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日本初・メガバンクに気候変動対策の強化を求める市民の株主提案

アースデイに三井住友フィナンシャルグループ本社前でアピール&記者会見を実施

本日4月22日、国際環境NGO 350.org Japanは、三井住友フィナンシャルグループに対して気候変動対策の強化を訴える株主提案をアピールするため、東京・丸の内のSMBCグループ本社前でフォトアクションを実施するとともに、記者会見を開催しました。




本日4月22日※、国際環境NGO 350.org Japan(350 Japan)は、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)に対して気候変動対策の強化を訴える株主提案をアピールするため、東京・丸の内のSMBCグループ本社前でフォトアクションを実施するとともに、記者会見を開催しました。また、国内外の投資家向けに対して、同株主提案に賛成するよう要請する説明資料を公開しました。

※4月22日は、地球の持続的なあり方を考えて行動する「アースデイ(Earth Day)」です。

[画像1: https://prtimes.jp/i/80695/6/resize/d80695-6-16354cc1362f6806fce0-0.jpg ]



350 Japanは、最新の気候科学に基づいて、この株主提案への投資家の賛同を増やし、SMBCグループとの対話を続け、今年6月に開催されるSMBCグループの株主総会に臨みます。同時に、銀行の気候変動対策を応援する市民のムーブメントを広げます。


三井住友フィナンシャルグループに対する株主提案

この株主提案は、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)に対して、パリ協定の1.5℃目標と整合的な2050年排出ネットゼロ(実質ゼロ)に向けて、短期(2025年)・中期(2030年)の温室効果ガス排出削減目標を策定し、進捗報告を行うよう求めるものです。また、国際エネルギー機関(IEA)などのシナリオに沿って、新たな化石燃料供給や関連インフラの拡大への支援をやめるよう訴えています。

▼株主提案の本文
https://world.350.org/ja/files/2022/04/%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E6%8F%90%E6%A1%88SMBC.pdf

▼株主提案に関する投資家向け説明資料
https://world.350.org/ja/files/2022/04/JA_20220420-SMBC-Group-Investor-Briefing.pdf


「株主提案」の背景にあるもの

[画像2: https://prtimes.jp/i/80695/6/resize/d80695-6-c68c804091bd30808e66-1.jpg ]



気候危機の科学と金融機関の役割

この株主提案の背景について、個人株主であり、350 Japan代表の横山隆美は、次のように説明しています。

「IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の科学は、気候が危機的状況に陥ることを警告しています。これ以上化石燃料への依存を続ければ、パリ協定の1.5℃目標の達成が不可能になり、人類は、未曾有の気候災害や食糧不足などの危機に直面することになります。ところが、日本の金融機関は化石燃料産業への支援を続けています。我々NGOはこれまでも金融機関の担当者と対話を続けてきましたが、十分な方針強化は実現していません」

気候変動に関する国際条約・パリ協定は、産業革命以降の地球平均気温上昇を1.5〜2℃未満に抑えることを目標としています。昨年のCOP26グラスゴー会議では、「2℃目標では不十分だ」との議論の高まりをうけて、1.5℃目標への決意が打ち出されました。1.5℃目標を達成するためには、世界全体でCO2排出量を2050年までにネットゼロにし、2030年までに約半減させることが必要です。

しかし、現在の対策水準のままでは、1.5℃目標が達成できる見通しはたっていません。国際エネルギー機関(IEA)や国連環境計画(UNEP)などが示す、「1.5℃目標への道筋」には程遠いのが実情です。

現在、ロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギー問題への懸念が高まっています。このことについて、横山代表は次のように述べました。

「戦争のさなかも、気候変動の悪化は続きます。国外の化石エネルギーに依存することの不安定さが露呈した今、省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーの普及を加速させることが必要です。それこそが日本のエネルギー自給率を高め、エネルギー安全保障に寄与します。欧州において、省エネルギーと再生可能エネルギーに尽力してきた国では、エネルギー問題の影響をより小さく抑えることができています。また、原子力発電は、核廃棄物や事故リスクの問題があり、再生可能エネルギーと比べてもコストが高く、気候危機の解決策にはなりえません。資金の流れを、化石燃料や原子力ではなく、よりクリーンで安全な再生可能エネルギーへと変えていくことが必要です」


なぜ「三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)」なのか?

個人株主の1人である350 Japanの渡辺瑛莉シニア・キャンペーナーは、「SMBCグループとは株主提案前より数年間にわたって対話を続けてきましたが、気候リスク管理の加速が必要と判断し、今回の株主提案に踏み切りました。SMBCグループは、気候リスクを加速する化石燃料への巨額の資金提供の継続、東アフリカ原油パイプライン(EACOP)を始めとした環境社会影響の甚大な事業への支援の継続、他のメガバンクと比べて遅れをとる気候変動方針といった課題を抱えています」と話した上で、今回の株主提案の意義を次のように指摘します。

「今回の株主提案を通じて、同社がパリ協定の目標に整合した短期・中期の目標を含む事業計画を策定・開示し、進捗状況を年次で報告することで、投資家の期待に沿ったリスク管理の開示強化を示すことができます。さらに、気温上昇を1.5℃に抑えるため、最新の気候科学に沿って、新規の化石燃料の開発に寄与しないための措置を講じることで、気候変動リスクを緩和し、座礁資産等の財務リスクを低減することができます。こうした気候リスクの管理および開示の強化は、同社の長期的な企業価値の向上にもつながります」


