コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査及び8月4日(火)小泉環境大臣との働き方改革に関する意見交換会開催
[20/08/26]
提供元:PRTIMES
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2020年8月3日
2006年創業以来、働き方改革コンサルティングを経済産業省・内閣府・総務省・国土交通省等の行政機関、および民間企業1,000社以上に提供してきた株式会社ワーク・ライフバランス(本社:東京都港区、代表取締役:小室淑恵) は、この度、「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」を実施し、2020年3月から5月までの働き方にどのような変化があったかについて、国家公務員480名の回答を収集した結果をまとめました。
■対面での説明や、メールではなくFAX連絡を求めるなど
外出自粛が求められる中、国会議員から国家公務員に対して配慮無しが「9割」
■4割の国家公務員が、残業時間が単月100時間超
■デジタル化が進む省庁1位「環境省」2位「経産省」、環境省はテレワーク率も1位
■〜テレワーク体験者ほど家族との時間増を実感、デジタル化の鍵はトップのリーダーシップ〜
1.約4割の176人が、残業単月100時間を超過。200時間、300時間超えも
2.議員とのやり取りで、官僚の働き方に配慮を感じるかという問いに9割が「そう思わない」と回答
3.「議員への説明はオンラインに移行せず対面のままだった」との回答が8割
4.議員とのやり取りは、いまだ86%がFAX
5.大臣とのレクにおける電話やオンライン化・ペーパーレス化は省庁による差が大きく、1位:環境省、2位:経済産業省、3位以下を大きく引き離す結果に。環境省はテレワークの浸透も1位
6.各省庁のインフラが脆弱で1つの回線を3人で分け合うなど、仕事にならない環境。ハード面の整備の遅れ以上に、議員の「相手の働き方への配慮」不足や、各省庁の「仕事の進め方の慣習」が大きな障害となってデジタル化が進んでいない
7.テレワークの浸透に課題はあるものの、家族との時間が増えた喜びの声も
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コロナ禍から国民の安全を守るため、世界各国の政府は一層のデジタル化戦略が求められています。そのなかで、各国の国会や政府の機能も含めたデジタル化レベルによって、戦略の具体性や効果性に差が開きつつあります。
安倍首相は2020年7月15日に「IT本部が中心となって、行政分野のデジタル化と行政データの見える化を集中的に実行していく。今後3年間を集中投資期間とし、政府CIOの強力なリーダーシップの下で、政府全体のシステム整備を一気に進める」と発表しています。その一方で、今回の調査では、システム整備などのハード面での整備の遅れ以上に、国会議員の「相手の働き方への配慮」が不足している点や、各省庁の「仕事の進め方の慣習」が大きな障害となって、デジタル化が進まないことが明らかになりました。
テレワークが機能しないままでは、政府中枢でクラスターが発生した場合の予行演習が出来ておらず、政府機能の停止、行政の崩壊が起きてしまうことが予想されます。
今回の調査で、回答者の約4割にあたる176人が、「過労死レベル」といわれる「単月100時間」を超える時間外労働をした、と回答をしました。「200時間超え」や「300時間超え」という回答もあり、組織として持続可能ではない働き方に頼っている現状が明らかになりました。
また、日本中で徹底した感染予防や外出自粛が求められる中、業務で国会・議員対応がある回答者382人のうち、83%が「議員への説明が電話やオンラインに移行したか」との質問に対して「そう思わない」と回答しました。自由記述欄には、長時間にわたり、対面で、三密に該当する環境での説明が求められたというコメントが寄せられました。紙資料の印刷、FAXでのやり取りが続けられていることからも、実務の進め方が感染予防と両立しないものになっていることがわかりました。「議員とのやり取りで、官僚の働き方の質を高めるための配慮を感じる変化が起きたか」という質問に対して、91.3%が「そう思わない」と回答しており、力関係の強い相手側からの対応が働き方の質に大きく影響していることがわかりました。
政府・省庁全体としての課題が明確になる一方で、省庁ごとの取り組みの影響も明らかになりました。特に、省内での電話・オンライン会議化、ペーパーレス化は省庁による差が大きく、1位の環境省と2位の経済産業省が他省庁を大きく引き離す結果となりました。
