【S-Booster 2017】宇宙ビジネスアイデアコンテスト開催レポート(Vol.3)〜最終選抜、受賞6組のビジネスアイデアを一挙紹介〜
[18/02/21]
提供元:PRTIMES
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宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2017」開催レポートVol.3。今回は、300組の応募から勝ち進み、2017年10月30日に六本木ニコファーレで開催された最終選抜会でビジネスアイデアの発表を行った15組のファイナリストの中から、審査員特別賞、各スポンサー賞、そして大賞を受賞した6組のビジネスアイデアの詳細を振り返る。
【審査委員特別賞】ハプティクスターズ:『力触覚技術を適用したロボットアームによる宇宙での作業の高機能化』
“宇宙は非常に危険です。そこでロボットの出番です”
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チーム「ハプティクスターズ」は、今後発展していく宇宙開発に対して、ロボットによる作業を提案した。宇宙での作業は危険が伴うため、人件費や宇宙服、打ち上げから回収まで1つのプロジェクトにかかる費用は約50億円と言われている。しかし実作業を“人”から“ロボット”へと代用することによりコストは5億円に抑えることができるという。
既存のロボットは力触覚が欠如しているため細かい作業をする前に物を壊してしまう恐れがあるが、ハプティクスターズの開発したロボットアームではスナック菓子など繊細な物でも壊さないよう持ち運びが可能である。ロボットアームの開発は指だけでなく、手首や肘、肩を含めた双腕の開発が完了している。
代表の野崎氏は「ロボット利用により安心かつ安価な宇宙での作業を実現する」と話し、船外活動のロボット化を可能とする優れた提案であることが評価された。
【審査員特別賞】さざ波:『世界をつなぐ さざ波衛星ネットワーク』
“世界の人口の約半分はインターネットがない環境で暮らしている”
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チーム「さざ波」は、「近年、インターネットが普及してきた一方で、世界の人口の約半分はインターネット環境のない暮らしをしている」と語り、聴衆に問題を投げかけた。広域をカバーするインターネット構築の手段として、衛星の利用が注目を集める一方で、現在使われている通信衛星で世界中どこでもインターネットの通信を可能にする為には、大量の衛星はもちろん数百億円のコストがかかり、現実的ではない。
代表の福代氏は過去に20年ほどアマゾンの森林やアフリカの僻地での環境開発に携わっており、「これらのインターネットがない現場ではIoTへの期待が高まる一方、彼らが本当に求めているのは水や土地、疫病などの、20文字程度で伝えられる情報なのだ」と語る。そこで福代氏は小電力通信に特化した重量3.2kg以下の超小型衛星「さざ波衛星通信」を提案。20文字程度の情報量を20mWほどの小電力で通信可能であり、1機あたり400〜700万円程度の低コストでの製造を目指す。今後のビジネス展開として、途上国や大学、自治体への展開を考え、既に東アフリカの国と共同事業をスタートしていると説明した。審査委員からは超小型低電力の技術と世界貢献、発展性が評価され受賞に至った。
【スポンサー賞】石北 直之:『嗅ぎ注射器 宇宙へ』
“これからの宇宙ミッションに麻酔は絶対に必要。”
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ANAホールディング賞を受賞したのは、石北氏による「超小型簡易吸入麻酔器(嗅ぎ注射器)」。宇宙ミッションで最も重視されるのは宇宙飛行士の命を守ることだが、宇宙では麻酔ができないため、長期に渡る重要なミッションで大きな怪我や病気をした際に宇宙で手術をすることができない現状を石北氏は指摘。
麻酔の投与方法として、地上で行われる針を使う静脈麻酔法では、過剰投与などの危険性から宇宙での使用が認められない。そこで石北氏が提案したのは、石北氏が独自開発した“嗅ぎ注射器”を用い、針を使わず鼻から麻酔を嗅ぐというもの。静脈麻酔法とは異なり安全な投与やリサイクルができ、既に2回の無重力実験に成功。宇宙のみならず地上でも使用できる幅広いビジネスプランを提案し、社会的な意義と収益性が評価されスポンサー賞受賞に至った。
[スポンサー賞]羅針盤:『測位衛星×セキュリティ(未来に向けた安心な測位)』
“今までの位置情報サービスは信頼できる位置情報を得ているとは言えない。”
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三井物産賞を受賞したチーム「羅針盤」は、位置情報を安心して利用できるセキュリティサービスを提案。
