空母は生き残れるか−米原子力空母が震える日(1)【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】
[21/01/13]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
米海軍は現在11隻の原子力空母を保有しており、その遠洋展開能力、兵力投射能力は米国の国際的影響力の裏付けとなっている。任務によって異なるものの、ニミッツ級原子力空母には、平均して4個攻撃飛行隊(F/A-18F)約50機、1個電子攻撃飛行隊(EA-18G)4〜5機、1個早期警戒飛行隊(E-2D)4〜5機、2個ヘリコプター隊(MH-60)8〜10機、1個後方支援飛行隊(C-2A)2機の合計68〜72機が搭載されている。ちなみに東南アジア有数の空軍力といわれるマレーシア空軍が保有する戦闘機は、F/A-18D(8機)、Su-30MKM(18機)及びMig-29(10機)及び旧式のF-5E/F(11機)の合計47機であり、空母1隻でマレーシア空軍に匹敵する戦闘力を保有していることになる。
空母機動部隊(CSG : Carrier Strike Group)は複数隻の巡洋艦及び駆逐艦を随伴しており、これら随伴艦が搭載する対地巡航ミサイル(トマホーク)は洋上からピンポイントで政治経済の中枢や軍事基地を攻撃可能である。1個CSGが持つ攻撃能力は強大であり、何らかの国際紛争が生起し、米国の国益に影響を与えうるような状況となれば、米国大統領はまず空母の位置を確認するとも言われる。
空母を中心とした機動部隊の有用性を証明したのは旧大日本帝国海軍であった。当時世界各国の海軍関係者の間では、大艦巨砲主義が蔓延しており、空母は補助勢力としかとらえられていなかったが、空母6隻からなる機動部隊から発進した300機を超える航空機による攻撃で、ハワイ真珠湾に壊滅的な打撃を与えた。さらに、マレー沖海戦では、戦闘行動中のイギリス東洋艦隊の戦艦2隻を航空攻撃のみによって撃沈するという世界初の成果を上げた。
第2次世界大戦中に旧帝国海軍が喪失した主力艦艇は、戦艦12隻、航空母艦21隻及び一等巡洋艦18隻の合計51隻であった。このうち航空攻撃によるものは28隻、潜水艦によるものが13隻であり、事故や機雷による2隻を除くと艦艇の攻撃によるものはわずか7隻に過ぎなかった。喪失主力艦艇の約80%が航空機及び潜水艦によるものであった。日本海海戦以降に旧帝国海軍が磨きに磨きをかけていた「艦隊決戦」はほとんど行われなかったのである。
米国だけではなく、中国は2隻の空母を保有し、3、4隻目も建造中と伝えられている。更には露仏英印の4か国に加え、日本は「いずも」の空母化を、韓国も空母保有計画を明らかにしている。海軍の力の象徴であった戦艦が無用の長物と化した戦史の教訓から考えると、空母は見通しうる将来、その影響力を維持できるのであろうか。
サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。
<RS>
空母機動部隊(CSG : Carrier Strike Group)は複数隻の巡洋艦及び駆逐艦を随伴しており、これら随伴艦が搭載する対地巡航ミサイル(トマホーク)は洋上からピンポイントで政治経済の中枢や軍事基地を攻撃可能である。1個CSGが持つ攻撃能力は強大であり、何らかの国際紛争が生起し、米国の国益に影響を与えうるような状況となれば、米国大統領はまず空母の位置を確認するとも言われる。
空母を中心とした機動部隊の有用性を証明したのは旧大日本帝国海軍であった。当時世界各国の海軍関係者の間では、大艦巨砲主義が蔓延しており、空母は補助勢力としかとらえられていなかったが、空母6隻からなる機動部隊から発進した300機を超える航空機による攻撃で、ハワイ真珠湾に壊滅的な打撃を与えた。さらに、マレー沖海戦では、戦闘行動中のイギリス東洋艦隊の戦艦2隻を航空攻撃のみによって撃沈するという世界初の成果を上げた。
第2次世界大戦中に旧帝国海軍が喪失した主力艦艇は、戦艦12隻、航空母艦21隻及び一等巡洋艦18隻の合計51隻であった。このうち航空攻撃によるものは28隻、潜水艦によるものが13隻であり、事故や機雷による2隻を除くと艦艇の攻撃によるものはわずか7隻に過ぎなかった。喪失主力艦艇の約80%が航空機及び潜水艦によるものであった。日本海海戦以降に旧帝国海軍が磨きに磨きをかけていた「艦隊決戦」はほとんど行われなかったのである。
米国だけではなく、中国は2隻の空母を保有し、3、4隻目も建造中と伝えられている。更には露仏英印の4か国に加え、日本は「いずも」の空母化を、韓国も空母保有計画を明らかにしている。海軍の力の象徴であった戦艦が無用の長物と化した戦史の教訓から考えると、空母は見通しうる将来、その影響力を維持できるのであろうか。
サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。
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