職場でのデジタル化については、「大臣への説明の様子を、幹部もweb会議で同時に見られるようになったため、報告の手間がなくなり、ニュアンスの違いからくるミスコミュニケーションもなくなり、効率化につながった(環境省20代)」、「大臣など政務が変わっても、今の大臣や政務との打ち合わせのようにオンラインが常態となることを維持したい(環境省40代)」、「紙の枚数は相変わらず減らない。課長級以上はやはり紙を持ってこいという雰囲気。レジ袋何枚分だろうと思いながら毎夜大量の無駄紙をシュレッダーにかけている(国土交通省20代)」などのコメントが見られ、省庁のトップである大臣、そして中間層である管理職のリーダーシップが変革の鍵となっていることがわかりました。
全体としては、「テレワークができた」と答えた回答者の71.4%が「家族との時間が増えた」と回答しており、「テレワークができなかった」と答えた回答者の33%に対して有意な差が見られました。テレワークを推進していくことにより、国家公務員自身のワーク・ライフバランスの推進のみならず、空いた時間を活用したインプットによって、策定される政策の質が変わっていくであろうこと、より多様な人材が活躍できる土壌作りにもなることから、政府・省庁においてテレワークを推進していくことは国民の利益に直結するものであるといえます。
官・民共に協力して乗り越えてゆくべき国難ともいえるコロナ禍において、いかに持続可能な組織運営をし、新しい生活様式・新しい生活様式の中で感染予防を両立していくかは、政府・省庁、民間企業、国民のひとりひとりが考え、行動してゆく必要のある課題です。トップの強いリーダーシップの元、取引先との間で互いに「仕事の質を高めるための配慮」をし、「仕事の進め方の慣習」を見直し変革していくことは、民間企業・他組織においても重要なことであるといえるでしょう。
<回答者省庁別内訳>
省庁別回答者内訳は、厚生労働省70名(回答者中14.6%)、文部科学省59名(同12.3%)、内閣府45名(同9.4%)、経済産業省43名(同9.0%)、その他43名(同9.0%)、国土交通省42名(同8.8%)、環境省41名(同8.5%)、農林水産省33名(同6.9%)、総務省29名(同6.0%)、外務省25名(同5.2%)、防衛省24名(同5%)、法務省11名(2.3%)、財務省11名(2.3%)、復興庁3名(0.6%)、国家公安委員会(警察庁)1名(同0.2%)となっています。
<調査結果>
1.約4割にあたる176人が、残業時間単月100時間を超過。200時間、300時間超えも。
本調査対象者のうち、約4割にあたる176人が、「2020年3月〜5月で最も忙しかった月の実際の残業時間は、100時間を超えた」と回答しました。そのうち「200時間〜299時間」と回答した回答者は20人(厚生労働省9人、文部科学省5人、内閣府3人、経済産業省1人、その他2人)、「300時間以上」と回答した回答者は5人(厚生労働省4人、法務省1人)でした。
民間では2019年4月より、改正労働基準法が施行され、労使協定を結んだ場合においても原則として一か月45時間が時間外労働の上限となり、特別条項を適用した場合においても、単月では100時間時間未満(複数月平均では80時間)が上限となっています。この基準は過労死ラインとも呼ばれています。国家公務員は労働基準法の対象外とされていますが、平成31年2月1日付の人事院事務総局職員福祉局長による通知においても、原則として一か月の時間外労働の上限は45時間と定められています。
それに対し、本調査では過労死ラインを大幅に超過する時間外労働が行われていることが明らかになりました。労働時間のばらつきの大きさから、一部の人材に頼る働き方となっていること、業務が属人化されており、緊急時における組織としての対応力が弱くなっていることが推測されます。
2.議員とのやり取りで、官僚の働き方に配慮を感じるかという問いに9割が「そう思わない」と回答
「議員とのやり取りで、官僚の働き方の質を高めるための配慮を感じる変化が起きたか」という質問に対しては、91.3%が「そう思わない(全くそう思わない71.7%、そう思わない19.6%)」と回答しました。自由記入欄には「時間内に聞ききれない量の質問を通告してこないで。部下も鬱になったし私ももう来たくない。なぜ厚労省で死者が出ないのか不思議なくらいです。(厚生労働省30代)」との具体的なコメントも見られました。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・議員が配慮している様が全く見えてこない。不要不急のレクを設定してきたり、地元支援者への特例措置を求めてくるなど。(法務省30代)
・緊急事態宣言が出ていても党の会議で平然と役所を呼びつける感覚などは信じがたい。(文部科学省40代)
・これまでもずっと言われていることだが、質問通告がそもそも遅い上に、通告しても極めて抽象的な例が散見される。また、国会はいつまでたっても紙の資料で議論をしており、非効率な上にさらに無駄な税金が充てられていることになぜ問題意識を持たないのか疑問。(厚生労働省30代)
