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低コスト製造法による高効率純緑色発光ダイオードの開発

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
佐賀大学シンクロトロン光応用研究センター


Ga(ガリウム)、In(インジウム)などの稀少金属(レアメタル)を含まない新材料テルル化亜鉛(ZnTe)をベースとした低コストで製造できる緑色LEDを開発
既存の緑色LEDを超える高効率化に期待が集まる


【新規発表事項】 
 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、佐賀県佐賀市にある佐賀大学の助教、田中徹氏は、緑色領域の発光効率が著しく低下するこれまでの発光ダイオード(LED)の課題を克服する技術開発に成功しました。これは、テルル化亜鉛の特性解明と要素技術の高度化を図ることにより、低価格製造法による純緑色LEDの製造をもたらすものです。
 材料のテルル化亜鉛は、既存の緑色LED材料とは異なり、ガリウム(Ga)、インジウム(In)など稀少金属を含まないため低価格であり、かつ資源枯渇の心配がありません。
 さらに、低温・低圧でバルク結晶成長が可能であり、デバイス構造もシンプルであることから、製造コストの抑制が見込まれます。
 本技術開発は、既存の緑色LEDを超える高効率化が期待でき、省エネルギーに寄与します。



1.背景および研究概要
 白熱電球に比べ、長寿命、低消費電力、小型軽量、メンテナンスフリーといった特長があるLEDは近年、その利用範囲が飛躍的に広がっています。LEDは光の三原色である赤・緑・青がすでに実用化されていますが、緑色領域にはグリーンギャップと呼ばれる効率の谷間が存在し、パワー効率が0.1%程度まで低下します。しかし、この波長領域は照明や電光表示器としての用途のほか、プラスチックファイバ通信用光源、携帯機器用光源などへの応用が期待されるため、かねてから高効率・高輝度光源の開発が待望されていました。
 今回、開発に成功した純緑色LEDは市販品と同レベルの発光効率を実現しただけでなく、原料および製造コストが安価というメリットを有していることもあり、電子部品メーカやLED応用製品製造メーカなどから注目を集めています。


2.競合技術の強み
 基礎となる物質を把握・制御し、要素技術の高度化に取り組むことで、発光効率は本事業開始前に比べ30倍以上向上し、ホモ接合構造ながら、市販の緑色ガリウム燐(GaP)LEDと同レベルのパワー効率「0.1〜0.2%」を達成しました。また、ZnTe/ZnMgTeシングルへテロ構造を採用した場合には自己吸収効果の抑制が確認され、さらなる効率向上への指針を得ています。
 ガリウム燐のバルク結晶を得る場合には30気圧以上の環境が必要とされますが、テルル化亜鉛は1気圧程度でよく、製造装置も大がかりなものを必要としません。
 テルル化亜鉛の材料価格はガリウム燐の約3分の1以下であり、低コストかつ安定的な供給が見込まれます。

■緑色LEDに関する従来・競合技術との比較
・GaP(従来市販品)
発光強度比:1
バルク結晶成長:難
材料価格:1
資源量:希少金属(Ga)を含み、資源枯渇・価格高騰の懸念あり。

・ZnTe(研究試作品)
発光強度比:1〜2(現時点)
バルク結晶成長:易
材料価格:3分の1
資源量:Zn,Teともに資源枯渇の心配が無く、低価格。


3.今後の展望
 今後はZnTe LEDのさらなる高効率化を図るため、高品質なヘテロ接合構造を有するLED開発を進めていく予定です。
 欠陥の少ない高品質なヘテロ構造界面の活用によりキャリア閉じ込めを実現できれば、発光効率は格段に向上し、実用化のレベルに達すると考えられます。

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