垂直磁気記録ハードディスク装置出荷にかかる時間を桁違いに短縮
[08/07/22]
提供元:PRTIMES
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独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
茨城大学工学部メディア通信工学科
出荷時の垂直磁気記録ハードディスクへのサーボ記号(磁気ヘッドの位置情報)の書き込み時間は現在約1時間かかるところ、これをわずか数秒に短縮し、高精細にサーボ記号を書き込むことができるパターンドマスター磁気転写法を開発
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、茨城県日立市にある茨城大学准教授、小峰啓史氏は、磁気ヘッドの位置情報であるサーボ信号を出荷時の垂直磁気記録ハードディスク(HD) へ書き込む時間を大幅に短縮する「パターンドマスター磁気転写法」を開発しました。
従来、サーボ信号の書き込みは一つ一つの信号を磁気ヘッドで丁寧に書いていたため、サーボ信号を書くだけでディスク1枚あたり約1時間もかかっていましたが、開発した技術ではサーボ信号を一括して数秒で書き込むことができ、所要時間(秒数)を2桁以上縮めることができる画期的な技術であり、HDの出荷にかかる時間を大幅に短縮、コストを削減することができます。
現在、複数のHD装置メーカが本技術の導入を検討しており、本技術がHD製造技術のグローバルスタンダードになる可能性があります。
今後、連携企業である富士フイルム(株)とともに本技術の事業化を本格的に進めています。
1.研究成果概要
本研究で開発した2.5インチ垂直磁気記録HD用マスター媒体は、次世代媒体の記録密度におけるサーボ信号(AGC、アドレス信号、バースト信号)の転写が可能です。従来のサーボトラックライタでは垂直磁気記録HDの磁性膜の能力を十分に使いきっていないという計算結果も報告されています。本技術は従来技術と同程度以上の性能を確認しているだけでなく、さらにその上の記録密度(1 Tbit/inch2)を射程に入れています。
2.競合技術への強み
書き込みに要する時間(秒数)は従来技術の2桁以上縮めることができ、しかも記録密度に依存しません。従来技術では記録密度が増加するたびに設備投資が必要でしたが、本技術では初期投資は必要ですが記録密度が増加してもマスター媒体の作製だけですみ、コスト的にも大幅に有利です。
■サーボ信号書き込み技術に関する従来技術と本技術との比較
・サーボトラックライタ(従来技術)
サーボ信号書き込み時間:△ 1時間(約300 Gbit/inch2で) 記録密度が増加するにつれて、時間増加(磁気ヘッドで記録)
サーボ信号品質:△ 300 Gbit/inch2 × 1 Tbit/inch2
機器導入によるコスト:△ 記録密度が増加するたびに設備投資が必要
・磁気転写法(本技術)
サーボ信号書き込み時間:◎ 数秒 記録密度に依存しない
サーボ信号品質:○ 300Gbit/inch2 ○ 1 Tbit/inch2
機器導入によるコスト:○ 初期投資は必要だが、記録密度が増加しても、マスター媒体作製のみ
3.今後の展望
本手法による垂直磁気転写技術は実用化の一歩手前にあります。今後、磁気転写のさらなる高記録密度化への可能性を探索します。
本技術は原理的にはシンプルで、時間の流れをパターンで制御しようという点がポイントです。現状の制御パラメータには、磁性膜の形状と、磁場をどれくらい印加するかという二つしかなく、細かい調整をするにはさらなるパラメータの設定が鍵となります。新たに最適な制御変数を設定できれば、今まで書けなかったパターンが書けるようになると期待され、媒体の密度が飛躍的に向上する可能性があります。
ただ一方で、HDの特性は装置メーカ各社でかなり異なり、最適値が予想と違う媒体もあります。こうした場合、磁気転写に効くパラメータも変わってきます。結果的に各社の製品すべてを網羅する転写方法を考えなければならない可能性もあり、苦労は尽きませんが、粘り強く今後も研究を続けて実用化を目指したいと考えています。
