エスプール Research Memo(2):ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業の2事業を展開(1)
[21/02/10]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■事業概要
エスプール<2471>の事業セグメントは、ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業の2つに区分されている。2020年11月期の事業セグメント別構成比で見ると、売上高では人材ソリューション事業が72.6%と過半を占めているが、セグメント利益はビジネスソリューション事業が47.9%、人材ソリューション事業が52.0%とほぼ拮抗しており、バランスの取れた収益ポートフォリオとなっている。ビジネスソリューション事業では、障がい者雇用支援サービスが利益の大半を占める収益柱となっている。セグメント別の事業内容は以下のとおり。
1. ビジネスソリューション事業
ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービス、ロジスティクスアウトソーシングサービス、採用支援サービス、セールスサポートサービス、環境経営支援サービスを子会社で展開しているほか、本体でプロフェッショナル人材サービスやその他新規事業を展開している。2020年11月期の売上構成比で見ると、障がい者雇用支援サービスで約57%、ロジスティクスアウトソーシングで約20%、採用支援サービスで約10%と3つの事業で大半を占めている。また、利益構成で見ると障がい者雇用支援サービスが同事業セグメントの約90%を占める主力事業となっている。
(1) 障がい者雇用支援サービス
障がい者雇用支援サービスでは、障がい者専用の企業向け貸し農園の運営と、障がい者の就労支援サービス等を子会社の(株)エスプールプラスで展開している。同社が賃借した土地や建物内で養液栽培施設を構築し、「わーくはぴねす農園」として企業に貸し出し(栽培設備は販売)、同農園に従事する障がい者やその管理者を紹介することで収入を得るビジネスモデルとなる。2010年の事業開始以降、2020年11月までに千葉県、愛知県、埼玉県、東京都で合計23農園を開設しており、契約企業321社に対して1,915人の障がい者雇用を創出している。従来、農園は屋外のみであったが、2020年8月に屋内型農園「Plus東京板橋」(東京都板橋区)を初めて開設した。なお、千葉県以外はすべて各自治体と連携協定を締結し開設している。自治体と連携することによって、候補用地の確保や就業を希望する障がい者の募集活動が効率的に進むといったメリットがある。
同サービスの売上高は、契約時に得られる農園の設備販売収入(養液栽培設備の販売)のほか、農園管理収入や就業する障がい者及び管理者の人材紹介料で構成されている。基本的なビジネスモデルは、賃借した約3千坪の土地にビニルハウス農園を構築、150区画程度に分割して契約企業に対して区画ごとに栽培設備を販売するとともに、農園で就業する障がい者と管理者の人材紹介を行い、また、月々の運営管理料を得るフロー型とストック型を組み合わせたハイブリッド型のビジネスモデルとなる。6区画(障がい者3人、管理者1人)を1パッケージとして販売しており、栽培設備は約150万円/区画(屋内型の場合は約180万円)、障がい者の紹介料は軽度と重度で異なるが、平均で約50万円、管理者も同じく約50万円となっている。このため、6区画販売すれば約1,100万円の売上となる。また、運営管理料は立地によって異なるが、月額で4〜4.5万円/区画(Plus東京板橋は6.5万円/区画)となっている。栽培設備と紹介料に関してはフロー売上となるが、運営管理料はストック売上として毎月得られることになり、安定収益源となる。
仮に期初に150区画すべて完売した場合、当年度の売上高としては、栽培設備販売で225百万円、人材紹介料で50百万円、管理収入で81百万円、合計で356百万円となる。一方で、設備投資額としては約2.5億円(ビニルハウス、車両等。減価償却期間は4〜14年)となる。販売初年度はフロー売上が計上されるため利益率が高くなるが、2年目以降はフロー売上が無くなり、減価償却費や維持費用が残るため利益率が低下することになる。ただ、現実的には障がい者雇用の旺盛な需要を背景に、農園設備販売と人材紹介の拡大が続いているため、営業利益率も40%を超える高水準がここ数年続いている。就業者は主に知的障がい者となるが、定着率が92%超と高いことから顧客企業からの評価も高く、約3割の顧客から追加発注を受けている。
なお、2020年11月期は顧客企業の経営状況等を理由に解約が8社発生した。解約で空いた区画については、栽培設備の状態が良好な場合は定価からディスカウントして新規顧客企業に再販しており、人材紹介については解約先企業で就労していた人員をそのまま新規顧客企業に引き継ぐことから紹介料は徴収していない。利益面への影響については、栽培設備を再販することによる利益貢献度が上回るため、解約後の区画を再販するケースのほうが利益率はやや高くなるものと見られる。
(2) ロジスティクスアウトソーシングサービス
子会社の(株)エスプールロジスティクスで展開するロジスティクスアウトソーシングサービスは、主にEC事業者向けの商品発送代行業務と、卸売業者や物流業者などの物流センターにおいて業務の全部または一部分を請け負う運営代行業務の2つの事業を行っている。2015年11月期までは運営代行業務の売上高が大きかったが、採算性が低いことから、2016年11月期以降はEC事業者向けの商品発送代行業務に軸足をシフトしており、2020年11月期は売上高の約90%が商品発送代行業務となっている。同業務の拠点は、つくばセンター(茨城県つくば市、2013年9月開設、1,000坪)と品川センター(東京都港区、2018年2月開設、2,300坪)の2拠点となっており、比較的小物の商材については品川センターで、アパレルやアクセサリーなど少量多品種の商材についてはつくばセンターで取り扱っている。品川センターでは非接触IDシステムや自動梱包装置などIT/自動化システムを導入していることもあり、つくばセンターよりも生産性が高くなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<ST>
