独自ゲノム編集技術を用いたゲノム編集ヤギ個体の作出に成功
[22/09/15]
提供元:PRTIMES
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株式会社セツロテック 東海国立大学機構 名古屋大学
ゲノム編集受託サービスを提供する 株式会社セツロテック(本社:徳島県徳島市、代表取締役:竹澤慎一郎、以下「セツロテック」)の竹本龍也、稲谷結花らの研究グループは、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科(以下「名古屋大学」)の大蔵聡教授らの研究グループとの共同研究において、徳島大学発の独自の高効率ゲノム編集技術 ”GEEP法*1”を活用し、ゲノム編集シバヤギ個体を作出することに成功しました。
この成果は、ゲノム編集によるウシ科動物の効率的な品種改良に新たな道を切り開くものです。現在、産まれてきたゲノム編集ヤギ個体の解析を進めており、これらの結果を踏まえ、今後論文として発表する予定です。
【本件の背景】
ウシ科の動物は、ウシやヒツジなど、畜産業や繊維産業などで利用される多くの有用種を含む属です。特に、ヤギは、人類が犬に次いで家畜化した動物と考えられており、様々な形で古くから人間の生活・文化に関わってきました。ヤギの品種改良については、交雑による従来の育種のほか、基礎研究レベルでは新たにゲノム編集技術の利用もいくつか報告されています。しかし、これらは、すべて受精卵に対するマイクロインジェクション法で実施されており、実際の品種改良の現場で大量の受精卵を取り扱ううえでは、効率的なゲノム編集技術を新たに開発する必要があると考えられました。
セツロテックは、生物の遺伝子を自在に編集できるゲノム編集技術を活用し、顧客のニーズに応じて、農業畜産分野での新品種開発に取り組む受託開発型事業「PAGEs」を展開しています。セツロテックでは、様々な有用種を含むウシ科動物でのゲノム編集育種の可能性を広げるため、ウシ科の中でも小型なシバヤギ*2を対象に、技術開発や共同研究を進めてきました。
【研究内容】
本研究では、名古屋大学のグループと共同で、ヤギ生殖工学技術の確立とゲノム編集ヤギ個体の作出を目標に研究を進めました。セツロテックでは、生殖ホルモンの分泌などに関与する kiss1 遺伝子エクソン2上の活性領域(キスぺプチン-10)をターゲットにし、ガイドRNAの設計およびゲノム編集による遺伝子機能の欠損を試みました。
まず、雌のシバヤギ成体から体内受精卵を取り出し、1細胞期の段階で、受精卵エレクトロポレーション法(GEEP法)*1によって、ゲノム編集因子を導入しました。GEEP法を活用することで、従来のマイクロインジェクション法と比べて、高効率かつ高品質でゲノム編集が可能というメリットがあります。その後、ゲノム編集ヤギ受精卵を胚盤胞まで成長させたあと、レシピエントのシバヤギに胚移植し、産まれてきた子ヤギの遺伝子配列をシークエンシングで解析しました(図A)。
[画像: https://prtimes.jp/i/24912/6/resize/d24912-6-fdbfd206e9ecf497f8f3-0.png ]
その結果、子ヤギ個体(♂、図B)の kiss1 遺伝子の片アリルの配列には、野生型の配列と比べて、活性領域であるキスぺプチン-10内に5塩基の欠損が入っており(図D)、フレームシフト変異*3による遺伝子機能の欠損が予測されました。ゲノム編集ヤギ個体は、野生型のヤギと同じく無事に成長しており(図C; 産後3ヶ月経過)、現在、生殖機能や表現型についての解析を進めています。
大学発ベンチャーとして、世界で初めてGEEP法を用いたゲノム編集ヤギ個体の作出に成功したことは、ウシ科の動物でのゲノム編集育種の可能性を広げることが期待できます。セツロテックは、ゲノム編集技術を「生き物の多様な能力を引き出す」技術であると捉えており、今後も新たな産業につながる研究開発を進めてまいります。
なお、本研究の一部は日本学術振興会「科学研究補助金(21K19187)」の支援のもとで行われたものです。
【用語説明】
