Eストアー Research Memo(2):7年ごとに注力事業を変遷させ、収益基盤と顧客基盤を着実に強化
[19/03/14]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業の概要
Eストアー<4304>は1999年の設立以来、一貫してEC支援関連事業を展開してきた。しかしその過程では、事業環境の変化や同社自身の成長に合わせて、おおよそ7年ごとにその注力事業を変遷させながら成長してきている。それまでの事業が軌道にのって収益のベースを形成する段階に入ると、その収益を使って次の新たな収益事業づくりに進出するというサイクルの繰り返しだ。2019年の現在は3つ目のサイクルから4つ目のサイクルに切り替わったところにある。
(1) 1999年〜2006年頃
同社の事業はショッピングカートサービスからスタートした。その後、サイトを開設するうえで必要なレンタルサーバーの提供を開始し、このレンタルサーバー事業が同社の創成期を支える事業となった。同社はレンタルサーバー事業を主軸にしつつ、ショッピングカートに加えてECを行ううえで必要なサービスを逐次追加し、2006年にスタートするEC総合支援のASPサービス『ショップサーブ』の素地を蓄えていった。
(2) 2006年〜2012年
2006年からの7年間は、ECシステム事業、すなわち、EC総合支援のASPサービス『ショップサーブ』が収益源となった。ショップサーブは店舗のWebサイト、ドメイン、メール、決済、受注、顧客の管理などが1つになったASPサービスで、その収益モデルは顧客からASPサービスの月次利用料を徴収するもので、タイプとしてはいわゆるストック型モデルといわれるものだ。ストック収入(月額固定料金収入)は経営基盤を安定させるためには非常に有効だ。ショップサーブの顧客数は順調に拡大し、同社の成長と経営安定化に大きく貢献した。
ECシステム事業が軌道に乗ると、同社は並行して、顧客企業の売上高拡大を支援し、顧客から決済代行手数料などの名目で(同社のショップサーブ上の店舗サイトを経由した)売上高の一定割合を徴収する収入(商規模連動料金収入)の拡大に乗り出した。これは収入のタイプとしてはフロウ型収入と言え、同じ顧客からの収入ではあるが、ショップサーブの月次利用料(ストック収入)とは分けて管理している。
(3) 2012年〜2018年
既存顧客(ECシステムの顧客)の売上高が順調に拡大し、内容的にもストック収入とフロウ収入の構成がバランス良く順調に伸長するなか、同社は「マーケティング事業」を次の収益の中核事業として育成すべく、その強化に乗りだした。これは、顧客の売上高増大をもたらす販促支援のノウハウを事業化したもので、ポイントは1)販促支援のノウハウや施策を“商品化”し、コンサルティングや業務運営代行に伴うフィーを得るようにしたことと、2)このサービスを既存客(ECシステム顧客)以外にも外販することにしたこと、の2つだ。
当初は、マーケティング事業の内容として、コンサルティング・業務運営代行を行う「販促事業」と、ECショッピングモール『PARK』を運営する「メディア事業」の2つがあった。販促事業こそが同社が最も注力すべき事業領域として位置付けられ、後述するマーケティングシステムと区別して、現在ではマーケティングサービス事業と呼称されている。一方、メディア事業についてはAmazonなど強力なライバルが存在することや一定の目的を果たしことから非注力事業と位置付け、最終的に2018年9月末をもってサービスを終了した。
(4) 2018年〜
マーケティングサービス事業は、サービス提供主体がヒト、すなわち人的サービスであるため、次の収益事業の成長をシステムによる販促支援サービスの提供とし、同社はその開発に取り組み、2017年秋から『Eストアー コンペア(COMPARE)』と『Eストアー クエリー(QUERY)』の2つのソフトウェアをローンチさせた。(これらを総称して「バックストア群」と呼ぶこともある)。この販促システムの事業をマーケティングシステム事業と称し、同じ販促事業ではあるものの、人手によるマーケティングサービスと区別している。2018年からはこの販促システムの拡販を本格化し、収益拡大につなげる戦略で臨んでいる。
(5) まとめ
以上のような変遷を経て、現在の同社は「EC事業」という単一セグメント企業ではあるものの、売上高については、提供するサービスの目的(“販売”か“販促”か)と、提供する主体・手法(“機械・ソフト”か“人的サービス”)によって、販促サービス(マーケティングサービス)、販促システム、販売システム、メディア事業・ほかの4つに分けて開示している。
販売システムについてはその収入タイプに応じてストック収入(システム利用料収入)とフロウ収入(売上高の一定割合の収入)の2つに細分している。またメディア事業については2018年9月末でサービスを終了した。一方で電子認証事業を行う子会社を連結化したため今後は電子認証事業・その他へと変わる見通しだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<RF>
