メディカルジャーナリズム勉強会、第3回伝え方サミット「SNS時代の『#あたらしいクスリ情報』のカタチ」を開催
[19/02/05]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
〜セルフメディケーション時代の“市販薬リテラシー”を考える〜
◆一番身近なクスリである「市販薬」の情報をテーマに、現役医師・薬剤師が講演
◆報道関係者や医療関係者など50名以上が参加。「市販薬」情報の課題や伝え方について、活発なディスカッション
一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会(代表:市川 衛)は、2019年1月25日(金)、第3回伝え方サミット「SNS時代の『#あたらしいクスリ情報』のカタチ〜セルフメディケーション時代の“市販薬リテラシー”を考える〜」を開催しました。参加者は、報道関係者、医療関係者等を含む計55名。当日は、『クスリ早見帖ブック 市販薬354』で知られる医師 平 憲二 氏、メディアやSNS等で発信活動を行う薬剤師 kuriedits 氏より、「市販薬」情報の伝え方をテーマに講演頂きました。また、講演後は薬剤師 高橋 秀和 氏も加わり、現在の日本における「市販薬」情報に関する課題、また「市販薬」情報の伝え方に関して、参加者からの質問も交えながら活発な議論が行われました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/41443/1/resize/d41443-1-420881-0.jpg ]
<講演およびパネルディスカッションの内容(抜粋)>
医師 平 憲二 氏 「報道事例から考える市販薬情報」
病院や診療所の診療で役立つよう、主な市販薬を一覧でまとめた冊子「クスリ早見帖」を配布している医師の平さん。2014年のデング熱感染の報道を元に、メディアが陥りがちな「落とし穴」を解説してくださいました。
会場でも知らない人が多かったのは、「アスピリン」が一般名だということ。また、他にも「アセチルサリチル酸」という一般名もあります(アスピリン=アセチルサリチル酸)。そして、市販薬には「アセチルサリチル酸」としか表示していない製品も多く、報道でアスピリンと伝えても、アスピリンには気づかない方もいます。
また、市販薬の多くは「合剤」で、実は解熱鎮痛の成分が2〜3種類入っているものがあります。
デング熱には「アセトアミノフェンが入っているから大丈夫」ではなく、「非ステロイド性抗炎症薬が入っていない薬を探して」と注意起しなければならなかったのです。ただ、この「非ステロイド抗炎症薬」については、医療機関でも定義の揺らぎがあるようで……。
医療用医薬品では使われていない成分が、市販薬では現役、ということもあります。医師が市販薬について知らないという現状もあると紹介してくださいました。
薬剤師 kuriedits氏 「薬剤師が語る・SNS時代の市販薬情報」
kurieditsさんは、ドラッグストアで薬剤師として働きながら、匿名で市販薬の情報を発信しています。国は「セルフメディケーション」を推進しているのに、市販薬情報が足りていないのではないかと指摘します。
では、市販薬の情報発信を難しくしている壁とは何なのか?一つ目は、市販薬を中心に扱う薬剤師が圧倒的に少ないことです。医薬品用途別生産比率をみると、医療用医薬品9割に対して、OTC医薬品は1割。人も、お金も、医療用医薬品に流れていっている現状があるそうです。次に、市販薬にしっかりしたエビデンスがなく、専門家ほど記事を書きづらいといいます。
最後に、kurieditsさんは「市販薬成分に関心が集まりづらい社会制度」があると指摘します。市販薬の情報提供の多くは「努力義務」で、聞かれたら答える程度。アマゾンなどのECサイトの口コミは禁止されており「いい・悪い」を議論する場も、ほとんどありません。 情報の伝え方として、kurieditsさんは「『現場の薬剤師に聞いてみよう!』というパス型記事を意識している」といいます。花粉症や風邪、インフルの時……意外と役立つ市販薬。ネガティブな情報が多くなりがちですが、「うまく使おう」という記事が増えてほしいと話していました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/41443/1/resize/d41443-1-166926-1.jpg ]