1) GEEP法:受精卵エレクトロポレーション法(特許6980218号)は、ゲノム編集因子およびgRNAといったゲノム編集ツールを、電気の力(エレクトロポレーション)によって受精卵に導入する方法です。GEEP法を活用することで、短時間で均一な条件下で、大量の受精卵に対して低侵襲にゲノム編集を行えるというメリットを産み出し、高効率なゲノム編集生物の作製が期待できます。
2) シバヤギ:日本在来種のヤギの一種(ウシ科ヤギ属)です。小型(20〜30kg)で、家畜やペット、実験動物として利用されています。
3) フレームシフト変異:数塩基の欠失または挿入によって、コドン(3塩基ごとの読み枠)がずれて、本来とは異なるアミノ酸配列のタンパク質が生じること。多くは、本来の遺伝子機能の欠損につながります。
【セツロテックについて】
セツロテックは、徳島大学で培った技術とノウハウを基に2017年に創業した、徳島大学発ベンチャー企業です。徳島大学の竹本龍也(代表取締役会長CTO)らは、2015 年に「ゲノム編集マウスを簡便にかつ高効率に作製できる手法」を開発しました(特許6980218号)。また、徳島大学の沢津橋俊(取締役CSO)は、培養細胞で高効率ゲノム編集を実現するVIKING法を開発しました(特許6956995号)。さらに、独自の新規ゲノム編集因子ST8(特許7113415号)を開発し、医療分野のほか、農業や畜産分野において品種改良を高速化する研究開発を進めています。セツロテックは、これらの独自技術を活用し、アカデミア・企業の研究者向けのゲノム編集受託サービスを展開するほか、Cas9代替因子を活用したゲノム編集生物を広く産業界に提供し、ゲノム編集産業を開拓することを目指すPAGEs(Platform App(lication) using Genome Editing by Setsurotech)事業を展開しています。「徳島をゲノム編集産業発祥地に』というビジョンを掲げ、地域産業に貢献していきます。
◆株式会社セツロテックの概要
1. 商号:株式会社セツロテック
2. 代表者:代表取締役 竹澤 慎一郎
3. 所在地:徳島県徳島市蔵本町3丁目18番地の15 藤井節郎記念医科学センター
4. 設立:2017年2月22日
5. 主な事業の内容:ゲノム編集による研究支援サービスならびに新品種の事業化
6. URL:https://www.setsurotech.com/
ゲノム編集受託サービスを提供する 株式会社セツロテック(本社:徳島県徳島市、代表取締役:竹澤慎一郎、以下「セツロテック」)の竹本龍也、稲谷結花らの研究グループは、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科(以下「名古屋大学」)の大蔵聡教授らの研究グループとの共同研究において、徳島大学発の独自の高効率ゲノム編集技術 ”GEEP法*1”を活用し、ゲノム編集シバヤギ個体を作出することに成功しました。
この成果は、ゲノム編集によるウシ科動物の効率的な品種改良に新たな道を切り開くものです。現在、産まれてきたゲノム編集ヤギ個体の解析を進めており、これらの結果を踏まえ、今後論文として発表する予定です。
【本件の背景】
ウシ科の動物は、ウシやヒツジなど、畜産業や繊維産業などで利用される多くの有用種を含む属です。特に、ヤギは、人類が犬に次いで家畜化した動物と考えられており、様々な形で古くから人間の生活・文化に関わってきました。ヤギの品種改良については、交雑による従来の育種のほか、基礎研究レベルでは新たにゲノム編集技術の利用もいくつか報告されています。しかし、これらは、すべて受精卵に対するマイクロインジェクション法で実施されており、実際の品種改良の現場で大量の受精卵を取り扱ううえでは、効率的なゲノム編集技術を新たに開発する必要があると考えられました。
セツロテックは、生物の遺伝子を自在に編集できるゲノム編集技術を活用し、顧客のニーズに応じて、農業畜産分野での新品種開発に取り組む受託開発型事業「PAGEs」を展開しています。セツロテックでは、様々な有用種を含むウシ科動物でのゲノム編集育種の可能性を広げるため、ウシ科の中でも小型なシバヤギ*2を対象に、技術開発や共同研究を進めてきました。
【研究内容】
