「MONEX個人投資家サーベイ 2012年7月調査」 2012年4-6月期決算は無難な展開を予想する向きが大勢
[12/07/30]
提供元:PRTIMES
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マネックス証券株式会社(以下「マネックス証券」)は、2009年10月より、マネックス証券に口座を保有する個人投資家を対象に、相場環境に対する意識調査を月次で実施しております。
このたび、2012年7月20日〜23日にインターネットを通じて実施したアンケート調査1,030件の回答結果を報告書にまとめました。マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆の総括と併せてご活用ください。
【調査結果要約】
(1) 日本株、米国株、中国株DI(注)はいずれも再び低下に転じる
【日本株DI】(2012年6月) 24ポイント→ (7月) 10ポイント(前月比-14ポイント)
【米国株DI】(2012年6月) 35ポイント→ (7月) 24ポイント(前月比-11ポイント)
【中国株DI】(2012年6月) -18ポイント→ (7月) -27ポイント(前月比-9ポイント)
日本株、米国株、中国株DIがいずれも再び下げに転じ、昨年末頃の水準まで低下しました。低下幅は日本株DIがマイナス14と最大で、先月の上昇分を全て帳消しにする格好となっています。
(注)「上昇すると思う」と回答した%から「下落すると思う」と回答した%を引いたポイント。
(2)金融緩和期待が不動産株の追い風に
金融緩和期待を受け足元のパフォーマンスが好調な「不動産」が3つ順位を上げました。一方で、米国や中国の景気減速懸念に加え円高が引続き重石となっている「自動車」および「機械」が順位を落としました。
(3) 日銀の追加緩和見送りなどを受け円安予想が後退
7月の金融政策決定会合で日銀が追加の金融緩和を見送ったことなどから円安を見込む向きが12ポイント減少し、その減少分に見合う割合で「変わらない」および「円高になる」が増加しました。
(4) 「欧州債務問題」への個人投資家の関心が大幅に減少
投資判断にあたり個人投資家の最も関心のあるトピックとして「欧州債務問題」が前月に比べて大幅に減少し、「日本経済の回復」および「米経済」等、他の項目への回答が全て小幅に増加しました。
(5) 2012年4-6月期決算は予想通りの着地と見込む
これから本格化する2012年4-6月期決算発表については予想通りの着地と見込む回答者が半数を超えました。また、決算はすでに株価に織り込まれているとの見解から、今後の日本株の動向としては材料視されないと予想する回答者が3割を占めました。
調査結果
1、株式市場を取り巻く環境について
(1)今後3ヶ月程度の株価予想(日本株、米国株、中国株のDI推移)
日本株、米国株、中国株DI(※)がいずれも再び下げに転じ、昨年末頃の水準まで低下した。低下幅は日本株DIがマイナス14と最大で、先月の上昇分を全て帳消しにする格好となった。(※DI:「上昇すると思う」と回答した%から「下落すると思う」と回答した%を引いたポイント) (参照:グラフ1.&グラフ2.)
(2)日本株を買いたい水準
日本株を買いたい水準については前月の調査とほぼ変わりは無かった。(参照:グラフ3.)
(3)日本市場の各業種に対する今後3ヶ月程度の見通し
金融緩和期待を受け足元のパフォーマンスが好調な不動産が3つ順位を上げた。一方で、米国や中国の景気減速懸念に加え円高が引き続き重石となっている自動車や機械が順位を落とした。(参照:グラフ4.)
2、為替市場について
7月の金融政策決定会合で日銀が追加の金融緩和を見送ったことなどから円安を見込む向きが12ポイント減少し、その分「変わらない」及び「円高になる」が増加した。(参照:グラフ5.)
3、お客さまの日本株取引について
売買頻度のDI(※)は13と前月から6ポイント低下し、日経平均株価が直近の安値をつけた昨年秋〜冬頃の水準まで落ち込んだ。(※DI:「売買頻度を増やしたい」と回答した%から「売買頻度を減らしたい」と回答した%を引いたポイント)(参照:グラフ6.)
4、最も関心のあるトピック
今回で2回目となるこの項目では「欧州債務問題」が前月から大幅に減少し、それ以外の回答がほぼ全て小幅に増加した。(参照:グラフ7.)
5、2012年4-6月期決算について
(1)日本企業の2012年4-6月期決算について(参照:グラフ8.)
(2)全体としての傾向とそれを受けた日本株の方向性について
これから本格化する2012年4-6月期決算については予想通りの着地、及びそれを受けた日本株の動向としても織り込み済みということから材料視されないとの予想が多数を占めた。(参照:グラフ9.)