パネルディスカッション
パネルディスカッションには、兵庫県で薬局の薬剤師として働く高橋秀和さんも参加。カフェインやコデインのはいった市販薬での乱用や依存の問題や、薬の情報発信をしようと思ったきっかけなどを話していただき、会場からの質問も受けつけましたが、時間が足りないほどでした。
メディアへ求めることについて、kurieditsさんは「市販薬に関心を持ってもらって、何が問題なのか第三者の目で評価してほしい。現場のドラッグストアだけではうまくいかないこともある」と言います。
平さんは「市販薬の情報を一般の人に説明するのがとても難しい。分かりやすい説明をするための知恵を、報道関係の方に一般目線を手伝ってもらいたい」と呼びかけました。
「パス型の記事を書いて現場の迷惑にならないか」という質問もありました。 kurieditsさんは「今は消費者が選択できるだけの市販薬の情報がない。『この薬は危ないの?』と聞かれたら、勉強してきた薬剤師ほどやりがいを感じるもの」と話しました。 高橋さんは、「制度上の問題があり、日本の薬剤師は医師の顔色を窺い、販売側の意向を忖度するため、薬剤師選びは難しい。優秀かどうか見分けるのも困難。一方、家族や友人が薬剤師なら信頼して相談できている。『親密性』から考えることが糸口になるかもしれない」と指摘しました。
登録販売者については、高橋さんが「登録販売者は薬剤師と共に医薬品の適正使用を働きかけるためではなく、薬剤師なしに単独で市販薬を販売するための日本特有の資格であり、制度には反対の立場だ」と話しました。ただ、「実際問題、購入者の対応はしていかなきゃいけない。簡単ではないかもしれないが、密に相談できる社内の薬剤師を見つけ、交流してほしい」と答えていました。平さんも「メディアや薬剤師、登録販売者といった医療関係者が、ヨコのつながりを持っていく大切さ」を訴えていました。
【登壇者略歴】
平 憲二(ひら けんじ)氏
1966年宮崎県生まれ。医師。91年宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒。麻生飯塚病院での研修後、95年京都大学病院総合診療部。2001年京都大学大学院医学研究科博士課程内科系専攻修了(臨床疫学)。01年テキサス大学ヒューストン校健康情報学研究員を経て、03年京都大学病院総合診療科助手に着任。05年に株式会社プラメドを、13年に株式会社プラメドプラスを設立。著書に「クスリ早見帖ブック 市販薬354」(南山堂)、「クスリ早見帖副読本 医師が教える市販薬の選び方」(PHP研究所)。
Twitterアカウント: https://twitter.com/@hayamichou
kuriedits 氏
薬剤師。市販薬販売に携わりながら、匿名でブログ「ドラッグストアとジャーナリズム」を運営。「自分に合った市販薬を選びませんか?」をテーマに、ブログ等を通じて薬選びに役立つ情報の提供を行っている。JCEJ「ジャーナリズム・イノベーション・アワード」11位、朝日新聞「未来メディアキャンプ」未来メディアキャンプ賞受賞。
Twitterアカウント:https://twitter.com/kuriedits
高橋 秀和(たかはし ひでかず)氏
薬剤師。1997年神戸学院大学卒。病院、薬局、厚生労働省勤務を経て2006年より現職。医療・薬事・医薬品利用についてメディア等で記事の監修や執筆をしている。
Twitterアカウント:https://twitter.com/chihayaflu
一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会(AMJ)について
メディカルジャーナリズム勉強会は、2016年10月にメディア関係者と医療者の有志により発足しました。メディアと医療者の垣根を取り払い、医療健康情報のよりよい発信手法について学びあうことを目的にしています。会の発展に伴い、2018年に非営利型一般社団法人となりました。
当会では、医療健康情報の発信に関するイベントやセミナーを定期的に開いています。また、東京大学大学院医療コミュニケーション学教室などと共催で、「メディアと医療をつなぐ会」を開いています。
詳細は、http://medicaljournalism.jp/ をご参照下さい。
