いよいよ開幕!市民参加型の国際アート&サイエンスフェスティバル『科学と芸術の丘』(10/21(土)〜22日(日)まで)注目アーティストが語る6作品の見どころとはー
[23/10/21]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
世界的メディアアートの文化機関、アルスエレクトロニカと共同キュレーション!
『科学と芸術の丘』は、市民が中心となって立ち上げた、6回目を迎える国際アート&サイエンスフェスティバル。
今年のテーマに「Seeds of Hope ーここで、あそぶ時間ー」を掲げ、最新の科学、芸術、自然を体感できる内容となっています。
メイン会場で行われるエキシビジョンでは、世界的なメディアアート文化機関であるアルスエレクトロニカと共同でキュレーションした、国内外のアーティストの作品を展示しています。
環境破壊が進む中、虫たちの目線になった庭づくりを探求するアレクサンドラ・デイジー・ギンズバーグによって制作された《Pollinator Pathmaker》。ヴェレーナ・フリードリッヒのERBSENZAHLER Quality Sorter V1では、エンドウ豆の品質を実際に鑑賞者が選定することで、人間がいかに小さなことで他者を振り分けているかを体感することができます。香港出身のアーティスト・コーダーであるウィニー・スーンは、検閲でかき消されたウェブ上の呟きを発掘し、どんな思いがかき消されているのかに想像を寄せる作品です。アーティストとディレクターのコメントと見どころをご紹介します。
[画像1: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-5d8de0e791f6370590d4-14.png ]
公式サイト https://science-art-matsudo.net/
アーティストコメント&見どころ
■Pollinator Pathmaker / Alexandra Daisy Ginsberg(清水陽子による作品解説)
【Ars Electronica Selection】
[画像2: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-46a0705f0b170114a749-0.jpg ]
花粉を運ぶ昆虫(ポリネーター)は、わたしたちの生態系を維持しているにもかかわらず、環境破壊や人間中心的な活動によって減少しています。植物の植え方自体を昆虫視点で行うことで、気候変動への対策を呼びかけている作品です。さまざまな植物や昆虫やAIの専門家と協力し、ポリネーターにとって理想的な庭を自動的に生成するプログラムを開発しました。ここで見られる映像は、シュミレーション後の庭をポリネーター目線で庭を飛行した作品となっています。今回の展示では、イギリスの植生をベースにしたプログラムの体験版に触れられます。庭の広さや日当たり、好みを入力すると、ポリネーター目線の理想の庭が出力されます。今回は体験版のためダウンロードはできないものの、実際にはどんな植物を植えたらいいかという指示書が出てきます。アーティスト本人はこのテクノロジーを開発したのち、生成されたプログラムをもとに様々なイギリスの団体と協力して庭を作っています。欧州委員会のアワードでグランプリを受賞した作品です。この作品が評価された理由は、実際に植物を植えることで地球規模のムーブメントにしている点です。今後、日本の学者ともコラボレーションしていきたいと話しています。
■ERBSENZAHLER Quality Sorter V1 / Verena Friedrich
【Ars Electronica Selection】
[画像3: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-cbe9acd83668b7c94fe9-11.jpg ]
《ERBSENZAHLER Quality Sorter V1》は、鑑賞者自身にエンドウ豆の品質を判定してもらうインスタレーションです。ドイツ語で「豆を振り分ける人」は、細かなことを気にして人を判断する人のことを指すことがあります。エンドウ豆をひとつの生命や人生の象徴とし、それが現代社会でいかに容易く振り分けられているかを考える作品を制作しました。
[画像4: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-ad28d09c7898a33e3898-0.jpg ]
実際に装置を使い、ベルトコンベアで流れてくるエンドウ豆の品質を顕微鏡を使って検査し、いい豆は緑のボタン、悪い豆は赤いボタンを押していただきます。この判断は鑑賞者の皆さんに委ねています。振り分ける作業をしながら、いかに人々が小さなことで人やモノを判断しているかを考えるきっかけとなればと思います。また、判断されたエンドウ豆の画像は、アーカイブされ、さらに機械学習にも活用されます。それによって、AIなどのテクノロジーに人間の判断基準を学ばせることの危うさについても考えるためです。
人間がラベリングしたものを、人間が開発したテクノロジーに覚えさせて自動化することによって、人間自身も自動的に選別される。その行為が人生に与える影響についても考えさせられるプロジェクトになっています。AIのアルゴリズムも同様ですが、最初の開発者が知識を教えて、人や商品などの物の合格や不合格を決めます。自分がそういう立場になったとき、どう判断するのか。こんな風に些細なことで判断されているかもしれない。そういったときに私たちはどう考えるべきかということを考えさせられる作品です。
■Unerasable Characters Series (2020-2023) / Winnie Soon
【Ars Electronica Selection】
