子どもの声に耳を傾け 一人ひとりに寄り添った 子どもの安全保障を考える
[22/09/29]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
【東洋大学 SDGs News Letter Vol.11】東洋大学は“知の拠点”として地球社会の未来へ貢献します
2022.09.29発行
東洋大学
東洋大学 SDGs News Letter Vol.11
東洋大学は“知の拠点”として地球社会の未来へ貢献します
子どもの声に耳を傾け
一人ひとりに寄り添った
子どもの安全保障を考える
「子どもの権利条約」を基本理念として児童福祉法が改正されてから6年が経過しましたが、子どもの権利について、社会の理解は深まっているのでしょうか。今回は、ユニセフで南アジアの子ども支援に携わった経験を持ち、子どもの権利を専門に研究する社会学部社会福祉学科の小野道子准教授の研究や活動をお伝えします。
Summary
・子どもの安全保障=発展途上国や貧困地域だけの問題ではない
・日本でも災害などの有事が発生した際に、安全保障や居場所づくりは子どもの心をケアする上で非常に重要
・「こども基本法」の成立や「こども家庭庁」発足など子どもの権利を守るための新たな動きに注目したい
「ベンガリー」との出会いから、子どもの安心・安全な居場所づくりを目指す
現在までの活動と研究内容について教えてください。
私は人間の安全保障の中でも、特に子どもに焦点を絞った「子どもの安全保障」について研究を進めてきました。人間の安全保障とは、人々を貧困や紛争、災害などの脅威から守り、それぞれが可能性を実現する機会・選択肢を手にするために、一人ひとりの人間に着目し、その能力強化を通じて持続可能な個人の自立と社会づくりを促す考え方です。これは、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」にも通じます。その一つとして、「ベンガリー」と呼ばれるパキスタンにいる無国籍の子どもの安全保障について研究しています。大学1年の時に参加したバングラデシュでのスタディーツアーをきっかけに南アジアに興味をもち、バングラデシュの研究に注力。その後パキスタンにJICAで2年、ユニセフで3年半、計5年半ほど駐在し、教育や子どもの保護などの事業に携わってきました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209287335-O5-2A66pINi】
「ベンガリー」の多くは、無国籍が原因で多くの不利益を被っています。なぜ子どもたち、特に女の子たちが「路上」で物売りや物乞いをするのか、安心や安全をどのように捉えているのか。我々からみた「路上」と、「ベンガリー」の子どもたちにとっての「路上」の捉え方には違いがあるのではないか。パキスタンに暮らす「ベンガリー」の子ども、特に女の子たちの安全保障の問題に非常に興味を持ち、研究者の道に進むことにしました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209287335-O6-ekV17lpZ】
カラチの「路上」で車の窓拭きをする女の子たち
パキスタンの無国籍の子どもの安全保障や支援と聞くと、遠い国の話のようにも感じられます。
SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」という視点は、パキスタンのような開発途上国と呼ばれる地域を主対象とした目標のように感じられ、一見、日本に暮らす私たちと結びつきにくいかもしれません。しかし、災害や紛争が起これば、私たち誰もが取り残される側になる可能性もあるでしょう。私は「災害時こどものこころと居場所サポート」というNPO法人の代表として、子ども支援や子育て支援に携わる人々に災害時の子どもの居場所づくりの意義を啓発する研修を行う等、災害時の子どもの安全な居場所づくりの重要性やその方法について社会的理解を促進する活動にも取り組んでいます。災害が起きると学校が休校になったり、避難所で生活することになったりして、子どもが安心・安全に感じられる居場所がなくなってしまいます。これは子どもにとって相当なストレスです。一方で保護者や身近な大人たちは家の片付けや生活再建に忙しく、なかなか子どものことを考える余裕がありません。そんなときに子どもたちが安心・安全に過ごせる居場所を避難所や地域に作れるように、全国で研修会を開催しています。
