccda2439a-1.jpg ]
【研究者コメント】
静岡大学グローバル共創科学部 教授・平井浩文(ひらいひろふみ)
地球温暖化が問題となってきていた頃、「白色腐朽菌が水素を作れないかな・・・」と思い、ふと白色腐朽菌の全ゲノム情報を見たのですが、その時、白色腐朽菌にも水素産生に関わる遺伝子が存在することに気づき、慌てて、いろんな白色腐朽菌の水素産生能を調査したのが、本研究のきっかけです。
一般的には、微生物による水素産生は嫌気的に行われておりますが、本菌は木質バイオマスを原料に、それも好気的に水素を産生可能なことから、新たな水素製造法への応用が期待できます。
【研究概要】
本研究では、多数の白色腐朽菌が木材腐朽時に水素を産生することを見いだし、なかでもT. versicolor K-41株は、好気的条件下で木材から水素を生産し、低酸素条件下では水素産生が完全に抑制されることが判明した。さらに、木粉培地にシュウ酸やギ酸を添加すると、水素産生量の増加が認められた。遺伝子発現差解析の結果、TCA/グリオキシレートサイクルからのシュウ酸産生系はダウンレギュレートされ、逆にシュウ酸及びギ酸代謝酵素系遺伝子はアップレギュレートされていることが判明した。有機酸添加、遺伝子発現、関連遺伝子高発現株の結果から、本菌の水素産生機構にギ酸代謝が関与していることを発見した。
【研究背景】
水素は、高いエネルギー密度、燃焼時のゼロエミッション、様々な再生可能資源からの容易な製造という利点から、持続可能なエネルギーキャリアとして期待されてる。水素ガスは、熱化学的及び生物学的プロセスによってバイオマス材料から製造することが可能である。Escherichia属やClostridium属などの一部の嫌気性細菌は、有機酸から水素を生成する。動物細胞は水素を生成できないと考えられているが、動物では水素分子が抗酸化ストレス、抗炎症作用、抗アレルギー作用など多様な生物効果を持つことも知られている。また、高等植物も水素の影響を受けており、酸化ストレス、塩ストレス、乾燥ストレスなど様々な生物ストレスに対する耐性を向上させ、さらに、水素は高等植物の成長や発達などの生理的プロセスを改善し、他のシグナル伝達分子と相互作用すると考えられている。
白色腐朽菌は、木材の主要成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンをすべて分解することができるユニークな微生物である。リグニンを分解する際、白色腐朽菌は様々な活性酸素種やラジカルメディエーターなどのラジカルを生成する。つまり、木材腐朽時には常に酸化ストレスにさらされ、これらに対して何らかの防御機能があることが予想される。そこで本研究では、様々な白色腐朽菌の木材腐朽時の水素産生能を評価し、その水素産生特性及び産生経路について検討を行った。
【研究の成果】
木材腐朽菌の水素産生活性を調査すべく、自然界から採取した腐朽木材から分離した木材腐朽菌12株をブナ木粉に接種した。好気的培養後密栓し、培養器内のヘッドスペースガスのGC-TCD分析を行った結果、12株中8株で水素の産生が認められた。次に、スギ木粉培地での水素産生について検討した結果、すべての菌株がブナ木粉培地より高い水素産生を示した。特に、T. versicolor K-41株がスギ木粉培地で最も高い水素産生量(1.36 mmol/L)を示した(図1)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/96787/22/resize/d96787-22-f06f9901dfa91c12c24d-2.jpg ]
そこで、T. versicolor K-41株の水素産生特性と調査した。密閉後の培養器中の水素産生量の経時変化を追跡したところ、水素産生は3日目に確認され、培養12日目まで生産が継続した。15日後に水素産生が終了した後、ヘッドスペースの一部をO2またはN2ガスで置換した。N2への置換では水素産生への影響は見られなかったが、O2への置換で水素産生が再開された(図2)。しかし、O2が消費されると、水素産生は再び停止した。
[画像3: https://prtimes.jp/i/96787/22/resize/d96787-22-846401a4ada450e5e366-3.jpg ]
T. versicolor K-41株による木材腐朽時の水素生成量と有機酸の関与を明らかにするために、シュウ酸、ギ酸、酢酸を添加し、水素産生量を測定した。コントロール、水または酢酸塩を添加した培養系との間で水素産生量に差は見られなかったが、シュウ酸とギ酸を添加すると、コントロールと比較して水素産生量が120%及び127%とそれぞれ増加した。
