BS11 Research Memo(5):番組の質向上では着実な進捗を確認
[19/11/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期成長に向けた取り組み
3. 自社制作番組の充実と拡大
“自社制作番組の充実と拡大”は従来の「5本の矢」から今回の「Value 7」に至るまで、一貫して重点施策の1つに掲げられている。日本BS放送<9414>は前中期経営計画(2016年8月期−2017年8月期)と現行中期経営計画(2018年8月期−2020年8月期)の過去4年間にわたり、番組関連費用(番組購入費及び番組制作費)を、戦略的意図をもって拡大させ、良質な番組作りの強化に取り組んできた。
これまでのところ番組の質が着実に向上しているのは、いくつかの具体的事例から明確に読み取ることが可能だ。開局10周年特番として2017年12月に放送した『北斎ミステリー〜幕末美術秘話 もう一人の北斎を追え〜』が平成30年日本民間放送連盟賞・番組部門〔テレビエンターテインメント番組〕最優秀賞を受賞したのに続き、2018年4月に放送した『大分国東半島 六郷満山1300年』が2019年5月開催の「第4回 九州魅力発掘大賞」(主催:九州旅客鉄道株式会社)の映像部門賞を受賞した。
また、自社制作番組の外部販売も着実に拡大しつつある。従来からのローカル局に加えて、航空会社などへと販売先が延びている。同社は“自社制作番組の充実と拡大”の具体的内容の1つとして、“番組を「作品」から「商品」へと昇華”を掲げているが、番組販売の拡大は「商品」としての番組作りが順調に進捗していることを如実に示すものと言えるだろう。
このように番組の質的向上は狙いどおりの進捗を見せている一方で、スポンサーの獲得という点ではまだ道半ばの状況だ。この結果広告収入の構造がショッピング番組など一部の分野に偏った状態の是正が進まず、一部のショッピング事業者によるインターネット広告へのシフトの影響を強く受けることへとつながった。
こうした良質な番組が広告収入増に結び付かない状況について同社は、同社(BSチャネルとしての“BS11”)自身について、十分に認知が進んでいないことを理由に挙げている。同時にまた、番組自体において“良質かどうか”という要素だけでなく“売れるかどうか”という要素もより高めていく必要性を感じている。
前述のように、今回同社は中期経営計画を一部見直したが、そこでは、番組作りの理念として「ターゲットの明確化」と「オリジナリティ(独創性)」の2つが打ち出された。これら2つの理念はいずれも、番組の収益化(マネタイズ)を促進することに直接的つながるものであり、それを前面に打ち出したという点で、弊社は大いに注目している。広告主のニーズは当該商品のターゲット層に効率良く広告を送ることにある。ターゲットが明確でオリジナリティのある番組はそうした広告主のニーズに合致する状況を生み出す最良の策と言える。繰り返しになるが、こうした番組作りの理念自体は従来からも根底に存在していたと考えられるが、これを前面に打ち出したことは、番組の収益化をこれまで以上に強く(もしかしたら経営の最優先課題として)位置付けたことの表れといえるかもしれない。BS放送市場全体が一旦の踊り場を迎えた現状で、同社のそうした意識改革が業績にどのような好影響をもたらすか、大いに注目されるところだ。
個別・具体的な多数の案件を通じてビックカメラとのグループシナジー追求の取り組みを強化する方針
4. ビックカメラグループとのシナジー追求
同社の親会社であるビックカメラグループとの協業やグループ間シナジー効果の追求が、今後は極めて重要になってくると弊社では考えている。
同社はビックカメラにより設立され、当初は親会社からの広告出稿が収入の重要な一部となっていた。しかし同社の成長につれてその比率は徐々に低下し、近年は親会社からの広告収入は1%前後と、収益構造という点では完全に独立した状況となっている。こうした過去の経緯や、同社がビックカメラグループとのシナジー効果による収益拡大を前面に押し出して来なかったことから、“シナジー効果”の位置付けがあいまいな状況に置かれていたというのが弊社の認識だった。この点は他の市場参加者にとっても同様だったのではないだろうか。
しかしながら実際には、シナジー効果を追求する取り組みは着実に進行している。具体的には、1)番組収録・放送後の店内装飾・商品へのPOP展開、2)1社提供ミニ番組について、店頭での放映や2次コンテンツ利用による物販拡大の取り組み、などが行われている。また、2018年に同社が初開催した「全日本eスポーツ学生選手権大会」の地方予選はビックカメラ店舗で実施しており、これもまたビックカメラグループとのコラボレーションと言える。創業当初は同社が補助を受ける形での協業だったが、今日では同社が成長を遂げたことにより、両者の対等な関係に立って、より本質的なシナジー効果を追求している点が従来と大きく異なっている。
こうした動きは今後も強化されていくのは疑いないが、それについては同社側からはあまり詳細な情報は出されておらず、従来の「5本の矢」でも今回の「Value 7」でも、“ビックカメラとのシナジー追求”といった直接的な形では掲げられていない。
ビックカメラグループとの協業やシナジー効果追求の取り組みについては、これまで同様、決算発表などに際して確認をする必要があるものの、方向性として拡大方向にあることは間違いないため、今後は業績面への具体的な貢献額なども含めて進捗を見守りたいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<MH>
