SI Research Memo(6):2020年2月期は下期偏重型だが、増収増益基調が続く見通し
[19/05/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2020年2月期業績見通し
2020年2月期の業績は、売上高が前期比13.1%増の4,600百万円、営業利益が同10.3%増の600百万円、経常利益が同8.1%増の603百万円と増収増益が続く見通しで、当期純利益のみ税負担の正常化により同27.1%減の422百万円と減益となる。生産性向上に向けたIT投資意欲は依然旺盛で、システムインテグレータ<3826>を取り巻く市場環境は良好な状況が続いていることから計画の達成は可能と弊社では見ている。なお、上期の業績計画が売上高で前年同期比13.8%減、営業利益で同49.2%減と減収減益見通しとなっているが、これはEC・オムニチャネル事業やERP事業の開発案件のうち、大型案件の検収時期が下期に偏重する計画となっていることが主因となっている。四半期ベースで見ると、第3四半期から前年同期比で増収増益に転じることになる。なお、新製品・サービスの開発費用は前期比で若干減少し、人材採用費や教育費、広告費は前期並みの水準を計画している。
「TOPSIC」は将来的に第4の収益の柱に育つ可能性
2. 事業セグメント別見通し
(1) Object Browser事業
Object Browser事業の売上高は前期比6.6%増の790百万円、営業利益は同2.9%増の349百万円となる見通し。引き続き「OBPM」の導入社数拡大がけん引する。利益率が若干低下するのは、2020年2月期第1四半期に投入予定のWeb版「OBDZ」※のプロモーション費用増を見込んでいるため。また、最新版ではAI機能による画像認識からの自動生成を行う「AISI∀-DR」との連携も可能となっており、設計工程の生産性向上を実現するツールとして、今後の成長が期待される。
※C/S(クライアントサーバー)型システムに対応した製品を販売してきたが、より高速動作が可能となるWeb版の投入によって拡販を進めていく方針。
また、2019年3月には名古屋に営業所を新たに開設(現在は1人常駐)しており、「OBPM」を中心に中部エリアでの新規顧客開拓とサポート体制の強化を図っている。現在、中部地区では「OBPM」で12社の導入実績があるが、IT企業だけでなく製造業向けにも営業提案していくことで、顧客数並びに売上高の拡大を目指していく。
(2) EC・オムニチャネル事業
EC・オムニチャネル事業の売上高は前期比7.5%増の780百万円、営業利益は同2.8%減の133百万円と増収減益を見込んでいる。大規模ECサイトの開発案件を中心に売上高の拡大が続くが、前期は好採算案件が含まれていた反動もあり若干の減益を見込んでいる。なお、2019年3月に消費税率の引き上げと軽減税率制度に対応した新バージョン「SI Web Shopping V12.6」をリリースしている。
(3) ERP事業
ERP事業の売上高は前期比15.9%増の3,000百万円、営業利益は同15.0%増の237百万円と2ケタ増収増益となる見通し。製造業向けを中心に旺盛な需要が続き、特に第4四半期に売上が集中する見通しだ。また、2019年3月より新たに「GRANDIT」のサブスクリプションモデルでの提供も開始した。(株)インターネットイニシアティブのクラウドサービスを基本モデル(顧客要望によりAWSやAzureの選択も可能)としている。従来のオンプレミス型は中堅・大企業向けを顧客ターゲットとして、初期導入費用で1億円以上、開発から稼働まで1年超かかっていたが、サブスクリプションモデルでは初期導入コストで数千万円程度、1年未満の短期間で基幹システムの導入が可能となるため、顧客層の広がりが期待できる。2019年9月にリリース予定のアドオン開発ツール※を利用することで、従来、ベンダーが行っていたカスタマイズ作業をユーザー自身でも行うことも可能となる。
※従来、カスタマイズの多かった出力系機能を中心にユーザー自身がソースコードの変更を行うことなく、簡便に機能追加できるツール。
なお、サブスクリプションモデルでの売上目標は、2020年2月期以降3年間で5億円としている。また、5年後にはERP事業の売上の中で30%程度をサブスクリプションモデルとし、ストックビジネス比率を高めていく方針となっている(2019年2月期のストックビジネス売上構成比は21.4%)。
また、「GRANDIT」ユーザーに対してRPAの導入提案(データ入力作業の省力化等)も開始している。RPAツールとしては、社内で導入効果を実証済みの米WorkFusionの「RPA Express」(2018年12月に国内第1号販売代理店として契約)の提案を行っている。フリーミアムモデル※のため売上への寄与はまだないが、有償プランへの切り替えが進めば、同社にも一定の販売手数料が入ることになる。
※基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については有料で提供する仕組みのビジネスモデル。
(4) その他事業
その他事業の売上高は前期比151.6%増の30百万円、営業損失は119百万円(前期は138百万円の損失)となる見通し。売上高は「TOPSIC」の導入社数が前期末の50社から100社に拡大することが増収要因となる。IT企業を中心に導入社数が増加するほか、2019年4月より学校向けのアカデミックプラン(標準プランの1/10の料金)も新たに導入したことで、学校向けの導入拡大も期待される。2020年度以降、学校でもプログラミング教育が拡充されることから、「TOPSIC」の導入が進む可能性がある。学校向けの導入事例としては立教池袋中学校・高等学校、法政大学、多摩大学等がある。