6、最近の売買が低調な理由について
目立った回答
・欧州債務不安や米国経済の減速懸念が強い
・円高/デフレ
・株価が上昇しそうな材料がない
・消費増税等、政治情勢の先行きが不透明
・日本の企業及び市場に対する、コンプライアンス/ガバナンス面での信用失墜
・世界における日本市場の存在感の低下/外国人の日本株離れ
・機関投資家によるインサイダー疑惑や証券取引所の高速取引対応など、個人投資家が軽視されている/機関投資家との不平等感が強い
総 括 (マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆)
「楠木建の『戦略読書日記』」というウェブサイトがある。ベストセラーになった「ストーリーとしての競争戦略」で知られる楠木建先生(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)が連載しているオンライン書評だ。そこに筆者の著書「ストラテジストにさよならを」を取り上げていただいた。誠に光栄の至りなのだが、先生が書いてくれた論評には「身も蓋もない話」という言葉が繰り返し出てくる(数えたら6回もあった)。それだけ自分が身も蓋もないことばかり述べているのかしら、と少し自己嫌悪に陥りかけたが、言われてみればその通りかもしれない。
個人投資家サーベイの結果を見ていて思うのは、これはまさに一致指標だということだ。相場が悪い最中にアンケートを行えば株式市場の先行きを見通すDIは悪化する。相場が良いときに尋ねればDIは上昇する。順張り指標そのもので、単にその時々の相場を映しているだけである。「株式市場が下落したので投資家心理も悪化、DIも低下しました。」「株式市場が上昇したので投資家心理が改善、DIも上昇しました。」それは同じことの言い換え、トートロジーである。そんな解説をしたところで何の意味もない。これが身も蓋もない話、というわけだ。
株式市場の先行きを問うDIは、個人投資家サーベイの調査開始以来の項目だから、データの蓄積がある。今後も継続して行い、それこそ「一致指標」でない動きが表れるかどうかを注視していけばよい。例えば下落相場が続く中で、DIが底打ちから上昇に転じるようなことが起こるかどうか。そうした動きが観察された後に、実際の相場が底打ち・反転すれば、そのときこそ投資家のセンチメント改善を表す先行指標としての意味が出てくる。
その傍らで、新しい質問項目も毎回、試行錯誤で加えている。今回は決算発表の見通しと市場の売買高低迷の理由について尋ねた。特に、日本株式市場の売買代金の低迷は、われわれ証券会社にとっての死活問題だけに、その理由を投資家自身がどう考えているのか、個人的にも非常に興味がある問題だった。
結果は本編にまとめてある通りだが、欧州債務不安や世界経済の減速懸念が重石となって積極的な売買が妨げられている、という回答が多かった。それは予想通りのことだ。意外だったのは「日本の政治がだめだから」と政治不信を株式市場の売買高低迷の理由に挙げる回答が目立ったことだ。欧州債務不安に関する言及が全体の20%近くあったが、国内の政治不信に関する言及も16%あった。
日本はかつて「経済は一流、政治は三流」と言われた。いまや経済も一流では決してないが、政治が三流のままであるというのは変わらないだろう。昔も今も政治に対する期待度はもともと高くなく、日本の政治問題は相場の材料にはならない、と思っていた。政治を材料に株価が動いたのは小泉チルドレンが躍進した2005年の郵政解散・自民党の衆院選圧勝のときくらい、という記憶しかない。当時は、日本の政治が変わる期待を国内外の投資家が感じ、その後の活況相場につながった。
だから、もともと期待もしていない政治に対する不信が、売買低迷の要因に挙がるとは正直、驚いた。しかし、「政治がしっかりしないから」というのは極めてまっとうな意見である。欧州債務危機の本質は政治問題であり、危機からの脱却は欧州の政治家のリーダーシップにかかっている。米国経済の行方も財政・金融の政策に負うところが大きい。経済と政治はもともと不可分のものである。
日本だけが「経済は一流」として、「三流の政治」からあえて距離を置いてきた感があるが、ここにきて経済も一流ではなくなった。つまり政治と同じ三流の地位に下がったのだ。それではじめて政経不可分となった。これまでは「だめな」政治に頼らなくても、日本経済はそれなり奮闘してきた。しかし、ここに至って、いよいよ政治にしっかりしてもらわねば、前に進むことはおろか、どんどん後退していくリスクを経済界も切実に感じ始めている。株式市場における売買代金の低迷の背景に政治不信が挙がるのは、そういう視点でみれば、なるほど自然なことかもしれない。これもまた身も蓋もない話ではあるけれど。
今回も皆様のご協力により有益な調査結果を得ることができました。皆様の資産運用を考える一助となれば幸いです。
(マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆)
調査の概要と回答者の属性
調査方式:
インターネット調査
調査対象:
マネックス証券に口座を保有している個人投資家
回答数:
1,030件
調査期間:
2012年7月20日〜7月23日