3.8割が「議員への説明はオンラインに移行せず対面のままだった」と回答。
業務で国会・議員対応がある回答者382人のうち、83%が「議員への説明が電話やオンラインに移行したか」との質問に対して「そう思わない(全くそう思わない56%、そう思わない27%)」と回答しました。自由記述欄には、「国会議員のレクのためだけに出勤せざるを得ない状況だった」といった回答が多く、長時間にわたり、対面で、三密に該当する環境での説明が求められたケースや、マスクを外させられたというケースも複数みられました。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・緊急事態宣言中は基本テレワークだったが、国会議員のレクのためだけに出勤せざるを得ない状況だった。(内閣府40代)
・省内の接続環境の悪さのせいか、オンラインだと音声が途切れたりそもそも聞こえないなどのトラブルが多く、結局そういったトラブルを回避するために、「失礼のないよう、できるだけ対面で」と役所側も気を遣ってしまう傾向にあると感じる。(文部科学省20代)
・レクに行ったらマスクを外させられた。(厚生労働省40代、防衛省30代等複数同趣旨のコメント有り)
【一時的にはオンラインや電話に移行したが、対面に戻ってしまったという声も】
・緊急事態宣言直後までは資料送付のみで済むものや、電話会議形式でのレクが多かったが、解除後は対面に戻ってしまった。(内閣府30代)
・一部の若手議員で積極的にオンラインのレクや会議(党の会議であっても)を推進する議員もおり、少し変化を感じた。 ただ、宣言解除後はそういったレクや会議もほぼ対面に戻ってしまったのは残念。(文部科学省20代)
【ポジティブな声】
・議員レクの随行人数は随分減ったので、バッジ確保などロジ面の負担は減ったかもしれない。(内閣府30代)
・意識する議員としない議員で二極化。(内閣府30代)
4.議員とのやり取りは、いまだ86.1%がFAX
「議員とのやり取りがFAXからメールに移行したか」との質問にたいしては、86.1%が「そう思わない(全くそう思わない58.9%、そう思わない27.2%)」と回答。パソコンで打ち出した文章を送信側が出力してFAXし、受信側が再度システム入力をしているなど、人的資源の観点からも、紙資源の観点からも非効率な慣習があることがわかりました。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・メールで議員事務所に送ったものと同じ資料をFAXで再度送るように言われた。こちらとしては手間が増えるだけ。(農林水産省30代)
・省内でペーパーレス化が進んでも、議員が使うことを想定して紙(片面)を用意することがほとんどで、コロナ前後で変化はない。(農林水産省20代)
5.大臣とのレクにおける電話やオンライン化・ペーパーレス化は省庁による差が大きく、1位:環境省、2位:経済産業省。環境省はテレワークの浸透も1位
「大臣とのレクが電話やオンラインに移行したか」「大臣レクにおけるペーパーレス化が進んだか」という質問に対しては、環境省と経済産業省は他省庁を大きく引き離し、環境省では電話やオンラインへの移行が2.8、ペーパーレス化は2.6、経済産業省では電話やオンラインへの移行が2.5、ペーパーレス化は2.1という平均スコアでした(0:全くそう思わない、1:そう思わない、2:そう思う、3:強くそう思う)
「大臣とのレクが電話やオンラインに移行したか」については、1位の環境省は3:強くそう思うは84.8%、2:そう思うは12.1%、1:そう思わないは3.0%、0:全くそう思わないは0%。2位の経済産業省は3:強くそう思うは60.5%、2:そう思うは31.6%、1:そう思わないは7.9%、0:全くそう思わないは0%でした。
「大臣レクにおけるペーパーレス化が進んだか」については、1位の環境省は3:強くそう思うは72.7%、2:そう思うは15.2%、1:そう思わないは12.1%、0:全くそう思わないは0%。2位の経済産業省は、3:強くそう思うは36.8%、2:そう思うは44.7%、1:そう思わないは10.5%、0:全くそう思わないは7.9%でした。
職場において「テレワークができるようになったか」という質問に対し、トップ5は環境省(平均スコア2.7)、総務省(平均スコア2.6)、外務省(平均スコア2.5)、経済産業省(平均スコア2.4)、文部科学省(平均スコア2.3)でした(0:全くそう思わない、1:そう思わない、2:そう思う、3:強くそう思う)。「テレワークができるようになったか」については、1位の環境省は、3:強くそう思うが69.7%、2位の2:そう思うが30.3%、1:そう思わないと0:全くそう思わないは0%でした。
