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倒産件数は6015件、1966年以来半世紀ぶりの歴史的低水準 ― 全国企業倒産集計・2021年報

2022年は事業継続か市場からの退出か、判断迫られる1年に

帝国データバンクは、2021年における負債1000万円以上の法的整理について集計を行った。




[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-e224c061881a551431e6-0.png ]


<主要ポイント>
年間倒産件数は激減 半世紀ぶりの歴史的低水準 2022年は事業継続か市場からの退出か、判断迫られる1年に


倒産件数は6015件(前年7809件、前年比1794件・23.0%減)と、2000年以降で最少。1999年以前と比較しても、1966年(5919件)以来半世紀ぶりの歴史的低水準
2021年の負債総額は1兆1633億900万円(前年1兆1810億5600万円、前年比177億4700万円・1.5%減)と、大幅減となった倒産件数に対し、負債は微減にとどまった
業種別にみると、運輸・通信業を除く6業種で前年を下回った。小売業(前年1879件→1362件、27.5%減)やサービス業(同1872件→1425件、23.9%減)といったB to C業種では、倒産が沈静化した一方、運輸・通信業(前年262件→272件、3.8%増)は7業種中唯一増加
負債額別にみると、負債5000万円未満の倒産は3665件(前年比25.6%減)となり、構成比は13年ぶりに減少。一方で、負債50億円以上の倒産は30件と、6年ぶりに増加に転じた
地域別にみると、全地域で前年比2ケタの大幅減となった。関東(前年2743件→2246件、18.1%減)では、飲食店などが大幅減。近畿(同2084件→1529件、26.6%減)では、16年ぶりに2000件を割り、2府4県すべてで2ケタ減少となった
態様別にみると、破産は5518件(構成比91.7%)と、構成比は6年連続で減少。民事再生法は195件(同3.2%)で、2000年の施行後で最少
「人手不足倒産」は104件(前年比30.7%減)、2年連続の減少
「後継者難倒産」は466件(前年比3.1%増)、2013年の集計開始後、過去最多を記録
「返済猶予後倒産」は393件(前年比20.0%減)、2019年をピークに、2年連続で減少


■倒産件数:倒産件数は6015件、1966年以来半世紀ぶりの歴史的低水準
2021年の倒産件数は6015件(前年7809件、前年比1794件・23.0%減)と、2000年以降で最少。1999年以前と比較しても、1966年(5919件)以来半世紀ぶりの歴史的低水準となった。前年からの反動増となった5月を除く11カ月で前年同月を下回り、うち10カ月が2ケタ減となるなど、年間を通じて倒産が大幅に抑制された。

なお、2021年の上場企業倒産は、2016年以来5年ぶりに発生しなかった。
[画像2: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-80e17bbb2b3433eda2e8-1.png ]

[画像3: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-cc0b8ee4f1c0b6ea9ba6-2.png ]


■負債総額:負債は大型化の傾向
2021年の負債総額は1兆1633億900万円(前年1兆1810億5600万円、前年比177億4700万円・1.5%減)と、21世紀以降最小だった前年をさらに下回った。一方、大幅な前年比減となった倒産件数に対し、負債総額は微減にとどまった。負債50億円以上の大型倒産が6年ぶりに増加に転じるなど、前年よりも規模の大きい倒産の発生が増えたことが、負債総額を押し上げた。また月別では、12カ月中6カ月で増加、残り6カ月で減少した。

負債額最大の倒産は、ホテル・レジャー施設を運営していた(株)東京商事(東京都、特別清算、5月)の約1004億8300万円。
[画像4: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-71a8cfd49c6368108ddd-3.png ]

[画像5: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-40e09c64b8dc001953fc-4.png ]


■業種別:運輸・通信業を除く6業種で前年比減少
業種別にみると、運輸・通信業を除く6業種で前年を下回った。小売業(前年1879件→1362件、27.5%減)では、飲食店(同780件→569件)が200件超の減少となり、小売業全体の件数を引き下げた。サービス業(同1872件→1425件、23.9%減)でも、宿泊業(同127件→76件)などが前年からの反動減となった。B to C業種では、金融機関などの支援に加えて、秋以降の緊急事態宣言解除に伴う繰越需要増を背景に、倒産が沈静化した。卸売業(同1041件→761件、26.9%減)は、繊維製品卸(同189件→125件)で前年比33.9%の大幅減となった。