エスプール<2471>の事業セグメントは、ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業の2つに区分されている。2020年11月期の事業セグメント別構成比で見ると、売上高では人材ソリューション事業が72.6%と過半を占めているが、セグメント利益はビジネスソリューション事業が47.9%、人材ソリューション事業が52.0%とほぼ拮抗しており、バランスの取れた収益ポートフォリオとなっている。ビジネスソリューション事業では、障がい者雇用支援サービスが利益の大半を占める収益柱となっている。セグメント別の事業内容は以下のとおり。
1. ビジネスソリューション事業
ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービス、ロジスティクスアウトソーシングサービス、採用支援サービス、セールスサポートサービス、環境経営支援サービスを子会社で展開しているほか、本体でプロフェッショナル人材サービスやその他新規事業を展開している。2020年11月期の売上構成比で見ると、障がい者雇用支援サービスで約57%、ロジスティクスアウトソーシングで約20%、採用支援サービスで約10%と3つの事業で大半を占めている。また、利益構成で見ると障がい者雇用支援サービスが同事業セグメントの約90%を占める主力事業となっている。
(1) 障がい者雇用支援サービス
障がい者雇用支援サービスでは、障がい者専用の企業向け貸し農園の運営と、障がい者の就労支援サービス等を子会社の(株)エスプールプラスで展開している。同社が賃借した土地や建物内で養液栽培施設を構築し、「わーくはぴねす農園」として企業に貸し出し(栽培設備は販売)、同農園に従事する障がい者やその管理者を紹介することで収入を得るビジネスモデルとなる。2010年の事業開始以降、2020年11月までに千葉県、愛知県、埼玉県、東京都で合計23農園を開設しており、契約企業321社に対して1,915人の障がい者雇用を創出している。従来、農園は屋外のみであったが、2020年8月に屋内型農園「Plus東京板橋」(東京都板橋区)を初めて開設した。なお、千葉県以外はすべて各自治体と連携協定を締結し開設している。自治体と連携することによって、候補用地の確保や就業を希望する障がい者の募集活動が効率的に進むといったメリットがある。
同サービスの売上高は、契約時に得られる農園の設備販売収入(養液栽培設備の販売)のほか、農園管理収入や就業する障がい者及び管理者の人材紹介料で構成されている。基本的なビジネスモデルは、賃借した約3千坪の土地にビニルハウス農園を構築、150区画程度に分割して契約企業に対して区画ごとに栽培設備を販売するとともに、農園で就業する障がい者と管理者の人材紹介を行い、また、月々の運営管理料を得るフロー型とストック型を組み合わせたハイブリッド型のビジネスモデルとなる。6区画(障がい者3人、管理者1人)を1パッケージとして販売しており、栽培設備は約150万円/区画(屋内型の場合は約180万円)、障がい者の紹介料は軽度と重度で異なるが、平均で約50万円、管理者も同じく約50万円となっている。このため、6区画販売すれば約1,100万円の売上となる。また、運営管理料は立地によって異なるが、月額で4〜4.5万円/区画(Plus東京板橋は6.5万円/区画)となっている。栽培設備と紹介料に関してはフロー売上となるが、運営管理料はストック売上として毎月得られることになり、安定収益源となる。
仮に期初に150区画すべて完売した場合、当年度の売上高としては、栽培設備販売で225百万円、人材紹介料で50百万円、管理収入で81百万円、合計で356百万円となる。一方で、設備投資額としては約2.5億円(ビニルハウス、車両等。減価償却期間は4〜14年)となる。販売初年度はフロー売上が計上されるため利益率が高くなるが、2年目以降はフロー売上が無くなり、減価償却費や維持費用が残るため利益率が低下することになる。ただ、現実的には障がい者雇用の旺盛な需要を背景に、農園設備販売と人材紹介の拡大が続いているため、営業利益率も40%を超える高水準がここ数年続いている。就業者は主に知的障がい者となるが、定着率が92%超と高いことから顧客企業からの評価も高く、約3割の顧客から追加発注を受けている。
なお、2020年11月期は顧客企業の経営状況等を理由に解約が8社発生した。解約で空いた区画については、栽培設備の状態が良好な場合は定価からディスカウントして新規顧客企業に再販しており、人材紹介については解約先企業で就労していた人員をそのまま新規顧客企業に引き継ぐことから紹介料は徴収していない。利益面への影響については、栽培設備を再販することによる利益貢献度が上回るため、解約後の区画を再販するケースのほうが利益率はやや高くなるものと見られる。
(2) ロジスティクスアウトソーシングサービス
子会社の(株)エスプールロジスティクスで展開するロジスティクスアウトソーシングサービスは、主にEC事業者向けの商品発送代行業務と、卸売業者や物流業者などの物流センターにおいて業務の全部または一部分を請け負う運営代行業務の2つの事業を行っている。2015年11月期までは運営代行業務の売上高が大きかったが、採算性が低いことから、2016年11月期以降はEC事業者向けの商品発送代行業務に軸足をシフトしており、2020年11月期は売上高の約90%が商品発送代行業務となっている。同業務の拠点は、つくばセンター(茨城県つくば市、2013年9月開設、1,000坪)と品川センター(東京都港区、2018年2月開設、2,300坪)の2拠点となっており、比較的小物の商材については品川センターで、アパレルやアクセサリーなど少量多品種の商材についてはつくばセンターで取り扱っている。品川センターでは非接触IDシステムや自動梱包装置などIT/自動化システムを導入していることもあり、つくばセンターよりも生産性が高くなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<ST>