霞ヶ関キャピタル Research Memo(6):ポストコロナを見据えて、物流施設開発事業の大幅拡大を計画(1)
[20/11/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業別の取り組み
1. 新事業ポートフォリオ戦略
霞ヶ関キャピタル<3498>は2020年6月1月付で組織変更を行い、物流事業部、海外投資事業部、CRE戦略事業部を新設した。物流事業部では、物流施設の開発・投資・運用を中心に事業を推進する。海外投資事業部では、不動産・再生可能エネルギー施設案件を中心に、インバウンド・アウトバウンド投資ニーズを捉えてコンサルティング及びファンド事業を推進する。CRE戦略事業部では、企業の保有資産のオフバランスニーズや、不動産事業会社を中心にした M&A ニーズを捕捉して、コンサルティング及びファンド事業を推進する計画だ。
加えて、ポストコロナを見据え新規事業を立ち上げると同時に既存事業の戦略見直しを実施することで、売上高・営業利益に基づく事業ポートフォリオを大きく変更する計画となっている。具体的には、2021年8月期は物流施設開発事業が全体の半分程度を占め、CRE事業やウェアハウジング事業も収益貢献すると見込んでいる。同社は金融機関、ファンド、不動産業界出身者が全体の7割を占めるだけでなく、弁護士や会計士、不動産鑑定士など専門資格の保有者も多い。少数精鋭のプロ集団であることから、それらの人材をフル活用することで、2021年8月期以降も新たな事業分野へ挑戦を続けると弊社では見ている。
2. 物流施設開発事業
同社は、ポストコロナの環境下では物流施設需要が大きく伸びると見込んでいる。消費者向けEC市場規模は今後も拡大すると予想されているが、EC向けの物流倉庫はピッキング作業が中心となり、通常の倉庫よりも多くの通路や梱包スペースを要するため、専用のレイアウトが必要になる。従来の店舗−企業間物流のセンターでは対応が難しいことから、新規の施設需要が増え、物流施設市場が拡大すると同社は想定している。
一方で、首都圏の物流施設の空室率は2020年に過去最低水準を記録するなど、需給逼迫状態が進行している。消費行動の変化や労働人口の減少といった社会全体の大きな変化を背景としたEC企業による先進大型物流施設に対する需要拡大や、物流施設の省人化設備や自動化設備導入のための需要拡大は、長期的に続くトレンドであると同社は見ている。
さらに、地球温暖化への影響の懸念から、国際協定に基づき2030年にはHCFCフロンの生産が全廃されることから、今後は冷凍冷蔵倉庫ではアンモニア使用型への転換が主流になると考えられる。大都市圏における冷蔵倉庫の約35%は築40年以上経過しており、それらがスクラップ&ビルドの対象と考えられるが、アンモニア型への転換には数億円以上の設備投資が必要なため、体力の乏しい準大手企業を中心に、大冷蔵倉庫の多くが一斉に廃棄される可能性が大きい。一方、冷凍食品の国内消費量は増加を続けており、今後も冷凍冷蔵倉庫の需要は拡大すると想定される。
こうした環境変化を考えて、同社では需要の高い地域に適切な物流施設を開発予定であり、ドライ倉庫だけでなく付加価値の高い冷凍冷蔵倉庫の開発を実施している。現状、契約済みは3件で、今後の開発予定も多いようだ。物流施設開発事業は、世の中のニーズや市場環境の変化を捉えて、いち早く新規ビジネスとして立ち上げ、主力の事業に育てるという、同社の柔軟なビジネスモデルの好例と言えよう。
3. アパートメントホテル開発事業
コロナ禍の影響を受け、ホテル関連市場はインバウンド需要(外国人の訪日旅行)の消失、国内旅行・出張の自粛が続いているが、政府は緊急経済対策の中で観光予算1.7兆円を計上し、コロナ禍の収束状況を見極めつつ官民一体型の需要喚起策「Go Toキャンペーン」を講じている。一般的にグループ旅行者が全体の6割弱を占めるのに対し、3〜6人部屋の供給は4割に満たないことから、同社では多人数向けホテルの需給ギャップに着目し、グループ旅行者向けのホテルを開発する方針である。同社は家族・グループ旅行等の需要に対応した「アパートメントホテル」の開発を手掛けているが、駅から徒歩5〜10分圏内に立地し、キッチンや洗濯機等の長期滞在に対応した設備を完備した部屋を低額で提供できることから、国内旅行回帰等の需要取り込みを見込んでいる。加えて、コロナ禍収束後には、従来のように海外旅行者の利用増加も期待されると弊社では見ている。