3. 自社制作番組の充実と拡大
“自社制作番組の充実と拡大”は従来の「5本の矢」から今回の「Value 7」に至るまで、一貫して重点施策の1つに掲げられている。日本BS放送<9414>は前中期経営計画(2016年8月期−2017年8月期)と現行中期経営計画(2018年8月期−2020年8月期)の過去4年間にわたり、番組関連費用(番組購入費及び番組制作費)を、戦略的意図をもって拡大させ、良質な番組作りの強化に取り組んできた。
これまでのところ番組の質が着実に向上しているのは、いくつかの具体的事例から明確に読み取ることが可能だ。開局10周年特番として2017年12月に放送した『北斎ミステリー〜幕末美術秘話 もう一人の北斎を追え〜』が平成30年日本民間放送連盟賞・番組部門〔テレビエンターテインメント番組〕最優秀賞を受賞したのに続き、2018年4月に放送した『大分国東半島 六郷満山1300年』が2019年5月開催の「第4回 九州魅力発掘大賞」(主催:九州旅客鉄道株式会社)の映像部門賞を受賞した。
また、自社制作番組の外部販売も着実に拡大しつつある。従来からのローカル局に加えて、航空会社などへと販売先が延びている。同社は“自社制作番組の充実と拡大”の具体的内容の1つとして、“番組を「作品」から「商品」へと昇華”を掲げているが、番組販売の拡大は「商品」としての番組作りが順調に進捗していることを如実に示すものと言えるだろう。
このように番組の質的向上は狙いどおりの進捗を見せている一方で、スポンサーの獲得という点ではまだ道半ばの状況だ。この結果広告収入の構造がショッピング番組など一部の分野に偏った状態の是正が進まず、一部のショッピング事業者によるインターネット広告へのシフトの影響を強く受けることへとつながった。
こうした良質な番組が広告収入増に結び付かない状況について同社は、同社(BSチャネルとしての“BS11”)自身について、十分に認知が進んでいないことを理由に挙げている。同時にまた、番組自体において“良質かどうか”という要素だけでなく“売れるかどうか”という要素もより高めていく必要性を感じている。
前述のように、今回同社は中期経営計画を一部見直したが、そこでは、番組作りの理念として「ターゲットの明確化」と「オリジナリティ(独創性)」の2つが打ち出された。これら2つの理念はいずれも、番組の収益化(マネタイズ)を促進することに直接的つながるものであり、それを前面に打ち出したという点で、弊社は大いに注目している。広告主のニーズは当該商品のターゲット層に効率良く広告を送ることにある。ターゲットが明確でオリジナリティのある番組はそうした広告主のニーズに合致する状況を生み出す最良の策と言える。繰り返しになるが、こうした番組作りの理念自体は従来からも根底に存在していたと考えられるが、これを前面に打ち出したことは、番組の収益化をこれまで以上に強く(もしかしたら経営の最優先課題として)位置付けたことの表れといえるかもしれない。BS放送市場全体が一旦の踊り場を迎えた現状で、同社のそうした意識改革が業績にどのような好影響をもたらすか、大いに注目されるところだ。
個別・具体的な多数の案件を通じてビックカメラとのグループシナジー追求の取り組みを強化する方針
4. ビックカメラグループとのシナジー追求
同社の親会社であるビックカメラグループとの協業やグループ間シナジー効果の追求が、今後は極めて重要になってくると弊社では考えている。
同社はビックカメラにより設立され、当初は親会社からの広告出稿が収入の重要な一部となっていた。しかし同社の成長につれてその比率は徐々に低下し、近年は親会社からの広告収入は1%前後と、収益構造という点では完全に独立した状況となっている。こうした過去の経緯や、同社がビックカメラグループとのシナジー効果による収益拡大を前面に押し出して来なかったことから、“シナジー効果”の位置付けがあいまいな状況に置かれていたというのが弊社の認識だった。この点は他の市場参加者にとっても同様だったのではないだろうか。
しかしながら実際には、シナジー効果を追求する取り組みは着実に進行している。具体的には、1)番組収録・放送後の店内装飾・商品へのPOP展開、2)1社提供ミニ番組について、店頭での放映や2次コンテンツ利用による物販拡大の取り組み、などが行われている。また、2018年に同社が初開催した「全日本eスポーツ学生選手権大会」の地方予選はビックカメラ店舗で実施しており、これもまたビックカメラグループとのコラボレーションと言える。創業当初は同社が補助を受ける形での協業だったが、今日では同社が成長を遂げたことにより、両者の対等な関係に立って、より本質的なシナジー効果を追求している点が従来と大きく異なっている。
こうした動きは今後も強化されていくのは疑いないが、それについては同社側からはあまり詳細な情報は出されておらず、従来の「5本の矢」でも今回の「Value 7」でも、“ビックカメラとのシナジー追求”といった直接的な形では掲げられていない。
ビックカメラグループとの協業やシナジー効果追求の取り組みについては、これまで同様、決算発表などに際して確認をする必要があるものの、方向性として拡大方向にあることは間違いないため、今後は業績面への具体的な貢献額なども含めて進捗を見守りたいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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