トラストテック Research Memo(2):国内外でM&Aを重ね、高成長を継続中
[18/10/09]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 沿革
トラスト・テック<2154>は1997年、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく特定子会社として、三栄商事(株)等により、共生産業株式会社として設立された。2004年に(株)アミューズキャピタルが同社の全株式を取得し、商号を株式会社トラストワークスサンエーへと変更するとともに、事業内容を人材サービス事業(特定労働者派遣事業)などへと拡大した。2005年にはアミューズキャピタル傘下にあった旧(株)トラスト・テックの全株式を取得し、技術労働者派遣事業に進出した。その後、2008年に旧トラスト・テックを吸収合併し、商号を株式会社トラスト・テックと変更し、今日の体制の基礎が完成した。
同社は、2009年の(株)PLM(現連結子会社(株)TTM)、2010年の國際派就業人材資源諮詢有限公司(現連結子会社・香港虎斯科技有限公司)、2015年の(株)フリーダム(現(株)トラスト・ネクストソリューションズ)、(株)カナモトエンジニアリング((株)トラィアルに社名変更後2016年10月に同社に吸収合併)とM&Aを重ね、業容を拡大させてきた。2016年8月には英国人材派遣会社MTrecを子会社化し、本格的な海外展開の足掛かりを獲得し、続いて2017年12月には同じ英国のGAP(なお、直接の買収対象は持株会社の1998 Holdings Limited)を子会社化した。また、事業領域をIT・ソフトへと拡大する一環で(株)フュージョンアイを2017年3月に子会社化した(2018年1月に(株)トラスト・アイパワーズに社名変更)。2018年8月には3社目となる英Quattro Groupの子会社化が発表された。
技術者派遣、製造スタッフ派遣、海外事業の3つの領域で事業を展開
2. 事業の概要
同社の事業ドメインは技術者派遣や開発・設計の請負などを担う技術系領域と、製造請負や製造ラインへの製造スタッフ派遣などを担う製造系領域の2つに分けられている。2017年6月期からは海外での事業が“海外領域”として独立し、事業セグメントとしては3セグメント体制となった。これら3つの報告セグメントに、障がい者雇用を担う特定子会社(株)トラスト・テック・ウィズ(共生産業(株)から2017年3月に社名変更)の収益と不動産賃貸事業から成る「その他」の収益が加わって全社売上高が構成されている。
企業グループは、国内については同社本体と、連結子会社のTTM、トラスト・ネクストソリューションズ、トラスト・アイパワーズで形成している。担当領域の内訳は、同社本体及びトラスト・ネクストソリューションズ、トラスト・アイパワーズが技術系領域、TTMが製造領域となっている。
海外展開は2010年6月に技術者紹介事業などを展開している香港企業を買収してスタートした。以来、中国を中心にアジア地域での拠点づくりと、英国におけるM&Aを同時並行で展開し業容を急速に拡大させてきた。とりわけ英国で2016年8月のMTrec、2017年12月のGAP、2018年8月のQuattro Groupと大型買収が続き、海外領域の売上高が一気に300億円規模にまで拡大している状況にある。
技術系領域では技術者の確保が成長のカギを握る。キャリア採用と新卒採用の加速で対応
3. 技術系領域セグメントの収益構造
技術系領域セグメントは、同社が抱える技術者を活用した顧客企業の研究開発、設計、生産技術などの技術分野に対する人材提供サービスだ。実際の業務内容は技術者の派遣と、開発・設計等の受託の2種類に大別されるが、約4分の3が技術者派遣、4分の1が受託という構成となっている。受託の場合であっても、同社の技術者が顧客の施設において業務を行うことが基本であり、同社の自社施設において受託開発を行うようなケースは極めてまれだ。
技術系領域は、製造系領域と比較して、“技術者”という付加価値があるため単価が高い。これが両セグメント間の利益率の差につながっている。同じ技術系領域の中で派遣と受託とを比較した場合、本来的には受託の収益性が高くなるはずだが、現実には工数見積もりや納期などで当初予算と比べてずれが生じやすいため、両者の間には差がないという状況だ。
技術系領域の成長のカギは、優秀な技術者をいかに多く確保するかにある。とりわけ、現在のようなタイトな労働需給下にあっては、派遣先を見つけること以上に技術者を確保することが先決という状況だ。同社はかねてより、即戦力社員が得られるキャリア採用(いわゆる中途採用)を通じた人材獲得に注力しているが、2019年3月期は中途採用のギアを一段上げる計画だ。さらに、数年前からは新卒技術者の採用も積極化させており、2018年4月の約500名に引き続き、2019年4月は約700名の新卒者採用を計画している(採用数は技術系領域における同社及び2つの連結子会社の採用数の合計)。
採用と並んで重要なポイントは技術者の定着率の向上だ。同社は派遣単価を引き上げて技術者の処遇を改善することに注力している。単価引き上げは、より高単価の派遣先に配属することで実現するケースが多い。そのためには個々の技術者のスキルと市場価値を正確に把握し、それに見合った派遣先とマッチングさせることが重要だ。同社はこうしたタレントマネジメントに注力してきたが、今後も一段と強化する方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<MH>