同社が開発しているアパートメントホテルは、ブランド名を「FAV HOTEL(favorite=お気に入りの意味)」とし、“Good for Group”をコンセプトに「家族でも、大人4人の仲間でいても窮屈でない空間」「手の届きそうな非日常」を提供する、グループ滞在に最適なホテルを目指している。各室の広さは35〜40平方メートル、定員は4名以上を標準プランとし、客室単価はビジネスホテル以下に設定している。すなわち、通常1部屋1万円台とすると、4人で泊まれば1人当たり4,000〜4,500円程度になる。
これらを実現するために、アパートメントホテルでは、徹底した省力化・低コスト化オペレーションにより、コロナ禍でも収益を生む運営体制を構築している。具体的には、複数のチェックイン機を導入することに加え、システム化を一層推進することにより通常2〜3名が必要なフロント業務を原則1名で運営する、フロント担当のマルチタスク化によりラウンジの運営も並行して実施する体制を構築する、飲食は提供しない宿泊に特化したサービスとする、部屋の清掃もチェックアウトベースとするなどで、場所・光熱費・人件費の削減を実現し、省力化・低コスト化を可能にする。その結果、20%台の稼働率でも採算がとれる仕組みを構築している。
2020年10月下旬にはFAV HOTEL TAKAYAMA(38室)、2020年11月下旬にはFAV HOTEL TAKAMATSU(41室)が開業。その他、FAV HOTEL KUMAMOTO(67室)、FAV HOTEL ISE(31室)、鹿児島加治屋町プロジェクト(51室)、広島西蟹屋プロジェクト(33室)、石垣島真栄里プロジェクト(190室)、高山花里町プロジェクト(38室)、広島西平塚プロジェクト(52室)、両国プロジェクト(22室)、函館大手町プロジェクト(45室)などが開発中である。なお、アパートメントホテル開発に際しては、地元の銀行や建設会社を使うなど、地元の経済活性化につながるよう配慮しているようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<YM>
1. 新事業ポートフォリオ戦略
霞ヶ関キャピタル<3498>は2020年6月1月付で組織変更を行い、物流事業部、海外投資事業部、CRE戦略事業部を新設した。物流事業部では、物流施設の開発・投資・運用を中心に事業を推進する。海外投資事業部では、不動産・再生可能エネルギー施設案件を中心に、インバウンド・アウトバウンド投資ニーズを捉えてコンサルティング及びファンド事業を推進する。CRE戦略事業部では、企業の保有資産のオフバランスニーズや、不動産事業会社を中心にした M&A ニーズを捕捉して、コンサルティング及びファンド事業を推進する計画だ。
加えて、ポストコロナを見据え新規事業を立ち上げると同時に既存事業の戦略見直しを実施することで、売上高・営業利益に基づく事業ポートフォリオを大きく変更する計画となっている。具体的には、2021年8月期は物流施設開発事業が全体の半分程度を占め、CRE事業やウェアハウジング事業も収益貢献すると見込んでいる。同社は金融機関、ファンド、不動産業界出身者が全体の7割を占めるだけでなく、弁護士や会計士、不動産鑑定士など専門資格の保有者も多い。少数精鋭のプロ集団であることから、それらの人材をフル活用することで、2021年8月期以降も新たな事業分野へ挑戦を続けると弊社では見ている。
2. 物流施設開発事業
同社は、ポストコロナの環境下では物流施設需要が大きく伸びると見込んでいる。消費者向けEC市場規模は今後も拡大すると予想されているが、EC向けの物流倉庫はピッキング作業が中心となり、通常の倉庫よりも多くの通路や梱包スペースを要するため、専用のレイアウトが必要になる。従来の店舗−企業間物流のセンターでは対応が難しいことから、新規の施設需要が増え、物流施設市場が拡大すると同社は想定している。
一方で、首都圏の物流施設の空室率は2020年に過去最低水準を記録するなど、需給逼迫状態が進行している。消費行動の変化や労働人口の減少といった社会全体の大きな変化を背景としたEC企業による先進大型物流施設に対する需要拡大や、物流施設の省人化設備や自動化設備導入のための需要拡大は、長期的に続くトレンドであると同社は見ている。
