三栄コポ Research Memo(1):2019年3月期は全セグメントで増収増益を予想
[18/06/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
三栄コーポレーション<8119>は、70年以上の歴史を持ち高付加価値品を主に取り扱う商社である。生活関連用品全般を扱い、製造・輸出入・卸・小売りまでのサプライチェーンを幅広く手がけ、海外には19ヶ所の拠点、国内直営小売店83店舗を持つ。欧州の差別化されたブランドの日本導入や、良品計画<7453>に代表されるこだわりある商品のOEM調達など、付加価値の高い商品を取り扱う点で個性が明確である。家具・家庭用品事業(売上高の51.6%)、服飾雑貨事業(売上高の30.6%)、家電事業(売上高の12.7%)の3事業が柱である。
1. 事業内容
近年の同社の成長は、家具・家庭用品事業がけん引している。特にOEM事業の比率が高く(約94%)、良品計画に代表される大手顧客の事業の伸びにも支えられて成長してきた。売上高は2017年3月期に27,431百万円まで成長、2018年3月期は欧州顧客の大口のスポット受注の剥落や米国量販店向けの縮小などが影響して、23,053百万円まで売上高を下げたが、今後も大黒柱であることは間違いない。成長著しいブランドとして、自社のeコマースブランド「MINT」がある。自社の販売サイト、楽天やYahoo!で販売しており2018年3月期の売上高が前期比で約1.5倍と好調である。また、家具・家庭用品事業のブランドとして、2ブランド(WMF、Silit)の総輸入代理店契約の解消と同じタイミングで、2017年10月より家庭用品の新規ブランド「Villeroy & Boch(ビレロイ&ボッホ)」の取り扱いを開始した。創業270周年を迎えるドイツの老舗ブランドであり、今期は通年で業績が計上され、今後の市場浸透が期待される。
服飾雑貨事業はブランド事業の存在感が大きい。同社最大のブランドであるビルケンシュトックは、ドイツで240年以上の伝統がある機能美に優れたコンフォートサンダル・シューズブランドであり、コアなファン層に支持されている。直営の63店舗とeコマース等で販売され、長く使う顧客が多い商品だけに自社運営のアフターサービスも充実している。2018年3月期にはラゾーナ川崎店など3店舗をオープン。一時期のブームは落ち着いたものの、集客力のある商業施設に出店できており、業績は堅調である。キプリングはベルギー発のナイロンバッグのブランドであり、キプリングモンキー(猿のマスコット)とともに遊び心のあるカジュアルブランドとして世界的に有名である。同社では直営9店舗(銀座など、アウトレット含む)、全国有名百貨店(約60店舗)での取り扱いを行う。近年、並行輸入品が出回り、業績にマイナスの影響を及ぼしてきたが、今期はその対策の効果が徐々に表れつつある。
2. 業績動向
2018年3月期通期の連結業績は、売上高が前年同期比10.2%減の44,692百万円、営業利益が同37.8%減の1,683百万円、経常利益が同24.8%減の1,832百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同41.7%減の832百万円となり、減収減益となった。売上高の約7割を占めるOEM事業において、国内外で製品ライフサイクルが成熟期を迎えた商品の比率が高まったことが減収の要因となった。加えて、家具家庭用品事業のOEMで北米量販店向けの減少や欧州取引先の前期スポット受注の剥落なども影響した。なお、2018年3月期は減収減益ではあったが、過去20年の業績の中では売上高で3番目、経常利益で4番目であり、長い目で見ると高い水準を維持した決算と言えるだろう。
2019年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比11.9%増の50,000百万円、営業利益が同12.8 %増の1,900百万円、経常利益が同3.7%増の1,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同44.1 %増の1,200百万円と増収増益を予想する。特に伸びが大きいのが、家具家庭用品事業と服飾雑貨事業である。家具家庭用品事業では、海外向けOEMの回復、家具のEC直販MINTの成長、新ブランドVilleroy & Boch(ビレロイ&ボッホ)の通年寄与などが伸びの要因。服飾雑貨事業では、ビルケンシュトックが直営店のほかに催事を強化、キプリングの並行輸入品対策の効果出現などが伸びの要因だ。中期経営計画2年目である2019年3月期は、目標である経常利益20億円レベルの達成にも期待がふくらむ。2018年前半の円高傾向も追い風となりそうだ。
3. 成長戦略
