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メッセージ:フォルクマル・デナー 仮想世界と現実世界とのつながりを目指す

多くの企業は、インターネット上のネットワーク化に関する世界的な傾向の勢いを 未だに過小評価しています。

126年にわたる歴史の中でロバート・ボッシュGmbHが常に行ってきたことの1つに モノづくりがあり、噴射システム、センサー、半導体、冷蔵庫、ハンマードリルなど、 数々の製品を製造してきました。革新のテクノロジーとサービスを提供するサプライヤーとして、ボッシュは主に技術製品を製造し、それに付随する伝統的なサービスも 提供しており、そのかたちは今後も続きます。ただ私たちは、自分たちのビジネスモデルが抜本的な変革の必要に迫られていることもまた認識しています。インターネット上のネットワーク化は最も勢いのある世界的な傾向の1つですが、多くの企業が未だに過小評価していることの1つでもあります。私たちは皆、自分たちがパラダイムシフトに直面しており、モノとサービスのインターネットがビジネスの世界を根本から変えようとしている事実を受け入れなくてはなりません。ボッシュに限ったことではありませんが、これは計り知れない機会をもたらすと共に、かなりの課題が伴います。

インターネットが生まれてから、重要となる数々の技術が進歩してきました。最初は文書を相互にリンクすることから始まりましたが、その後ブラウザやサーバー技術によって、複数のユーザーが同一文書上で一緒に作業することが可能になりました。これが次の段階ではデータ構造の共有へとつながり、ついに2、3年前には人々の間でネットワークを構築するWeb 2.0が誕生しました。FacebookやTwitterがその顕著な例です。今日、技術はさらに進化しており、ほぼ2年ごとに演算能力、データ伝送用帯域幅、クラウドのストレージ容量が倍増すると見込まれています。そしてそれが、モノとサービスのインターネット化に向け、未来への技術の道筋をつけていく上で重要な推進力となっています。私たちは、仮想世界と現実世界をつなげたいと考えています。具体的に言えば、モノのみを作り出すのではなく、それらのモノをインターネット上でネットワーク化し、インターネットベースのサービスを補うかたちで、お客様にさらなる付加価値を提供していくというものです。

■シンガポールのe-モビリティ

ネットワーク化されたモノとは、周辺の交通量に関するデータを収集し、交通渋滞情報を相互に伝え合う自動車のことかもしれません。あるいは、現在の電気料金の情報を受信し、電力が最低料金となる時間帯にのみ稼動する洗濯機である場合もあるでしょう。 ボッシュがシンガポールで進めているe-モビリティのプラットフォームも、その一例として挙げることができます。シンガポールでは、ボッシュが電気自動車向けのインフラを構築し、Bosch Software Innovations GmbHが仮想拡張システムであるソフトウェアプラットフォームの開発を担いました。これらを通じて、電気自動車のドライバーはインターネットベースのe-モビリティソリューションを活用し、利用可能な充電スポットを見つけることができます。これは、駐車場や充電スポットのスペースが限られている大都市では特に便利なサービスとなります。また、プラットフォームはオープンソースとなっており、フレキシブルにアレンジできますので、ドライバーが特別料金を予約したり、別の交通手段を含むルートを計画したりするオプションなど、さまざまなサービスを付加することができます。

■さまざまなビジネスモデル

モノとサービスのインターネット化の多層性を利用し、企業がさまざまなレベルで積極的に活動できることを示しているのは、ボッシュのシンガポールプロジェクトだけではありません。他の例として、自動車、充電スポット、洗濯機、暖房システムなどモノそのものを、インターネットを介して接続する手法が挙げられます。これらのモノはIP対応のコンポーネントを装備している必要がありますが、このレベルでは、IP対応コンポーネントを全製品に付加するだけで、魅力的なビジネスモデルとして成立します。さらに次のレベルでは、シンガポールにおけるe-モビリティプラットフォームのように、モノとサービスのインターネット化のサブシステム(エコシステム)に参加する人々が自ら、ソフトウェアプラットフォームに接続するようになります。その場合、この種のプラットフォーム向けのソフトウェアをプログラミングして市場に投入していかなくてはなりませんが、これは興味深い市場となるでしょう。そして最終的には、システムのユーザーがデータをプラットフォームに送信することを通じて、新しいビジネスチャンスが生まれます。送信データをサービスやアプリの開発に利用し、開発した製品を適当なポータルを介してエンドユーザーに提供できるからです。

■ハイリスクなアプリビジネス

ボッシュはモノとサービスのインターネット化に関連した各種製品の市場が全体的に大きく成長することを見越して、その発展に備えようとしています。私たちは、すでに技術的特性を持つすべての事業分野において著しく高い専門知識を活用しており、この分野における発展を通常範囲の不確実さの中で予測することは可能だと考えています。 ソフトウェアプラットフォームのようなインフラの整備についても、同様のことが言えます。一方、市場に定着すると思われるアプリケーション(例:iPhone向けアプリ)を企画しようとすることは、極めて不安定で危ういビジネスだと考えています。アプリケーション分野では、事前に十分な調査を行い、迅速にアプローチしていかなくてはならないからです。しかし、ボッシュのカー・マルチメディア事業部はすでにナビゲーションアプリを開発していますし、Bosch ThermotechnologyはJunkersやBuderusの各ブランドで提供する暖房システム制御用のスマートフォンアプリケーションを開発するなど、その実力を発揮しています。

ボッシュにとって、またその他多くの業界企業にとって重要となるのは、いくつかの分野における自分たちのアプローチを全面的に再考することでしょう。モノとサービスのインターネット化の可能性を最大限に活用しようとするならば、乗り越えなくてはならないことがたくさんあります。何より、市場の驚異的なスピードに長期的に対応できるよう、機敏に立ち向かわなくてはなりません。こうした姿勢があってこそ、予測可能な技術的発展の過程で生じる課題に取り組むことができるのであり、お客様、従業員、そしてボッシュ・グループ全体のために、そこに拡がる途方もない機会を手に入れることができるのです。



フォルクマル・デナーはロバート・ボッシュGmbHの取締役会メンバーで、研究開発・先端エンジニアリング、技術調整、プロダクト・プランニング&テクノロジーを担当しています。
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