Facebook: https://www.facebook.com/groups/1328675450500398/
Twitter: https://twitter.com/associationofmj
◆一番身近なクスリである「市販薬」の情報をテーマに、現役医師・薬剤師が講演
◆報道関係者や医療関係者など50名以上が参加。「市販薬」情報の課題や伝え方について、活発なディスカッション
一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会(代表:市川 衛)は、2019年1月25日(金)、第3回伝え方サミット「SNS時代の『#あたらしいクスリ情報』のカタチ〜セルフメディケーション時代の“市販薬リテラシー”を考える〜」を開催しました。参加者は、報道関係者、医療関係者等を含む計55名。当日は、『クスリ早見帖ブック 市販薬354』で知られる医師 平 憲二 氏、メディアやSNS等で発信活動を行う薬剤師 kuriedits 氏より、「市販薬」情報の伝え方をテーマに講演頂きました。また、講演後は薬剤師 高橋 秀和 氏も加わり、現在の日本における「市販薬」情報に関する課題、また「市販薬」情報の伝え方に関して、参加者からの質問も交えながら活発な議論が行われました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/41443/1/resize/d41443-1-420881-0.jpg ]
<講演およびパネルディスカッションの内容(抜粋)>
医師 平 憲二 氏 「報道事例から考える市販薬情報」
病院や診療所の診療で役立つよう、主な市販薬を一覧でまとめた冊子「クスリ早見帖」を配布している医師の平さん。2014年のデング熱感染の報道を元に、メディアが陥りがちな「落とし穴」を解説してくださいました。
会場でも知らない人が多かったのは、「アスピリン」が一般名だということ。また、他にも「アセチルサリチル酸」という一般名もあります(アスピリン=アセチルサリチル酸)。そして、市販薬には「アセチルサリチル酸」としか表示していない製品も多く、報道でアスピリンと伝えても、アスピリンには気づかない方もいます。
また、市販薬の多くは「合剤」で、実は解熱鎮痛の成分が2〜3種類入っているものがあります。
デング熱には「アセトアミノフェンが入っているから大丈夫」ではなく、「非ステロイド性抗炎症薬が入っていない薬を探して」と注意起しなければならなかったのです。ただ、この「非ステロイド抗炎症薬」については、医療機関でも定義の揺らぎがあるようで……。
医療用医薬品では使われていない成分が、市販薬では現役、ということもあります。医師が市販薬について知らないという現状もあると紹介してくださいました。
薬剤師 kuriedits氏 「薬剤師が語る・SNS時代の市販薬情報」
kurieditsさんは、ドラッグストアで薬剤師として働きながら、匿名で市販薬の情報を発信しています。国は「セルフメディケーション」を推進しているのに、市販薬情報が足りていないのではないかと指摘します。
では、市販薬の情報発信を難しくしている壁とは何なのか?一つ目は、市販薬を中心に扱う薬剤師が圧倒的に少ないことです。医薬品用途別生産比率をみると、医療用医薬品9割に対して、OTC医薬品は1割。人も、お金も、医療用医薬品に流れていっている現状があるそうです。次に、市販薬にしっかりしたエビデンスがなく、専門家ほど記事を書きづらいといいます。
最後に、kurieditsさんは「市販薬成分に関心が集まりづらい社会制度」があると指摘します。市販薬の情報提供の多くは「努力義務」で、聞かれたら答える程度。アマゾンなどのECサイトの口コミは禁止されており「いい・悪い」を議論する場も、ほとんどありません。 情報の伝え方として、kurieditsさんは「『現場の薬剤師に聞いてみよう!』というパス型記事を意識している」といいます。花粉症や風邪、インフルの時……意外と役立つ市販薬。ネガティブな情報が多くなりがちですが、「うまく使おう」という記事が増えてほしいと話していました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/41443/1/resize/d41443-1-166926-1.jpg ]
パネルディスカッション