T. versicolor K-41株による水素産生経路を推定すべく、水素産生条件(木粉培地)と非産生条件(液体培地)での遺伝子発現差解析を行った。その結果、水素産生時にグリオキシル酸回路におけるmalate synthase遺伝子のみがアップレギュレートされた。TCAサイクル上の各種遺伝子の誘導は見られなかった。シュウ酸生成酵素の可能性が見出されているglyoxylate dehydrogenase(or lactate dehydrogenases)、オキサロ酢酸からシュウ酸を生成するoxaloacetate acetylhydrolaseをコードする遺伝子の発現量は、いずれも液体培養での発現量より明らかに低かった。oxalate decarboxylase遺伝子は木粉培地で発現が上昇し、formate dehydrogenase(FDH)遺伝子は、液体培養よりも木材培養で4倍以上高い発現レベルを示した。これらの結果を踏まえ、T. versicolor K-41株由来FDH遺伝子高発現株を作出し、本菌の水素産生能を調査した結果、全ての株において水素産生能の向上が観察された。さらに、本菌培養系にシュウ酸あるいはギ酸を添加することで、さらに水素産生能が向上した。以上の結果より、T. versicolor K-41株による水素産生経路を図3のように提案した。
[画像4: https://prtimes.jp/i/96787/22/resize/d96787-22-d533277df80d90f1fb47-4.jpg ]
【今後の展望と波及効果】
白色腐朽菌は木材の腐朽過程で発生する活性酸素やラジカルなどの酸化ストレスから身を守る抗酸化物質として水素を産生すると考えられる。木材腐朽時の白色腐朽菌による水素産生は、エネルギー生産に伴う一次代謝ではなく、二次代謝反応であると考えられる。生産された水素の一部は、好気的条件下で木材腐朽時に発生するラジカルや活性酸素等の酸化ストレスを低減するために消費される可能性がある。
本研究では、Polyporalesに属する一部の白色腐朽菌が木材腐朽時に水素を生産する能力を持つことを発見した。最も高い水素産生能を示したT. versicolor K-41株は好気的条件下で水素を産生しており、シュウ酸・ギ酸代謝が水素産生系に関連していると結論づけた。好気性白色腐朽菌による好気的水素産生というこの新しい発見は、バイオ水素研究の新たな領域を切り開くものである。好気的水素産生プロセスを確立できれば、嫌気性発酵よりも経済的に有利なプロセスが可能になると期待される。しかし、白色腐朽菌による水素産生は、現在のところ実用化レベルではない。白色腐朽菌による好気性水素産生メカニズムについては不明な点が未だ残されている。今後は、水素生成に直接関与する酵素の同定とそのメカニズムの解明を進め、白色腐朽菌の水素産生の生理機能を明らかにする予定である。
【論文情報】
掲載誌名: Frontiers in Fungal Biology
論文タイトル: Aerobic H2 production related to formate metabolism in white-rot fungi
著者: Toshio Mori, Saaya Takahashi, Ayumi Soga, Misa Arimoto, Rintaro Kishikawa, Yuhei Yama, Hideo Dohra, Hirokazu Kawagishi and Hirofumi Hirai
DOI: 10.3389/ffunb.2023.1201889
【用語説明】
? 白色腐朽菌:担子菌の一種で、シイタケ、ヒラタケ、エリンギ等が該当する。
? シュウ酸:有機酸の一種。構造式 HOOC-COOH
? ギ酸:有機酸の一種。構造式 HCOOH
? TCAサイクル:酸素呼吸を行う生物全般に見られる重要な代謝系であり、電子伝達系で使用されるNADHやアミノ酸前駆体を供給している。
? GC-TCD:ガスクロマトグラフィーにより分離した気体を、熱伝導度で検出する分析法。
静岡大学グローバル共創科学部の平井浩文教授の研究グループは、キノコの仲間である白色腐朽菌が、木質バイオマスを原料に、好気的に水素を産生していることを、世界で初めて発見しました。
【研究のポイント】
・白色腐朽菌の多くが、木材腐朽時に水素を産生していることを発見した。
・特に産生能が優れていたTrametes versicolor K-41株(カワラタケ)の水素産生特性を調査した
結果、好気的に水素を産生していることが判明した。
・本菌による水素産生経路を解析した結果、有機酸であるシュウ酸・ギ酸代謝系と共役して水素
を産生していることが推測された。
本研究は、キノコの仲間である白色腐朽菌が、木材腐朽時に好気的に水素を産生していることを、世界で初めて発見した報告である。特に産生能の高かったT. versicolor K-41株を用いて、本菌による水素産生経路を解析した結果、白色腐朽菌において産生が認められているシュウ酸の代謝とリンクしており、シュウ酸をギ酸へと分解し、ギ酸を二酸化炭素へ変換する際に生じる電子を使って水素を産生していることを明らかにした。