2位の総務省は、3:強くそう思うが73.3%、2:そう思うが13.3%、1:そう思わないが6.7%、0:全くそう思わないが6.7%でした。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・回線容量が十分でなくテレワーク中に接続できなくなる、テレワークだとネットワークに接続できない端末の職員がいる、オンライン会議を実施するために接続確認や資料の事前共有など別の手間が生じている。(環境省30代)
・省庁間で会議システムが異なり、省庁を跨いだテレワーク会議が難しい。省庁共通のシステムを導入すべき。(経済産業省30代)
6.各省庁のインフラが脆弱で一つの回線を3人で分け合うなど、仕事にならない環境。
ハード面での整備の遅れ以上に、国会議員の「相手の働き方への配慮」が不足している点や、各省庁の「仕事の進め方の慣習」が大きな障害となって、デジタル化が進んでいない
各省庁や国会での「慣習」ともいえる、民間企業や国民一般の立場からは理解しがたい仕組みが明らかになりました。このような「慣習」のために多大な時間を費やし、モチベーションが下がる職員が続出している状況では、民意を反映している働き方とはいえません。上層部のITリテラシーが低い中での制約の数々は、セキュリティ上、すでに時代遅れであったり適切であるとはいい難いものも見られたりすることから、早急に適切な専門家を入れて基準の見直しをし、全体のITリテラシーについても向上させていく必要性があるといえます。
特に、自由記述欄には民間企業ではすでに改善されて長年経過するような、デジタル化を阻害する省庁特有の「ルール・慣習」が存在することが示唆されていました。代表的なルール・慣習は以下のとおりです。
<省庁特有のルール>
1.緊急事態宣言下でも、議員レクや党の会議、国会は対面での実施。電話ですむ用件であっても、議員から呼び出される。
2.大臣や議員、省庁幹部が関係する案件は、紙資料での説明が主流。印刷ルールや部数指定のルールが厳しく、印刷に時間がかかる。(国会答弁を20セット印刷して付箋でインデックスをつけて複数種類の資料をセットに組み、台車で持ち込み、配布する作業、及び終了後の廃棄など。)
3.議員向けの説明のときに、パソコンのタッチ音がしないように紙でメモを取っている。(パソコンでメモを取ることは失礼にあたるという文化のため)
4.省内幹部・管理職のITリテラシーが低く、オンラインレクではない従来の方法を踏襲しようとする。
5.テレワーク用のパソコン台数やログインできる人数に上限を設けている。(よって通信環境が安定しない。)
6.省内決裁は相変わらず紙、対面、押印が推奨されている。
7.各省庁でのシステムの違いやセキュリティの理由から、スムーズにオンライン会議ができない。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・内閣府側が主催者となって設定するskype会議以外の会議(外部の方に招待される会議や、zoomなどによる会議)については、セキュリティ制限を解除した端末を使う必要があるが、部局に1台しかないため、取り合いになる。(内閣府30代)
・局の総括担当だが、職場のPC環境(執務室、テレワーク時問わず)が貧弱で、メール一つ開くのに30秒以上かかり、業務効率を著しく悪化させているが、改善されない。 他省庁との会議はオンライン化されたが、内部打ち合わせは、議員からの資料要求の締め切りがタイト過ぎて、オンラインでは間に合わず、結局繁忙な担当は出勤して打ち合わせている。(内閣府20代)
・省内職員の多くが同時にテレワークしているからか、テレワーク時の通信環境が劣悪。ひどいときは1通メールを送るのに30分近くかかる(自宅は光回線)。(総務省20代)
7.テレワークの浸透に課題はあるものの、家族との時間が増えた喜びの声も
「テレワークができた」と答えた回答者のうち、71.4%が「家族との時間が増えた(強くそう思う24.8%、そう思う46.6%、そう思わない12.4%、全くそう思わない16.2%)」と回答しており、「テレワークができなかった」と答えた回答者の33%(強くそう思う10.1%、そう思う22.9%、そう思わない11.9%、全くそう思わない55%)に対して有意な差が見られました。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・テレワークは柔軟に取得できるようになり、育児に積極的に参加できるようになった。(内閣府30代)
・学校の送りも迎えも父側が実施できるようになった。(外務省30代)
・入省してから初めて平日に家族と夕食を取ることができた。(国土交通省20代)
【調査概要】
調査名:株式会社ワーク・ライフバランス/2020年 官僚の働き方アンケート(コロナ禍でのデジタル化推進状況)
調査対象:現役の国家公務員(インターネット、SNSにて回答を募集)
年齢:20代〜50代以上 性別:男・女(無回答含む) 居住地:全国
調査期間:2020年06月19日〜7月13日
調査方法:インターネット調査
有効回答数:本調査480件
