国内株式市場見通し:金融システム不安で米FOMC後も上値の重い展開か
[23/03/18]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
*14:52JST 国内株式市場見通し:金融システム不安で米FOMC後も上値の重い展開か
■金融システム不安が世界的に広がる
今週の日経平均は週間で810.18円安(−2.88%)と3週ぶり反落。一方、週足のローソク足は長い下ヒゲを伴った陰線を形成し、終値では13週線、26週線、52週線の上方を維持した。
米シリコンバレー銀行(SVB)をはじめとした相次ぐ銀行の経営破綻を受けてリスク回避の動きが先行し、週前半に大幅下落。一方、米金融当局と政府が緊急融資プログラムを発表したことが投資家心理を改善させたほか、米2月消費者物価指数(CPI)がほぼ予想通りの結果になったことで、週半ばにはいったん下落が止まった。しかし、スイス銀行のクレディ・スイスの経営難を警戒して欧州市場でも銀行株が急落すると、世界的な金融システム不安が強まり、週後半に再び大きく下落。一方で週末は反発した。経営難に直面していた米ファースト・リパブリック・バンクの支援に複数の大手銀行が動いたことなどが目先の安心感につながった。
■需給悪も日本株の重しになりそう
来週の東京株式市場は軟調か。21−22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。16日に開かれた欧州中央銀行(ECB)定例理事会では従来の計画通り0.5ポイントの大幅利上げが決定された。ただ、銀行業界の混乱を背景に、今後の政策金利の軌道を示唆する文言は声明文から取り除かれた。また、ラガルド総裁は記者会見で、将来の利上げについて「現時点で決定することは不可能」と発言。利上げが停止されるまでには至らなかったものの、足元の一連の事態に配慮した言動が所々に見られた。FOMCでも利上げ停止にならなかったとしても、同様に先行きについては含みを持たせた柔軟な姿勢が示されると推察する。
フェデラルファンド金利先物市場は一時、年末までの4回の利下げを織り込み、週末時点でも年内3−4回の利下げを予想している。米連邦準備制度理事会(FRB)は神経質になっている市場にショックをもたらさないよう配慮を見せると思われる一方、早期の利上げ停止がインフレを再燃させる恐れも警戒し、今回の政策金利見通し(ドットチャート)ではインフレに対するファイティングポーズを見せるため、現在の市場想定よりは高い金利水準を示してくる可能性がある。そのため、市場の織り込み対比で考えれば今回のFOMCでは波乱の余地が残されていそうにも見える。ただ、パウエル議長の会見ではトーンが軟化すると考えられ、FOMCは大きな波乱なく消化すると考えている。
一方、市場の最大の関心事である世界的な金融システム不安の高まりが引き続き重しとなるだろう。各国の金融当局と政府が迅速に緊急対応策を実施していることもあり、連鎖的な倒産、システミックリスクは避けることができると思われるが、急速な金融引き締めの影響が大きい新興企業や不動産業界への貸し出し割合が高いところでは今後も経営難に直面する銀行が出てくる可能性は高い。国内外の銀行株の急落後の戻りの鈍さからも、投資家の警戒感は解消されていないことが窺え、株式市場の上値の重い展開が続きそうだ。
また、日本株を巡る需給の悪さにも留意したい。10日時点の裁定取引に係る現物ポジションの買い残は1兆4587億円と昨年8月半ば以来の水準で、直近3年の中では最も高い水準に当たる。売り残を差し引いたネットベースでも同様の状況だ。東京証券取引所による低PBR・低ROE企業への改善要請や3月期末に向けた配当権利取りなどを要因に、10日の3月限株価指数先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)にかけて海外投資家が先物買いを加速させたことが背景にあるのだろう。一方、3月第2週(6−10日)の海外投資家の現物売買動向については1兆1164億円と大幅な売り越しだった。
今週からの日本株の相対的な弱さは、こうした足の速い資金が流出していることの証左だろう。積み上がった裁定買い残の解消余地はまだ残されていると推察され、需給悪は当面日本株の上値抑制要因となりそうだ。他方、3月期末に向けた配当権利取りの動きの復活が下値を支えることに期待したいところだが、今週は鉄鋼、非鉄金属、卸売(商社)、海運など先週まで強かった銘柄が軒並み急落し、弱い動きが最後まで続いた。金融システム不安にもとづく景気後退懸念が緩和されない限りは、権利取りの動きが力強く復活することは期待しにくいだろう。
個別では、世界的な景気後退懸念を背景に金利の先高観が大きく後退したことから、景気・為替との連動性の低いサービスや情報・通信といった内需系グロース(成長)セクターが相対的に優位な展開を予想する。また、先行き不透明感がくすぶる中、原材料高の一服と値上げ傾向による業績改善期待が高い食料品や、中国経済再開の恩恵が大きいインバウンド関連、ディフェンシブ性の高い医薬品、ディフェンシブ性に加えて円安一服も業績改善につながる電気・ガスなどの買い安心感が強いと想定する。
■米FOMC、2月全国消費者物価指数、米2月PMIなど
なお、来週は20日に日銀金融政策決定会合の主な意見(3/9−10日開催分)、21日に米FOMC(−22日)、米2月中古住宅販売件数、22日にパウエルFRB議長会見、23日に英国金融政策委員会、24日に2月全国消費者物価指数、米2月耐久財受注、米2月製造業購買担当者景気指数(PMI)、などが予定されている。