売上の成長イメージとしてはIT企業の導入が今後さらに進むと見られるため、当面は倍増ペースで拡大していくものと予想される。売上総利益率は高く、プロモーション費用も「PG BATTLE」の開催による広告効果で負担が軽減されるほか、オンライン販売のため営業人員も少なくて済み(現状は1人)、営業利益率についてもObject Browser事業と同程度の水準が2021年2月期以降期待でき、将来的には第4の収益の柱に育つ可能性があると弊社では見ている。
AIサービスの「AISI∀」シリーズに関しては、2020年2月期の売上計画に織り込んでいない。ただ、2018年10月にリリースした異常検知システム「AISI∀-AD」については、人手不足に悩む全国の製造業者から大きな反響があり、同事業を推進・拡大する専門部署として2018年12月にAIソリューション部を新設(4人)して、対応にあたっている。現在は数社と効果検証のためのデータ蓄積を行っている段階だが、顧客ごとに要望する精度なども異なるためチューニング作業が必要で、運用開始までにはしばらく時間がかかる見通しだ。このため今後は、導入支援作業について外部パートナー企業(SIerなど)を活用していくことで、効率的にサービスを拡大していく戦略となっている。AI技術を使った類似サービスは複数出ているものの、市場はまだ普及前段階であり参入余地は大きいと見られる。
また、「AISI∀」シリーズの新サービスとして、企業情報検索サービス「AISI∀-CL(Company Lyst)」を2019年6月にリリースする予定となっている。インターネット上に開設されている約480万社に上る企業のホームページを24時間クローリング(徘徊)し、スクレイピング(情報抽出)した会社概要や製品・サービス等の企業ページの文章をAIの自然言語理解技術で読み取り、業態や業種などを自動でタグ付けするサービスとなる。同サービスの提供により従来型の企業情報提供サービス((株)帝国データバンクや(株)東京商工リサーチ等)よりも、低コストで鮮度の高い情報収集が可能となるため、企業のマーケティング部門や営業部門、資材調達部門などを中心に普及拡大が見込まれる。サービス形態はクラウドサービスでフリーミアムモデルにより展開していく。業種判別の精度が課題ではあるものの、業務効率の向上につながるサービスとして注目される。
その他、画像認識による設計書データのリバース生成サービス「AISI∀-DR」については「OBDZ」との連携による販売増が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2020年2月期業績見通し
2020年2月期の業績は、売上高が前期比13.1%増の4,600百万円、営業利益が同10.3%増の600百万円、経常利益が同8.1%増の603百万円と増収増益が続く見通しで、当期純利益のみ税負担の正常化により同27.1%減の422百万円と減益となる。生産性向上に向けたIT投資意欲は依然旺盛で、システムインテグレータ<3826>を取り巻く市場環境は良好な状況が続いていることから計画の達成は可能と弊社では見ている。なお、上期の業績計画が売上高で前年同期比13.8%減、営業利益で同49.2%減と減収減益見通しとなっているが、これはEC・オムニチャネル事業やERP事業の開発案件のうち、大型案件の検収時期が下期に偏重する計画となっていることが主因となっている。四半期ベースで見ると、第3四半期から前年同期比で増収増益に転じることになる。なお、新製品・サービスの開発費用は前期比で若干減少し、人材採用費や教育費、広告費は前期並みの水準を計画している。
「TOPSIC」は将来的に第4の収益の柱に育つ可能性
2. 事業セグメント別見通し
(1) Object Browser事業
Object Browser事業の売上高は前期比6.6%増の790百万円、営業利益は同2.9%増の349百万円となる見通し。引き続き「OBPM」の導入社数拡大がけん引する。利益率が若干低下するのは、2020年2月期第1四半期に投入予定のWeb版「OBDZ」※のプロモーション費用増を見込んでいるため。また、最新版ではAI機能による画像認識からの自動生成を行う「AISI∀-DR」との連携も可能となっており、設計工程の生産性向上を実現するツールとして、今後の成長が期待される。
※C/S(クライアントサーバー)型システムに対応した製品を販売してきたが、より高速動作が可能となるWeb版の投入によって拡販を進めていく方針。
また、2019年3月には名古屋に営業所を新たに開設(現在は1人常駐)しており、「OBPM」を中心に中部エリアでの新規顧客開拓とサポート体制の強化を図っている。現在、中部地区では「OBPM」で12社の導入実績があるが、IT企業だけでなく製造業向けにも営業提案していくことで、顧客数並びに売上高の拡大を目指していく。
(2) EC・オムニチャネル事業
EC・オムニチャネル事業の売上高は前期比7.5%増の780百万円、営業利益は同2.8%減の133百万円と増収減益を見込んでいる。大規模ECサイトの開発案件を中心に売上高の拡大が続くが、前期は好採算案件が含まれていた反動もあり若干の減益を見込んでいる。なお、2019年3月に消費税率の引き上げと軽減税率制度に対応した新バージョン「SI Web Shopping V12.6」をリリースしている。