[画像5: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-7cc884a40b0cda01896d-11.jpg ]
「書き消すことのできない文字たち」は、WEB上で国家権力などの検閲にかかって消されてしまった市民の言葉を発掘しています。タワーのように積み上げられた資料は中国のweiboにアップされたのち、検閲で消されてしまったものをプリントアウトし展示しています。
[画像6: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-6c4272141a27f394b9fe-11.jpg ]
映像で流れているのは継続的に収集している市民の声たち。すぐに消されてしまうものもあれば1日経って消されるものもあり、どのくらいのタイムラグで消されるのかもシュミレーションされています。黒い部分が消された部分で時間の経過とともに消される様子を確認できるようになっています。奥のパソコンのモニターでは実際に黒い部分にカーソルを当てると消されたコメントを推測できるようになっています。
■European Union Prize for Citizen Science(清水陽子による解説)
【Ars Electronica Selection】
シチズン・サイエンスとは、オンラインプラットフォームやモバイルアプリケーション、あるいは現地にて、関心のある一般市民が参加する科学研究のことです。今回は欧州委員会で開始した賞のグランプリと準グランプリのプロジェクトを紹介します。
[画像7: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-a84b6d0a8c4f9cb0861e-0.jpg ]
グランプリの『Isala』はベルギーを中心に行われているプロジェクトです。大学の教授が中心となり、約6000名ものベルギーの女性市民が参加する世界最大規模の市民科学プロジェクトです。様々な国でタブー視されがちな女性の生殖や膣に関する研究などを進めています。
『Urban Belonging Project』は持続可能な社会のために多様な視点を取り入れた都市づくりを研究するデンマークとオランダのチームによるプロジェクトです。障害者、ホームレス、少数民族、LGBTQ+など、現代の社会で取りこぼされがちな人々の視点を調査し、多様な視点に基づいた情報を都市やまちづくりに生かすために市民と街を歩き、情報収集して今後のまちづくりに活かすプロジェクトです。
『The Restart Project』はロンドンで始まったプロジェクトです。電子機器や部品のゴミ問題について、修理のノウハウを集めたりボランティアの人と修理活動、リサイクルのための法整備、修理する権利のための法整備や活動をヨーロッパ全域を巻き込んで行われている市民活動です。壊れたらすぐ買い換えるのではなく、自ら修理して長く使う方法を模索し推進しています。
[画像8: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-cd25ff69139506d0d294-0.jpg ]
この部屋では、自分の意思表明ができる参加型の企画も用意されています。まずは自分の意志を絵馬型の用紙に書くことでアウトプットするところからはじめてみませんか。
■「ファット」な身体との付き合い方 / 津野青嵐
[画像9: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-1b653f0e6de07cba81cf-9.jpg ]
ファッション制作を通して「ファット」な身体との付き合い方を非言語的な当事者研究の実践を通した研究活動を行う津野青嵐。あたかも幽体離脱をしているようなフォルムの3Dペンドレスシリーズは関東での展示は初となります。
[画像10: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-d5032eb483a41cece7d8-0.jpg ]
服や靴、グローブの素材は3Dプリンターと同じでプラスチックの棒のような素材を使っています。3Dペンで一本一本手作業で線を引いて構成され、ネックレスのような形で首の前面にひっかけて体に対して浮くように作られています。そのほか、自身のボディイメージのドローイング作品や、エッセイ、実験中のマテリアルなどを展示しています。現在はファッション表現を使いながら、自分の体との付き合い方を主観的な感覚にフォーカスして言及するというテーマで大学院で研究しています。そこで、服を作ることが自分の体との付き合い方にどういう意味を持つのかを研究しています。
■Non-Retina Kinematograph (2017 - ) / 齋藤帆奈
[画像11: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-8f799c5ec398dcca7329-0.jpg ]
《Non-Retina Kinematograph》は粘菌に、人間には静止画に見える超スローモーション動画を見せています。また、粘菌の軌跡や好みが反映された編集が行われるようになっています。人間の知覚だけでないものにどうやってアクセスするのか、いろいろなデータや時間軸を変換することで、私たちの知覚に対して外から、あるいは内側にある別の視点で再考するための作品です。
[画像12: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-686791b782f26e868dee-10.jpg ]
