G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か_その1(2)【中国問題グローバル研究所】
[21/06/21]
提供元:株式会社フィスコ
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GRICI
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。
◇以下、遠藤 誉所長の考察「G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か_その1(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
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◆中国建国以来のアフリカとの結びつき
中国は建国以来、アフリカとの連携を重要視してきたのは確かだ。
特に1955年に開催されたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)では、それまで欧米や日本などの帝国主義国家から侵略を受けたり植民地化されたりしていた国々が集まって結束を固めたが、その立役者の一人は中国の当時の周恩来総理だった。以来、中国には「アジア・アフリカ処」や「アジア・アフリカ研究所」がどのような組織の中にもあり、毛沢東など、1958年から1962年にかけたあの大飢饉の間でもアフリカ諸国に食糧や資金を送り続け、支援対象国はアルバニアなど東ヨーロッパの国にも及んだ。
それが1971年10月の中国の国連加盟(アルバニア決議案)に反映されていくのだから、「長期的視野に立った戦略」も尋常ではない。
拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させたトウ小平への復讐』で詳述したが、自分の存在と毛沢東を重ねている習近平は、毛沢東のこの長期的戦略とアフリカ重視も踏襲している。
したがってアフリカとの連携を強化し、2018年9月4日のコラム<中国アフリカ協力フォーラムで世界制覇を狙う??後押ししたのはトランプの一言>(※2)でも触れたように、アメリカが人種を肌の色で区別し、「黒人」として侮蔑するのとは真逆の方向に動き続けてきた。人民大会堂に一堂に集まったアフリカ53カ国の首脳に向けて「私はあなたたちを最も尊敬しています。あなたたちこそは私の最大の親友です。私たちは互いに最も信頼し合う仲間です」と呼び掛けて、人民大会堂が揺れんばかりの歓声と拍手を巻き起こさせている。
だから一般の中国人もアフリカ人を喜んで中国に受け入れることに慣れているし、ハイレベルの人材がアフリカに長期滞在して仕事をしたり、アフリカで養子縁組を含めた家庭を持ったりすることなども違和感なく行われているのが、中国庶民の肌感覚だ。
◆アメリカはアフリカに溶け込めるか?
それに比べてアメリカ社会における黒人蔑視の歴史は長く、現在もひどい。それは奴隷制度から始まり、アフリカとの付き合いは「黒人」を人間とはみなさない感覚から始まっていることに原因の一つがあるだろう。そうでなくとも白人のエリート意識は強いのに、トランプは選挙のためにそれを助長した。トランプ政権時代に巻き起こったBLM(ブラック・ライブズ・マター、Black Lives Matter)運動に象徴されるように、白人警察による無抵抗な黒人への暴力や殺害行為は後を絶たない。
そのたびに50数カ国に及ぶアフリカ諸国が一丸となってアメリカに抗議文書を出すということをくり返している。特にトランプ前大統領がアフリカ諸国などを「糞ッたれ国家」と罵倒したときなどの抗議運動は顕著だ。
またインフラ投資新構想はアフリカ大陸などにある貧しい国々を対象としているので、アメリカなどの先進国がアフリカに投資した場合、果たして先進国の高価な製品を極アフリカの貧しい国々が購入するかという問題もある。当然、廉価な中国製品を購入するだろう。
したがって、B3Wに基づいたG7によるインフラ投資新構想の実現性は前途多難だろう。
何と言ってもG7メンバー国のイタリアは「一帯一路」に加盟しているし、日本は安倍前首相が、自分を国賓として中国に招いて欲しいために、交換条件として「一帯一路」への協力を約束してしまった。日本の「第三国協力型」は、イタリアを加盟に持ち込むときにも道具として使われたほどだ。安倍氏の国賓招聘のお返しに習近平を国賓として日本に招く約束をしているために、コロナが武漢で起きた時に緊急に水際対策を取ることを躊躇したため、日本はコロナの阻止に出遅れてしまったという事実もある。このような実害を日本国民にもたらしているのが日本政府の対中姿勢だ。
だからG7で何を宣言しようと、中国にはさほど痛くはない。
◆決定的な痛手は中欧投資協定の頓挫
それよりも、中国にとって痛手なのは中欧投資協定の頓挫だ。
ウイグル人権問題でEUが中国に制裁を加えたのに対して、中国は報復制裁を行った。その対象人物がEU組織の重要人物であったために、EUは昨年末にようやく合意した中欧投資協定を一時停止すると宣言している。これは中国にとって相当な痛手をもたらしており、中国が報復制裁のレベルを下げない限り硬直状態が続くだろう。
そこに、バイデンはこのたび「G7+EU+NATO」という枠組みで中国への包囲網を増やしていっているので、この締め付けはジワジワとではあるが中国を心理的に追い込んでいくことが期待される。中露首脳会談でプーチンは有利にはなったが、習近平との仲に変化をもたらすことはないだろうと判断される。
慎重に検証をしなければならない要素が多いが、とりあえず「その2」では、アフリカにおける債務の現状を、世界銀行およびジュビリー債務キャンペーン(Jubilee 2000運動の起点となったイギリスの国別組織の後身で、最貧国の債務帳消しを求めて1990年から世界的に広がった社会運動)のデータに基づいて考察することとする。
(本論はYahooニュース個人からの転載である)
写真:代表撮影/ロイター/アフロ
※1:https://grici.or.jp/