(3) ERP事業
ERP事業の売上高は前期比15.9%増の3,000百万円、営業利益は同15.0%増の237百万円と2ケタ増収増益となる見通し。製造業向けを中心に旺盛な需要が続き、特に第4四半期に売上が集中する見通しだ。また、2019年3月より新たに「GRANDIT」のサブスクリプションモデルでの提供も開始した。(株)インターネットイニシアティブのクラウドサービスを基本モデル(顧客要望によりAWSやAzureの選択も可能)としている。従来のオンプレミス型は中堅・大企業向けを顧客ターゲットとして、初期導入費用で1億円以上、開発から稼働まで1年超かかっていたが、サブスクリプションモデルでは初期導入コストで数千万円程度、1年未満の短期間で基幹システムの導入が可能となるため、顧客層の広がりが期待できる。2019年9月にリリース予定のアドオン開発ツール※を利用することで、従来、ベンダーが行っていたカスタマイズ作業をユーザー自身でも行うことも可能となる。
※従来、カスタマイズの多かった出力系機能を中心にユーザー自身がソースコードの変更を行うことなく、簡便に機能追加できるツール。
なお、サブスクリプションモデルでの売上目標は、2020年2月期以降3年間で5億円としている。また、5年後にはERP事業の売上の中で30%程度をサブスクリプションモデルとし、ストックビジネス比率を高めていく方針となっている(2019年2月期のストックビジネス売上構成比は21.4%)。
また、「GRANDIT」ユーザーに対してRPAの導入提案(データ入力作業の省力化等)も開始している。RPAツールとしては、社内で導入効果を実証済みの米WorkFusionの「RPA Express」(2018年12月に国内第1号販売代理店として契約)の提案を行っている。フリーミアムモデル※のため売上への寄与はまだないが、有償プランへの切り替えが進めば、同社にも一定の販売手数料が入ることになる。
※基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については有料で提供する仕組みのビジネスモデル。
(4) その他事業
その他事業の売上高は前期比151.6%増の30百万円、営業損失は119百万円(前期は138百万円の損失)となる見通し。売上高は「TOPSIC」の導入社数が前期末の50社から100社に拡大することが増収要因となる。IT企業を中心に導入社数が増加するほか、2019年4月より学校向けのアカデミックプラン(標準プランの1/10の料金)も新たに導入したことで、学校向けの導入拡大も期待される。2020年度以降、学校でもプログラミング教育が拡充されることから、「TOPSIC」の導入が進む可能性がある。学校向けの導入事例としては立教池袋中学校・高等学校、法政大学、多摩大学等がある。
売上の成長イメージとしてはIT企業の導入が今後さらに進むと見られるため、当面は倍増ペースで拡大していくものと予想される。売上総利益率は高く、プロモーション費用も「PG BATTLE」の開催による広告効果で負担が軽減されるほか、オンライン販売のため営業人員も少なくて済み(現状は1人)、営業利益率についてもObject Browser事業と同程度の水準が2021年2月期以降期待でき、将来的には第4の収益の柱に育つ可能性があると弊社では見ている。
AIサービスの「AISI∀」シリーズに関しては、2020年2月期の売上計画に織り込んでいない。ただ、2018年10月にリリースした異常検知システム「AISI∀-AD」については、人手不足に悩む全国の製造業者から大きな反響があり、同事業を推進・拡大する専門部署として2018年12月にAIソリューション部を新設(4人)して、対応にあたっている。現在は数社と効果検証のためのデータ蓄積を行っている段階だが、顧客ごとに要望する精度なども異なるためチューニング作業が必要で、運用開始までにはしばらく時間がかかる見通しだ。このため今後は、導入支援作業について外部パートナー企業(SIerなど)を活用していくことで、効率的にサービスを拡大していく戦略となっている。AI技術を使った類似サービスは複数出ているものの、市場はまだ普及前段階であり参入余地は大きいと見られる。
また、「AISI∀」シリーズの新サービスとして、企業情報検索サービス「AISI∀-CL(Company Lyst)」を2019年6月にリリースする予定となっている。インターネット上に開設されている約480万社に上る企業のホームページを24時間クローリング(徘徊)し、スクレイピング(情報抽出)した会社概要や製品・サービス等の企業ページの文章をAIの自然言語理解技術で読み取り、業態や業種などを自動でタグ付けするサービスとなる。同サービスの提供により従来型の企業情報提供サービス((株)帝国データバンクや(株)東京商工リサーチ等)よりも、低コストで鮮度の高い情報収集が可能となるため、企業のマーケティング部門や営業部門、資材調達部門などを中心に普及拡大が見込まれる。サービス形態はクラウドサービスでフリーミアムモデルにより展開していく。業種判別の精度が課題ではあるものの、業務効率の向上につながるサービスとして注目される。
その他、画像認識による設計書データのリバース生成サービス「AISI∀-DR」については「OBDZ」との連携による販売増が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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