深海に眠る希少なサンゴ 日本産宝石サンゴの繁殖生態を解明
[14/08/18]
提供元:共同通信PRワイヤー
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平成26年8月18日
沖縄美ら島財団
深海に眠る希少なサンゴ
日本産宝石サンゴの繁殖生態を解明
一般財団法人 沖縄美ら島財団(沖縄県本部町)の野中正法 沖縄美ら海水族館魚類チームリーダーらの研究グループは、日本産宝石サンゴの繁殖生態を初めて解明しました。本研究の論文は、ハワイの学術雑誌『Pacific Science』に掲載されました。
【ポイント】
●日本産宝石サンゴ(アカサンゴ、モモイロサンゴ、シロサンゴ)は雌雄異体であり、幼生でなく卵や精子を海中に放出する繁殖様式であることを初めて確認した。
●餌を食べる個体(ポリプ)とは別の場所に卵や精子を蓄える、宝石サンゴ類独特の生態を解明した。
●繁殖の時期は夏季(5〜8月)であることを明らかにした。
●本研究の成果は、資源の枯渇が危惧される宝石サンゴ類の保全に役立つことが期待される。
<研究の背景>
宝石サンゴ類は、国内では沖縄、四国、九州、小笠原諸島周辺の数十mから数百mの深海域に生息しています。装飾品やアクセサリーとして珍重され、現在でも、高知県、鹿児島県、沖縄県などで許可制により漁業が行われています。
成長が非常に遅いため、その資源は枯渇状態にあると言われていますが、その生態については解明されておらず、資源保護などの観点からも新たな研究が待たれています。野中チームリーダーらの研究グループは、沖縄の深海生物多様性調査の一環として、宝石サンゴ類の繁殖生態の解明に取り組みました。
<研究成果の概要>
研究は、琉球列島にて潜水艇で漁獲されたアカサンゴ、モモイロサンゴ、シロサンゴの枝先部分を標本として譲り受け行いました。172標本の組織切片を顕微鏡で観察し、大きさや成長段階、卵や精子の有無などを調べました。
その結果、宝石サンゴ類は雌雄異体であり、幼生でなく卵や精子を海中に放出する繁殖様式であることを初めて確認しました。繁殖の時期は5月から8月の夏季だと推定されます。
また、餌を食べる個体(ポリプ)とは別の場所に卵や精子を蓄えることが解明されました。これは、サンゴの仲間では珍しい特徴です。ポリプ内に卵や精子を蓄えると胃袋の部分が圧迫され、その間は餌が食べにくくなることが推察されます。造礁サンゴのように共生する褐虫藻を持たず、またエサも少ない深海に生息する宝石サンゴ類は、繁殖時期でも餌を効率よくとるために、このような繁殖方法をとっているものと考察されます。
<今後の展望>
本研究の成果は、謎の多い宝石サンゴ類の生態解明につながるほか、宝石サンゴ類の資源保護に向けた漁獲ルール策定の基礎的データ等に活用されることが期待されます。今後も宝石サンゴ類の保全に関する研究材料として役立てていきたいと考えています。
(一財)沖縄美ら島財団が管理運営する沖縄美ら海水族館の「深海への旅 個水槽」では、生きているアカサンゴとモモイロサンゴを展示しています。展示を通し、これからも希少な宝石サンゴ類の生態や取り巻く環境等を伝えていきます。
■発表雑誌■
雑誌名:Pacific Science, vol. 69, no. 1
論文名:Sexual reproduction in precious corals(Coralliidae) collected in the Ryukyu Archipelago
著者名:(一財)沖縄美ら島財団 沖縄美ら海水族館 魚類チームリーダー 野中正法
(一財)沖縄美ら島財団 美ら島研究センター 参与 中村將
ハワイビショップ博物館 研究員 キャサリン・ミュジック
掲載日:2014年7月24日
■研究者プロフィール■
野中正法(のなか まさのり):
1989 年琉球大学理学部海洋学科卒業。同年(社)沖縄海洋生物飼育技術センター(国営沖縄記念公園水族館)入社。2002年社団解散に伴い(財)海洋博覧会記念公園管理財団(現在は一般財団法人 沖縄美ら島財団に名称変更)入社。2012 年琉球大学にて博士(理学)学位取得。
中村將(なかむら まさる):
1971年北海道大学水産学部増殖学科卒業、1978年同大学水産学博士学位取得。2000年琉球大学教授(熱帯生物圏研究センター)、2006年に同センターのセンター長に就任。2012年琉球大学名誉教授、(財)海洋博覧会記念公園管理財団(現在は一般財団法人 沖縄美ら島財団に名称変更)参与に就任。