一方、運輸・通信業(前年262件→272件、3.8%増)は、燃料価格高騰や人手不足などの影響で、貨物自動車運送(同157件→169件)が増加するなど、7業種中唯一増加した。
[画像6: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-dbf34a6e8a3b345c8e2e-5.png ]

■主因別:「不況型倒産」は4609件、前年から25.4%の大幅減
主因別の内訳をみると、「不況型倒産」の合計は4609件と、前年比25.4%の大幅減となった。また、構成比は76.6%(対前年2.5ポイント減)を占め、2006年以来15年ぶりの低水準。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
[画像7: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-f9eaccf3e037dac948dc-6.png ]

■規模別:負債5000万円未満の構成比は13年ぶり減少、50億円以上の件数は6年ぶり増加
負債額別にみると、負債5000万円未満の倒産は3665件(前年比25.6%減)となった。構成比は13年ぶりに減少したものの、小規模倒産が多数を占める傾向が続いている。一方で、負債50億円以上の倒産は30件と、6年ぶりに増加に転じた。従前から過大負債を抱えた中でコロナ禍の急激な業績悪化が直撃し、資金繰りが限界に達した中堅企業の倒産が散見された。
[画像8: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-301411382d8c5523060a-7.png ]

資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産は4041件(前年比23.6%減)、構成比は67.2%(同0.6ポイント減)を占めた。

[画像9: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-680197c02fcc39428c96-8.png ]

■地域別:全地域で前年比2ケタの大幅減
地域別にみると、全地域で前年比2ケタの大幅減となった。全地域の減少は、2015年以来6年ぶりとなった。関東(前年2743件→2246件、18.1%減)では、飲食店(同232件→169件)のほか、繊維製品卸(同86件→54件)、出版・印刷業(同63件→34件)などが大幅減だった。近畿(同2084件→1529件、26.6%減)では、16年ぶりの2000件割れとなり、2府4県すべてで2ケタ減少。特に大阪府(同1146件→842件)は前年から300件超の大幅減となった。また、東北(同361件→232件、35.7%減)、北陸(同261件→179件、31.4%減)は前年から30%を超える減少率を記録した。
[画像10: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-43a7c5ff5c96e05c8ada-9.png ]

■態様別:破産の構成比は6年連続で減少、民事再生法は施行後で最少
態様別にみると、破産は5518件(構成比91.7%)と、9割超の水準が続いたが、構成比は6年連続で減少。民事再生法は195件(同3.2%)で、2000年の施行後で最少となった。一方、特別清算は300件(同5.0%)と前年から減少したものの、構成比は0.9ポイント増加した。
[画像11: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-c229c03ead7d8dbb0d01-10.png ]

■特殊要因倒産
人手不足倒産:2021年は104件(前年比30.7%減)、2年連続の減少

[画像12: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-84a78d05740d8f8219cc-11.png ]

後継者難倒産:2021年は466件(前年比3.1%増)、2013年の集計開始後、過去最多を記録

[画像13: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-dc06db05a15d45e44fe8-12.png ]

返済猶予後倒産:2021年は393件(前年比20.0%減)、実質的な金融円滑化法が終了した2019年をピークに、2年連続で減少

[画像14: https://prtimes.jp/i/43465/398/resize/d43465-398-e92014ef7b80bcfdf415-13.png ]

■今後の見通し
倒産激減、1966年以来半世紀ぶりの歴史的低水準に 上場企業倒産は5年ぶり発生ゼロ
2021年の倒産件数は前年比23.0%減の6015件となった。件数にして約2000件の大幅減少となり、1966年に次いで過去3番目に少ない、半世紀ぶりの歴史的低水準を記録した。5年ぶりに発生がゼロとなった上場企業の倒産動向も合わせ、全体的に倒産は沈静化の様相を呈した。

ただ、「倒産減少=景気回復の兆し」とみることはできない。一部業種ではコロナ禍特有の需要から好調を保つ業種もあるものの、総じてコロナ前には届かない水準が続いている。持続化給付金など政府による事実上の資本注入策に加え、各金融機関による無利子・無担保(ゼロゼロ)融資、既存融資のモラトリアムなど、官民一体の複層的な中小企業対策による「資金繰り破たんの先送り」が、結果として記録的な低水準への着地に大きく貢献したとみるべきだ。