※回答率(%)は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までを表示しています。そのため、合計数値は必ずしも100%とはならない場合があります。
2006年創業以来、働き方改革コンサルティングを経済産業省・内閣府・総務省・国土交通省等の行政機関、および民間企業1,000社以上に提供してきた株式会社ワーク・ライフバランス(本社:東京都港区、代表取締役:小室淑恵) は、この度、「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」を実施し、2020年3月から5月までの働き方にどのような変化があったかについて、国家公務員480名の回答を収集した結果をまとめました。
■対面での説明や、メールではなくFAX連絡を求めるなど
外出自粛が求められる中、国会議員から国家公務員に対して配慮無しが「9割」
■4割の国家公務員が、残業時間が単月100時間超
■デジタル化が進む省庁1位「環境省」2位「経産省」、環境省はテレワーク率も1位
■〜テレワーク体験者ほど家族との時間増を実感、デジタル化の鍵はトップのリーダーシップ〜
1.約4割の176人が、残業単月100時間を超過。200時間、300時間超えも
2.議員とのやり取りで、官僚の働き方に配慮を感じるかという問いに9割が「そう思わない」と回答
3.「議員への説明はオンラインに移行せず対面のままだった」との回答が8割
4.議員とのやり取りは、いまだ86%がFAX
5.大臣とのレクにおける電話やオンライン化・ペーパーレス化は省庁による差が大きく、1位:環境省、2位:経済産業省、3位以下を大きく引き離す結果に。環境省はテレワークの浸透も1位
6.各省庁のインフラが脆弱で1つの回線を3人で分け合うなど、仕事にならない環境。ハード面の整備の遅れ以上に、議員の「相手の働き方への配慮」不足や、各省庁の「仕事の進め方の慣習」が大きな障害となってデジタル化が進んでいない
7.テレワークの浸透に課題はあるものの、家族との時間が増えた喜びの声も
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コロナ禍から国民の安全を守るため、世界各国の政府は一層のデジタル化戦略が求められています。そのなかで、各国の国会や政府の機能も含めたデジタル化レベルによって、戦略の具体性や効果性に差が開きつつあります。
安倍首相は2020年7月15日に「IT本部が中心となって、行政分野のデジタル化と行政データの見える化を集中的に実行していく。今後3年間を集中投資期間とし、政府CIOの強力なリーダーシップの下で、政府全体のシステム整備を一気に進める」と発表しています。その一方で、今回の調査では、システム整備などのハード面での整備の遅れ以上に、国会議員の「相手の働き方への配慮」が不足している点や、各省庁の「仕事の進め方の慣習」が大きな障害となって、デジタル化が進まないことが明らかになりました。
テレワークが機能しないままでは、政府中枢でクラスターが発生した場合の予行演習が出来ておらず、政府機能の停止、行政の崩壊が起きてしまうことが予想されます。
今回の調査で、回答者の約4割にあたる176人が、「過労死レベル」といわれる「単月100時間」を超える時間外労働をした、と回答をしました。「200時間超え」や「300時間超え」という回答もあり、組織として持続可能ではない働き方に頼っている現状が明らかになりました。
また、日本中で徹底した感染予防や外出自粛が求められる中、業務で国会・議員対応がある回答者382人のうち、83%が「議員への説明が電話やオンラインに移行したか」との質問に対して「そう思わない」と回答しました。自由記述欄には、長時間にわたり、対面で、三密に該当する環境での説明が求められたというコメントが寄せられました。紙資料の印刷、FAXでのやり取りが続けられていることからも、実務の進め方が感染予防と両立しないものになっていることがわかりました。「議員とのやり取りで、官僚の働き方の質を高めるための配慮を感じる変化が起きたか」という質問に対して、91.3%が「そう思わない」と回答しており、力関係の強い相手側からの対応が働き方の質に大きく影響していることがわかりました。
政府・省庁全体としての課題が明確になる一方で、省庁ごとの取り組みの影響も明らかになりました。特に、省内での電話・オンライン会議化、ペーパーレス化は省庁による差が大きく、1位の環境省と2位の経済産業省が他省庁を大きく引き離す結果となりました。
職場でのデジタル化については、「大臣への説明の様子を、幹部もweb会議で同時に見られるようになったため、報告の手間がなくなり、ニュアンスの違いからくるミスコミュニケーションもなくなり、効率化につながった(環境省20代)」、「大臣など政務が変わっても、今の大臣や政務との打ち合わせのようにオンラインが常態となることを維持したい(環境省40代)」、「紙の枚数は相変わらず減らない。課長級以上はやはり紙を持ってこいという雰囲気。レジ袋何枚分だろうと思いながら毎夜大量の無駄紙をシュレッダーにかけている(国土交通省20代)」などのコメントが見られ、省庁のトップである大臣、そして中間層である管理職のリーダーシップが変革の鍵となっていることがわかりました。