2022年8月には、文京区と東洋大学の企画で小学生を対象にワークショップを開催しました。災害時、避難所のどこにどのようなレイアウトで子ども用のスペースを作れば、自分たちは安心・安全だと感じられるのか、ということを一緒に考えながら実際にプランを描いてもらいました。この取り組みを通して、「自分たち(子ども)にも安心・安全な居場所を持つ権利がある。だからそういう居場所が欲しいと言っていいんだ」と感じてもらいたいです。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209287335-O7-0MQ0B0wf】
災害時の子どもにやさしい空間を考える研修会の様子
国内外の垣根を越えて、子どもの権利に主眼を置いた取り組みを
子どもの安全保障や居場所づくりで、今後私たちはどのようなことに取り組むべきだとお考えですか。
災害時の子どもの支援活動の多くは平時から準備できることです。普段から子どもたちの声に耳を傾ける仕組みがあれば、災害時にも子どもに寄り添った支援が可能になります。
海外の子どもと日本の子どもを分けて考えるのではなく、一人ひとりに寄り添い子どもの権利に主眼を置いた取り組みがより活発化していくことを期待しています。子どもの権利という視点についても、日本でまだまだ定着しているとは言えない状況です。しかし2016年に児童福祉法が改正され、子どもの権利条約の主要な理念が盛り込まれたことで、子どもの権利に対する理解が促進されてきています。さらに、今年6月に「こども家庭庁設置法案」と「こども基本法案」が成立し、2023年4月には「こども家庭庁」が設置されることが決まりました。こうした子どもの権利を守るための新たな動きに注目し、さまざまな角度から研究を推進したいと考えています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209287335-O8-zCzTDC1o】
小野 道子(おの みちこ)
東洋大学社会学部社会福祉学科准教授/博士(国際貢献)
専門分野:子どもの権利学、子どもの安全保障
研究キーワード:子どもの権利、災害子ども支援、南アジア地域の子どもの保護
著書・論文等:「震災による父子家庭支援の現状と支援の課題」『教育と医学』62巻3号ほか
本News Letterのバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
TOYO SDGs News Letter
https://www.toyo.ac.jp/sdgs/
2022.09.29発行
東洋大学
東洋大学 SDGs News Letter Vol.11
東洋大学は“知の拠点”として地球社会の未来へ貢献します
子どもの声に耳を傾け
一人ひとりに寄り添った
子どもの安全保障を考える
「子どもの権利条約」を基本理念として児童福祉法が改正されてから6年が経過しましたが、子どもの権利について、社会の理解は深まっているのでしょうか。今回は、ユニセフで南アジアの子ども支援に携わった経験を持ち、子どもの権利を専門に研究する社会学部社会福祉学科の小野道子准教授の研究や活動をお伝えします。
Summary
・子どもの安全保障=発展途上国や貧困地域だけの問題ではない
・日本でも災害などの有事が発生した際に、安全保障や居場所づくりは子どもの心をケアする上で非常に重要
・「こども基本法」の成立や「こども家庭庁」発足など子どもの権利を守るための新たな動きに注目したい
「ベンガリー」との出会いから、子どもの安心・安全な居場所づくりを目指す
現在までの活動と研究内容について教えてください。
私は人間の安全保障の中でも、特に子どもに焦点を絞った「子どもの安全保障」について研究を進めてきました。人間の安全保障とは、人々を貧困や紛争、災害などの脅威から守り、それぞれが可能性を実現する機会・選択肢を手にするために、一人ひとりの人間に着目し、その能力強化を通じて持続可能な個人の自立と社会づくりを促す考え方です。これは、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」にも通じます。その一つとして、「ベンガリー」と呼ばれるパキスタンにいる無国籍の子どもの安全保障について研究しています。大学1年の時に参加したバングラデシュでのスタディーツアーをきっかけに南アジアに興味をもち、バングラデシュの研究に注力。その後パキスタンにJICAで2年、ユニセフで3年半、計5年半ほど駐在し、教育や子どもの保護などの事業に携わってきました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209287335-O5-2A66pINi】