Eストアー<4304>は1999年の設立以来、一貫してEC支援関連事業を展開してきた。しかしその過程では、事業環境の変化や同社自身の成長に合わせて、おおよそ7年ごとにその注力事業を変遷させながら成長してきている。それまでの事業が軌道にのって収益のベースを形成する段階に入ると、その収益を使って次の新たな収益事業づくりに進出するというサイクルの繰り返しだ。2019年の現在は3つ目のサイクルから4つ目のサイクルに切り替わったところにある。
(1) 1999年〜2006年頃
同社の事業はショッピングカートサービスからスタートした。その後、サイトを開設するうえで必要なレンタルサーバーの提供を開始し、このレンタルサーバー事業が同社の創成期を支える事業となった。同社はレンタルサーバー事業を主軸にしつつ、ショッピングカートに加えてECを行ううえで必要なサービスを逐次追加し、2006年にスタートするEC総合支援のASPサービス『ショップサーブ』の素地を蓄えていった。
(2) 2006年〜2012年
2006年からの7年間は、ECシステム事業、すなわち、EC総合支援のASPサービス『ショップサーブ』が収益源となった。ショップサーブは店舗のWebサイト、ドメイン、メール、決済、受注、顧客の管理などが1つになったASPサービスで、その収益モデルは顧客からASPサービスの月次利用料を徴収するもので、タイプとしてはいわゆるストック型モデルといわれるものだ。ストック収入(月額固定料金収入)は経営基盤を安定させるためには非常に有効だ。ショップサーブの顧客数は順調に拡大し、同社の成長と経営安定化に大きく貢献した。
ECシステム事業が軌道に乗ると、同社は並行して、顧客企業の売上高拡大を支援し、顧客から決済代行手数料などの名目で(同社のショップサーブ上の店舗サイトを経由した)売上高の一定割合を徴収する収入(商規模連動料金収入)の拡大に乗り出した。これは収入のタイプとしてはフロウ型収入と言え、同じ顧客からの収入ではあるが、ショップサーブの月次利用料(ストック収入)とは分けて管理している。
(3) 2012年〜2018年
既存顧客(ECシステムの顧客)の売上高が順調に拡大し、内容的にもストック収入とフロウ収入の構成がバランス良く順調に伸長するなか、同社は「マーケティング事業」を次の収益の中核事業として育成すべく、その強化に乗りだした。これは、顧客の売上高増大をもたらす販促支援のノウハウを事業化したもので、ポイントは1)販促支援のノウハウや施策を“商品化”し、コンサルティングや業務運営代行に伴うフィーを得るようにしたことと、2)このサービスを既存客(ECシステム顧客)以外にも外販することにしたこと、の2つだ。
当初は、マーケティング事業の内容として、コンサルティング・業務運営代行を行う「販促事業」と、ECショッピングモール『PARK』を運営する「メディア事業」の2つがあった。販促事業こそが同社が最も注力すべき事業領域として位置付けられ、後述するマーケティングシステムと区別して、現在ではマーケティングサービス事業と呼称されている。一方、メディア事業についてはAmazonなど強力なライバルが存在することや一定の目的を果たしことから非注力事業と位置付け、最終的に2018年9月末をもってサービスを終了した。
(4) 2018年〜
マーケティングサービス事業は、サービス提供主体がヒト、すなわち人的サービスであるため、次の収益事業の成長をシステムによる販促支援サービスの提供とし、同社はその開発に取り組み、2017年秋から『Eストアー コンペア(COMPARE)』と『Eストアー クエリー(QUERY)』の2つのソフトウェアをローンチさせた。(これらを総称して「バックストア群」と呼ぶこともある)。この販促システムの事業をマーケティングシステム事業と称し、同じ販促事業ではあるものの、人手によるマーケティングサービスと区別している。2018年からはこの販促システムの拡販を本格化し、収益拡大につなげる戦略で臨んでいる。
(5) まとめ
以上のような変遷を経て、現在の同社は「EC事業」という単一セグメント企業ではあるものの、売上高については、提供するサービスの目的(“販売”か“販促”か)と、提供する主体・手法(“機械・ソフト”か“人的サービス”)によって、販促サービス(マーケティングサービス)、販促システム、販売システム、メディア事業・ほかの4つに分けて開示している。
販売システムについてはその収入タイプに応じてストック収入(システム利用料収入)とフロウ収入(売上高の一定割合の収入)の2つに細分している。またメディア事業については2018年9月末でサービスを終了した。一方で電子認証事業を行う子会社を連結化したため今後は電子認証事業・その他へと変わる見通しだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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