スマートフォンアプリやドローンによる配達などGPS等の測位衛星信号を用いた位置情報サービスは現在我々が生活する上で欠かせない技術となっている。しかし衛星測位には脆弱性があり、偽装信号を用いた“スプーフィング”による位置情報の悪用、自動運転の事故の誘発など、衛星信号のセキュリティーの必要性について熱く力説した。
代表の宝田氏は2020年を目標に“スプーフィング”を防ぎ、信頼できる衛星信号を認証するサービスの開発を進めている。GPS等の位置情報を利用したサービスは、現在の16兆円規模から7年後には約2倍になると市場の発展性にも言及。現在“スプーフィング”による大きな事件は表面化していないものの、これから問題となっていく可能性があるため、「今」先陣を切って行動することが必要な分野であることを説明した。審査委員からは、未来に向けた安全な測位はGPS等の用途を広げるものであり、世界的なビジネスの発展に貢献する技術であるとして評価された。
【スポンサー賞】TRY FORCE:『宇宙テザー技術をつかった宇宙環境計測技術の開発』
“持続可能な宇宙開発技術に貢献”
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宇宙開発において多くの衛星が軌道投入されていく上で、これからは、不用となったこれら衛星等の人工物「スペースデブリ」を避けての通信・測位衛星の安定運用と物体の認識や状態把握など細かなデータを計測できる人工衛星が要求される。
そこでチーム「TRY FORCE」は、測位衛星の機能向上と安定運用を可能とする“宇宙テザー技術を用いた計測システム”を提案した。安価な超小型人工衛星ナノサットを複数同時に打ち上げ、細くて強靭なひも“テザー”で結び付けることで巨大な人工衛星群を作る。これにより従来の超小型衛星の開発費用と期間は同等ながら人工物の状態把握を含め、太陽フレアや高精度な磁気嵐の予測、衛星帯電・放射線トラブル検知のより詳細なデータの観測範囲を10kmから60kmへ拡大し、深宇宙探索の新たな発展を可能とする。
この計測システムは多数の衛星で構成されているが、そのうち数個が壊れても運用可能であり、安定した計測が可能であると説明。現在は実証実験を行っており、今後の課題としてテザーの二次元展開やデータの読み取り、宇宙環境耐久実験等があるが、10年以内に実用化に繋げたいと代表の青木氏は語った。テザーを使った宇宙空間での建造物への応用が大林組の掲げる未来構想と一致したことにより受賞となった。
【大賞・スポンサー賞】松本 紋子:『超低高度衛星搭載ドップラーライダーによる飛行経路・高度最適化システムの構築』
“安全性と品質はそのままに、安く飛行機に”
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ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2017」の大賞を飾ったのは、個人で応募した松本氏の「超低高度衛星搭載ドップラーライダーによる飛行経路・高度最適化システムの構築」であった。このビジネスプランは大賞だけでなく、スポンサー賞であるスカパーJSAT賞とのダブル受賞となり、会場は大いに盛り上がった。
「安全性を保ちながら安く飛行機に乗りたい。」これを実現するためには、最適な飛行経路の選定と燃料削減が重要な要素となるが、提案者の松本氏は超低高度衛星にドップラーライダーを搭載することで広域観測かつ高精度・高頻度な大気観測システムを確立し、これを実現することを提案した。
当該衛星はまだ実現化には至っていないため、今後は取得可能なデータによるシミュレーションを行い、実証実験を繰り返すことで運用につないでいきたいと説明。シミュレーションに用いるデータは2018年1月に欧州宇宙機関がドップラーライダーを打ち上げるものを基にすると具体的なプランを語った。「もし燃料を1%削減することができたら、年間で約3,200億円の燃料削減になり、CO2も1,200万トンの削減から約180億円のコストカットにつながる」と松本氏は力説。ビジネスアイデアの実現性、革新性や明確な課題設定、経済効果を提示したことが大賞、スポンサー賞受賞へと繋がった。
全4回に渡り「S-Booster 2017」の軌跡を振り返る当レポート。最終回である次回は、提案者をはじめとしたS-Booster関係者の生の声等、最終選抜会の裏側を掘り下げるとともに、宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」の今後の展開についても紹介する。
イベント全貌は第1弾のレポートで紹介した特別動画でもご覧いただけます。また、全ファイナリストのプレゼン動画もS-Booster 2017公式HP( https://s-booster.jp/ )にて公開中。
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