全体としては、「テレワークができた」と答えた回答者の71.4%が「家族との時間が増えた」と回答しており、「テレワークができなかった」と答えた回答者の33%に対して有意な差が見られました。テレワークを推進していくことにより、国家公務員自身のワーク・ライフバランスの推進のみならず、空いた時間を活用したインプットによって、策定される政策の質が変わっていくであろうこと、より多様な人材が活躍できる土壌作りにもなることから、政府・省庁においてテレワークを推進していくことは国民の利益に直結するものであるといえます。
官・民共に協力して乗り越えてゆくべき国難ともいえるコロナ禍において、いかに持続可能な組織運営をし、新しい生活様式・新しい生活様式の中で感染予防を両立していくかは、政府・省庁、民間企業、国民のひとりひとりが考え、行動してゆく必要のある課題です。トップの強いリーダーシップの元、取引先との間で互いに「仕事の質を高めるための配慮」をし、「仕事の進め方の慣習」を見直し変革していくことは、民間企業・他組織においても重要なことであるといえるでしょう。
<回答者省庁別内訳>
省庁別回答者内訳は、厚生労働省70名(回答者中14.6%)、文部科学省59名(同12.3%)、内閣府45名(同9.4%)、経済産業省43名(同9.0%)、その他43名(同9.0%)、国土交通省42名(同8.8%)、環境省41名(同8.5%)、農林水産省33名(同6.9%)、総務省29名(同6.0%)、外務省25名(同5.2%)、防衛省24名(同5%)、法務省11名(2.3%)、財務省11名(2.3%)、復興庁3名(0.6%)、国家公安委員会(警察庁)1名(同0.2%)となっています。
<調査結果>
1.約4割にあたる176人が、残業時間単月100時間を超過。200時間、300時間超えも。
本調査対象者のうち、約4割にあたる176人が、「2020年3月〜5月で最も忙しかった月の実際の残業時間は、100時間を超えた」と回答しました。そのうち「200時間〜299時間」と回答した回答者は20人(厚生労働省9人、文部科学省5人、内閣府3人、経済産業省1人、その他2人)、「300時間以上」と回答した回答者は5人(厚生労働省4人、法務省1人)でした。
民間では2019年4月より、改正労働基準法が施行され、労使協定を結んだ場合においても原則として一か月45時間が時間外労働の上限となり、特別条項を適用した場合においても、単月では100時間時間未満(複数月平均では80時間)が上限となっています。この基準は過労死ラインとも呼ばれています。国家公務員は労働基準法の対象外とされていますが、平成31年2月1日付の人事院事務総局職員福祉局長による通知においても、原則として一か月の時間外労働の上限は45時間と定められています。
それに対し、本調査では過労死ラインを大幅に超過する時間外労働が行われていることが明らかになりました。労働時間のばらつきの大きさから、一部の人材に頼る働き方となっていること、業務が属人化されており、緊急時における組織としての対応力が弱くなっていることが推測されます。
2.議員とのやり取りで、官僚の働き方に配慮を感じるかという問いに9割が「そう思わない」と回答
「議員とのやり取りで、官僚の働き方の質を高めるための配慮を感じる変化が起きたか」という質問に対しては、91.3%が「そう思わない(全くそう思わない71.7%、そう思わない19.6%)」と回答しました。自由記入欄には「時間内に聞ききれない量の質問を通告してこないで。部下も鬱になったし私ももう来たくない。なぜ厚労省で死者が出ないのか不思議なくらいです。(厚生労働省30代)」との具体的なコメントも見られました。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・議員が配慮している様が全く見えてこない。不要不急のレクを設定してきたり、地元支援者への特例措置を求めてくるなど。(法務省30代)
・緊急事態宣言が出ていても党の会議で平然と役所を呼びつける感覚などは信じがたい。(文部科学省40代)
・これまでもずっと言われていることだが、質問通告がそもそも遅い上に、通告しても極めて抽象的な例が散見される。また、国会はいつまでたっても紙の資料で議論をしており、非効率な上にさらに無駄な税金が充てられていることになぜ問題意識を持たないのか疑問。(厚生労働省30代)
3.8割が「議員への説明はオンラインに移行せず対面のままだった」と回答。