同社は、2018年3月期を初年度、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画を実行中である。定量目標としては、2020年3月期までに、20億円以上の安定的な経常利益を生み出す基盤を作ることを掲げている。初年度である2018年3月期は、収益目標は達成できなかったが、戦略としては概ね順調に進捗できた模様。新しいチャレンジ関連では特にブランド事業において新ブランドの事業開始、権利獲得などを達成した。ガバナンス関連では、業務基盤システム(SAP)の導入準備が計画通り進捗し、2018年7月には単体に、段階的にグループに導入予定であり、意思決定の迅速化や業務の効率化が期待される。
2018年6月には、ドイツの時計ブランド「KERBHOLZ(カーブホルツ)」の取り扱いを開始した。KERBHOLZは2012年に誕生した、木材等天然素材を使ったドイツの時計ブランドであり、現在世界10 か国、350を超える店舗で販売されている。このブランドの特徴は、厳選された天然の素材を使用しており、利益の10%を資源保全プロジェクトへ寄付するなど、環境に配慮したブランドコンセプトを持つことである。また、シンプルでありながらファッション性に優れたフォルムが特徴で、ドイツの権威あるデザイン賞「GERMAN DESIGN AWARD」を2年連続受賞するなど数々の賞を獲得している 。この他に、2018年9月にはドイツの調理器具ブランド「WOLL(ヴォル)」の日本での取り扱いを開始する予定だ。新規ブランド導入が進んでいる。
4. 株主還元策
2018年3月期の1株当たり配当金は、上期60円、下期100円、年間160円、配当性向は45.9%となった。2019年3月期は、前期と同じ上期60円、下期100円、年間160円を予想する。配当性向は31.9%。なお、同社は過去21年間連続して、増配または配当維持をしており、安定配当が魅力の1つとなっている。
■Key Points
・主力の家具・家庭用品事業では国内外大手顧客向けOEMが柱、eコマース店「MINT」、新ブランド「Villeroy & Boch」にも期待
・2019年3月期は売上目標500億円、経常利益目標19億円。全セグメントで増収増益を予想
・中計の一環で新規ブランド導入加速、ドイツの“環境配慮”時計ブランド「KERBHOLZ(カーブホルツ)」を販売開始
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
<MH>
三栄コーポレーション<8119>は、70年以上の歴史を持ち高付加価値品を主に取り扱う商社である。生活関連用品全般を扱い、製造・輸出入・卸・小売りまでのサプライチェーンを幅広く手がけ、海外には19ヶ所の拠点、国内直営小売店83店舗を持つ。欧州の差別化されたブランドの日本導入や、良品計画<7453>に代表されるこだわりある商品のOEM調達など、付加価値の高い商品を取り扱う点で個性が明確である。家具・家庭用品事業(売上高の51.6%)、服飾雑貨事業(売上高の30.6%)、家電事業(売上高の12.7%)の3事業が柱である。
1. 事業内容
近年の同社の成長は、家具・家庭用品事業がけん引している。特にOEM事業の比率が高く(約94%)、良品計画に代表される大手顧客の事業の伸びにも支えられて成長してきた。売上高は2017年3月期に27,431百万円まで成長、2018年3月期は欧州顧客の大口のスポット受注の剥落や米国量販店向けの縮小などが影響して、23,053百万円まで売上高を下げたが、今後も大黒柱であることは間違いない。成長著しいブランドとして、自社のeコマースブランド「MINT」がある。自社の販売サイト、楽天やYahoo!で販売しており2018年3月期の売上高が前期比で約1.5倍と好調である。また、家具・家庭用品事業のブランドとして、2ブランド(WMF、Silit)の総輸入代理店契約の解消と同じタイミングで、2017年10月より家庭用品の新規ブランド「Villeroy & Boch(ビレロイ&ボッホ)」の取り扱いを開始した。創業270周年を迎えるドイツの老舗ブランドであり、今期は通年で業績が計上され、今後の市場浸透が期待される。
服飾雑貨事業はブランド事業の存在感が大きい。同社最大のブランドであるビルケンシュトックは、ドイツで240年以上の伝統がある機能美に優れたコンフォートサンダル・シューズブランドであり、コアなファン層に支持されている。直営の63店舗とeコマース等で販売され、長く使う顧客が多い商品だけに自社運営のアフターサービスも充実している。2018年3月期にはラゾーナ川崎店など3店舗をオープン。一時期のブームは落ち着いたものの、集客力のある商業施設に出店できており、業績は堅調である。キプリングはベルギー発のナイロンバッグのブランドであり、キプリングモンキー(猿のマスコット)とともに遊び心のあるカジュアルブランドとして世界的に有名である。同社では直営9店舗(銀座など、アウトレット含む)、全国有名百貨店(約60店舗)での取り扱いを行う。近年、並行輸入品が出回り、業績にマイナスの影響を及ぼしてきたが、今期はその対策の効果が徐々に表れつつある。