本研究では、名古屋大学のグループと共同で、ヤギ生殖工学技術の確立とゲノム編集ヤギ個体の作出を目標に研究を進めました。セツロテックでは、生殖ホルモンの分泌などに関与する kiss1 遺伝子エクソン2上の活性領域(キスぺプチン-10)をターゲットにし、ガイドRNAの設計およびゲノム編集による遺伝子機能の欠損を試みました。
まず、雌のシバヤギ成体から体内受精卵を取り出し、1細胞期の段階で、受精卵エレクトロポレーション法(GEEP法)*1によって、ゲノム編集因子を導入しました。GEEP法を活用することで、従来のマイクロインジェクション法と比べて、高効率かつ高品質でゲノム編集が可能というメリットがあります。その後、ゲノム編集ヤギ受精卵を胚盤胞まで成長させたあと、レシピエントのシバヤギに胚移植し、産まれてきた子ヤギの遺伝子配列をシークエンシングで解析しました(図A)。
[画像: https://prtimes.jp/i/24912/6/resize/d24912-6-fdbfd206e9ecf497f8f3-0.png ]
その結果、子ヤギ個体(♂、図B)の kiss1 遺伝子の片アリルの配列には、野生型の配列と比べて、活性領域であるキスぺプチン-10内に5塩基の欠損が入っており(図D)、フレームシフト変異*3による遺伝子機能の欠損が予測されました。ゲノム編集ヤギ個体は、野生型のヤギと同じく無事に成長しており(図C; 産後3ヶ月経過)、現在、生殖機能や表現型についての解析を進めています。
大学発ベンチャーとして、世界で初めてGEEP法を用いたゲノム編集ヤギ個体の作出に成功したことは、ウシ科の動物でのゲノム編集育種の可能性を広げることが期待できます。セツロテックは、ゲノム編集技術を「生き物の多様な能力を引き出す」技術であると捉えており、今後も新たな産業につながる研究開発を進めてまいります。
なお、本研究の一部は日本学術振興会「科学研究補助金(21K19187)」の支援のもとで行われたものです。
【用語説明】
1) GEEP法:受精卵エレクトロポレーション法(特許6980218号)は、ゲノム編集因子およびgRNAといったゲノム編集ツールを、電気の力(エレクトロポレーション)によって受精卵に導入する方法です。GEEP法を活用することで、短時間で均一な条件下で、大量の受精卵に対して低侵襲にゲノム編集を行えるというメリットを産み出し、高効率なゲノム編集生物の作製が期待できます。
2) シバヤギ:日本在来種のヤギの一種(ウシ科ヤギ属)です。小型(20〜30kg)で、家畜やペット、実験動物として利用されています。
3) フレームシフト変異:数塩基の欠失または挿入によって、コドン(3塩基ごとの読み枠)がずれて、本来とは異なるアミノ酸配列のタンパク質が生じること。多くは、本来の遺伝子機能の欠損につながります。
【セツロテックについて】
セツロテックは、徳島大学で培った技術とノウハウを基に2017年に創業した、徳島大学発ベンチャー企業です。徳島大学の竹本龍也(代表取締役会長CTO)らは、2015 年に「ゲノム編集マウスを簡便にかつ高効率に作製できる手法」を開発しました(特許6980218号)。また、徳島大学の沢津橋俊(取締役CSO)は、培養細胞で高効率ゲノム編集を実現するVIKING法を開発しました(特許6956995号)。さらに、独自の新規ゲノム編集因子ST8(特許7113415号)を開発し、医療分野のほか、農業や畜産分野において品種改良を高速化する研究開発を進めています。セツロテックは、これらの独自技術を活用し、アカデミア・企業の研究者向けのゲノム編集受託サービスを展開するほか、Cas9代替因子を活用したゲノム編集生物を広く産業界に提供し、ゲノム編集産業を開拓することを目指すPAGEs(Platform App(lication) using Genome Editing by Setsurotech)事業を展開しています。「徳島をゲノム編集産業発祥地に』というビジョンを掲げ、地域産業に貢献していきます。
◆株式会社セツロテックの概要
1. 商号:株式会社セツロテック
2. 代表者:代表取締役 竹澤 慎一郎
3. 所在地:徳島県徳島市蔵本町3丁目18番地の15 藤井節郎記念医科学センター
4. 設立:2017年2月22日
5. 主な事業の内容:ゲノム編集による研究支援サービスならびに新品種の事業化
6. URL:https://www.setsurotech.com/