KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭 ハッカソン+アワードから生まれた7作品の参加が決定
[15/12/17]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
2015年12月17日、茨城県北芸術祭実行委員会は、16年秋に茨城県北6市町で開催される国際芸術祭「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」への出展作品7作品を追加発表しました。
[画像: http://prtimes.jp/i/16818/1/resize/d16818-1-415460-0.jpg ]
今日、発展するテクノロジーと多様化するアートは、新たなアートの制作方法を生み出しています。そのような手法のひとつとして注目されているのが「ハッカソン」(注1)です。この動向を受け、茨城県北芸術祭実行委員会は、今秋、国内の芸術祭・国際展で初開催となるアートハッカソン「KENPOKU Art Hack Day」を実施し、3チームを選出いたしました。
来年9月17日より開催する「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」では、選考された3作品に加え、国内で開催された3つのハッカソンと連携して、合計7作品を展示いたします。
出品作の内訳
1. 「KENPOKU Art Hack Day」(茨城県北芸術祭実行委員会主催) より3作品
2.「3331α Art Hack Day」(3331 alpha主催、2015年) より2作品
3.「CREATIVE HACK AWARD」(『WIRED』日本版 主催、2015年) より1作品
4. 「Bio Art Hackathon」(金沢21世紀美術館主催、2015年) より1作品
(注1)あらかじめ決められた時間とテーマのなかで、自身のスキルを使い、グループによる議論と試行錯誤を通じて作品・製品を制作する手法や、参加型イベント。
詳細につきましては、pdfをご覧下さい。
pdfダウンロードサイトURL:http://kenpoku-art.jp/pdf/kenpoku_pr1216.pdf
1.茨城県北芸術祭主催ハッカソン
『KENPOKU Art Hack Day』
参加者は茨城県北地域の自然・産業・文化の調査・視察などを通して、この地域の特性を理解し、そこから得られるインスピレーションを元に作品のアイデアを提案、さらに試作制作までをグループ協働で行いました。10月24日〜25日には実際に茨城県北地域を訪問し、その後アイディエーション(アイデア出し)を実施。自主的にチームを結成し、11月7日〜8日には東京でプロトタイプの制作を行いました。そして審査員へのプレゼンテーションを経て、13チームのなかから3チームの提案が公式出展作品として選出されました。
選出作品
作品名:干渉する浮遊体
アーティスト:甲斐 桜、佐藤 大基、水落 大、橋本 次郎、Mafumi Hishida、柳澤 佑磨、アビル ショウゴ
ガラスのお椀の中にシャボン玉を吹くと、シャボン玉は下まで落下せずに、内部空間の中空に浮遊し、制止した美しい姿を見せます。シャボン玉の表面には周囲の環境が映り込み、自然、人、あるいは建築などを取り込みます。
[選出理由]
シャボン玉とは消えるもの。その先入観を軽快に裏切るのがこの作品である。本当にシャボン玉なのかと目を疑ってしまうほどの安定感をもって、空中に浮遊する。浮遊しながら、微細な空気の流れに呼応して、浮き沈み、漂い、結びつき、そして消滅する。そして音が、シャボン玉の動きに感情を与える。シャボン玉の科学者、ガラス作家、そして音や映像といったエンジニアのチームだから実現した、ハッカソンならではの作品であり、驚きを感じさせる作品だった。また芸術祭で展開するにあたり、おおよその技術的課題がクリアされており、運用面、予算面も具体的に検討されている点も高く評価した。