2. 業績動向
2018年3月期通期の連結業績は、売上高が前年同期比10.2%減の44,692百万円、営業利益が同37.8%減の1,683百万円、経常利益が同24.8%減の1,832百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同41.7%減の832百万円となり、減収減益となった。売上高の約7割を占めるOEM事業において、国内外で製品ライフサイクルが成熟期を迎えた商品の比率が高まったことが減収の要因となった。加えて、家具家庭用品事業のOEMで北米量販店向けの減少や欧州取引先の前期スポット受注の剥落なども影響した。なお、2018年3月期は減収減益ではあったが、過去20年の業績の中では売上高で3番目、経常利益で4番目であり、長い目で見ると高い水準を維持した決算と言えるだろう。
2019年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比11.9%増の50,000百万円、営業利益が同12.8 %増の1,900百万円、経常利益が同3.7%増の1,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同44.1 %増の1,200百万円と増収増益を予想する。特に伸びが大きいのが、家具家庭用品事業と服飾雑貨事業である。家具家庭用品事業では、海外向けOEMの回復、家具のEC直販MINTの成長、新ブランドVilleroy & Boch(ビレロイ&ボッホ)の通年寄与などが伸びの要因。服飾雑貨事業では、ビルケンシュトックが直営店のほかに催事を強化、キプリングの並行輸入品対策の効果出現などが伸びの要因だ。中期経営計画2年目である2019年3月期は、目標である経常利益20億円レベルの達成にも期待がふくらむ。2018年前半の円高傾向も追い風となりそうだ。
3. 成長戦略
同社は、2018年3月期を初年度、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画を実行中である。定量目標としては、2020年3月期までに、20億円以上の安定的な経常利益を生み出す基盤を作ることを掲げている。初年度である2018年3月期は、収益目標は達成できなかったが、戦略としては概ね順調に進捗できた模様。新しいチャレンジ関連では特にブランド事業において新ブランドの事業開始、権利獲得などを達成した。ガバナンス関連では、業務基盤システム(SAP)の導入準備が計画通り進捗し、2018年7月には単体に、段階的にグループに導入予定であり、意思決定の迅速化や業務の効率化が期待される。
2018年6月には、ドイツの時計ブランド「KERBHOLZ(カーブホルツ)」の取り扱いを開始した。KERBHOLZは2012年に誕生した、木材等天然素材を使ったドイツの時計ブランドであり、現在世界10 か国、350を超える店舗で販売されている。このブランドの特徴は、厳選された天然の素材を使用しており、利益の10%を資源保全プロジェクトへ寄付するなど、環境に配慮したブランドコンセプトを持つことである。また、シンプルでありながらファッション性に優れたフォルムが特徴で、ドイツの権威あるデザイン賞「GERMAN DESIGN AWARD」を2年連続受賞するなど数々の賞を獲得している 。この他に、2018年9月にはドイツの調理器具ブランド「WOLL(ヴォル)」の日本での取り扱いを開始する予定だ。新規ブランド導入が進んでいる。
4. 株主還元策
2018年3月期の1株当たり配当金は、上期60円、下期100円、年間160円、配当性向は45.9%となった。2019年3月期は、前期と同じ上期60円、下期100円、年間160円を予想する。配当性向は31.9%。なお、同社は過去21年間連続して、増配または配当維持をしており、安定配当が魅力の1つとなっている。
■Key Points
・主力の家具・家庭用品事業では国内外大手顧客向けOEMが柱、eコマース店「MINT」、新ブランド「Villeroy & Boch」にも期待
・2019年3月期は売上目標500億円、経常利益目標19億円。全セグメントで増収増益を予想
・中計の一環で新規ブランド導入加速、ドイツの“環境配慮”時計ブランド「KERBHOLZ(カーブホルツ)」を販売開始
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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