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オムロン サイニックエックス、自律ロボットに関する主要国際会議「AAMAS」に2年連続で研究論文が採択




オムロン サイニックエックス株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:諏訪正樹、以下 OSX)は、自律ロボットに関する主要国際会議International Conference on Autonomous Agents and Multiagent Systems 2023(以下 AAMAS2023)に、2年連続で研究論文が採択されました。本成果の詳細は、5月29日より英国ロンドンで開催される同国際会議にて発表を行います。

「AAMAS」は、自律ロボットに関する国際的に権威のある主要国際会議の一つです。2023年は1,000件を超える投稿の中から、およそ45%の論文が採択されており、中でもOSXから採択された論文は、全投稿の23.3%の「Full Paper」(口頭発表あり)として選ばれました。OSXからの発表は、6月1日10:45(現地時間)からのセッションで予定しています。

<採択された論文内容>
Counterfactual Fairness Filter for Fair-Delay Multi-Robot Navigation
著者 


 浅野 輝(東京大学、2022年3月からOSXインターンとして在籍)
 米谷 竜(株式会社サイバーエージェント、 執筆時OSX)
 西村 真衣(OSX)
 小津野 将(OSX)
研究背景


 フードデリバリーやタクシーなどの配送サービスを自律走行型のロボットで実現することを考えた場合、複数の自律走行ロボットが衝突することなく目的地へ最短で移動できることが重要です。しかし、大半のロボットが効率よく目的地に到着できたとしても、大多数を優先して移動させたことで特定のロボットのみが遅延してしまっては、配送サービスにおける利用者の公平性を担保することができません。このように、複数の自律走行ロボットを活用するには効率的で安全な移動を可能にすることに加え、各自律走行ロボットの待ち時間は均等にすることが求められます。
研究の概要


 本研究では、「ナビゲーションの公平性」を定義する方法を考えました。注目した点は、ロボットがどれだけ損をしているかという指標です。複数のロボットが同時に行動する場合、他のロボットとの衝突を避けるために、迂回や一時的に停止をする必要があります。この迂回や一時的停止により、最短経路から外れてしまうことで発生する最短時間からの遅れ時間をロボットの「損失」とみなし、各ロボットの損失のばらつきの大きさによりナビゲーションの公平性を定義しました。

この公平性とできるだけ早く目的地に到達できる効率性の両立を、反実仮想推論*1を応用したアルゴリズムによって実現しました。本アルゴリズムでは、ロボットは停止して道を譲るか、あるいは進み続けるかの判断を学習します。この学習は、道を譲ることによって他のロボットの損失がどの程度減るかに基づいて行うものです。このような学習方法を使用することで、自分が道を譲る行為が他のロボットが目的地に早く到着する助けになる場合にだけ、道を譲るという選択をし、そうでなければ、そのまま進み続けるという意思決定を可能にします。これにより、本研究では公平さを維持しつつ、効率的に目的地に到着することを実現しました。

*1:反実仮想推論とは、現実とは違う架空の状況を考え、その結果を予測する考え方です。例えば、「もし雨が降っていたら、私たちは濡れていたかもしれない」というように、現実には雨が降っていない架空の状況に対して、もし雨が降っていたらどうなっていたかを考える推論です。
研究の成果


提案手法の有効性を確認するために、周囲のロボットの状況から公平性を導出する既存の強化学習アルゴリズムと比較実験を行いました。

<図1:ナビゲーションの一例>
[画像1: https://prtimes.jp/i/120244/6/resize/3967761099b75308a58d5af626bf8e0a.gif ]

【凡例】
黒丸および黒四角:動かない障害物
色塗り丸印:各エージェントのスタート地点
色枠丸印:対応する色のエージェントのゴール地点

<図2:16個のエージェントによるナビゲーション計算結果の比較>
(a)障害物が少ない問題の場合
[画像2: https://prtimes.jp/i/120244/6/resize/d120244-6-ea8dd53650dd280a937d-1.png ]

(b)障害物が多い問題の場合
[画像3: https://prtimes.jp/i/120244/6/resize/d120244-6-37208113836f444c80af-2.png ]

既存手法:Fair-Efficient Network (FEN)、Jiechuan Jiang and Zongqing Lu. 2019. Learning fairness in multi-agent systems. In Proceedings of the Annual Conference on Neural Information Processing Systems (NeurIPS). 13854-13865

図2(a)に示すとおり、障害物が少ない環境では既存の手法を用いることで高い効率性を示す一方で、ナビゲーションに不公平な傾向があります。また、図2(b)の障害物が多い環境下では効率性が低下し、不公平な経路になる傾向があります。それらに対し、我々の提案手法では効率性を約2.3倍向上させ、不公平性を約16%減少させることができ、高い効率性と公平性の両立を実現しました。

本成果はオープンソースソフトウェアとして公開しており、以下のリンクから利用することができます。
https://omron-sinicx.github.io/ncf2/

詳細は、以下の記事をご参照ください。
「Counterfactual Fairness Filter for Fair-Delay Multi-Robot Navigation (AAMAS2023)」
( https://medium.com/sinicx/e209b54c646d )

今後もOSXでは、大学や社外研究機関との連携を通じた技術革新による価値創出に取り組んでいきます。

オムロン サイニックエックス株式会社について
オムロン サイニックエックス株式会社は、オムロンの考える"近未来デザイン"を創出する戦略拠点です。「AI」「ロボティクス」「IoT」「センシング」など、幅広い領域の最先端技術のトップ人財が研究員として在籍し、社会的課題を解決するために、技術革新をベースに「ビジネスモデル」「技術戦略」「知財戦略」を統合し具体的な事業アーキテクチャに落とし込んだ"近未来デザイン"を創り出します。また、大学や社外研究機関との共同研究を通じて「近未来デザイン」の創出を加速していきます。詳細については、https://www.omron.com/sinicx/をご参照ください。
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