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認知症のプレクリニカル期・プロドローマル期を対象とした『トライアルレディコホート(J-TRC)構築研究』を10月31日より開始!【https://www.j-trc.org/】

〜将来の認知症治療薬・予防薬の開発へ―50〜85歳の健常者2万人の登録を目指す、国内最大のオンライン研究への参加者募集プロジェクト〜

東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻・神経病理学分野、附属病院 早期・探索開発推進室(教授 岩坪 威/いわつぼ たけし)では、認知症の治療薬・予防薬を早期に実用化することを目標に、認知症のプレクリニカル期・プロドローマル期の研究への参加者を、オンライン上で募集する国内最大規模のプロジェクト、『トライアルレディコホート(J-TRC)構築研究』を10月31日より開始します。




■認知症の人の数が増加傾向
国内の認知症の人の数は、2025年には730万人、2050年には1,016万人になると推計されています(平成26年度厚生労働省発表)。認知症のうち、アルツハイマー病(以下、AD)は約7割を占めており、世界中で早急な対策が求められています。

■認知症性疾患の治療薬・予防薬開発の現状
これまで世界ではADをはじめとする認知症性疾患の治療薬・予防薬の開発が盛んに進められてきましたが、神経細胞の変性・脱落のメカニズムを直接抑える「疾患修飾薬※1」の治験は、被験者の方々に認知症の症状が出現した時期では難航しています。ADで認知機能の障害が明らかになった段階では、神経細胞の変性・脱落を食い止めることが困難となり、治療の効果が得られにくいことが問題です。このため、認知症の症状はまだ無いが病理変化が始まっている「プレクリニカル期」、症状が軽度認知障害レベルにとどまっている「プロドローマル期」にあたる方々の協力が必須となります。

■本研究の狙いと内容
本研究では、50歳から85歳までの日本語で参加可能な男女の方々に、まずオンラインでボランティアとしてご登録頂きます。ご登録頂いた方々から「プレクリニカルAD」の可能性がある方を効率的に見出すために、「治験即応コホート」(トライアルレディコホート(J-TRC))を構築します。まず最初の登録段階で、国内最大規模となる約2万人の研究ボランティアの参加者を募ることを目的に、インターネットを介して登録者の認知機能を評価するシステム(J-TRCウェブスタディ)を、米国TRC-PAD研究※2との強力な連携のもとに構築し、10月31日に公開します(https://www.j-trc.org/)。
参加者には、インターネット上のホームページを介した同意の取得、基本情報登録の後に、15分程度で実施可能な2種類の認知機能(記憶・思考力)テスト(認知機能指標:CFIとCogstate(コグステート))を受検していただきます。以降、3ヶ月ごとにインターネット上で検査を反復し、経時的なスコアの変化等に基づき、将来的なAD発症のリスク上昇が疑われる方については、ご希望に応じて、医療研究機関に来院して行う第2段階の研究(J-TRCオンサイトスタディ)にお招きします。オンサイトスタディでは、心理士が対面で行う認知機能検査や、血液・画像等の精密な検査を行います。オンサイトスタディの結果を検討の上、治験への参加を希望される方には、条件に合った治療薬・予防薬の治験に関する情報をご提供し、ご参加を支援します。研究チームは、岩坪威教授が研究開発代表者を務め、東京大学の研究チームが中核となり、学会、全国の医療研究機関、製薬企業、諸外国とも連携して研究を進めます。

『トライアルレディコホート(J-TRC)構築』に向けたボランティア登録〜ウェブスタディの各ステップ
1. ボランティア登録
本研究の趣旨にご賛同いただいた方に、専用サイトより自由意志に基づき基本情報をご登録いただきます。
【登録条件】
・登録日現在で50歳から85歳までの日本語が理解できる男女
・過去及び現在に認知症またはアルツハイマー病と診断されたことがない方
・アルツハイマー病・認知症の臨床試験や治験への参加にご関心がある方
・インターネット上のホームページにアクセス可能なパーソナルコンピュータ(デスクトップ・ノート・iPadを含む)をお持ちの方
[画像1: https://prtimes.jp/i/50569/1/resize/d50569-1-845748-1.jpg ]

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2. インターネットで行う認知機能検査
国際的な臨床研究や治験に用いられはじめている2種類の認知機能テスト(CFIとCogstate)を日本語で受検していただきます。所要時間は計15分程度です。以降、3ヶ月ごとに検査を繰り返していきます。

1. CFI:1年前と比較した記憶や生活の状態について簡単な質問に回答することで「認知機能」を指数化

[画像2: https://prtimes.jp/i/50569/1/resize/d50569-1-503505-2.jpg ]

2. Cogstate:記憶力や処理速度などを測るテストによって「認知機能」を測定

[画像3: https://prtimes.jp/i/50569/1/resize/d50569-1-525335-3.jpg ]

