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USENNEX Research Memo(10):コンテンツ配信事業と店舗DXが成長をけん引

注目トピックス 日本株
*13:10JST USENNEX Research Memo(10):コンテンツ配信事業と店舗DXが成長をけん引
■中期経営計画

2. セグメント別成長戦略
USEN-NEXT HOLDINGS<9418>は、事業セグメントをキャッシュカウ事業、安定成長事業、高成長事業に分類して事業ポートフォリオマネジメントを行っており、キャッシュカウ事業から高成長事業へ成長資金を還流するという従来からの方針に変わりはない。なお、キャッシュカウ事業は店舗サービス事業の音楽配信で、安定成長事業は業務用システム事業と通信事業(うち法人向けICT)、高成長事業はコンテンツ配信事業と店舗DX(店舗サービス事業のうちPOSレジやWi-Fi、通信事業の業務店向け自社光回線など)に分類している。

各セグメントの2025年8月期営業利益目標は、コンテンツ配信事業が82億円〜100億円、店舗サービス事業が105億円〜110億円、通信事業が68億円、業務用システム事業が40億円〜43億円、エネルギー事業が5億円〜15億円となっている。各事業でベースケースとアップサイドケースに分けて考えている。全社コストについては、アップサイドケースではベースケースから上振れた収益を原資に、人材開発教育やリスキリング研修、コーポレートブランディング、福利厚生の充実など、グループの成長力と環境適応力を強化するための投資に追加的に充当する考えである。

(1) コンテンツ配信事業
動画配信市場は成長市場であり競争が激しいため、競争優位の源泉である「カバレッジ戦略」と「ONLY ON戦略」を一層強化する。併せて音楽配信サービスで関係の深い音楽ライブや音楽コンテンツなど映像以外の独自配信を本格化し、漫画や小説などのオリジナル電子書籍で人気の出たIPを映像化などによってマネタイズしていく。こうした映像や書籍、音楽、ライブなど競争力が強い同社のコンテンツを、1つのアプリで楽しめるオールインワン・エンタテイメントを強化する方針である。この結果、2025年8月期の課金ユーザー数は310万人〜350万人(4年平均成長率7%〜10%)、ランニング売上だけで723億円〜767億円(4年平均成長率6%程度)を達成し、82億円〜100億円の営業利益をねらう。ベースケースとアップサイドケースの営業利益の差が他の事業より大きくなっているのは、ウィズコロナの消費動向や成長市場の拡大ピッチが予想しにくいことが要因と思われる。ちなみにベースケースでは、巣ごもり需要の反動で一時的な成長鈍化を想定している。足元は順調に伸びており、欧米と比較して伸びしろの大きい日本のコンテンツ配信市場、さらに「カバレッジ戦略」の一環で統合した「Paravi」を考慮すると、すでにベースケースは想定する必要がないのかもしれない。

(2) 店舗サービス事業
高成長を見込む店舗DXを中心に戦略を組んでおり、音楽配信は横ばいから微減となる想定である。最も注力するのはWi-Fiなど通信環境構築やPOSレジといったスマートデバイスで、店舗のフロントからバックオフィスまで業務をトータルで引き続き支援する方針である。また、販売から保守まで一貫対応することでアップセルも推進する。そして1万社のパートナーネットワークを構築することで年間10万件に及ぶ新規開業情報を取得し、成約率が高い新規開業店に対する敏速な直販営業を強化する。開業済み店舗は既存顧客も未開拓顧客も、営業効率の観点から代理店やテレマーケティングなど非直販チャネルを活用する。こうした施策により、契約件数を2021年8月期末の91.2万件から2025年8月期末には105.2万件に拡大する計画である。また、代表的なスマートデバイスであるPOSレジの課金件数を2.1万件から4.1万件に増やす方針である。

(3) 通信事業
法人向けICT/SaaSでは、複雑化するセキュリティ対策支援や、BCP対策としてのクラウド/データセンターの保守運用受託などのクロスセルに注力する。デジタルインフラにはラインナップの拡充で、オフィス環境の改善には新サービスの開発で対応する。営業面では、デジタルマーケティングを強化することで新たな見込み顧客を創出する一方、オンライン商談やインサイドセールスなど時代に即した新たな営業手法を確立する。業務店向け光回線は取次から好採算の自社回線へのスイッチを一層強化するとともに、IoT/DX商材のアップセルを加速する。これにより2025年8月期の業績は、法人向けICT/SaaSが売上高259億円(4年平均成長率9%)、営業利益42億円(同7%)、業務店向け自社光回線が売上高117億円(同18%)、営業利益6億円(黒字安定化)を目指す。

(4) 業務用システム事業
既存顧客のホテルや総合病院に対して、非対面・非接触や省人化・効率化といったニーズを踏まえてDX支援を強化する。また、施設DXのソリューションをテコに、単なる自動精算機の販売/保守というポジションから、顧客にとってビジョナリーパートナーという一段上の存在を目指す。特にホテルは、インバウンド回復によるヘルスケア立国や観光立国という日本の成長戦略の再来を想定している。小規模クリニックや歯科、調剤薬局などには、「Sma-paマイナタッチ」を起点にクロスセルする製品やサービスを拡充するなど市場を深掘りする一方、ゴルフ場や小売、外食、ペットクリニック、観光施設などの隣接市場には、AIや生体認証(顔認証)、キャッシュレス・後払い決済など最新技術を盛り込んだプロダクツの開発を推進する。これにより2025年8月期に売上高はホテルで131億円(4年平均成長率3%)、総合病院で75億円(同10%)、隣接市場で44億円(同19%)を目指す。

(5) エネルギー事業
2022年3月にスタートした「U-POWER」は自社調達モデルのため高収益であることから強化する方針で、なかでも競争力の強いSDGs対応のグリーンエネルギーを成長のけん引役とする意向である。これにより、「U-POWER」の顧客件数は4.1万口〜6.2万口(2021年8月期はゼロ)と大きく拡大することを目指している。


中期経営計画はアップサイドケースで進捗へ
3. 中期経営計画の進捗
業務用システム事業は想定外に厳しい状況であるが、主力のコンテンツ配信と店舗DXが順調に推移した。また、エネルギー事業が想定を覆し好調で、急速に進行した円安リスクも是正傾向にあり、業況はおおむね順調である。コンテンツ事業は従来の戦略による差別化の効果が今後一段と期待できる。「Paravi」は2024年8月期にはコストシナジーが顕在化し、中期的にも「Paravi」の統合シナジーが見込まれる。一時的に閉店解約があった店舗サービス事業は、足元では落ち着いたもようである。通信事業は注力分野が順調に拡大しており、エネルギー事業は今後も健闘が期待される。業務用システム事業は、2023年8月期がやや踊り場となるも、行動制限解除に伴う人流増加やインバウンドの回復、人手不足といった状況が本来追い風となり、2024年8月期は反動増、その後は安定した成長が見込まれる。以上から、引き続き2つの中期業績シナリオのうちアップサイドケースで進捗するものと思われる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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