さらに、地球温暖化への影響の懸念から、国際協定に基づき2030年にはHCFCフロンの生産が全廃されることから、今後は冷凍冷蔵倉庫ではアンモニア使用型への転換が主流になると考えられる。大都市圏における冷蔵倉庫の約35%は築40年以上経過しており、それらがスクラップ&ビルドの対象と考えられるが、アンモニア型への転換には数億円以上の設備投資が必要なため、体力の乏しい準大手企業を中心に、大冷蔵倉庫の多くが一斉に廃棄される可能性が大きい。一方、冷凍食品の国内消費量は増加を続けており、今後も冷凍冷蔵倉庫の需要は拡大すると想定される。
こうした環境変化を考えて、同社では需要の高い地域に適切な物流施設を開発予定であり、ドライ倉庫だけでなく付加価値の高い冷凍冷蔵倉庫の開発を実施している。現状、契約済みは3件で、今後の開発予定も多いようだ。物流施設開発事業は、世の中のニーズや市場環境の変化を捉えて、いち早く新規ビジネスとして立ち上げ、主力の事業に育てるという、同社の柔軟なビジネスモデルの好例と言えよう。
3. アパートメントホテル開発事業
コロナ禍の影響を受け、ホテル関連市場はインバウンド需要(外国人の訪日旅行)の消失、国内旅行・出張の自粛が続いているが、政府は緊急経済対策の中で観光予算1.7兆円を計上し、コロナ禍の収束状況を見極めつつ官民一体型の需要喚起策「Go Toキャンペーン」を講じている。一般的にグループ旅行者が全体の6割弱を占めるのに対し、3〜6人部屋の供給は4割に満たないことから、同社では多人数向けホテルの需給ギャップに着目し、グループ旅行者向けのホテルを開発する方針である。同社は家族・グループ旅行等の需要に対応した「アパートメントホテル」の開発を手掛けているが、駅から徒歩5〜10分圏内に立地し、キッチンや洗濯機等の長期滞在に対応した設備を完備した部屋を低額で提供できることから、国内旅行回帰等の需要取り込みを見込んでいる。加えて、コロナ禍収束後には、従来のように海外旅行者の利用増加も期待されると弊社では見ている。
同社が開発しているアパートメントホテルは、ブランド名を「FAV HOTEL(favorite=お気に入りの意味)」とし、“Good for Group”をコンセプトに「家族でも、大人4人の仲間でいても窮屈でない空間」「手の届きそうな非日常」を提供する、グループ滞在に最適なホテルを目指している。各室の広さは35〜40平方メートル、定員は4名以上を標準プランとし、客室単価はビジネスホテル以下に設定している。すなわち、通常1部屋1万円台とすると、4人で泊まれば1人当たり4,000〜4,500円程度になる。
これらを実現するために、アパートメントホテルでは、徹底した省力化・低コスト化オペレーションにより、コロナ禍でも収益を生む運営体制を構築している。具体的には、複数のチェックイン機を導入することに加え、システム化を一層推進することにより通常2〜3名が必要なフロント業務を原則1名で運営する、フロント担当のマルチタスク化によりラウンジの運営も並行して実施する体制を構築する、飲食は提供しない宿泊に特化したサービスとする、部屋の清掃もチェックアウトベースとするなどで、場所・光熱費・人件費の削減を実現し、省力化・低コスト化を可能にする。その結果、20%台の稼働率でも採算がとれる仕組みを構築している。
2020年10月下旬にはFAV HOTEL TAKAYAMA(38室)、2020年11月下旬にはFAV HOTEL TAKAMATSU(41室)が開業。その他、FAV HOTEL KUMAMOTO(67室)、FAV HOTEL ISE(31室)、鹿児島加治屋町プロジェクト(51室)、広島西蟹屋プロジェクト(33室)、石垣島真栄里プロジェクト(190室)、高山花里町プロジェクト(38室)、広島西平塚プロジェクト(52室)、両国プロジェクト(22室)、函館大手町プロジェクト(45室)などが開発中である。なお、アパートメントホテル開発に際しては、地元の銀行や建設会社を使うなど、地元の経済活性化につながるよう配慮しているようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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