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サーバーワークス Research Memo(3):ストック収入が売上の9割を占め、高成長かつ安定性も兼ね備えた収益構造

注目トピックス 日本株
■事業概要

3. 事業内容
サーバーワークス<4434>は企業がクラウド化を進めるためのコンサルティング、設計・構築フェーズから運用・保守フェーズまで一貫したサービスを提供している。サービスとしては、クラウドを導入する際の計画策定から基盤のデザイン設計、構築・導入支援を行うクラウドインテグレーションサービス、AWSを中心としたクラウドサービスに独自の付加サービスを加えて顧客に販売するリセールサービス、AWS上に構築したシステムの障害監視や運用・保守等を請け負うMSPサービス及びSREサービスの3つのサービスで構成され、その他として大学合否通知サービス等の売上高を計上している。

直近3年間の売上高構成比を見ると、リセールサービスが70%台と大半を占めており、次いでクラウドインテグレーションとMSPサービスが10%前後の水準となっている。このうちリセールサービスとMSPサービスは既存顧客から定期的に売上計上が見込めるストック型ビジネスとなり、売上構成比は2020年2月期で90.6%の水準となっている。このため、新規導入案件が減少したとしても全体の売上高に与えるマイナスの影響は小さい。パブリッククラウド市場は高成長期にあり、収益は安定的かつ高い成長率で拡大していることになる。

(1) クラウドインテグレーション
オンプレミス環境で運用されてきた企業の基幹・業務系システムをAWSに移行するための導入支援サービスとなる。2020年3月末時点で累計導入社数は780社、プロジェクト数で7,900件となっており、ここ数年は1プロジェクト当たりの平均単価も上昇傾向にある。これは大企業でのクラウド移行が進み始めており、比較的規模の大きいプロジェクトの受注が増えていることが要因となっている。また、年間のプロジェクトのうち既存顧客からの追加案件が多いこともAWSの特徴となっている。これはクラウドを導入する際に段階的に移行するケースがほとんどのためで、特に大企業ではその傾向が強い。例えば、2013年に導入を開始した丸紅<8002>は、追加プロジェクトが今もなお続いている。

なお、1プロジェクト当たりの平均単価は2020年2月期で1,339千円と比較的安価で、開発から導入までの期間も2〜3ヶ月と比較的短期間のため、不採算プロジェクトが発生するリスクは極めて低い。

(2) リセール
日本におけるAWSのリセラーとして再販売(課金代行サービス)を行っている。顧客企業は直接AWSと契約することも可能だが、ドル建て決済が必要であるなど制約がいくつかあり、使い勝手がよくない。同社のようなリセラーが課金代行サービスを行うことで円決済(月末レートで円換算して請求)が可能となるほか、運用面での利便性向上並びに運用コストの削減を可能とするAWS運用自動化サービス「Cloud Automator」を合わせて提供することで、リセール契約に結び付けている。

なお、AWS料金は利用時間に応じた従量課金制となっているが、あらかじめ利用するサーバースペックや利用期間等を予約することで大幅な割引料金が適用されるReserved Instance(リザーブド・インスタンス)※やSavings Plansと呼ぶサービスがあり、利用している企業も多い。現状、12月にReserved Instance等で前払いをする企業が多いため、リセールについては第4四半期に売上が偏重する傾向にある。

※期間は1年と3年の2通りがあり、支払オプションとして「全額前払い」「一部前払い」「前払いなし」の3通りがあり、「一部前払い」「前払いなし」の残額分については利用期間を通じて月額で支払うことになる。


また、同社が開発した「Cloud Automator」は、顧客が任意の時間にデータのバックアップやインスタンスの起動/停止を設定し、オペレーションを自動化する機能のほか、AWSリソースが決められたルールどおりに構成されているかを定期的にレビューする機能など、利便性の向上やコスト削減に寄与する各種機能が利用できるサービスとなっている。丸紅が同社でAWSを導入する決め手となったのも、「Cloud Automator」にある。丸紅ではグループ全体でAWSを導入する際に、2千台のサーバーが必要であった。土日深夜帯は稼働しないため、AWS利用料の削減をどうするかが課題となっていたが、「Cloud Automator」による自動停止機能を使うことで、5年間で270百万円の費用削減が可能であることが明らかとなり導入を決定した。

2020年2月期末におけるAWSのアカウント数(リセール契約数)は、部署ごとに複数のアカウントを持つ企業もあり前期末比41.3%増の1,140件と、右肩上がりに成長が続いている。2020年2月期よりクラウド導入支援プロジェクトを受注する際に、リセールまたは後述するMSPの契約をセットで付けることを条件としたことも高成長の要因になっている。

収益性についてはリセール収入という特性上、他のサービスと比較して相対的に低いが、契約件数の増加とともに収入が積み上がっていくストック型ビジネスとなるため、安定収益源として収益拡大に貢献することになる。なお、解約は発生しているものの、そのほとんどは一時利用目的(キャンペーン用やテスト利用等)が理由となっている。

(3) MSP
顧客がAWS上に展開した仮想サーバーやネットワークの監視・運用・保守等を請け負うサービスで、テラスカイと合弁で設立した(株)スカイ365において24時間365日体制で性能監視、障害監視・復旧、バックアップ等の運用サービスを行っている。料金は利用期間に応じて課金しており、ストック型のビジネスモデルとなっている。

また、ここ1〜2年、大型顧客を中心に標準のMSPサービスでは対応できないニーズが増えており、こうしたケースではプロジェクトの開発に携わったメンバー、もしくはチームが運用保守まで引き継いでいる。このようなビジネスを「SRE(Site Reliability Engineering)」と呼んでおり、こうした案件もMSPに含めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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