作品名:A Wonder Lasts but Nine Days 〜友子の噂〜
アーティスト:Kanako Saito、加藤 誠洋、岩沢 卓、増田 拓哉
日鉱記念館の展示資料からインスピレーションを得たプロジェクトです。「山中友子」と呼ばれる当時の炭鉱の互助制度の調査資料を日立多賀の閉鎖されていたバーの中に展示し、その地域の忘れられていた歴史を描くとともに、周囲のお店と交流を深め、地域や社会の歴史、人間の生きる意味を問いかけつつ、コミュニティーとの新たな歴史を紡ぎ出します。
[選出理由]
歴史には、一つの側面でしか語られない危うさがある。多くは、勝者の視点だ。弱いもの、小さなものの声はしばしば捨象される。このチームはそこに目をつけた。一時期日本の基幹産業であった炭鉱と、それを支えた名もなき坑夫たち。炭鉱夫たちの社会に発生した「山中友子」という互助制度に焦点を当て、今も存続する県北エリアの飲み屋街に拠点を据え、忘れ去られていたもう一つの(裏面ともいえる)声=歴史を紡ぎなおそうという挑戦だ。社会的な問題を別な視点から見ることを促すアートの独自の役割を追求する、重要なアプローチだと感じた。またすでに現地に足を運び、拠点エリアへの理解を深めていることや、プロジェクト候補地のオーナーとの交渉も進めており、プロジェクトの実現性が高い点も、採用した要因である。
作品名:Vide Infra
アーティスト:吉岡 裕記、金岡 大輝、砂山 タイチ、御幸 朋寿、三桶 シモン
発酵食品の納豆から樹脂を作り出し、それを用いて造形物を作るプロジェクトです。この樹脂は、自然の中に放置すれば、バクテリアで分解されて土に帰っていきます。環境問題に対するコメントとなるだけでなく、バイオ技術を援用して食の文化と物作りを結びつけたユニークな取り組みです。
[選出理由]
納豆という茨城県北の特産物、芸術祭の1つのテーマでもあるバイオ、そしてテクノロジーの掛け合わせというユニークな視点を評価した。納豆菌にγ線をあて硬直したものを樹脂化、さらに3Dプリンターで納豆樹脂プリントしたものを県北のそれぞれの土地によって異なる微生物に分解させ、環境に呼応した唯一無二の形体に変化していくことを楽しむ作品である。環境問題に対して、新たな視点での問いの投げかけになることも期待している。
審査員コメント
わずか2週間で着想から実装に至ったとは思えないほど県北の文化、社会、歴史を深く捉えたユニークな提案が多く、感銘を受けた。また、提案された作品の幅も広く、印象的だった。微生物やバイオテクノロジーを取り込んだ作品がある一方で、地域を巻き込むコミュニティ型のプロジェクトや、食に対する取り組み、開催場所の特性を生かしたインスタレーション作品など、ユニークなアイデアがあり、メッセージ性も強く、今回選出した作品以外にも実現を期待したいものが複数あった。
南條 史生(KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭 総合ディレクター/森美術館 館長)
[実施概要]
実施日:2015年10月24日〜25日,11月7日〜8日
審査員:南條 史生,谷川 じゅんじ,齋藤 精一,若林 恵
会場:日立シビックセンター,FabCafe Tokyo
参加者数:55名
http://www.kenpoku-arthackday.com
2.連携ハッカソン
■ 3331α Art Hack Day
「3331 alpha」 が主催する、アートに特化したハッカソンです。3331 alphaとは、コミュニティアートを推進するアートセンター「3331 Arts Chiyoda」と、クリエイティブ・コミュニティ創出を専門とするデザインファーム「VOLOCITEE Inc.」が共同で立ち上げた、アーティストと他分野との共創を通して、社会におけるアーティストの地位向上を目指すプロジェクトです。参加申請者から選出された50名のアーティストとエンジニアが一堂に会し、芸術と技術が融合した新たな作品を、3日間をかけて即興的に制作しました。
