生成AIの初等中等教育でのガイドライン策定に向けた提言
[23/04/20]
提供元:PRTIMES
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特定非営利活動法人みんなのコード(東京都港区、代表理事:利根川 裕太、以下みんなのコード)は、「誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする」をビジョンに掲げ、2015年の団体設立以来、小中高でのプログラミング教育等を中心に、情報教育の発展に向け活動してきました。
情報技術は刻一刻と驚異的なスピードで進化し、昨今ではChatGPTの利用者がリリース開始から2ヶ月で1億人を突破するなど、生成AIツールに対する注目が高まっています。情報技術の進化に合わせ、文部科学省でもChatGPTなどの生成AIツールをどのように学校教育の現場で取り扱うかについてガイドラインを作成することが予告されています。
みんなのコードでは、2020年から、宮城教育大学附属小学校のコンピュータサイエンス科でのAIの授業実践等をはじめ、各地で様々な実証研究を行ってきました。
このような状況の中、全国の学校現場とともにAI教育を含む、情報教育の実証研究を行ってきたみんなのコードの知見から、「生成AIの初等中等教育でのガイドライン策定に向けた提言」をまとめましたので、発表します。
みんなのコードが考える課題と提言する3つの観点
文部科学省が予告しているガイドライン策定にあたっては、AI時代を生きていく子どもたちが、AIがもたらすメリットを学ぶ機会を十分に享受できるようにすることが望ましいと考えますが、昨今の報道等を見ると、考慮すべき重要な観点が不足していると感じています。
特に、ChatGPTをはじめとした生成AIについては、その脅威や留意点が過剰に強調されていると感じています。また、メリットに注目している場合も「いかに活用するか」という表面的な議論が先行していると言っても過言ではありません。
私たちが3年間、実証研究を行ってきた宮城教育大学附属小学校の中では、6年生を対象にAIに特化した「AIってなんだろう」の授業を行いました。これまで、子どもたちは「コンピュータは魔法の箱、AIは人間に代わって指示すればなんでもやってくれるもの」と思っていました。しかし、全てをコンピュータやAIに任せるのではなく、AIが得意なこと、人間にしかできないことを実際にAIに触れながら学ぶことで、情報活用能力が育成されました。
こうした学校現場での実践を踏まえ、特に生成AIの初等中等教育でのガイドライン策定にあたって考慮すべき3つの観点を整理しました。
[画像: https://prtimes.jp/i/15742/81/resize/d15742-81-8ebb42f03c3fd64eec73-1.jpg ]
●観点1:AIを「人間が楽をするため・人間の思考活動を脅かすもの」という前提のみで捉えてしまうと、AIのメリットを十分に享受することは困難だと考えます。これからの時代、AIと人間が共存することで、お互いの強みを活かすことができ、人間がより高度な知的生産をすることができると認識することが大切であると考えます。AIは、単なる代替労働力ではなく、人間の創造力や知識を拡大するツールです。
●観点2:「課題の発見・設定」や「導き出された答えの判定」ができる力のみでなく、「コンピュータと適切に対話する力」の育成についても重視する必要があります。また、これまでの実証研究を通じて、この力を育成するためには、AIサービスを利用するだけでは足りず、AIに”学習”させる経験も必須であると考えています。
●観点3:AIを含む、コンピュータとの向き合い方、情報技術を使いこなす力の育成を論じるだけでは不十分であり、そもそも「思考・判断・表現」の方法や、子どもたちの学びの姿そのものが変容しつつあることも考慮する必要があると感じています。つまり、情報教育に限定するのではなく、教育や学び全体に対する影響まで広く議論する必要があると考えます。
●生成AIの初等中等教育でのガイドライン策定に向けた提言はこちら
URL:https://onl.sc/9QUWfX3
NPO法人みんなのコード 代表理事 利根川 裕太 コメント
2020年度に小学校でプログラミング教育が必修化され、その翌年の2021年度には中学校における「技術・家庭」でのプログラミング教育の拡充、2022年度には高等学校で「情報I」が必履修科目となりました。そして、2025年には共通テストに教科「情報」が入る予定です。ここ数年で情報教育は大きな変化を遂げています。
それに加え、昨年11月にリリースされたChatGPTで、世界中に激震が走りました。連日各国での方針や、日本国内における生成AIに対する懸念も多く報道されています。しかし、この動きは日本における情報教育を進める起爆剤だと、私は感じています。なぜなら、私たち一人一人が、情報教育の重要性を理解し、AI技術の進歩に適応できるように大人も子どもも学び続けることが、未来の日本を作る力となると信じているからです。
今後、新しいAI技術が登場し続ける中で、それらをただ恐れるのではなく、さまざまな場面で適切に活用していくための教育が求められます。情報教育を加速させることで、次世代の人材がAIを活用したイノベーションや、誰もがちょっとした身の回りの困りごとを自分で解決できるようになる世界が期待されます。
みんなのコードは、すでに学校現場で実証研究を行い、先に述べたAI×教育をめぐる論点に取り組んできたからこそ、今回のガイドラインへの提言だけでなく、今後も学校との研究・関係者との議論を深め、AI時代に相応しい情報教育のあり方を示していきます。