1社当たりの負債額平均、13年ぶりに増加 目立つ「コロナ融資後」倒産
一方で、負債総額は前年比1.5%減の1兆1633億900万円と、大幅に減少した倒産件数に比べてほぼ横ばいでの推移となった。倒産1社の負債額平均(トリム幅上下1%)でみると、2020年が約9800万円/社だったのに対し、21年は約1億1200万円/社と1割を超える増加幅となったほか、リーマン・ショックの発生した08年以来、13年ぶりに前年を上回っている。

負債が増加している要因としては主としてゼロゼロ融資などコロナ対応の融資が挙げられ、「コロナ融資後倒産」も、2021年は前年に比べて明らかに発生が目立った。これらのケースの多くが、一旦は資金の供給を受けて当面の資金繰りを凌いだものの、経営が立ち直る前に返済開始時期を迎えた、あるいは返済の猶予期間中に将来への見切りをつけ、自ら事業継続を断念した「あきらめ型」によるものだ。22年からコロナ関連融資の返済が本格化するなか、融資を受けたものの収益改善が難航し、事業に行き詰まる経営不振企業が今後増加する可能性は高い。


「後継者難倒産」が最多更新、膨張した借入金が円滑な事業承継に影を落とす
倒産が減少したなかでも、逆に増加した業種やパターンもある。その一つが後継者の不在で事業継続の見込みが立たなくなった「後継者難倒産」で、2021年は最多の466件が発生した。倒産全体に占める割合も前年から1.9pt増の7.7%と急拡大しており、後継者問題が経営に及ぼすリスクがここに来て顕在化している。改善してはいるものの、依然として約6割の企業が後継者不在のなか、後継者の選定や育成を先送りしてきたところに代表者の突然の病気や死亡など不測の事態に直面し、事業継続が困難となったケースが多くを占める状況に変化はない。

しかし、2021年後半からはコロナ関連融資など「債務の膨張」が足かせとなって円滑な事業承継が進まず、事業継続を断念するケースも発生している。舞台照明の制作・設営を手がけるアント(12月、破産)は、創業代表の死去に伴い一旦は事業引継ぎを模索したものの、コロナ融資などで膨らんだ借入金の返済が困難と後継者が判断し、最終的に事業継続を断念した。


私的整理の活用で「倒産回避」へ 事業継続か市場からの退出か、判断迫られる1年に
2022年も引き続き、企業継続を中心とした金融支援が行われ、経営不振企業に退場を促す内容へと大きく舵を切る事態は中長期的に考えづらい。また、ゼロゼロ融資などで過大な債務を背負った中小企業の再生手法として、スキーム整備が進む私的整理の積極活用が新たなトレンドとして普及しそうだ。そのため、法的整理による清算や事業再生を一旦回避する動きは今よりも強まるものと予想され、倒産の発生は引き続き低水準で推移する局面が続くだろう。

一方で、債務の利払いを事業利益で賄えず、慢性的な経営限界=財務不健全リスクを抱える「経営破たん懸念企業」は、昨年3月時点で全国約30万社に上る可能性が帝国データバンクの試算で分かった。根本的なリスクを抱えた企業が相当数あるなか、資金繰り支援や債務整理を中心とした支援策では、2021年のような劇的な倒産減少効果は得られない公算が大きく、倒産の発生が前年を上回る月が前年に比べて多くなりそうだ。

足元では変異型ウイルス「オミクロン株」の急速な感染拡大を受け、緊急事態宣言の発出など、正常化しつつある経済活動が再度制限される可能性もちらつく。2021年後半から徐々に持ち直しつつあった観光産業などでは、再三にわたる需要減で経営意欲が削がれ、先行き見通し難から最終的に事業を畳む決断をするケースが増える懸念も残る。コロナ禍を凌ぐ最中にある多くの中小企業で、借入金への依存度をさらに増やしてでも事業を継続させるのか、余力があるうちに会社を畳み市場から退出を選択するのか、その判断を迫られる正念場の1年となる。
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