選出作品
作品名:Sound of Tapboard
アーティスト:米澤 一平、佐藤 ねじ、水落 大、池澤 あやか、中農 稔
床の中にセンサーを仕込み、その上ではねたり、タップダンスを踊ると、音がでる仕組みです。音は参加者が選択して、虫の鳴き声、犬の吠える声などを選択することができ、こどもから大人まで、参加して楽しむことができます。
作品名:運命的アクシデント
アーティスト:チアキ コハラ、只石快歩、坪倉 輝明、瓜田 裕也、衛藤 慧
演劇のステージのような空間の中で、白い壁に絵を描くと、描画、アニメーションの影、音楽がインターアクティブに反応し、物語を体験できます。制作者によるパフォーマンスを公開すると同時に、観客が絵を描いたり、プロジェクションの影と戯れることを可能にします。こどももお年寄りも重層的で、多様な体験を得られます。
[実施概要]
実施日:2015年8月22日〜9月6日
審査員:齋藤精一、中村 政人、佐渡島 庸平、中村 勇吾
会場:3331 Arts Chiyoda 1Fメインギャラリー
参加者数:64名
主催:3331 alpha
http://arthackday.jp
■ CREATIVE HACK AWARD
CREATIVE HACK AWARDはWIREDが2013年に開始したイヴェントで、既成概念を壊す(=ハックする)ことから生まれた「野心的なヴィジョン」と「国や地域にとらわれずに活躍するためのビジネスマインド」を重視した、次世代クリエイターを発掘するアワードです。また、クリエイティヴに携わる多くの人にとって、「この先、クリエイターに求められる資質とは何か」「今後、クリエイターが担う領域とは何か」という点を改めて考えるきっかけとなることが、本アワードの開催意義でもあります。
3回目の開催となる今年は5月13日〜10月13日の4ヶ月間を応募期間に設定。「既成概念をハックせよ」をテーマに、「グラフィック」「ムーヴィー」「3Dプロダクト」「アイデア」の4部門で作品を募集しました。日本国内に加え、イギリス、スイスをはじめとするヨーロッパや、香港、台湾などアジアからも参加があり、過去最多となる365点もの作品が集まりました。
そのなかからグランプリに輝いたのは、落合陽一の《Fairy Lights in Femtoseconds》。フェムト秒(10の-15乗秒)の単位で空気分子をプラズマ化させ、空中で「触れることができる」妖精の映像を作りだすという作品です。この画期的な提案で、茨城県北芸術祭への参加が決定しました。
落合 陽一
1987年東京都生まれ/東京都在住
メディアアーティスト、実業家、研究者。筑波大学助教。落合陽一研究室(デジタルネイチャー研究室)主宰。応用物理、計算機科学、アートを融合させる研究や作品制作を展開。シャボン膜に超音波を当てることでスクリーンとする《コロイドディスプレイ》、超音波スピーカーによる音響浮揚技術《ピクシーダスト》など、コンピュータとリアルの世界をつなぐ驚きに満ちた世界を生み出し、「現代の魔法使い」とも呼ばれる。筑波大学学長賞受賞(2011)をはじめ国内外での入賞多数。メディアにも多出。作家・研究活動に加え、Pixie Dust TechnologiesのCEOの他、ジセカイ株式会社に経営・研究で参画し、学際分野のアウトリーチにも活動実績がある。
[実施概要]
実施日:2015年5月11日〜11月30日
審査員:齋藤精一、笠島久嗣、水口哲也、佐々木康晴、クラウディア・クリストヴァン、福原志保、岸田茂晴、若林恵
応募作品数:365作品
主催:『WIRED』日本版 / 協賛 : 株式会社ワコム
http://hack.wired.jp
■ Bio Art Hackathon
