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G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か_その1(1)【中国問題グローバル研究所】

GRICI
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。

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G7首脳会談では「一帯一路」対抗策として巨大インフラ支援新構想を決定したが、中国のアフリカ諸国などとの連携の歴史は古く、容易には食い込めない。そもそも日本は第三国での「一帯一路」に協力を表明している。

◆バイデン大統領が唱える「より良い世界の再建」(B3W)による新構想
6月11日から13日までイギリスのコーンウォールで開催されたG7首脳会談において、バイデン大統領は自らが唱える「より良い世界の再建」(B3W=Build Back Better World)に基づいてG7参加国を説得し、何とか開発途上国へのインフラ支援新構想の合意に漕ぎ着けた。コミュニケ(共同声明)にも妥協的記述で盛り込まれた。

コミュニケでは、これが中国の巨大経済圏「一帯一路」構想に対抗するものであるとはもちろん書いてないが、随所にそれを示唆する言葉が鏤(ちりば)められており、誰の目にも対抗策であることは明らかだろう。

要は「一帯一路によって中国は発展途上国やヨーロッパ諸国を含め120ヵ国以上の国を掌握しているので、国際社会において絶大な力を持ち、国連などの国際機関を牛耳る結果を招いており、何としてもこれを打ち砕かねばならない」というのがバイデンの思惑であり、それも「中国は不透明な投資によって発展途上国を債務漬けにしてしまい、支援対象国の経済発展を阻害している」というのがバイデンの主張でもある。

もしバイデンが望むように民主主義的価値観を共有した国々が中国の覇権を抑えることができるのなら、大変結構なことだ。

しかしG7メンバー国の中には、残念ながら、日本のようにG7首脳会談ではあかたも反中のポーズを取り、実際は習近平の顔色をうかがいながらでないと動かない国もあるので、バイデンがどんなに言葉で言ったみたところで、実行には相当の困難を伴うのではないかと懸念する。

特にコミュニケでは貧困国が多い「アフリカ」に対するニューディール政策と位置付けている文言があるが、中国とアフリカの結びつきは尋常ではない。

◆中国の反応
まずは中国の反応を見てみよう。

6月12日付けの中国共産党系メディア「環球網」は<米高官がG7で世界的なインフラ投資新構想により中国に対抗しようとしている言っている。ネットでは(G7を)“失敗者連盟”と称している>(※2)という見出しで報道し(17:35)、同日20:58には<案の定、G7が「中国に戦略的に競争するため」に世界的なインフラ計画を立ち上げた。ネットでは「笑わせるぜ、中国はずっと先を行ってるよ」と言っている>(※3)と、立て続けに報道した。

また知識層に人気のある「観察者網」は6月13日に<アメリカは世界的インフラ計画を宣言し、バイデンは現場で“人を引きずり込んだ”>(※4)という見出しでバイデンの心理と現状を分析している。

それ以外にも様々あるが、政府が言えないことは「網友」と称してネットユーザーが言ったことにして発表しているので、案外に「網友」の声も拾ってみないと本音はわからない。これらから総合的に見えてくるのは、以下のような中国側の主張である。

バイデンは「聯欧抗中(欧州と連盟を組み中国に対抗する)」という戦略で動いているが、欧州の意見は一致していない。
イタリアはそもそも一帯一路加盟国であり、日本は安倍が「第三国における一帯一路協力方式」を唱えて、半分は一帯一路に足を突っ込んでいる。ドイツはフォルクスワーゲンなど1980年代から中国の自動車産業に深く入り込んでおり、フランスも原子力発電などさまざまな分野で中国と連携しており、中国を敵に回す気はないと明言している。
バイデンの目的は一つしかない。アメリカが、大国として台頭してきた中国に追い越されそうなので、何としてもアメリカの覇権を維持したいと必死になっているだけだ。
そのために民主主義を口実にして小さなグループを作っているが、アメリカの覇権維持のために自国の利益を犠牲にしようという国は多くない。
国際秩序は国連が決めるもので、各国は国連憲章に従わなければならない。しかしアメリカは国連憲章ではなく、G7という自国に有利な小さなグループの利害で国際社会を動かそうとしている。おまけにアメリカ一国では中国に勝てないので、他の国を引きずり込んでいるのである。
今年4月のイギリスの「フィナンシャル・タイムズ」は「もう遅い。一帯一路には120ヵ国以上が加盟しているが、EU27ヵ国の内の半分以上が既にその加盟国の中に入っている」と書いている。今さら「一帯一路」の代替案など実現不可能だ。
そもそも資金はどうするのか?バイデンは自国のインフラ投資に関して2.3兆ドルを提案したが、資金捻出に当たって金持ちや大企業の税金を増やすと言ったために共和党が猛反対しているじゃないか。バイデンはどんどん譲歩して1.7兆ドルにまで下げたが、それでも共和党が譲らず9280億ドルにまで下げろと迫っている。自国でのインフラ投資が崩壊しそうなのに、他国に支援か?(筆者注:これは「網友」の意見だが、この予算とB3Wの予算は別枠と位置付けるべきだろう。)
アメリカは中国の「一帯一路」の「透明度がない」とか「強迫的なやり方だ」とか「相手国を債務漬けにして潰している」などと言っているが、その証拠を見せたことはない。
「一帯一路」対抗策を考えなければならないということは、アメリカは「一帯一路」が成功していると思っているからだろう。

(本論はYahooニュース個人からの転載である)

G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か_その1(2)【中国問題グローバル研究所】」へ続く

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

※1:https://grici.or.jp/
※2:https://world.huanqiu.com/article/43VaempjWT4
※3:https://world.huanqiu.com/article/43VhvBZdJc7
※4:https://www.guancha.cn/internation/2021_06_13_594312.shtml



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