業務で国会・議員対応がある回答者382人のうち、83%が「議員への説明が電話やオンラインに移行したか」との質問に対して「そう思わない(全くそう思わない56%、そう思わない27%)」と回答しました。自由記述欄には、「国会議員のレクのためだけに出勤せざるを得ない状況だった」といった回答が多く、長時間にわたり、対面で、三密に該当する環境での説明が求められたケースや、マスクを外させられたというケースも複数みられました。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・緊急事態宣言中は基本テレワークだったが、国会議員のレクのためだけに出勤せざるを得ない状況だった。(内閣府40代)
・省内の接続環境の悪さのせいか、オンラインだと音声が途切れたりそもそも聞こえないなどのトラブルが多く、結局そういったトラブルを回避するために、「失礼のないよう、できるだけ対面で」と役所側も気を遣ってしまう傾向にあると感じる。(文部科学省20代)
・レクに行ったらマスクを外させられた。(厚生労働省40代、防衛省30代等複数同趣旨のコメント有り)
【一時的にはオンラインや電話に移行したが、対面に戻ってしまったという声も】
・緊急事態宣言直後までは資料送付のみで済むものや、電話会議形式でのレクが多かったが、解除後は対面に戻ってしまった。(内閣府30代)
・一部の若手議員で積極的にオンラインのレクや会議(党の会議であっても)を推進する議員もおり、少し変化を感じた。 ただ、宣言解除後はそういったレクや会議もほぼ対面に戻ってしまったのは残念。(文部科学省20代)
【ポジティブな声】
・議員レクの随行人数は随分減ったので、バッジ確保などロジ面の負担は減ったかもしれない。(内閣府30代)
・意識する議員としない議員で二極化。(内閣府30代)
4.議員とのやり取りは、いまだ86.1%がFAX
「議員とのやり取りがFAXからメールに移行したか」との質問にたいしては、86.1%が「そう思わない(全くそう思わない58.9%、そう思わない27.2%)」と回答。パソコンで打ち出した文章を送信側が出力してFAXし、受信側が再度システム入力をしているなど、人的資源の観点からも、紙資源の観点からも非効率な慣習があることがわかりました。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・メールで議員事務所に送ったものと同じ資料をFAXで再度送るように言われた。こちらとしては手間が増えるだけ。(農林水産省30代)
・省内でペーパーレス化が進んでも、議員が使うことを想定して紙(片面)を用意することがほとんどで、コロナ前後で変化はない。(農林水産省20代)
5.大臣とのレクにおける電話やオンライン化・ペーパーレス化は省庁による差が大きく、1位:環境省、2位:経済産業省。環境省はテレワークの浸透も1位
「大臣とのレクが電話やオンラインに移行したか」「大臣レクにおけるペーパーレス化が進んだか」という質問に対しては、環境省と経済産業省は他省庁を大きく引き離し、環境省では電話やオンラインへの移行が2.8、ペーパーレス化は2.6、経済産業省では電話やオンラインへの移行が2.5、ペーパーレス化は2.1という平均スコアでした(0:全くそう思わない、1:そう思わない、2:そう思う、3:強くそう思う)
「大臣とのレクが電話やオンラインに移行したか」については、1位の環境省は3:強くそう思うは84.8%、2:そう思うは12.1%、1:そう思わないは3.0%、0:全くそう思わないは0%。2位の経済産業省は3:強くそう思うは60.5%、2:そう思うは31.6%、1:そう思わないは7.9%、0:全くそう思わないは0%でした。
「大臣レクにおけるペーパーレス化が進んだか」については、1位の環境省は3:強くそう思うは72.7%、2:そう思うは15.2%、1:そう思わないは12.1%、0:全くそう思わないは0%。2位の経済産業省は、3:強くそう思うは36.8%、2:そう思うは44.7%、1:そう思わないは10.5%、0:全くそう思わないは7.9%でした。
職場において「テレワークができるようになったか」という質問に対し、トップ5は環境省(平均スコア2.7)、総務省(平均スコア2.6)、外務省(平均スコア2.5)、経済産業省(平均スコア2.4)、文部科学省(平均スコア2.3)でした(0:全くそう思わない、1:そう思わない、2:そう思う、3:強くそう思う)。「テレワークができるようになったか」については、1位の環境省は、3:強くそう思うが69.7%、2位の2:そう思うが30.3%、1:そう思わないと0:全くそう思わないは0%でした。
2位の総務省は、3:強くそう思うが73.3%、2:そう思うが13.3%、1:そう思わないが6.7%、0:全くそう思わないが6.7%でした。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・回線容量が十分でなくテレワーク中に接続できなくなる、テレワークだとネットワークに接続できない端末の職員がいる、オンライン会議を実施するために接続確認や資料の事前共有など別の手間が生じている。(環境省30代)