金沢21世紀美術館で開催された、バイオテクノロジーと芸術の交差に焦点をあてた開発イベント「Bio Art Hackathon」に参画したチーム「BCL」の新作を招致しました。金沢では「DNAハッキング」をテーマにアーティストとエンジニアが集まり、ボーカロイド初音ミクのDNA、オープンソースとして公開されているさまざまな動植物のDNAのデータベースなどを素材に用い、芸術的発想と科学的思考を融合させ、作品を作りあげました。茨城県北芸術祭の展示では、これを発展させた作品を提案する予定です。
BCL
BCLは、サイエンス、アート、デザインの領域を超えたコラボレーションを行うアーティスティック・リサーチ・フレームワーク。2004年にGeorg Tremmel(ゲオアグ・トレメル)と福原志保によってイギリスにて立ち上げられた。2007年に活動拠点を東京に移し、Inter Communication Center[ICC]やアルスエレクトロニカなどの国内外のミュージアムやギャラリーでの展示やコラボレーションを行う。特に、バイオテクノロジーの発展が与える社会へのインパクトや、水環境問題について焦点を当てている。また、それらにクリティカルに介し、閉ざされたテクノロジーを人々に開いていくことをミッションとしている。
[実施概要]
実施日:2015年7月24日〜26日
審査員:八代嘉美、林千晶、江渡浩一郎、宮田人司、秋元雄史
会場:金沢21世紀美術館 プロジェクト工房
モデレーター:BCL
参加者数:20名(国内外からの応募者52名より選抜。ゲストプログラマー:徳井直生、久保壽光)
主催:金沢21世紀美術館[(公財)金沢芸術創造財団]
https://www.kanazawa21.jp/exhibit/ghost_hackathon
3. 茨城県北芸術祭概要
風光明媚な海と山が織り成す豊かな自然に恵まれた茨城県北地域は、かつて岡倉天心・横山大観らが芸術創作活動の拠点とした五浦海岸や、クリストのアンブレラ・プロジェクトで世界の注目を集めた里山をはじめ、独自の気候・風土や歴史、文化、食、地場産業など、多くの創造的な地域資源を有しています。こうした資源の持つ潜在的な魅力をアートの力を介して引き出すことにより、新たな価値の発見と地域の活性化を図るため、日本最大規模となる広大な「KENPOKU」地域を舞台として、国際的な芸術祭を開催いたします。
【テーマ】 海か、山か、芸術か?(Sea, Mountains, Art!)
【会期】2016年9 月17 日(土)〜11 月20 日(日)[65 日間]
【開催市町】茨城県北地域6市町
日立市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、常陸大宮市、大子町
【主な展示会場】
1.五浦・高萩海浜エリア(茨城県天心記念五浦美術館周辺や高萩市の海浜部)
2.日立駅周辺エリア(JR常磐線日立駅周辺)
3.奥久慈清流エリア(常陸大宮市の久慈川流域やJR水郡線常陸大子駅前地区)
4.常陸太田鯨ヶ丘エリア(常陸太田市中心部の街並み)
(その他の会場でも開催を検討)
【参加予定アーティスト】ソンミン・アン、ザドック・ベン=デイヴィッド、オロン・カッツ、ティファニー・チュン、ハンス・ペーター・クーン、テア・マキパー、森山 茜、落合 陽一、チームラボ、米谷 健+ジュリア、BCLほか
【テーマソング制作】やくしまるえつこ
【総合ディレクター】南條 史生(森美術館館長)
【キュレーター】四方 幸子(東京造形大学・多摩美術大学客員教授)
【アソシエイト・キュレーター】金澤 韻 (インディペンデント・キュレーター)
【クリエイティブ・ディレクター】谷川 じゅんじ(JTQ株式会社代表)
【コミュニケーション・ディレクター】林 千晶(株式会社ロフトワーク代表取締役)
【作品数】約80点(プロジェクトを含む うち海外からのアーティスト約半数を予定)
【主催】茨城県北芸術祭実行委員会 会長:橋本昌茨城県知事
【助成】国際交流基金、各国在日大使館等(予定)
【協力】東京藝術大学、筑波大学、茨城大学、シラパコーン大学(タイ)、
国立芸術大学デンパサール校(インドネシア)、ラサール芸術大学(シンガポール)、
