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自然な光を用いる瞬間カラーホログラフィックセンシングシステムの開発に成功

3次元動画像観察が可能な瞬間カラー多重蛍光ホログラフィック顕微鏡が実現

2020年7月22日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
国立研究開発法人科学技術振興機構
学校法人桐蔭学園桐蔭横浜大学
国立大学法人千葉大学

 
自然な光を用いる瞬間カラーホログラフィックセンシングシステムの開発に成功 〜3次元動画像観察が可能な瞬間カラー多重蛍光ホログラフィック顕微鏡が実現〜

ポイント
■ 世界初、カラーフィルタアレイ不要、自然な光で瞬間カラーホログラムの記録システムを開発
■ 撮影1回、従来のホログラフィックカラー多重3次元蛍光顕微鏡に比べ、回数250分の1以下
■ 生体観察や動的現象の観測に必要なホログラフィックマルチカラー3次元動画像記録に応用可能

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、学校法人桐蔭学園桐蔭横浜大学及び国立大学法人千葉大学の研究グループは、NICT電磁波研究所において、自然な光で照明された3次元空間や蛍光体の発光を瞬間のマルチカラーホログラムとして記録できるシステムの開発に成功しました。NICTが提案・研究してきた計算コヒーレント多重方式を用いることで、1回の撮影で複数種類・多数の蛍光体を同時にホログラムとして記録できる、カラー3次元顕微鏡ができるようになりました。また、カラーフィルタアレイ不要で、1回の撮影で蛍光体のカラー多重ホログラムのセンシングを達成したのは世界初です。
 本技術が実用化されれば、これまで障壁となっていた自然光のマルチカラーホログラムにおける記録速度の問題が解決し、生体観察や動的現象の観察にとって不可欠な高速度のマルチカラー3次元動画像観察が可能になるものと期待されています。今後、本技術を、微弱な光のマルチカラー3次元動画像顕微鏡として発展させる予定です。なお、本成果は、日本時間2020年7月22日(水)13:00に、米国科学雑誌「Applied Physics Letters」にオンライン掲載されます。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202007222279-O4-z8cHUj6D】 図1 今回開発したセンシングシステムの測定手続

背景

 生命科学、材料科学、産業、芸術、日々の暮らしに至るまで、その場のありのままの情報を3次元画像センシングする技術・システムに関する研究開発が世界的に進められています。インコヒーレントディジタルホログラフィは、レーザを用いず自然な光で3次元情報をホログラムとして記録するため、動画記録可能な3次元蛍光顕微鏡、3次元非線形光学顕微鏡、自然光ホログラムセンサへの応用が期待されています。一方で、自然な光のカラーホログラムセンシングでは、従来カラーフィルタアレイ又は多数回の記録が必要で、明瞭なホログラムの取得、記録時間を短縮化できる原理の創出が課題でした。そのため、色で分子組成が標識された、複数種類・多数の蛍光体を同時に、1回の撮影で、明るいホログラムとして記録できる3次元顕微鏡が実現できずにいました。

 今回の成果
 このたび本研究グループは、ホログラフィの原理を用いて多次元情報を多重記録する技術の一つであり、NICTが提案している、計算機内のコヒーレント多重を利用する方式(以下「計算コヒーレント多重方式」)を用い、カラーフィルタアレイ不要、1回の撮影で、一般照明光や発光体をマルチカラーのホログラムとしてセンシングできるシステムを開発しました。専用のモノクロイメージセンサを試作し、搭載したことにより、本システムが実現しました。本開発により、色で分子組成が標識された複数種類・多数の蛍光体の、瞬間のカラー多重ホログラフィック3次元顕微鏡センシングを世界で初めて実証しました。
 試作イメージセンサでは、波長情報の記録のためにカラーフィルタの色吸収を用いず、波長依存性位相変調素子アレイを用い、計算コヒーレント多重方式に必要な色ごとに異なる光波のリズム(位相)変化を与えることで、カラー情報と明るいホログラムの取得を両立しました。1回のホログラム画像撮影で測定できることから、従来のホログラフィック多重を用いるカラー多重3次元蛍光顕微鏡に比べ、測定回数250分の1以下を達成しました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202007222279-O6-8cxKY2Mw
図2 上段: ホログラフィックカラー多重3次元蛍光顕微鏡応用の実験と試作したイメージセンサ。
下段: 実験結果。丸印内は合焦された蛍光体

 これらの成果は、生体観察や動的現象の観察にとって不可欠な、多数の物体の同時かつ高速なマルチカラー 3 次元動画像観察の実現を強力に推進します。

今後の展望
 NICTは、光学システムの改良により、記録の高速化や、多数の動く微小物体の同時3次元動画像観察、より小さな物体の高画質観察を行い、自然光など弱い光に適用可能なマルチカラー3次元動画像顕微鏡としての活用、動的な生命現象の観察・発見や科学材料の分析を行う装置への発展を目指しています。


各機関の役割分担
・情報通信研究機構: 2種の自然な光を用いるホログラフィックカラー多重顕微鏡システムの開発、実験全般
・科学技術振興機構: イメージセンサの試作、光学システム設計、蛍光顕微鏡応用に関する共同実験
・桐蔭横浜大学: 蛍光顕微鏡応用に関する共同実験
・千葉大学: 蛍光顕微鏡応用に関する共同実験

論文情報
掲載誌: Applied Physics Letters
DOI: 10.1063/5.0011075
URL: https://aip.scitation.org/journal/apl
論文名: Single-shot wavelength-multiplexed digital holography for 3D fluorescent microscopy and other imaging modalities
著者: Tatsuki Tahara, Ayumi Ishii, Tomoyoshi Ito, Yasuyuki Ichihashi, and Ryutaro Oi

本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)さきがけ 「多数自然光源の瞬間同時ホログラフィックマルチカラーセンシング(研究者: 田原樹)(JPMJPR16P8)」、「有機‐無機ハイブリッド界面を利用した一光子センシング技術の創出(さきがけ専任研究者: 石井あゆみ)(JPMJPR17P2)」、文部科学省科学研究費補助金基盤研究(B)18H01456、光科学技術研究振興財団、コニカミノルタ科学技術振興財団の助成を受けて行われました。

 

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