CAICAD Research Memo(5):暗号資産市場の混乱による影響を受け、増収ながら損失幅が拡大
[23/02/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
*15:05JST CAICAD Research Memo(5):暗号資産市場の混乱による影響を受け、増収ながら損失幅が拡大
■決算概要
1. 2022年10月期決算の概要
CAICA DIGITAL<2315>の2022年10月期の連結業績は、売上高が前期比8.3%増の6,442百万円、営業損失が1,389百万円(前期は915百万円の損失)、経常損失が1,395百万円(同929百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が6,244百万円(同799百万円の損失)と、暗号資産市場の混乱による影響を受け、増収ながら損失幅が拡大した。
売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が堅調に推移するとともに、「金融サービス事業」についても、2021年10月期第3四半期から連結化したカイカエクスチェンジホールディングスが期初から寄与したこと(6ヶ月分の上乗せ効果)により増収を確保した。ただ、世界的なインフレ進行や各国の急速な金融引き締めによる影響、さらにはFTX Tradingの経営破綻などが追い打ちをかけ、暗号資産市場が混乱をきたすなかで、「Zaif」を中心に売上高が下振れた。
利益面でも、売上高が大きく下振れたことにより費用の増加分(「Zaif」の次世代システムへの移行や広告投資など)を補えず、営業損失を計上した。また、過去の訴訟に係る受取和解金(550百万円)や償却債権取立益(150百万円)等を特別利益に計上した一方、カイカフィナンシャルホールディングス(及びその子会社)において、暗号資産価格の暴落など外部環境の悪化を踏まえ事業計画の変更を余儀なくされたことから、のれん及び関連する事業資産を回収可能価額まで減額し、減損損失(5,527百万円)を特別損失に計上した。これらの結果、最終損益は損失計上となった。
財政状態についても、「Zaif」における利用者暗号資産や預託金の減少、のれん及び事業資産の減損処理などにより、総資産が前期末比44.9%減の59,032百万円に縮小した一方、最終損失の計上により自己資本が同55.8%減の4,887百万円に縮小したことから、自己資本比率は8.3%(前期末は10.3%)に低下した。ただ、2022年12月23日には第三者割当による新株予約権の発行(想定調達額は約13.2億円)を決議するなど、財務体質の改善に向けて取り組んでいる(詳細は後述)。
各事業別の業績及び活動実績は以下のとおりである。
(1) ITサービス事業
売上高(内部取引を含む)は前期比8.6%増の5,240百万円、セグメント利益は同147.6%増の775百万円と増収増益を実現した。主力の金融機関向けのシステム開発分野が好調に推移し、とりわけ一次請けである保険会社向け案件が拡大した。非金融向けシステム開発分野についても、顧客のIT投資意欲は強く、新規案件の引き合いも常に確保できている状況にある。また、暗号資産を含むFinTech関連のシステム開発分野では、決済系のシステム開発案件を安定的に受注できているほか、暗号資産交換所システムについても新規引き合いを複数案件獲得しており、商談を進めているようだ。なお、利益面で大幅な増益を実現できたのは、収益性の高い案件の獲得や一次請け比率が向上したことなどが要因である。
(2) 金融サービス事業
売上高(内部取引を含む)は前期比22.1%増の1,373百万円、セグメント損失は1,828百万円(前期は704百万円の損失)と増収ながら損失幅が拡大した。売上高は、2021年10月期第3四半期に連結化したカイカエクスチェンジホールディングスが期初から寄与したこと(6ヶ月分の上乗せ効果)で増収を確保したものの、外部環境の悪化による影響を受け、カイカ証券、カイカエクスチェンジ、カイカキャピタルの子会社3社が低調に推移した。1) カイカ証券は、暗号資産を対象とした証券化商品の開発・提供に注力した一方、2021年10月期にカバードワラントの取次先であった(株)SBI証券が新規eワラントの銘柄追加を中止したことによる売上減を補うことができなかった。2) カイカエクスチェンジについては、「Zaif」向けに次世代システムの移行を進めるとともに、自動売買サービスなどストック収益の拡大策に取り組んだものの、暗号資産の大幅な価格下落に伴う評価損の計上(売上高のマイナス)や取引高の減少により売上高が下振れた。3) カイカキャピタルついても、レンディングサービスを活発化させた一方、暗号資産の投融資・運用については第2四半期まで好調であったものの、第3四半期以降は暗号資産の市況悪化の影響を受け失速した。利益面でも、売上高の下振れにより、子会社3社の販管費取り込みや先行費用の影響を補えず損失を計上した。同社は、外部環境の悪化や新たな収益機会への対応等を図るため、サービスメニューの抜本的な見直し(カイカ証券)、ストック型ビジネスの拡充(カイカエクスチェンジ)、Web3事業への参入(カイカフィナンシャルホールディングス)といった「金融サービス事業」の構造的な変革に取り組む方針を打ち出している。
2. 2022年10月期の総括
以上から、2022年10月期を総括すると、上期までの進捗は順調に黒字化を達成したものの、下期に大きく落ち込んだのは、ひとえに暗号資産市場の混乱や低迷による影響に尽きると言わざるを得ない。ただ、外部要因によるものとはいえ、「Zaif」をグループ化した矢先であっただけに、改めてリスクアセットとしての暗号資産の脆弱さが露呈するとともに、相場に影響されにくい収益構造への転換が急務であることを認識させられた。一方、今後に目を向ければ、成長分野であるWeb3事業への参入を表明し、ユーティリティ性の高いGameFi領域において、他社との連携を含めた事業基盤の構築を迅速に進めた点は明るい材料と言える。同社が強みとするブロックチェーン技術をはじめ、「Zaif」との連携は他社との差別化要因となるばかりでなく、新たな価値(経済圏)を創り出すうえでもこれからの戦略の軸となるものであり、中長期的な視点から「Zaif」の存在意義を評価したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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■決算概要