デラサール大学(フィリピン)、アーカスプロジェクト実行委員会(予定)
KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭オフィシャルサイト
URL: http://www.kenpoku-art.jp
[画像: http://prtimes.jp/i/16818/1/resize/d16818-1-415460-0.jpg ]
今日、発展するテクノロジーと多様化するアートは、新たなアートの制作方法を生み出しています。そのような手法のひとつとして注目されているのが「ハッカソン」(注1)です。この動向を受け、茨城県北芸術祭実行委員会は、今秋、国内の芸術祭・国際展で初開催となるアートハッカソン「KENPOKU Art Hack Day」を実施し、3チームを選出いたしました。
来年9月17日より開催する「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」では、選考された3作品に加え、国内で開催された3つのハッカソンと連携して、合計7作品を展示いたします。
出品作の内訳
1. 「KENPOKU Art Hack Day」(茨城県北芸術祭実行委員会主催) より3作品
2.「3331α Art Hack Day」(3331 alpha主催、2015年) より2作品
3.「CREATIVE HACK AWARD」(『WIRED』日本版 主催、2015年) より1作品
4. 「Bio Art Hackathon」(金沢21世紀美術館主催、2015年) より1作品
(注1)あらかじめ決められた時間とテーマのなかで、自身のスキルを使い、グループによる議論と試行錯誤を通じて作品・製品を制作する手法や、参加型イベント。
詳細につきましては、pdfをご覧下さい。
pdfダウンロードサイトURL:http://kenpoku-art.jp/pdf/kenpoku_pr1216.pdf
1.茨城県北芸術祭主催ハッカソン
『KENPOKU Art Hack Day』
参加者は茨城県北地域の自然・産業・文化の調査・視察などを通して、この地域の特性を理解し、そこから得られるインスピレーションを元に作品のアイデアを提案、さらに試作制作までをグループ協働で行いました。10月24日〜25日には実際に茨城県北地域を訪問し、その後アイディエーション(アイデア出し)を実施。自主的にチームを結成し、11月7日〜8日には東京でプロトタイプの制作を行いました。そして審査員へのプレゼンテーションを経て、13チームのなかから3チームの提案が公式出展作品として選出されました。
選出作品
作品名:干渉する浮遊体
アーティスト:甲斐 桜、佐藤 大基、水落 大、橋本 次郎、Mafumi Hishida、柳澤 佑磨、アビル ショウゴ
ガラスのお椀の中にシャボン玉を吹くと、シャボン玉は下まで落下せずに、内部空間の中空に浮遊し、制止した美しい姿を見せます。シャボン玉の表面には周囲の環境が映り込み、自然、人、あるいは建築などを取り込みます。
[選出理由]
シャボン玉とは消えるもの。その先入観を軽快に裏切るのがこの作品である。本当にシャボン玉なのかと目を疑ってしまうほどの安定感をもって、空中に浮遊する。浮遊しながら、微細な空気の流れに呼応して、浮き沈み、漂い、結びつき、そして消滅する。そして音が、シャボン玉の動きに感情を与える。シャボン玉の科学者、ガラス作家、そして音や映像といったエンジニアのチームだから実現した、ハッカソンならではの作品であり、驚きを感じさせる作品だった。また芸術祭で展開するにあたり、おおよその技術的課題がクリアされており、運用面、予算面も具体的に検討されている点も高く評価した。
作品名:A Wonder Lasts but Nine Days 〜友子の噂〜
アーティスト:Kanako Saito、加藤 誠洋、岩沢 卓、増田 拓哉