水素は燃焼しても水にしかならないことから、次世代燃料の筆頭格として注目されているが、その製造方法は未だ定まってはいない。環境調和型水素産生方法としては、嫌気性微生物による水素発酵が挙げられるが、発酵槽を嫌気にする必要があり、実用化の妨げとなっている。本研究成果は、通常の(嫌気でない)発酵槽で木材等の非可食性バイオマスを原料として水素を製造可能となるポテンシャルを秘めており、微生物による新たな水素製造法につながると期待されます。
なお、本研究成果は、2023年6月27日に、Frontiersの発行する国際雑誌「Frontiers in Fungal Biology」に掲載されました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/96787/22/resize/d96787-22-c579466581dccda2439a-1.jpg ]
【研究者コメント】
静岡大学グローバル共創科学部 教授・平井浩文(ひらいひろふみ)
地球温暖化が問題となってきていた頃、「白色腐朽菌が水素を作れないかな・・・」と思い、ふと白色腐朽菌の全ゲノム情報を見たのですが、その時、白色腐朽菌にも水素産生に関わる遺伝子が存在することに気づき、慌てて、いろんな白色腐朽菌の水素産生能を調査したのが、本研究のきっかけです。
一般的には、微生物による水素産生は嫌気的に行われておりますが、本菌は木質バイオマスを原料に、それも好気的に水素を産生可能なことから、新たな水素製造法への応用が期待できます。
【研究概要】
本研究では、多数の白色腐朽菌が木材腐朽時に水素を産生することを見いだし、なかでもT. versicolor K-41株は、好気的条件下で木材から水素を生産し、低酸素条件下では水素産生が完全に抑制されることが判明した。さらに、木粉培地にシュウ酸やギ酸を添加すると、水素産生量の増加が認められた。遺伝子発現差解析の結果、TCA/グリオキシレートサイクルからのシュウ酸産生系はダウンレギュレートされ、逆にシュウ酸及びギ酸代謝酵素系遺伝子はアップレギュレートされていることが判明した。有機酸添加、遺伝子発現、関連遺伝子高発現株の結果から、本菌の水素産生機構にギ酸代謝が関与していることを発見した。
【研究背景】
水素は、高いエネルギー密度、燃焼時のゼロエミッション、様々な再生可能資源からの容易な製造という利点から、持続可能なエネルギーキャリアとして期待されてる。水素ガスは、熱化学的及び生物学的プロセスによってバイオマス材料から製造することが可能である。Escherichia属やClostridium属などの一部の嫌気性細菌は、有機酸から水素を生成する。動物細胞は水素を生成できないと考えられているが、動物では水素分子が抗酸化ストレス、抗炎症作用、抗アレルギー作用など多様な生物効果を持つことも知られている。また、高等植物も水素の影響を受けており、酸化ストレス、塩ストレス、乾燥ストレスなど様々な生物ストレスに対する耐性を向上させ、さらに、水素は高等植物の成長や発達などの生理的プロセスを改善し、他のシグナル伝達分子と相互作用すると考えられている。
白色腐朽菌は、木材の主要成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンをすべて分解することができるユニークな微生物である。リグニンを分解する際、白色腐朽菌は様々な活性酸素種やラジカルメディエーターなどのラジカルを生成する。つまり、木材腐朽時には常に酸化ストレスにさらされ、これらに対して何らかの防御機能があることが予想される。そこで本研究では、様々な白色腐朽菌の木材腐朽時の水素産生能を評価し、その水素産生特性及び産生経路について検討を行った。
【研究の成果】
木材腐朽菌の水素産生活性を調査すべく、自然界から採取した腐朽木材から分離した木材腐朽菌12株をブナ木粉に接種した。好気的培養後密栓し、培養器内のヘッドスペースガスのGC-TCD分析を行った結果、12株中8株で水素の産生が認められた。次に、スギ木粉培地での水素産生について検討した結果、すべての菌株がブナ木粉培地より高い水素産生を示した。特に、T. versicolor K-41株がスギ木粉培地で最も高い水素産生量(1.36 mmol/L)を示した(図1)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/96787/22/resize/d96787-22-f06f9901dfa91c12c24d-2.jpg ]
そこで、T. versicolor K-41株の水素産生特性と調査した。密閉後の培養器中の水素産生量の経時変化を追跡したところ、水素産生は3日目に確認され、培養12日目まで生産が継続した。15日後に水素産生が終了した後、ヘッドスペースの一部をO2またはN2ガスで置換した。N2への置換では水素産生への影響は見られなかったが、O2への置換で水素産生が再開された(図2)。しかし、O2が消費されると、水素産生は再び停止した。