1. 2022年10月期決算の概要
CAICA DIGITAL<2315>の2022年10月期の連結業績は、売上高が前期比8.3%増の6,442百万円、営業損失が1,389百万円(前期は915百万円の損失)、経常損失が1,395百万円(同929百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が6,244百万円(同799百万円の損失)と、暗号資産市場の混乱による影響を受け、増収ながら損失幅が拡大した。
売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が堅調に推移するとともに、「金融サービス事業」についても、2021年10月期第3四半期から連結化したカイカエクスチェンジホールディングスが期初から寄与したこと(6ヶ月分の上乗せ効果)により増収を確保した。ただ、世界的なインフレ進行や各国の急速な金融引き締めによる影響、さらにはFTX Tradingの経営破綻などが追い打ちをかけ、暗号資産市場が混乱をきたすなかで、「Zaif」を中心に売上高が下振れた。
利益面でも、売上高が大きく下振れたことにより費用の増加分(「Zaif」の次世代システムへの移行や広告投資など)を補えず、営業損失を計上した。また、過去の訴訟に係る受取和解金(550百万円)や償却債権取立益(150百万円)等を特別利益に計上した一方、カイカフィナンシャルホールディングス(及びその子会社)において、暗号資産価格の暴落など外部環境の悪化を踏まえ事業計画の変更を余儀なくされたことから、のれん及び関連する事業資産を回収可能価額まで減額し、減損損失(5,527百万円)を特別損失に計上した。これらの結果、最終損益は損失計上となった。
財政状態についても、「Zaif」における利用者暗号資産や預託金の減少、のれん及び事業資産の減損処理などにより、総資産が前期末比44.9%減の59,032百万円に縮小した一方、最終損失の計上により自己資本が同55.8%減の4,887百万円に縮小したことから、自己資本比率は8.3%(前期末は10.3%)に低下した。ただ、2022年12月23日には第三者割当による新株予約権の発行(想定調達額は約13.2億円)を決議するなど、財務体質の改善に向けて取り組んでいる(詳細は後述)。
各事業別の業績及び活動実績は以下のとおりである。
(1) ITサービス事業
売上高(内部取引を含む)は前期比8.6%増の5,240百万円、セグメント利益は同147.6%増の775百万円と増収増益を実現した。主力の金融機関向けのシステム開発分野が好調に推移し、とりわけ一次請けである保険会社向け案件が拡大した。非金融向けシステム開発分野についても、顧客のIT投資意欲は強く、新規案件の引き合いも常に確保できている状況にある。また、暗号資産を含むFinTech関連のシステム開発分野では、決済系のシステム開発案件を安定的に受注できているほか、暗号資産交換所システムについても新規引き合いを複数案件獲得しており、商談を進めているようだ。なお、利益面で大幅な増益を実現できたのは、収益性の高い案件の獲得や一次請け比率が向上したことなどが要因である。
(2) 金融サービス事業
売上高(内部取引を含む)は前期比22.1%増の1,373百万円、セグメント損失は1,828百万円(前期は704百万円の損失)と増収ながら損失幅が拡大した。売上高は、2021年10月期第3四半期に連結化したカイカエクスチェンジホールディングスが期初から寄与したこと(6ヶ月分の上乗せ効果)で増収を確保したものの、外部環境の悪化による影響を受け、カイカ証券、カイカエクスチェンジ、カイカキャピタルの子会社3社が低調に推移した。1) カイカ証券は、暗号資産を対象とした証券化商品の開発・提供に注力した一方、2021年10月期にカバードワラントの取次先であった(株)SBI証券が新規eワラントの銘柄追加を中止したことによる売上減を補うことができなかった。2) カイカエクスチェンジについては、「Zaif」向けに次世代システムの移行を進めるとともに、自動売買サービスなどストック収益の拡大策に取り組んだものの、暗号資産の大幅な価格下落に伴う評価損の計上(売上高のマイナス)や取引高の減少により売上高が下振れた。3) カイカキャピタルついても、レンディングサービスを活発化させた一方、暗号資産の投融資・運用については第2四半期まで好調であったものの、第3四半期以降は暗号資産の市況悪化の影響を受け失速した。利益面でも、売上高の下振れにより、子会社3社の販管費取り込みや先行費用の影響を補えず損失を計上した。同社は、外部環境の悪化や新たな収益機会への対応等を図るため、サービスメニューの抜本的な見直し(カイカ証券)、ストック型ビジネスの拡充(カイカエクスチェンジ)、Web3事業への参入(カイカフィナンシャルホールディングス)といった「金融サービス事業」の構造的な変革に取り組む方針を打ち出している。
2. 2022年10月期の総括
以上から、2022年10月期を総括すると、上期までの進捗は順調に黒字化を達成したものの、下期に大きく落ち込んだのは、ひとえに暗号資産市場の混乱や低迷による影響に尽きると言わざるを得ない。ただ、外部要因によるものとはいえ、「Zaif」をグループ化した矢先であっただけに、改めてリスクアセットとしての暗号資産の脆弱さが露呈するとともに、相場に影響されにくい収益構造への転換が急務であることを認識させられた。一方、今後に目を向ければ、成長分野であるWeb3事業への参入を表明し、ユーティリティ性の高いGameFi領域において、他社との連携を含めた事業基盤の構築を迅速に進めた点は明るい材料と言える。同社が強みとするブロックチェーン技術をはじめ、「Zaif」との連携は他社との差別化要因となるばかりでなく、新たな価値(経済圏)を創り出すうえでもこれからの戦略の軸となるものであり、中長期的な視点から「Zaif」の存在意義を評価したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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