沖縄美ら島財団
深海に眠る希少なサンゴ
日本産宝石サンゴの繁殖生態を解明
一般財団法人 沖縄美ら島財団(沖縄県本部町)の野中正法 沖縄美ら海水族館魚類チームリーダーらの研究グループは、日本産宝石サンゴの繁殖生態を初めて解明しました。本研究の論文は、ハワイの学術雑誌『Pacific Science』に掲載されました。
【ポイント】
●日本産宝石サンゴ(アカサンゴ、モモイロサンゴ、シロサンゴ)は雌雄異体であり、幼生でなく卵や精子を海中に放出する繁殖様式であることを初めて確認した。
●餌を食べる個体(ポリプ)とは別の場所に卵や精子を蓄える、宝石サンゴ類独特の生態を解明した。
●繁殖の時期は夏季(5〜8月)であることを明らかにした。
●本研究の成果は、資源の枯渇が危惧される宝石サンゴ類の保全に役立つことが期待される。
<研究の背景>
宝石サンゴ類は、国内では沖縄、四国、九州、小笠原諸島周辺の数十mから数百mの深海域に生息しています。装飾品やアクセサリーとして珍重され、現在でも、高知県、鹿児島県、沖縄県などで許可制により漁業が行われています。
成長が非常に遅いため、その資源は枯渇状態にあると言われていますが、その生態については解明されておらず、資源保護などの観点からも新たな研究が待たれています。野中チームリーダーらの研究グループは、沖縄の深海生物多様性調査の一環として、宝石サンゴ類の繁殖生態の解明に取り組みました。
<研究成果の概要>
研究は、琉球列島にて潜水艇で漁獲されたアカサンゴ、モモイロサンゴ、シロサンゴの枝先部分を標本として譲り受け行いました。172標本の組織切片を顕微鏡で観察し、大きさや成長段階、卵や精子の有無などを調べました。
その結果、宝石サンゴ類は雌雄異体であり、幼生でなく卵や精子を海中に放出する繁殖様式であることを初めて確認しました。繁殖の時期は5月から8月の夏季だと推定されます。
また、餌を食べる個体(ポリプ)とは別の場所に卵や精子を蓄えることが解明されました。これは、サンゴの仲間では珍しい特徴です。ポリプ内に卵や精子を蓄えると胃袋の部分が圧迫され、その間は餌が食べにくくなることが推察されます。造礁サンゴのように共生する褐虫藻を持たず、またエサも少ない深海に生息する宝石サンゴ類は、繁殖時期でも餌を効率よくとるために、このような繁殖方法をとっているものと考察されます。
<今後の展望>
本研究の成果は、謎の多い宝石サンゴ類の生態解明につながるほか、宝石サンゴ類の資源保護に向けた漁獲ルール策定の基礎的データ等に活用されることが期待されます。今後も宝石サンゴ類の保全に関する研究材料として役立てていきたいと考えています。
(一財)沖縄美ら島財団が管理運営する沖縄美ら海水族館の「深海への旅 個水槽」では、生きているアカサンゴとモモイロサンゴを展示しています。展示を通し、これからも希少な宝石サンゴ類の生態や取り巻く環境等を伝えていきます。
■発表雑誌■
雑誌名:Pacific Science, vol. 69, no. 1
論文名:Sexual reproduction in precious corals(Coralliidae) collected in the Ryukyu Archipelago
著者名:(一財)沖縄美ら島財団 沖縄美ら海水族館 魚類チームリーダー 野中正法
(一財)沖縄美ら島財団 美ら島研究センター 参与 中村將
ハワイビショップ博物館 研究員 キャサリン・ミュジック
掲載日:2014年7月24日
■研究者プロフィール■
野中正法(のなか まさのり):
1989 年琉球大学理学部海洋学科卒業。同年(社)沖縄海洋生物飼育技術センター(国営沖縄記念公園水族館)入社。2002年社団解散に伴い(財)海洋博覧会記念公園管理財団(現在は一般財団法人 沖縄美ら島財団に名称変更)入社。2012 年琉球大学にて博士(理学)学位取得。
中村將(なかむら まさる):
1971年北海道大学水産学部増殖学科卒業、1978年同大学水産学博士学位取得。2000年琉球大学教授(熱帯生物圏研究センター)、2006年に同センターのセンター長に就任。2012年琉球大学名誉教授、(財)海洋博覧会記念公園管理財団(現在は一般財団法人 沖縄美ら島財団に名称変更)参与に就任。