[画像3: https://prtimes.jp/i/96787/22/resize/d96787-22-846401a4ada450e5e366-3.jpg ]
T. versicolor K-41株による木材腐朽時の水素生成量と有機酸の関与を明らかにするために、シュウ酸、ギ酸、酢酸を添加し、水素産生量を測定した。コントロール、水または酢酸塩を添加した培養系との間で水素産生量に差は見られなかったが、シュウ酸とギ酸を添加すると、コントロールと比較して水素産生量が120%及び127%とそれぞれ増加した。
T. versicolor K-41株による水素産生経路を推定すべく、水素産生条件(木粉培地)と非産生条件(液体培地)での遺伝子発現差解析を行った。その結果、水素産生時にグリオキシル酸回路におけるmalate synthase遺伝子のみがアップレギュレートされた。TCAサイクル上の各種遺伝子の誘導は見られなかった。シュウ酸生成酵素の可能性が見出されているglyoxylate dehydrogenase(or lactate dehydrogenases)、オキサロ酢酸からシュウ酸を生成するoxaloacetate acetylhydrolaseをコードする遺伝子の発現量は、いずれも液体培養での発現量より明らかに低かった。oxalate decarboxylase遺伝子は木粉培地で発現が上昇し、formate dehydrogenase(FDH)遺伝子は、液体培養よりも木材培養で4倍以上高い発現レベルを示した。これらの結果を踏まえ、T. versicolor K-41株由来FDH遺伝子高発現株を作出し、本菌の水素産生能を調査した結果、全ての株において水素産生能の向上が観察された。さらに、本菌培養系にシュウ酸あるいはギ酸を添加することで、さらに水素産生能が向上した。以上の結果より、T. versicolor K-41株による水素産生経路を図3のように提案した。
[画像4: https://prtimes.jp/i/96787/22/resize/d96787-22-d533277df80d90f1fb47-4.jpg ]
【今後の展望と波及効果】
白色腐朽菌は木材の腐朽過程で発生する活性酸素やラジカルなどの酸化ストレスから身を守る抗酸化物質として水素を産生すると考えられる。木材腐朽時の白色腐朽菌による水素産生は、エネルギー生産に伴う一次代謝ではなく、二次代謝反応であると考えられる。生産された水素の一部は、好気的条件下で木材腐朽時に発生するラジカルや活性酸素等の酸化ストレスを低減するために消費される可能性がある。
本研究では、Polyporalesに属する一部の白色腐朽菌が木材腐朽時に水素を生産する能力を持つことを発見した。最も高い水素産生能を示したT. versicolor K-41株は好気的条件下で水素を産生しており、シュウ酸・ギ酸代謝が水素産生系に関連していると結論づけた。好気性白色腐朽菌による好気的水素産生というこの新しい発見は、バイオ水素研究の新たな領域を切り開くものである。好気的水素産生プロセスを確立できれば、嫌気性発酵よりも経済的に有利なプロセスが可能になると期待される。しかし、白色腐朽菌による水素産生は、現在のところ実用化レベルではない。白色腐朽菌による好気性水素産生メカニズムについては不明な点が未だ残されている。今後は、水素生成に直接関与する酵素の同定とそのメカニズムの解明を進め、白色腐朽菌の水素産生の生理機能を明らかにする予定である。
【論文情報】
掲載誌名: Frontiers in Fungal Biology
論文タイトル: Aerobic H2 production related to formate metabolism in white-rot fungi
著者: Toshio Mori, Saaya Takahashi, Ayumi Soga, Misa Arimoto, Rintaro Kishikawa, Yuhei Yama, Hideo Dohra, Hirokazu Kawagishi and Hirofumi Hirai
DOI: 10.3389/ffunb.2023.1201889
【用語説明】
? 白色腐朽菌:担子菌の一種で、シイタケ、ヒラタケ、エリンギ等が該当する。
? シュウ酸:有機酸の一種。構造式 HOOC-COOH
? ギ酸:有機酸の一種。構造式 HCOOH
? TCAサイクル:酸素呼吸を行う生物全般に見られる重要な代謝系であり、電子伝達系で使用されるNADHやアミノ酸前駆体を供給している。
? GC-TCD:ガスクロマトグラフィーにより分離した気体を、熱伝導度で検出する分析法。