日鉱記念館の展示資料からインスピレーションを得たプロジェクトです。「山中友子」と呼ばれる当時の炭鉱の互助制度の調査資料を日立多賀の閉鎖されていたバーの中に展示し、その地域の忘れられていた歴史を描くとともに、周囲のお店と交流を深め、地域や社会の歴史、人間の生きる意味を問いかけつつ、コミュニティーとの新たな歴史を紡ぎ出します。
[選出理由]
歴史には、一つの側面でしか語られない危うさがある。多くは、勝者の視点だ。弱いもの、小さなものの声はしばしば捨象される。このチームはそこに目をつけた。一時期日本の基幹産業であった炭鉱と、それを支えた名もなき坑夫たち。炭鉱夫たちの社会に発生した「山中友子」という互助制度に焦点を当て、今も存続する県北エリアの飲み屋街に拠点を据え、忘れ去られていたもう一つの(裏面ともいえる)声=歴史を紡ぎなおそうという挑戦だ。社会的な問題を別な視点から見ることを促すアートの独自の役割を追求する、重要なアプローチだと感じた。またすでに現地に足を運び、拠点エリアへの理解を深めていることや、プロジェクト候補地のオーナーとの交渉も進めており、プロジェクトの実現性が高い点も、採用した要因である。
作品名:Vide Infra
アーティスト:吉岡 裕記、金岡 大輝、砂山 タイチ、御幸 朋寿、三桶 シモン
発酵食品の納豆から樹脂を作り出し、それを用いて造形物を作るプロジェクトです。この樹脂は、自然の中に放置すれば、バクテリアで分解されて土に帰っていきます。環境問題に対するコメントとなるだけでなく、バイオ技術を援用して食の文化と物作りを結びつけたユニークな取り組みです。
[選出理由]
納豆という茨城県北の特産物、芸術祭の1つのテーマでもあるバイオ、そしてテクノロジーの掛け合わせというユニークな視点を評価した。納豆菌にγ線をあて硬直したものを樹脂化、さらに3Dプリンターで納豆樹脂プリントしたものを県北のそれぞれの土地によって異なる微生物に分解させ、環境に呼応した唯一無二の形体に変化していくことを楽しむ作品である。環境問題に対して、新たな視点での問いの投げかけになることも期待している。
審査員コメント
わずか2週間で着想から実装に至ったとは思えないほど県北の文化、社会、歴史を深く捉えたユニークな提案が多く、感銘を受けた。また、提案された作品の幅も広く、印象的だった。微生物やバイオテクノロジーを取り込んだ作品がある一方で、地域を巻き込むコミュニティ型のプロジェクトや、食に対する取り組み、開催場所の特性を生かしたインスタレーション作品など、ユニークなアイデアがあり、メッセージ性も強く、今回選出した作品以外にも実現を期待したいものが複数あった。
南條 史生(KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭 総合ディレクター/森美術館 館長)
[実施概要]
実施日:2015年10月24日〜25日,11月7日〜8日
審査員:南條 史生,谷川 じゅんじ,齋藤 精一,若林 恵
会場:日立シビックセンター,FabCafe Tokyo
参加者数:55名
http://www.kenpoku-arthackday.com
2.連携ハッカソン
■ 3331α Art Hack Day
「3331 alpha」 が主催する、アートに特化したハッカソンです。3331 alphaとは、コミュニティアートを推進するアートセンター「3331 Arts Chiyoda」と、クリエイティブ・コミュニティ創出を専門とするデザインファーム「VOLOCITEE Inc.」が共同で立ち上げた、アーティストと他分野との共創を通して、社会におけるアーティストの地位向上を目指すプロジェクトです。参加申請者から選出された50名のアーティストとエンジニアが一堂に会し、芸術と技術が融合した新たな作品を、3日間をかけて即興的に制作しました。
選出作品
作品名:Sound of Tapboard
アーティスト:米澤 一平、佐藤 ねじ、水落 大、池澤 あやか、中農 稔