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■金融システム不安が世界的に広がる
今週の日経平均は週間で810.18円安(−2.88%)と3週ぶり反落。一方、週足のローソク足は長い下ヒゲを伴った陰線を形成し、終値では13週線、26週線、52週線の上方を維持した。
米シリコンバレー銀行(SVB)をはじめとした相次ぐ銀行の経営破綻を受けてリスク回避の動きが先行し、週前半に大幅下落。一方、米金融当局と政府が緊急融資プログラムを発表したことが投資家心理を改善させたほか、米2月消費者物価指数(CPI)がほぼ予想通りの結果になったことで、週半ばにはいったん下落が止まった。しかし、スイス銀行のクレディ・スイスの経営難を警戒して欧州市場でも銀行株が急落すると、世界的な金融システム不安が強まり、週後半に再び大きく下落。一方で週末は反発した。経営難に直面していた米ファースト・リパブリック・バンクの支援に複数の大手銀行が動いたことなどが目先の安心感につながった。
■需給悪も日本株の重しになりそう
来週の東京株式市場は軟調か。21−22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。16日に開かれた欧州中央銀行(ECB)定例理事会では従来の計画通り0.5ポイントの大幅利上げが決定された。ただ、銀行業界の混乱を背景に、今後の政策金利の軌道を示唆する文言は声明文から取り除かれた。また、ラガルド総裁は記者会見で、将来の利上げについて「現時点で決定することは不可能」と発言。利上げが停止されるまでには至らなかったものの、足元の一連の事態に配慮した言動が所々に見られた。FOMCでも利上げ停止にならなかったとしても、同様に先行きについては含みを持たせた柔軟な姿勢が示されると推察する。
フェデラルファンド金利先物市場は一時、年末までの4回の利下げを織り込み、週末時点でも年内3−4回の利下げを予想している。米連邦準備制度理事会(FRB)は神経質になっている市場にショックをもたらさないよう配慮を見せると思われる一方、早期の利上げ停止がインフレを再燃させる恐れも警戒し、今回の政策金利見通し(ドットチャート)ではインフレに対するファイティングポーズを見せるため、現在の市場想定よりは高い金利水準を示してくる可能性がある。そのため、市場の織り込み対比で考えれば今回のFOMCでは波乱の余地が残されていそうにも見える。ただ、パウエル議長の会見ではトーンが軟化すると考えられ、FOMCは大きな波乱なく消化すると考えている。
一方、市場の最大の関心事である世界的な金融システム不安の高まりが引き続き重しとなるだろう。各国の金融当局と政府が迅速に緊急対応策を実施していることもあり、連鎖的な倒産、システミックリスクは避けることができると思われるが、急速な金融引き締めの影響が大きい新興企業や不動産業界への貸し出し割合が高いところでは今後も経営難に直面する銀行が出てくる可能性は高い。国内外の銀行株の急落後の戻りの鈍さからも、投資家の警戒感は解消されていないことが窺え、株式市場の上値の重い展開が続きそうだ。
また、日本株を巡る需給の悪さにも留意したい。10日時点の裁定取引に係る現物ポジションの買い残は1兆4587億円と昨年8月半ば以来の水準で、直近3年の中では最も高い水準に当たる。売り残を差し引いたネットベースでも同様の状況だ。東京証券取引所による低PBR・低ROE企業への改善要請や3月期末に向けた配当権利取りなどを要因に、10日の3月限株価指数先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)にかけて海外投資家が先物買いを加速させたことが背景にあるのだろう。一方、3月第2週(6−10日)の海外投資家の現物売買動向については1兆1164億円と大幅な売り越しだった。
今週からの日本株の相対的な弱さは、こうした足の速い資金が流出していることの証左だろう。積み上がった裁定買い残の解消余地はまだ残されていると推察され、需給悪は当面日本株の上値抑制要因となりそうだ。他方、3月期末に向けた配当権利取りの動きの復活が下値を支えることに期待したいところだが、今週は鉄鋼、非鉄金属、卸売(商社)、海運など先週まで強かった銘柄が軒並み急落し、弱い動きが最後まで続いた。金融システム不安にもとづく景気後退懸念が緩和されない限りは、権利取りの動きが力強く復活することは期待しにくいだろう。
個別では、世界的な景気後退懸念を背景に金利の先高観が大きく後退したことから、景気・為替との連動性の低いサービスや情報・通信といった内需系グロース(成長)セクターが相対的に優位な展開を予想する。また、先行き不透明感がくすぶる中、原材料高の一服と値上げ傾向による業績改善期待が高い食料品や、中国経済再開の恩恵が大きいインバウンド関連、ディフェンシブ性の高い医薬品、ディフェンシブ性に加えて円安一服も業績改善につながる電気・ガスなどの買い安心感が強いと想定する。
■米FOMC、2月全国消費者物価指数、米2月PMIなど
なお、来週は20日に日銀金融政策決定会合の主な意見(3/9−10日開催分)、21日に米FOMC(−22日)、米2月中古住宅販売件数、22日にパウエルFRB議長会見、23日に英国金融政策委員会、24日に2月全国消費者物価指数、米2月耐久財受注、米2月製造業購買担当者景気指数(PMI)、などが予定されている。
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