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東北大学のプレスリリース情報:共生できないサンゴ共生藻突然変異株の単離に成功

2018年2月16日

国立大学法人東北大学

東北大学プレスリリース情報:共生できないサンゴ共生藻突然変異株の単離に成功,共生のスイッチを操作してオン・オフできる基盤技術を開発

【発表のポイント】
●サンゴ礁生態系は、サンゴなどの刺胞動物と、褐虫藻(かっちゅうそう)と呼ばれる単細胞藻類の細胞内共生注によって成り立っており、共生の崩壊によりサンゴ礁が死滅する「白化現象」が大きな問題になっている。
●本研究では、褐虫藻から自然発生的に生じた突然変異株を効率よく選抜することで、共生する能力を失った株を単離することに成功した。
●また、単離した株を用い、代謝経路のオン・オフが共生を制御するスイッチとして働くことを世界で初めて示した。
●本研究により、サンゴ礁保全計画などにも影響を与える重要な共生研究のための基盤的技術を開発することができた。

【概要】
東北大学大学院生命科学研究科の丸山真一朗助教らのグループは、基礎生物学研究所の皆川純教授、高橋俊一准教授、および東京大学大学院新領域創成科学研究科・エルピクセル(株)の朽名夏麿特任准教授・CTOらと共同で、サンゴ共生藻から突然変異株を選抜し、宿主である刺胞動物に共生できなくなった株を単離することに成功し、さらに栄養添加によって共生能力が回復することを発見しました。これは、サンゴ共生藻の遺伝的変異が共生能力に直接的に関与し、代謝活性を調節することで共生のスイッチを人為的にオン・オフできることを示した重要な報告です。本研究結果は、2月19日付でScientific Reports誌(電子版)に掲載されます。

 
 
【詳細な説明】
海の生物多様性の宝庫とも言えるサンゴ礁は、造礁サンゴなどの刺胞動物と、褐虫藻(かっちゅうそう)と呼ばれる単細胞藻類の細胞内共生によって成り立っています。近年の地球温暖化などの環境変動によって、サンゴと褐虫藻の共生が崩壊し、サンゴ礁が死滅する「白化現象」が大きな問題になっています。しかし、褐虫藻側からの研究が進んでおらず、安定な共生が維持される仕組みについては未解明な点が多いのが現状です。
本研究では、褐虫藻を実験室内で効率よく培養する方法を確立し、薬剤処理による選抜を行い、DNAやRNAなどの素になる化合物(ウラシル)を合成する酵素の遺伝子に自然発生的に突然変異が生じた株を単離することに成功しました。また、東北大学の頭文字をとってT株と呼ばれるこれらの株を使って培養実験を行ったところ、ウラシルを加えた培地(栄養培地)でのみ正常な代謝と細胞の増殖が起こることが分かりました。
単離された突然変異株(T01株)は、通常の培地ではサンゴ共生系モデル生物であるセイタカイソギンチャクに共生する能力を失っていましたが、栄養培地では共生能力が回復しました。このことは、正常な代謝と細胞の増殖が共生のオン・オフを制御するスイッチとして働くことを示しています(図2)。また、この成果は、褐虫藻と刺胞動物との共生が、細胞増殖能力などの「共生藻の健康状態」、また藻類側の遺伝的変異によって大きく影響を受けることを、初めて遺伝子突然変異株を用いて実験的に証明した例となります。
近年、サンゴの白化現象を共生藻類の側から「遺伝子治療」する研究の可能性が盛んに議論されるようになってきましたが、本研究により、基礎研究の立場から、こうした応用的展開や保全計画にも影響を与える重要な基盤的技術を開発することができました。
本研究は、文部科学省科学研究費補助金、先端バイオイメージング支援プラットフォーム、ゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団研究助成金、公益財団法人発酵研究所一般研究助成、基礎生物学研究所個別共同利用研究等の支援を受けて行われました。


【用語説明】
注 細胞内共生
サンゴなど宿主刺胞動物の内胚葉と呼ばれる組織の細胞内には褐虫藻が共生している。褐虫藻は宿主から供給される二酸化炭素を利用して光合成し、その産物である有機物を宿主へ栄養源として供給すると考えられている。

【論文題目】
題目:Isolation of uracil auxotroph mutants of coral symbiont alga for symbiosis studies
著者:Yuu Ishii, Shinichiro Maruyama, Konomi Fujimura-Kamada, Natsumaro Kutsuna, Shunichi Takahashi, Masakado Kawata, Jun Minagawa
雑誌:Scientific Reports
Volume Page:
DOI: 10.1038/s41598-018-21499-3


【東北大学サイト・プレスリリースページ】
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2018/02/press20180216-02.html

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