・省庁間で会議システムが異なり、省庁を跨いだテレワーク会議が難しい。省庁共通のシステムを導入すべき。(経済産業省30代)
6.各省庁のインフラが脆弱で一つの回線を3人で分け合うなど、仕事にならない環境。
ハード面での整備の遅れ以上に、国会議員の「相手の働き方への配慮」が不足している点や、各省庁の「仕事の進め方の慣習」が大きな障害となって、デジタル化が進んでいない
各省庁や国会での「慣習」ともいえる、民間企業や国民一般の立場からは理解しがたい仕組みが明らかになりました。このような「慣習」のために多大な時間を費やし、モチベーションが下がる職員が続出している状況では、民意を反映している働き方とはいえません。上層部のITリテラシーが低い中での制約の数々は、セキュリティ上、すでに時代遅れであったり適切であるとはいい難いものも見られたりすることから、早急に適切な専門家を入れて基準の見直しをし、全体のITリテラシーについても向上させていく必要性があるといえます。
特に、自由記述欄には民間企業ではすでに改善されて長年経過するような、デジタル化を阻害する省庁特有の「ルール・慣習」が存在することが示唆されていました。代表的なルール・慣習は以下のとおりです。
<省庁特有のルール>
1.緊急事態宣言下でも、議員レクや党の会議、国会は対面での実施。電話ですむ用件であっても、議員から呼び出される。
2.大臣や議員、省庁幹部が関係する案件は、紙資料での説明が主流。印刷ルールや部数指定のルールが厳しく、印刷に時間がかかる。(国会答弁を20セット印刷して付箋でインデックスをつけて複数種類の資料をセットに組み、台車で持ち込み、配布する作業、及び終了後の廃棄など。)
3.議員向けの説明のときに、パソコンのタッチ音がしないように紙でメモを取っている。(パソコンでメモを取ることは失礼にあたるという文化のため)
4.省内幹部・管理職のITリテラシーが低く、オンラインレクではない従来の方法を踏襲しようとする。
5.テレワーク用のパソコン台数やログインできる人数に上限を設けている。(よって通信環境が安定しない。)
6.省内決裁は相変わらず紙、対面、押印が推奨されている。
7.各省庁でのシステムの違いやセキュリティの理由から、スムーズにオンライン会議ができない。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・内閣府側が主催者となって設定するskype会議以外の会議(外部の方に招待される会議や、zoomなどによる会議)については、セキュリティ制限を解除した端末を使う必要があるが、部局に1台しかないため、取り合いになる。(内閣府30代)
・局の総括担当だが、職場のPC環境(執務室、テレワーク時問わず)が貧弱で、メール一つ開くのに30秒以上かかり、業務効率を著しく悪化させているが、改善されない。 他省庁との会議はオンライン化されたが、内部打ち合わせは、議員からの資料要求の締め切りがタイト過ぎて、オンラインでは間に合わず、結局繁忙な担当は出勤して打ち合わせている。(内閣府20代)
・省内職員の多くが同時にテレワークしているからか、テレワーク時の通信環境が劣悪。ひどいときは1通メールを送るのに30分近くかかる(自宅は光回線)。(総務省20代)
7.テレワークの浸透に課題はあるものの、家族との時間が増えた喜びの声も
「テレワークができた」と答えた回答者のうち、71.4%が「家族との時間が増えた(強くそう思う24.8%、そう思う46.6%、そう思わない12.4%、全くそう思わない16.2%)」と回答しており、「テレワークができなかった」と答えた回答者の33%(強くそう思う10.1%、そう思う22.9%、そう思わない11.9%、全くそう思わない55%)に対して有意な差が見られました。
【自由記述欄のコメントより抜粋】(※リリース本体より一部抜粋しております)
・テレワークは柔軟に取得できるようになり、育児に積極的に参加できるようになった。(内閣府30代)
・学校の送りも迎えも父側が実施できるようになった。(外務省30代)
・入省してから初めて平日に家族と夕食を取ることができた。(国土交通省20代)
【調査概要】
調査名:株式会社ワーク・ライフバランス/2020年 官僚の働き方アンケート(コロナ禍でのデジタル化推進状況)
調査対象:現役の国家公務員(インターネット、SNSにて回答を募集)
年齢:20代〜50代以上 性別:男・女(無回答含む) 居住地:全国
調査期間:2020年06月19日〜7月13日
調査方法:インターネット調査
有効回答数:本調査480件
※回答率(%)は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までを表示しています。そのため、合計数値は必ずしも100%とはならない場合があります。