「ベンガリー」の多くは、無国籍が原因で多くの不利益を被っています。なぜ子どもたち、特に女の子たちが「路上」で物売りや物乞いをするのか、安心や安全をどのように捉えているのか。我々からみた「路上」と、「ベンガリー」の子どもたちにとっての「路上」の捉え方には違いがあるのではないか。パキスタンに暮らす「ベンガリー」の子ども、特に女の子たちの安全保障の問題に非常に興味を持ち、研究者の道に進むことにしました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209287335-O6-ekV17lpZ】
カラチの「路上」で車の窓拭きをする女の子たち
パキスタンの無国籍の子どもの安全保障や支援と聞くと、遠い国の話のようにも感じられます。
SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」という視点は、パキスタンのような開発途上国と呼ばれる地域を主対象とした目標のように感じられ、一見、日本に暮らす私たちと結びつきにくいかもしれません。しかし、災害や紛争が起これば、私たち誰もが取り残される側になる可能性もあるでしょう。私は「災害時こどものこころと居場所サポート」というNPO法人の代表として、子ども支援や子育て支援に携わる人々に災害時の子どもの居場所づくりの意義を啓発する研修を行う等、災害時の子どもの安全な居場所づくりの重要性やその方法について社会的理解を促進する活動にも取り組んでいます。災害が起きると学校が休校になったり、避難所で生活することになったりして、子どもが安心・安全に感じられる居場所がなくなってしまいます。これは子どもにとって相当なストレスです。一方で保護者や身近な大人たちは家の片付けや生活再建に忙しく、なかなか子どものことを考える余裕がありません。そんなときに子どもたちが安心・安全に過ごせる居場所を避難所や地域に作れるように、全国で研修会を開催しています。
2022年8月には、文京区と東洋大学の企画で小学生を対象にワークショップを開催しました。災害時、避難所のどこにどのようなレイアウトで子ども用のスペースを作れば、自分たちは安心・安全だと感じられるのか、ということを一緒に考えながら実際にプランを描いてもらいました。この取り組みを通して、「自分たち(子ども)にも安心・安全な居場所を持つ権利がある。だからそういう居場所が欲しいと言っていいんだ」と感じてもらいたいです。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209287335-O7-0MQ0B0wf】
災害時の子どもにやさしい空間を考える研修会の様子
国内外の垣根を越えて、子どもの権利に主眼を置いた取り組みを
子どもの安全保障や居場所づくりで、今後私たちはどのようなことに取り組むべきだとお考えですか。
災害時の子どもの支援活動の多くは平時から準備できることです。普段から子どもたちの声に耳を傾ける仕組みがあれば、災害時にも子どもに寄り添った支援が可能になります。
海外の子どもと日本の子どもを分けて考えるのではなく、一人ひとりに寄り添い子どもの権利に主眼を置いた取り組みがより活発化していくことを期待しています。子どもの権利という視点についても、日本でまだまだ定着しているとは言えない状況です。しかし2016年に児童福祉法が改正され、子どもの権利条約の主要な理念が盛り込まれたことで、子どもの権利に対する理解が促進されてきています。さらに、今年6月に「こども家庭庁設置法案」と「こども基本法案」が成立し、2023年4月には「こども家庭庁」が設置されることが決まりました。こうした子どもの権利を守るための新たな動きに注目し、さまざまな角度から研究を推進したいと考えています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202209287335-O8-zCzTDC1o】
小野 道子(おの みちこ)
東洋大学社会学部社会福祉学科准教授/博士(国際貢献)
専門分野:子どもの権利学、子どもの安全保障
研究キーワード:子どもの権利、災害子ども支援、南アジア地域の子どもの保護
著書・論文等:「震災による父子家庭支援の現状と支援の課題」『教育と医学』62巻3号ほか
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TOYO SDGs News Letter
https://www.toyo.ac.jp/sdgs/