1. 沿革
トラスト・テック<2154>は1997年、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく特定子会社として、三栄商事(株)等により、共生産業株式会社として設立された。2004年に(株)アミューズキャピタルが同社の全株式を取得し、商号を株式会社トラストワークスサンエーへと変更するとともに、事業内容を人材サービス事業(特定労働者派遣事業)などへと拡大した。2005年にはアミューズキャピタル傘下にあった旧(株)トラスト・テックの全株式を取得し、技術労働者派遣事業に進出した。その後、2008年に旧トラスト・テックを吸収合併し、商号を株式会社トラスト・テックと変更し、今日の体制の基礎が完成した。
同社は、2009年の(株)PLM(現連結子会社(株)TTM)、2010年の國際派就業人材資源諮詢有限公司(現連結子会社・香港虎斯科技有限公司)、2015年の(株)フリーダム(現(株)トラスト・ネクストソリューションズ)、(株)カナモトエンジニアリング((株)トラィアルに社名変更後2016年10月に同社に吸収合併)とM&Aを重ね、業容を拡大させてきた。2016年8月には英国人材派遣会社MTrecを子会社化し、本格的な海外展開の足掛かりを獲得し、続いて2017年12月には同じ英国のGAP(なお、直接の買収対象は持株会社の1998 Holdings Limited)を子会社化した。また、事業領域をIT・ソフトへと拡大する一環で(株)フュージョンアイを2017年3月に子会社化した(2018年1月に(株)トラスト・アイパワーズに社名変更)。2018年8月には3社目となる英Quattro Groupの子会社化が発表された。
技術者派遣、製造スタッフ派遣、海外事業の3つの領域で事業を展開
2. 事業の概要
同社の事業ドメインは技術者派遣や開発・設計の請負などを担う技術系領域と、製造請負や製造ラインへの製造スタッフ派遣などを担う製造系領域の2つに分けられている。2017年6月期からは海外での事業が“海外領域”として独立し、事業セグメントとしては3セグメント体制となった。これら3つの報告セグメントに、障がい者雇用を担う特定子会社(株)トラスト・テック・ウィズ(共生産業(株)から2017年3月に社名変更)の収益と不動産賃貸事業から成る「その他」の収益が加わって全社売上高が構成されている。
企業グループは、国内については同社本体と、連結子会社のTTM、トラスト・ネクストソリューションズ、トラスト・アイパワーズで形成している。担当領域の内訳は、同社本体及びトラスト・ネクストソリューションズ、トラスト・アイパワーズが技術系領域、TTMが製造領域となっている。
海外展開は2010年6月に技術者紹介事業などを展開している香港企業を買収してスタートした。以来、中国を中心にアジア地域での拠点づくりと、英国におけるM&Aを同時並行で展開し業容を急速に拡大させてきた。とりわけ英国で2016年8月のMTrec、2017年12月のGAP、2018年8月のQuattro Groupと大型買収が続き、海外領域の売上高が一気に300億円規模にまで拡大している状況にある。
技術系領域では技術者の確保が成長のカギを握る。キャリア採用と新卒採用の加速で対応
3. 技術系領域セグメントの収益構造
技術系領域セグメントは、同社が抱える技術者を活用した顧客企業の研究開発、設計、生産技術などの技術分野に対する人材提供サービスだ。実際の業務内容は技術者の派遣と、開発・設計等の受託の2種類に大別されるが、約4分の3が技術者派遣、4分の1が受託という構成となっている。受託の場合であっても、同社の技術者が顧客の施設において業務を行うことが基本であり、同社の自社施設において受託開発を行うようなケースは極めてまれだ。
技術系領域は、製造系領域と比較して、“技術者”という付加価値があるため単価が高い。これが両セグメント間の利益率の差につながっている。同じ技術系領域の中で派遣と受託とを比較した場合、本来的には受託の収益性が高くなるはずだが、現実には工数見積もりや納期などで当初予算と比べてずれが生じやすいため、両者の間には差がないという状況だ。
技術系領域の成長のカギは、優秀な技術者をいかに多く確保するかにある。とりわけ、現在のようなタイトな労働需給下にあっては、派遣先を見つけること以上に技術者を確保することが先決という状況だ。同社はかねてより、即戦力社員が得られるキャリア採用(いわゆる中途採用)を通じた人材獲得に注力しているが、2019年3月期は中途採用のギアを一段上げる計画だ。さらに、数年前からは新卒技術者の採用も積極化させており、2018年4月の約500名に引き続き、2019年4月は約700名の新卒者採用を計画している(採用数は技術系領域における同社及び2つの連結子会社の採用数の合計)。
採用と並んで重要なポイントは技術者の定着率の向上だ。同社は派遣単価を引き上げて技術者の処遇を改善することに注力している。単価引き上げは、より高単価の派遣先に配属することで実現するケースが多い。そのためには個々の技術者のスキルと市場価値を正確に把握し、それに見合った派遣先とマッチングさせることが重要だ。同社はこうしたタレントマネジメントに注力してきたが、今後も一段と強化する方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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