※2:https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20180904-00095663/
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◇以下、遠藤 誉所長の考察「G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か_その1(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
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◆中国建国以来のアフリカとの結びつき
中国は建国以来、アフリカとの連携を重要視してきたのは確かだ。
特に1955年に開催されたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)では、それまで欧米や日本などの帝国主義国家から侵略を受けたり植民地化されたりしていた国々が集まって結束を固めたが、その立役者の一人は中国の当時の周恩来総理だった。以来、中国には「アジア・アフリカ処」や「アジア・アフリカ研究所」がどのような組織の中にもあり、毛沢東など、1958年から1962年にかけたあの大飢饉の間でもアフリカ諸国に食糧や資金を送り続け、支援対象国はアルバニアなど東ヨーロッパの国にも及んだ。
それが1971年10月の中国の国連加盟(アルバニア決議案)に反映されていくのだから、「長期的視野に立った戦略」も尋常ではない。
拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させたトウ小平への復讐』で詳述したが、自分の存在と毛沢東を重ねている習近平は、毛沢東のこの長期的戦略とアフリカ重視も踏襲している。
したがってアフリカとの連携を強化し、2018年9月4日のコラム<中国アフリカ協力フォーラムで世界制覇を狙う??後押ししたのはトランプの一言>(※2)でも触れたように、アメリカが人種を肌の色で区別し、「黒人」として侮蔑するのとは真逆の方向に動き続けてきた。人民大会堂に一堂に集まったアフリカ53カ国の首脳に向けて「私はあなたたちを最も尊敬しています。あなたたちこそは私の最大の親友です。私たちは互いに最も信頼し合う仲間です」と呼び掛けて、人民大会堂が揺れんばかりの歓声と拍手を巻き起こさせている。
だから一般の中国人もアフリカ人を喜んで中国に受け入れることに慣れているし、ハイレベルの人材がアフリカに長期滞在して仕事をしたり、アフリカで養子縁組を含めた家庭を持ったりすることなども違和感なく行われているのが、中国庶民の肌感覚だ。
◆アメリカはアフリカに溶け込めるか?
それに比べてアメリカ社会における黒人蔑視の歴史は長く、現在もひどい。それは奴隷制度から始まり、アフリカとの付き合いは「黒人」を人間とはみなさない感覚から始まっていることに原因の一つがあるだろう。そうでなくとも白人のエリート意識は強いのに、トランプは選挙のためにそれを助長した。トランプ政権時代に巻き起こったBLM(ブラック・ライブズ・マター、Black Lives Matter)運動に象徴されるように、白人警察による無抵抗な黒人への暴力や殺害行為は後を絶たない。
そのたびに50数カ国に及ぶアフリカ諸国が一丸となってアメリカに抗議文書を出すということをくり返している。特にトランプ前大統領がアフリカ諸国などを「糞ッたれ国家」と罵倒したときなどの抗議運動は顕著だ。
またインフラ投資新構想はアフリカ大陸などにある貧しい国々を対象としているので、アメリカなどの先進国がアフリカに投資した場合、果たして先進国の高価な製品を極アフリカの貧しい国々が購入するかという問題もある。当然、廉価な中国製品を購入するだろう。
したがって、B3Wに基づいたG7によるインフラ投資新構想の実現性は前途多難だろう。
何と言ってもG7メンバー国のイタリアは「一帯一路」に加盟しているし、日本は安倍前首相が、自分を国賓として中国に招いて欲しいために、交換条件として「一帯一路」への協力を約束してしまった。日本の「第三国協力型」は、イタリアを加盟に持ち込むときにも道具として使われたほどだ。安倍氏の国賓招聘のお返しに習近平を国賓として日本に招く約束をしているために、コロナが武漢で起きた時に緊急に水際対策を取ることを躊躇したため、日本はコロナの阻止に出遅れてしまったという事実もある。このような実害を日本国民にもたらしているのが日本政府の対中姿勢だ。
だからG7で何を宣言しようと、中国にはさほど痛くはない。
◆決定的な痛手は中欧投資協定の頓挫
それよりも、中国にとって痛手なのは中欧投資協定の頓挫だ。
ウイグル人権問題でEUが中国に制裁を加えたのに対して、中国は報復制裁を行った。その対象人物がEU組織の重要人物であったために、EUは昨年末にようやく合意した中欧投資協定を一時停止すると宣言している。これは中国にとって相当な痛手をもたらしており、中国が報復制裁のレベルを下げない限り硬直状態が続くだろう。
そこに、バイデンはこのたび「G7+EU+NATO」という枠組みで中国への包囲網を増やしていっているので、この締め付けはジワジワとではあるが中国を心理的に追い込んでいくことが期待される。中露首脳会談でプーチンは有利にはなったが、習近平との仲に変化をもたらすことはないだろうと判断される。
慎重に検証をしなければならない要素が多いが、とりあえず「その2」では、アフリカにおける債務の現状を、世界銀行およびジュビリー債務キャンペーン(Jubilee 2000運動の起点となったイギリスの国別組織の後身で、最貧国の債務帳消しを求めて1990年から世界的に広がった社会運動)のデータに基づいて考察することとする。
(本論はYahooニュース個人からの転載である)
写真:代表撮影/ロイター/アフロ
※1:https://grici.or.jp/
※2:https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20180904-00095663/
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