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一尾仁司の「虎視眈々」:財務省が早める景気対策論議

注目トピックス 市況・概況

○市場安定化目指す動き、内需拡大策焦点へ

元財務官僚の高橋洋一氏が「猫だまし」と指摘する財務省の消費増税の軽減案が、連日報道されている。10%への消費増税が再見送り、凍結されることへの危機感から、増税を既定路線としようとする動きと見られている。財務省案に反対姿勢の読売新聞によると、10日、安倍首相は麻生財務相、財務省幹部と会談し、「財務省案にこだわらず対応するよう指示した」。自公合意の軽減税率を念頭に、「与党協議に委ねる」姿勢と言う。安倍首相としては、フリーハンドにしておきたいところであろう。

世界同時株安、中国経済失速懸念などで景気対策を求める声が強まっているが、10日、さらにその流れを強める統計が出た。7月機械受注は予想外の2カ月連続の減少(前月比−3.6%、市場予想は+3.7%)、企業の設備投資計画の実行に慎重姿勢が広がっていると見られる。日銀発表の8月企業物価指数は前年比3.6%下落、09年12月以来の落ち込みとなった。企業にデフレ懸念が広がっている可能性がある。皮肉にも、物価上昇率の低下は実質賃金などの押し上げ要因になっている可能性があるが、8日発表の景気ウォッチャー調査は7カ月ぶりに分岐点50を割れ、消費マインドの冷え込みを示している。

7−9月GDP観測に悲観論が広まってきた。8月下旬までは年率1.7%成長が平均値だったが、今週に下方修正が相次ぎ、0.5〜0.9%程度。貿易統計や生産統計次第で、2期連続マイナス成長の可能性を指摘する向きが出ている。これを受け、本日開催の経済財政諮問会議では、内需拡大策が議論される見込みと伝えられる。具体的には、子育て支援・少子化対策、低所得者対策、企業の生産性向上策、さらに未曾有の水害発生により、防災・減災対策などが考えられる。一部では、消費再増税凍結論が強まっているが、そこまで踏み込めるかどうか、注目される。

政治日程では、来週の安保法制、シルバーウィークを挟んで安倍首相の国連総会出席、10月初めの内閣改造が予定されている。景気対策は新内閣での方向と思われるが、先取り的な動きが広がるかが焦点となる。中国情勢、商品市況などは小康状態となっているが、投資家の目線はあまり変わっていない。昨日の東証空売り比率は41.1%と、爆上げ前の水準に戻った。欧州でも金融緩和策の延長(17年3月まで)論が出るなど、来週に迫った米利上げ攻防に対処する動きが活発化し始めている。新興国対策なども活発化すると見られる。それらをリードするまで、日本の景気対策が活発化するかどうか注目される。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」



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