今後も、超微細加工技術と転写技術を有する富士フイルム(株)との共同研究により、実用化推進と共にさらに短ビットをより高品位に転写する技術を開発していきます。
以上
茨城大学工学部メディア通信工学科
出荷時の垂直磁気記録ハードディスクへのサーボ記号(磁気ヘッドの位置情報)の書き込み時間は現在約1時間かかるところ、これをわずか数秒に短縮し、高精細にサーボ記号を書き込むことができるパターンドマスター磁気転写法を開発
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、茨城県日立市にある茨城大学准教授、小峰啓史氏は、磁気ヘッドの位置情報であるサーボ信号を出荷時の垂直磁気記録ハードディスク(HD) へ書き込む時間を大幅に短縮する「パターンドマスター磁気転写法」を開発しました。
従来、サーボ信号の書き込みは一つ一つの信号を磁気ヘッドで丁寧に書いていたため、サーボ信号を書くだけでディスク1枚あたり約1時間もかかっていましたが、開発した技術ではサーボ信号を一括して数秒で書き込むことができ、所要時間(秒数)を2桁以上縮めることができる画期的な技術であり、HDの出荷にかかる時間を大幅に短縮、コストを削減することができます。
現在、複数のHD装置メーカが本技術の導入を検討しており、本技術がHD製造技術のグローバルスタンダードになる可能性があります。
今後、連携企業である富士フイルム(株)とともに本技術の事業化を本格的に進めています。
1.研究成果概要
本研究で開発した2.5インチ垂直磁気記録HD用マスター媒体は、次世代媒体の記録密度におけるサーボ信号(AGC、アドレス信号、バースト信号)の転写が可能です。従来のサーボトラックライタでは垂直磁気記録HDの磁性膜の能力を十分に使いきっていないという計算結果も報告されています。本技術は従来技術と同程度以上の性能を確認しているだけでなく、さらにその上の記録密度(1 Tbit/inch2)を射程に入れています。
2.競合技術への強み
書き込みに要する時間(秒数)は従来技術の2桁以上縮めることができ、しかも記録密度に依存しません。従来技術では記録密度が増加するたびに設備投資が必要でしたが、本技術では初期投資は必要ですが記録密度が増加してもマスター媒体の作製だけですみ、コスト的にも大幅に有利です。
■サーボ信号書き込み技術に関する従来技術と本技術との比較
・サーボトラックライタ(従来技術)
サーボ信号書き込み時間:△ 1時間(約300 Gbit/inch2で) 記録密度が増加するにつれて、時間増加(磁気ヘッドで記録)
サーボ信号品質:△ 300 Gbit/inch2 × 1 Tbit/inch2
機器導入によるコスト:△ 記録密度が増加するたびに設備投資が必要
・磁気転写法(本技術)
サーボ信号書き込み時間:◎ 数秒 記録密度に依存しない
サーボ信号品質:○ 300Gbit/inch2 ○ 1 Tbit/inch2
機器導入によるコスト:○ 初期投資は必要だが、記録密度が増加しても、マスター媒体作製のみ
3.今後の展望
本手法による垂直磁気転写技術は実用化の一歩手前にあります。今後、磁気転写のさらなる高記録密度化への可能性を探索します。
本技術は原理的にはシンプルで、時間の流れをパターンで制御しようという点がポイントです。現状の制御パラメータには、磁性膜の形状と、磁場をどれくらい印加するかという二つしかなく、細かい調整をするにはさらなるパラメータの設定が鍵となります。新たに最適な制御変数を設定できれば、今まで書けなかったパターンが書けるようになると期待され、媒体の密度が飛躍的に向上する可能性があります。
ただ一方で、HDの特性は装置メーカ各社でかなり異なり、最適値が予想と違う媒体もあります。こうした場合、磁気転写に効くパラメータも変わってきます。結果的に各社の製品すべてを網羅する転写方法を考えなければならない可能性もあり、苦労は尽きませんが、粘り強く今後も研究を続けて実用化を目指したいと考えています。
今後も、超微細加工技術と転写技術を有する富士フイルム(株)との共同研究により、実用化推進と共にさらに短ビットをより高品位に転写する技術を開発していきます。
以上