床の中にセンサーを仕込み、その上ではねたり、タップダンスを踊ると、音がでる仕組みです。音は参加者が選択して、虫の鳴き声、犬の吠える声などを選択することができ、こどもから大人まで、参加して楽しむことができます。
作品名:運命的アクシデント
アーティスト:チアキ コハラ、只石快歩、坪倉 輝明、瓜田 裕也、衛藤 慧
演劇のステージのような空間の中で、白い壁に絵を描くと、描画、アニメーションの影、音楽がインターアクティブに反応し、物語を体験できます。制作者によるパフォーマンスを公開すると同時に、観客が絵を描いたり、プロジェクションの影と戯れることを可能にします。こどももお年寄りも重層的で、多様な体験を得られます。
[実施概要]
実施日:2015年8月22日〜9月6日
審査員:齋藤精一、中村 政人、佐渡島 庸平、中村 勇吾
会場:3331 Arts Chiyoda 1Fメインギャラリー
参加者数:64名
主催:3331 alpha
http://arthackday.jp
■ CREATIVE HACK AWARD
CREATIVE HACK AWARDはWIREDが2013年に開始したイヴェントで、既成概念を壊す(=ハックする)ことから生まれた「野心的なヴィジョン」と「国や地域にとらわれずに活躍するためのビジネスマインド」を重視した、次世代クリエイターを発掘するアワードです。また、クリエイティヴに携わる多くの人にとって、「この先、クリエイターに求められる資質とは何か」「今後、クリエイターが担う領域とは何か」という点を改めて考えるきっかけとなることが、本アワードの開催意義でもあります。
3回目の開催となる今年は5月13日〜10月13日の4ヶ月間を応募期間に設定。「既成概念をハックせよ」をテーマに、「グラフィック」「ムーヴィー」「3Dプロダクト」「アイデア」の4部門で作品を募集しました。日本国内に加え、イギリス、スイスをはじめとするヨーロッパや、香港、台湾などアジアからも参加があり、過去最多となる365点もの作品が集まりました。
そのなかからグランプリに輝いたのは、落合陽一の《Fairy Lights in Femtoseconds》。フェムト秒(10の-15乗秒)の単位で空気分子をプラズマ化させ、空中で「触れることができる」妖精の映像を作りだすという作品です。この画期的な提案で、茨城県北芸術祭への参加が決定しました。
落合 陽一
1987年東京都生まれ/東京都在住
メディアアーティスト、実業家、研究者。筑波大学助教。落合陽一研究室(デジタルネイチャー研究室)主宰。応用物理、計算機科学、アートを融合させる研究や作品制作を展開。シャボン膜に超音波を当てることでスクリーンとする《コロイドディスプレイ》、超音波スピーカーによる音響浮揚技術《ピクシーダスト》など、コンピュータとリアルの世界をつなぐ驚きに満ちた世界を生み出し、「現代の魔法使い」とも呼ばれる。筑波大学学長賞受賞(2011)をはじめ国内外での入賞多数。メディアにも多出。作家・研究活動に加え、Pixie Dust TechnologiesのCEOの他、ジセカイ株式会社に経営・研究で参画し、学際分野のアウトリーチにも活動実績がある。
[実施概要]
実施日:2015年5月11日〜11月30日
審査員:齋藤精一、笠島久嗣、水口哲也、佐々木康晴、クラウディア・クリストヴァン、福原志保、岸田茂晴、若林恵
応募作品数:365作品
主催:『WIRED』日本版 / 協賛 : 株式会社ワコム
http://hack.wired.jp
■ Bio Art Hackathon
金沢21世紀美術館で開催された、バイオテクノロジーと芸術の交差に焦点をあてた開発イベント「Bio Art Hackathon」に参画したチーム「BCL」の新作を招致しました。金沢では「DNAハッキング」をテーマにアーティストとエンジニアが集まり、ボーカロイド初音ミクのDNA、オープンソースとして公開されているさまざまな動植物のDNAのデータベースなどを素材に用い、芸術的発想と科学的思考を融合させ、作品を作りあげました。茨城県北芸術祭の展示では、これを発展させた作品を提案する予定です。
