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シンワアート Research Memo(2):アートから始まる富裕層向け総合サービスカンパニーへ

注目トピックス 日本株
■事業概要

シンワアートオークション<2437>は国内最大級の美術品オークション会社である。1989年の創業以来、業界のパイオニアとして国内のオークション市場をリードするとともに、業界唯一の上場会社でもある。日本の近代美術を中心として、近代陶芸やブランド雑貨、時計、宝飾品なども手掛けている。特に、同社が得意とする2,000万円以上の高額落札作品においては業界トップの約45.0%を占めており圧倒的なシェアを誇る。

美術品に対する専門性の高さや富裕層マーケティングによる人的ネットワーク、実績に裏打ちされた信用力やブランド力などを強みとして、業界のリーディングカンパニーとしての地位を確保してきた。

また、2014年5月期からは、これまで積み上げてきた富裕層マーケティングとのシナジー効果が期待できる新規事業として、診療報酬債権のファクタリングを中心としたメディカル事業、及び太陽光発電によるエネルギー関連事業にも参入した。「アートから始まる富裕層向け総合サービスカンパニー」へと事業ドメインの拡張により、安定収益源の確保と財務基盤の強化に取り組んでいる。

事業セグメントは、主力となる「オークション関連事業」のほか、新規事業である「エネルギー関連事業」「その他」の3つに区分される。事業別売上高構成比率を見ると、主力の「オークション関連事業」が31.5%、「エネルギー関連事業」が68.5%、「その他」が0.0%と、前期(2015年5月期)より本格稼働した「エネルギー関連事業」の比率が高い(2016年5月期上期実績)。

同社グループは、連結子会社3社と持分法適用会社1社で構成される(2015年11月末現在)。連結子会社には、宝飾品を中心としたオークションの企画及び運営を行うJオークション(株)、エネルギー関連事業、及び損害保険代理業等を手掛けるエーペック(株)、メディカル事業を手掛けるシンワメディコ(株)がある。また、持分法適用会社は、香港での美術品を中心としたオークションの企画及び運営、美術品売買を手掛けるASIAN ART AUCTION ALLIANCE COMPANY LIMITED(同社が21.1%を所有)である。

各事業の概要は以下のとおりである。

(1)オークション関連事業

オークション関連事業は、大きく「オークション事業」と「オークション関連その他事業」に分けられる。

a)オークション事業
オークション事業は、取扱作品・価格帯により、近代美術オークション、近代陶芸オークション、近代美術PartIIオークションを定期的に開催するほか、ワイン及び西洋美術等のオークションも随時開催する。また、ブランド雑貨、時計、宝飾品については、2013年10月に設立した連結子会社Jオークションが開催するオークションで取り扱っている。オークション関連事業の売上高は、主に落札価額に対する手数料収入(落札手数料及び出品手数料)で構成される。落札手数料は落札価額200万円以下に対して15.0%、200万円超5,000万円以下に対して12.0%、5,000万円超に対して10.0%、出品手数料は落札価額の10.0%と設定されている。他にもカタログ収入や会費収入などで構成される。

b)オークション関連その他事業
オークション以外の相対取引であるプライベートセールを中心に構成されている。オークション取引と同様に、販売価格をベースに販売委託者及び購入者から手数料を徴収する場合と、同社が作品を買い取り、その在庫商品を購入希望者に販売する場合とがある。同社は、美術品市場全体の安定化と規模の拡大を目的として、いわゆる近代美術の巨匠と言われる作家の名品(マスターピース)クラスの作品を数点購入し、戦略在庫として保有するとともに、作品ごとに販売時期、価格及び販売先などを含め、最も合理的な販売を実現することにより、販売益の獲得や効果的なマーケットメイクを目指している。

なお、手数料収入と商品売上高は、売上高に対する量的なインパクトが異なるため注意が必要である。オークション関連事業の業績を判断するためには、取扱高及びセグメント利益を見るのが妥当と言える。

(2)エネルギー関連事業

富裕層向けに50kW級の低圧型太陽光発電施設の分譲販売を行うとともに、高圧型太陽光発電施設※1を自社保有することによる売電事業も展開している。なお、太陽光発電施設は20年間の固定価格買取制度や節税効果※2などのメリットが享受できるところに特徴がある。

※1兵庫県西脇市(800kW級)等を保有(2015年11月末現在)
※2生産性向上設備投資促進税制による「100%の即時償却または最大5%の税額控除」の適用は2016年3月末で終了するが、2016年4月1日から2017年3月末日までは「50%の特別償却または最大4%の税額控除」が適用される。

(3)その他

メディカル事業として、これまで診療報酬債権ファクタリング事業を行ってきたが、資金調達の遅れ等により一旦凍結を決定した。現在は、日本を含めたアジアの富裕層に日本の最先端の医療技術やより良い品質の医療サービスを紹介する医療ツーリズムを収益の柱にするべく注力している。

また、2016年1月からは損害保険商品にかかる新たな事業(キャプティブ設立コンサルティング)も開始した。エネルギー関連事業における顧客企業向けの展開(クロスセル)を中心として、医療ツーリズムと同様、富裕層マーケティングにおける強みを生かした新規事業として育成する方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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