パネルディスカッションには、兵庫県で薬局の薬剤師として働く高橋秀和さんも参加。カフェインやコデインのはいった市販薬での乱用や依存の問題や、薬の情報発信をしようと思ったきっかけなどを話していただき、会場からの質問も受けつけましたが、時間が足りないほどでした。
メディアへ求めることについて、kurieditsさんは「市販薬に関心を持ってもらって、何が問題なのか第三者の目で評価してほしい。現場のドラッグストアだけではうまくいかないこともある」と言います。
平さんは「市販薬の情報を一般の人に説明するのがとても難しい。分かりやすい説明をするための知恵を、報道関係の方に一般目線を手伝ってもらいたい」と呼びかけました。
「パス型の記事を書いて現場の迷惑にならないか」という質問もありました。 kurieditsさんは「今は消費者が選択できるだけの市販薬の情報がない。『この薬は危ないの?』と聞かれたら、勉強してきた薬剤師ほどやりがいを感じるもの」と話しました。 高橋さんは、「制度上の問題があり、日本の薬剤師は医師の顔色を窺い、販売側の意向を忖度するため、薬剤師選びは難しい。優秀かどうか見分けるのも困難。一方、家族や友人が薬剤師なら信頼して相談できている。『親密性』から考えることが糸口になるかもしれない」と指摘しました。
登録販売者については、高橋さんが「登録販売者は薬剤師と共に医薬品の適正使用を働きかけるためではなく、薬剤師なしに単独で市販薬を販売するための日本特有の資格であり、制度には反対の立場だ」と話しました。ただ、「実際問題、購入者の対応はしていかなきゃいけない。簡単ではないかもしれないが、密に相談できる社内の薬剤師を見つけ、交流してほしい」と答えていました。平さんも「メディアや薬剤師、登録販売者といった医療関係者が、ヨコのつながりを持っていく大切さ」を訴えていました。
【登壇者略歴】
平 憲二(ひら けんじ)氏
1966年宮崎県生まれ。医師。91年宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒。麻生飯塚病院での研修後、95年京都大学病院総合診療部。2001年京都大学大学院医学研究科博士課程内科系専攻修了(臨床疫学)。01年テキサス大学ヒューストン校健康情報学研究員を経て、03年京都大学病院総合診療科助手に着任。05年に株式会社プラメドを、13年に株式会社プラメドプラスを設立。著書に「クスリ早見帖ブック 市販薬354」(南山堂)、「クスリ早見帖副読本 医師が教える市販薬の選び方」(PHP研究所)。
Twitterアカウント: https://twitter.com/@hayamichou
kuriedits 氏
薬剤師。市販薬販売に携わりながら、匿名でブログ「ドラッグストアとジャーナリズム」を運営。「自分に合った市販薬を選びませんか?」をテーマに、ブログ等を通じて薬選びに役立つ情報の提供を行っている。JCEJ「ジャーナリズム・イノベーション・アワード」11位、朝日新聞「未来メディアキャンプ」未来メディアキャンプ賞受賞。
Twitterアカウント:https://twitter.com/kuriedits
高橋 秀和(たかはし ひでかず)氏
薬剤師。1997年神戸学院大学卒。病院、薬局、厚生労働省勤務を経て2006年より現職。医療・薬事・医薬品利用についてメディア等で記事の監修や執筆をしている。
Twitterアカウント:https://twitter.com/chihayaflu
一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会(AMJ)について
メディカルジャーナリズム勉強会は、2016年10月にメディア関係者と医療者の有志により発足しました。メディアと医療者の垣根を取り払い、医療健康情報のよりよい発信手法について学びあうことを目的にしています。会の発展に伴い、2018年に非営利型一般社団法人となりました。
当会では、医療健康情報の発信に関するイベントやセミナーを定期的に開いています。また、東京大学大学院医療コミュニケーション学教室などと共催で、「メディアと医療をつなぐ会」を開いています。
詳細は、http://medicaljournalism.jp/ をご参照下さい。
Facebook: https://www.facebook.com/groups/1328675450500398/
Twitter: https://twitter.com/associationofmj