BCL
BCLは、サイエンス、アート、デザインの領域を超えたコラボレーションを行うアーティスティック・リサーチ・フレームワーク。2004年にGeorg Tremmel(ゲオアグ・トレメル)と福原志保によってイギリスにて立ち上げられた。2007年に活動拠点を東京に移し、Inter Communication Center[ICC]やアルスエレクトロニカなどの国内外のミュージアムやギャラリーでの展示やコラボレーションを行う。特に、バイオテクノロジーの発展が与える社会へのインパクトや、水環境問題について焦点を当てている。また、それらにクリティカルに介し、閉ざされたテクノロジーを人々に開いていくことをミッションとしている。
[実施概要]
実施日:2015年7月24日〜26日
審査員:八代嘉美、林千晶、江渡浩一郎、宮田人司、秋元雄史
会場:金沢21世紀美術館 プロジェクト工房
モデレーター:BCL
参加者数:20名(国内外からの応募者52名より選抜。ゲストプログラマー:徳井直生、久保壽光)
主催:金沢21世紀美術館[(公財)金沢芸術創造財団]
https://www.kanazawa21.jp/exhibit/ghost_hackathon
3. 茨城県北芸術祭概要
風光明媚な海と山が織り成す豊かな自然に恵まれた茨城県北地域は、かつて岡倉天心・横山大観らが芸術創作活動の拠点とした五浦海岸や、クリストのアンブレラ・プロジェクトで世界の注目を集めた里山をはじめ、独自の気候・風土や歴史、文化、食、地場産業など、多くの創造的な地域資源を有しています。こうした資源の持つ潜在的な魅力をアートの力を介して引き出すことにより、新たな価値の発見と地域の活性化を図るため、日本最大規模となる広大な「KENPOKU」地域を舞台として、国際的な芸術祭を開催いたします。
【テーマ】 海か、山か、芸術か?(Sea, Mountains, Art!)
【会期】2016年9 月17 日(土)〜11 月20 日(日)[65 日間]
【開催市町】茨城県北地域6市町
日立市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、常陸大宮市、大子町
【主な展示会場】
1.五浦・高萩海浜エリア(茨城県天心記念五浦美術館周辺や高萩市の海浜部)
2.日立駅周辺エリア(JR常磐線日立駅周辺)
3.奥久慈清流エリア(常陸大宮市の久慈川流域やJR水郡線常陸大子駅前地区)
4.常陸太田鯨ヶ丘エリア(常陸太田市中心部の街並み)
(その他の会場でも開催を検討)
【参加予定アーティスト】ソンミン・アン、ザドック・ベン=デイヴィッド、オロン・カッツ、ティファニー・チュン、ハンス・ペーター・クーン、テア・マキパー、森山 茜、落合 陽一、チームラボ、米谷 健+ジュリア、BCLほか
【テーマソング制作】やくしまるえつこ
【総合ディレクター】南條 史生(森美術館館長)
【キュレーター】四方 幸子(東京造形大学・多摩美術大学客員教授)
【アソシエイト・キュレーター】金澤 韻 (インディペンデント・キュレーター)
【クリエイティブ・ディレクター】谷川 じゅんじ(JTQ株式会社代表)
【コミュニケーション・ディレクター】林 千晶(株式会社ロフトワーク代表取締役)
【作品数】約80点(プロジェクトを含む うち海外からのアーティスト約半数を予定)
【主催】茨城県北芸術祭実行委員会 会長:橋本昌茨城県知事
【助成】国際交流基金、各国在日大使館等(予定)
【協力】東京藝術大学、筑波大学、茨城大学、シラパコーン大学(タイ)、
国立芸術大学デンパサール校(インドネシア)、ラサール芸術大学(シンガポール)、
デラサール大学(フィリピン)、アーカスプロジェクト実行委員会(予定)
KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭オフィシャルサイト
URL: http://www.kenpoku-art.jp