NGOの代表・スタッフに加え、一般市民も株主提案

この株主提案をするメンバーは、350 Japanの横山隆美代表と渡辺瑛莉シニア・キャンペーナーに加えて、大学生の冨永徹平さん、二人の子どもを持つ母親である笠井貴代さん、横須賀で気候変動問題に取り組む山崎鮎美さんです。一般市民がメガバンクに対して気候変動対策の強化を求める株主提案を行うのは日本で初めてのことです。

横山代表は、「市民による株主提案は、銀行に直接私たちの意見を伝えると同時に、銀行に影響力を持つ投資家にもアプローチできる数少ない機会です。株主提案をすることで、気候変動に懸念を持つ世界中の投資家とともに、脱炭素への変化を強く迫ることができるのです」と話します。


「次世代に未来を残すために」山崎鮎美さん

個人株主で、横須賀で気候変動問題に取り組む山崎鮎美さんは、気候変動に危機感をもったきっかけを次のように話しています。

「2019年10月、ネットニュースでオーストラリアの森林火災のニュースを見ました。画面がすべて炎で真っ赤で、女性が半裸で逃げ、コアラが怪我をし、10億の生き物が死んだとも言われています。地球って本当に燃えているんだ、海の向こうでこんな起きているんだと衝撃を受けました」

その後、山崎さんはインターネットで気候変動について調べ、近くの横須賀で石炭火力発電所の新設計画が進められていることを知りました。石炭火力発電は、天然ガス火力発電と比べて、同じ発電量あたり約2倍のCO2を出すと言われています。巨大なCO2排出源をこれから新しくつくるという計画を止めるために、地域住民の活動に参加しました。

「横須賀の住民は、すでに、十分すぎるほど立ち上がって声をあげています。やれることは全部やっていますが、まだこの計画は止まっていません。どうしてなのか考えました。1つ言えるのは、この石炭計画は大規模なビジネスであって、巨額のお金の流れがあるということです。化石燃料への巨額のお金の流れが止まれば、この計画を止めることにつながると思いました」


「政府と企業の両方にアプローチする」冨永徹平さん

冨永徹平さんは、現在大学2年生で、グレタ・トゥーンベリさんが始めた「Fridays For Future(未来のための金曜日)」という気候ムーブメントのメンバーです。日本政府に対して温室効果ガス排出削減目標を引き上げるよう求めるなど、政策に対して声をあげてきた冨永さんは、その経験から、次のように話しています。

「政治から経済への影響、経済から政治への影響がともにとても大きく、どちらか一方にアプローチをするだけでは社会が変わっていくのは難しいと感じます。政府職員や政治家は、『対策が取れないのは企業の準備ができていないから』と話します。しかし、企業からは、『政府が対策を取らないのなら、企業が自主的に対策を取るのは難しい』との声が聞こえてきます。本当に社会全体で気候変動対策を進めるには、私たちは政府と企業の両方に働きかける必要があります」

株主提案に取り組むことを決めた冨永さんの念頭にあるのは、気候変動は、人々に不平等に悪影響を与えるという点です。

「気候変動は、途上国の人びと、高齢者、女性、障害者や、気候変動によって不安定になる産業で雇用されている方、自分を含めた将来世代など、社会的に弱い立場の人に特に影響を与えます。調査によれば、日本の3メガバンクは、世界で最も石炭産業に融資している金融機関です。株主として当社、三井住友フィナンシャルグループに対して気候変動対策の強化を求めることには、大きな意義があると思っています」


「気候変動を加速させてしまうのも私たちですが、止められるのも私たち」笠井貴代さん

笠井貴代さんは、現在北海道で子育て中です。笠井さんは、気候変動に危機感をもったきっかけを次のように話しています。

「2018年に生まれた子どもがアレルギーを持っていたため、環境問題について勉強を始め、気候変動について知りました。6月に故郷の北海道の帯広で38.5℃を記録したり、暑さで熱中症や脱水症状になる人がでたり、温暖化を感じるさまざまな出来事がありました。2019年にはアル・ゴア元米国副大統領の気候変動リーダー養成トレーニング(Climate Reality Project)に参加し、壊滅的な状況になるまで時間がないことを知りました」

笠井さんは、「本当は、子どもたちに『安心できる明るい未来が待っているから、あなたはやりたいことをやりなさい』と声をかけてあげたいのです。しかし、気候危機が解決できなければ、その言葉は嘘になってしまいます」と話します。心から子どもたちにそう伝えることができるようにするため、長年勤めたIT企業を退職し、活動をスタートし、そして株主提案をすることに決めました。

「今回、株主提案をすることで、より直接的に金融機関に化石燃料産業への投融資を止めることを訴えることができると思います。また、このことが報道され、多くの人に知ってもらえたら、この気候変動という大きなテーマが、社会全体で活発に議論すべきアジェンダになるのではないかと思いますし、そうなることを望んでいます。私たちは敵・味方などではなく、この場にいる皆さんすべてが『気候変動を止められる最後の世代』を共に生きる人です。気候変動を加速させてしまうのも私たちですが、その危機を止められるのも私たちなのです」
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