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ウィルグループ Research Memo(7):新しい成長エンジンとして新分野の事業を育成

注目トピックス 日本株
■2015年3月期のトピックス

ウィルグループ<6089>は上記の成長戦略の他にプラスαの成長戦略として、新分野への事業拡大を掲げている。セグメントでは「その他の事業」であるが、既にスタートしている新規事業を含めた既存事業のすそ野を広げるのはもちろん、同社のミッションである「Working(働く)」、「Interesting(遊ぶ)」、「Learning(学ぶ)」、「Life(暮らす)」といったそれぞれの領域を支援するサービスという、まったく新しいカテゴリーの新規事業も含まれる。2015年3月期のトピックスはこれら新分野の事業拡大が進んだ点がまず挙げられる。

具体的な事業の説明の前にプラスαの成長戦略の意図と、推進するうえでの戦術や基本姿勢について説明する。

まず、この戦略を推進する意図は、人口減少が進む日本において既存事業だけではいつか成長が頭打ちになるため、新分野の事業を育成し、新しい成長エンジンとしていくことにある。

次に戦術としては、M&Aを駆使するほか、社内においても社員全員が参加できる新規ビジネスの提案大会「ビジネスモデルグランプリ(BMG)」を毎年開催し、優れた提案の場合、事業立ち上げを行っていく。BMGには毎年、50〜60件の応募があるほど盛況だという。さらに、2016年3月期からはコーポレートベンチャーキャピタルの設立によって外部から成長のリソースを取り込む戦術も新たに加わった。これについては、トピックスで詳しく触れる。

また、基本姿勢として、「グループとして中期的に売上高、利益の両方で2ケタ成長を続ける」目標が堅持できる範囲内でこれらの事業から発生する赤字は容認していく方針となっている。2015年3月期にスタートした事業の一部は想定よりも進捗が遅れたり、既に事業の縮小を決めたりしているが、新分野の事業が簡単に成功しないことは同社が一番心得ており、今後も事業の入れ替えをしながら、将来の柱となる事業を発掘・育成していく。

以上を踏まえたうえで、以下にこれら新分野の事業について説明する。2015年3月期のトピックスは、この他にもいくつかあるため、これらについても順に触れる。

(1)新分野の事業の立ち上げ

新たに立ち上がった事業としては、「シンガポールの人材紹介会社STCの買収」「3Dクラウド事業」「シェアハウス事業」「スマートフォンアプリ開発技術検定試験を活用した転職支援事業」「テレファームとの業務・資本提携」などがある。これらのうち、3Dクラウド事業とシェアハウス事業はBMGからの新規事業である。以下にこれら新規事業に関して説明する。

「海外のM&A」
2014年8月にシンガポールの海外事業統括会社である「WILL GROUP Asia PacificPte. Ltd. (WAP)」を通じて現地の人材紹介会社「Scientec Consulting Pte. Ltd.(STC)」の株式の60%を663万4,000シンガポールドル(約571百万円)で取得した。

同社は経済成長率が高く、日本からの進出も増加傾向が続くASEAN地域を海外事業の中核に位置付けている。今回の買収は、海外事業の拡大はもとより、STCの持つヘルスケアやライフサイエンス産業への人材サービスのノウハウを得ることを目的としている。ASEAN市場は特にホワイトカラーにおいて人材派遣よりも人材紹介が多い構造になっており、それへの対応という側面もある。なお、WAPは、3年間でSTCの全株式を取得する方針となっている。

「3Dクラウド事業」
「3Dクラウド事業」は、3DCAD、3DCG、3Dプリントといった3D領域に特化したクラウドソーシング(不特定多数の人への業務委託)仲介サイトである。3Dプリンタで制作する際、企画からデータ作成、プリントまでの全工程でクライアントと技術者をマッチングし、さらに契約から支払までを一括して行える。全行程に関し、マッチングから契約、支払までをワンストップでできるサービスは国内で初。子会社の(株)セントメディアが展開していく。

同事業は2015年9月中に全行程でのサービスがスタートできる模様となっている。フルラインアップでのサービス提供は当初計画よりも遅れが出たものの、市場拡大の期待は高く、引き続き事業の育成を図っていく。
「シェアハウス事業」
「Life(暮らす)」を事業の対象とする同社らしい新規事業である。シェアハウスは赤の他人同士が1つの家をシェアして生活することを言うが、同社の場合、ITエンジニアもしくは、それを目指している人だけを対象にしている。2014年11月に東京・渋谷区神宮前に「TECH residence 表参道」をオープンした。

2015年1月には大前研一(おおまえけんいち)氏が代表を務めるビジネス・ブレークスルー<2464>(本社:東京・千代田区)が運営する「ビジネス・ブレークスルー大学」と共同でイベントを開催した。参加者がチームを組んで1日で新しいサービスやプロトタイプを創造し、プログラミングまで作り上げるという内容で、一般的に「ハッカソンイベント」と呼ばれている。

表参道のシェアハウスは2015年6月時点で満室となっており、入居待ちの状態が続いている。同社では住居待ちの人々のリスト作成に着手しており、数百名程度の“ウェイティング・リスト”を作成する予定となっている。これはシェアハウス事業の拡大ばかりでなく、IT技術者の育成やコラボレーションといった新ビジネスを検討するうえでの重要なツールとしても活用できると考えられる。

「スマートフォンアプリ開発技術検定試験を活用した転職支援事業」
セントメディアが展開するネット人材紹介事業「ネットジンザイバンク」を通じて求人に応募する際、デジタル広告/マーケティング会社の(株)D2C(代表取締役社長 宝珠山卓志(ほうしゅやまたかゆき)氏、本社:東京都港区)の「スマートフォンアプリ開発技術検定試験(スマ検)」で一定の点数以上を取得した応募者には書類選考を省いて面接試験から選考する権利が与えられる、というサービス。求人企業と求職者双方にとって無駄なく、合理的な採用ができる。システム開発の(株)グッドワークス(代表取締役 須合憂(すごうゆう)氏、本社:東京都千代田区)の採用などで実施された。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)




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