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3. ADの病変が潜在するリスクが疑われる場合
3ヶ月ごとに経過を追って認知機能の変化を追跡し、将来的なADによる認知症の発症リスクの上昇が疑われる方については、医療研究機関での認知機能検査、血液・画像検査等を含む、別途の精密な研究(J-TRCオンサイトスタディ)にご参加いただくことが可能です(リスクが高くない方も、重要な対照としてオンサイトスタディにお招きすることがあります)。オンサイトスタディでの結果をふまえて、治験への参加を希望される方には、条件に合う治療薬・予防薬の治験に関する情報をご提供し、参加をご支援します。

『トライアルレディコホート (J-TRC) 構築研究』展開概要
■アルツハイマー病の治療薬・予防薬の開発に関する現状と本研究の狙い
認知症性疾患、特にアルツハイマー病(AD)の治療薬・予防薬の開発が進展する中で、認知機能に障害がない前臨床期(プレクリニカル期※3)、認知機能の障害が軽度な前認知症期(プロドローマル期、MCI※4)が治験の標的時期として注目されています。しかしながら、参加者が治験への組み入れの条件を満たす割合は、いずれの時期でも20%前後と低く、治験の巨大化と遅延の原因になっています。 また、米国が実施したADNI研究※5、本邦のJ-ADNI研究等の大規模な観察研究によって、画像・バイオマーカーを併用した認知症の早期段階の自然歴※6を計測する新たな評価法と、治験の体制が確立されました。しかし、このような研究も、治験との間で適格な被験者の参加を競合してしまうという問題が生じています。こうした中で、前臨床期と前認知症期のADを主な対象とする治験即応(トライアル・レディ)コホート(TRC)は、縦断的な観察研究を行うことと、治験への適格な被験者のリクルートを両立する方策となることが期待されます。
このような観点から、オンラインで参加可能な認知機能テスト(ウェブスタディ)と、高リスク被験者を対象とする縦断疾患コホート研究(オンサイトスタディ)を組み合わせた、J-TRC研究を計画するに至りました。本研究を通じて同定されたプレクリニカルADの方には、例えば、北米や本邦で現在行われている「A4研究」※7の発展型として今後計画されていく、先進的な予防治験などに参加いただく機会も広がるものと考えられます。J-TRC研究のウェブスタディ部分「J-TRC:認知症予防薬の開発をめざすインターネット登録研究」は、東京大学医学部の非介入等研究倫理委員会において2019年9月2日に承認を受けており、オンサイトスタディについても近日中に倫理審査を受審する予定です。
J-TRC研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 (以下、AMED)「平成31年度認知症研究開発事業」の支援を受け、研究期間は2024年3月31日までを予定しています。

■J-TRC研究の概要図

[画像4: https://prtimes.jp/i/50569/1/resize/d50569-1-575770-4.jpg ]


■用語解説
※1 疾患修飾薬:疾患の発症メカニズムに作用し、疾患の進行過程を遅延させる治療薬。ADに対する抗アミロイドβ薬などがその代表例。
※2 TRC-PAD研究:米国国立老化研により支援され、南カリフォルニア大・ハーバード大などにより2018年より行われているトライアルレディコホート研究。Trial Ready Cohort for Preclinical and Prodromal ADの略称。
※3 プレクリニカル(期)AD: 画像診断やバイオマーカーにより脳にアミロイドb蓄積などADの病理学的変化の存在が疑われるが、認知機能は正常である状態をいう。MCI期(プロドローマル)ADと正常の中間状態とも考えられ、今後開発されるADの疾患修飾療法(疾患発症のメカニズムに基づく根本治療法)の最適な対象となるものと期待されている。
※4 MCI:認知機能の低下が臨床的に確認されるが、独立した生活が可能な程度にとどまるため、認知症とは診断されない正常と認知症の中間段階。近年、認知症の前駆段階として早期診断・治療上で注目されており、特にADの前駆段階としてのMCIは健忘などの記憶障害が前景に立つことが特徴とされプロドローマル(期) ADとも呼ばれる。
※5 ADNI研究:Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiativeの略称。MCI期などのADの早期段階の治験において、診断や進行経過の評価に役立つ画像・バイオマーカーの確立を目的に、2003年に米国で開始された大規模な多施設臨床観察研究。ADNI研究や2007年より本邦で行われたJ-ADNI研究は、アミロイドβ抑制薬などのADの疾患修飾薬の治験の基盤と基本技術・データを確立した。
※6 自然歴:治療介入を受けない際の疾患の進行の有様をいう。認知機能試験成績の低下速度などにより表される。※7 A4研究:プレクリニカル期のADの人を対象として、2014年に北米で開始されたADの薬剤予防治験。ADの病因タンパク質と考えられるアミロイドbに対する抗体医薬「ソラネズマブ」を、PETによるアミロイド陽性、認知機能が正常な参加者に4.5年間にわたり投与し、鋭敏な認知機能指標「Preclinical Alzheimer Cognitive Composite」(4種の認知機能検査の総合スコア)の改善により効果を判定する。日本では東京大学の当J-TRC研究の主要メンバーにより遂行中であり、2022年に効果判定が予定される。米国ではNIAの支援を受け、A4研究と同時期を対象とするA45研究、さらに先行する段階を対象とするA3研究が開始される。

■「J-TRC」サイトURL
https://www.j-trc.org/
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