私たちは映像を見るとき、網膜にある視細胞で光を受容し、その信号が視神経を伝わり、脳で処理が行われていますが、光の知覚は様々な原始的な生物も持っており、粘菌も光に反応しています。これまでの研究で分かっているのは、粘菌は黄色はあまり認識していないこと、赤い色は胞子を出すのに必要としている色だということ、青色や紫色は苦手ということです。今回の作品では、アニメーションを超低速で流したiPadの上にアメーバ形態の粘菌を培養しています。今回は展示期間が短いのでアーカイブの状態をご覧いただけます。粘菌は1時間に数cmしか動かず、人間とは異なる時間軸を持っているため、映像の再生速度を粘菌のスピードに合わせています。映像を見ている粘菌をさらにウェブカメラで撮影し、粘菌の形や好み次のフレームに反映させています。それをさらに粘菌ごと上から撮影し、人間にとって動画に見えるスピードに変換した動画をリアルタイムでプロジェクター投影する作品です。今回は、以前4ヶ月間ほど展示して変換された映像をプロジェクションしています。元の動画は動植物やキノコが擬人化されたアニメーションを用いています。キノコの精が躍るアニメを粘菌が変換する様子は、まるで粘菌がキノコを捕食しているように見えます。その様子は人間にしか感じられない視点ですが、本来粘菌はキノコを捕食するので、横に粘菌がシメジを実際に食べている様子を展示、さまざまな種、それらの知覚の絡み合いを示しています。
ディレクター&キュレーター コメント
■関口智子(総合ディレクター/一般社団法人ゼロファクトリアル代表理事)
[画像13: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-563069e89f15a33c73f9-0.jpg ]
今年で6年目を迎えた『科学と芸術の丘』のメイン会場となる戸定邸は、国の重要文化財となっている建物で、水戸藩最後の藩主である徳川昭武の邸宅です。ここを舞台としたのは、当時の最先端の文化や技術を取り入れた建物であることも理由のひとつです。
全体監修とアーティストのキュレーションはオーストリアのメディアアート研究機関であるアルスエレクトロニカが協力しています。
パンデミックの影響が少し落ち着き、今年は海外からのアーティストも実際にいらしていただくことができました。
今年のテーマは「Seeds of Hope 〜ここで、あそぶ時間〜」としました。『科学と芸術の丘』を通じて未来に向かって希望の種を蒔いていければと思っています。「ここであそぶ」ことを通して、日常生活や仕事へのアイデアといった創造性を高めること、それから自分自身がやってみたいことに挑戦する機会などに活かす機会にしていただけたらと願っています。
■清水陽子 (全体監修/Ars Electronica Futuerlab Key Researcher & Artist)
[画像14: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-6dc392ad9bae9bf5ed6d-0.jpg ]
『科学と芸術の丘』の立ち上げから関わり、今年で開催6年目を迎えました。パンデミックを乗り越え、今年はデジタル作品に加え、実際に触れるようなフィジカルな作品も展示できました。
オーストリア・リンツ市で開催したアルスエレクトロニカのフェスティバルも同様で、今年はフィジカルな作品についてもたくさんの方に体験していただきました。
現代社会において、本当か嘘かわからない情報がひしめき合っています。テクノロジーが進化する中で、わたしたち市民一人ひとりが真実を自分で調べたり、わたしたち自身で未来の希望を見出し、対話することが重要だと感じています。
今回のキュレーションで意識したのは、アーティストやイノベーターの方々が市民の皆さんと一緒になって様々なクリエイティブな手段を使いながら、未来の社会について楽しく体験したり議論ができるプロジェクトであること。実際にさわったり、思いついたアイデアを実際に紙に書くといった体験型の作品に積極的に参加していただけたら嬉しいです。
■海野林太郎(展示コーディネートディレクター/美術作家、マテリアルショップ・カタルシスの岸辺)
[画像15: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-b6506f00e24caca58fdf-0.jpg ]
アーティストのキュレーションには、戸定邸が持っている背景が関係しています。徳川昭武は14歳でパリに留学していたり、写真に本格的に取り組んでいたりなど、当時の最先端の技術や文化に触れる事にとても積極的な人物だったと聞きました。
そういったことから、多様で新しい表現をこの建物の中で紹介することに意味があると思っています。例えば、展示作家の1人である津野青嵐という日本のアーティストは3Dペンで服を作り、注目を浴びました。ただ新しい素材を使っている訳ではなく、作家の独自の経験とリアリティから必然性をもって、一般的に服を作る素材とは異なる新しい素材を用いて表現をしているアーティストです。
今はまだ一般的ではないけれど、精神的にも素材や技術としても、先進的な取り組みをしているアーティストを選出することが時間を超えて戸定邸という場所と調和すると思い、それを意識してキュレーションしました。ぜひ、新たな取り組みに挑戦するアーティストに注目していただけると幸いです。
[画像16: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-d32da8912d24194b5057-15.jpg ]
『科学と芸術の丘』は戸定が丘歴史公園、戸定邸、松雲亭をメイン会場に10/21(土)〜22日(日)まで行われます。
今年は松戸市は市制施行80周年、また千葉県誕生150周年という記念すべきメモリアルイヤーです。エキシビジョンの他にも、初の試みとなる江戸川河川敷でのライブ&マルシェ「川の夜市〜River Night Festival〜」や、4名の若手アーティストによる松戸市内の店舗での展示のほか、初の試みとしてかつて江戸川を挟んで河岸(かし)として栄えた松戸駅周辺に準え「マツカシ」と称したフリーマーケットも開催。回を増すごとに新たな広がりを見せる松戸市のお祭りをお楽しみください。
《Information》
[画像17: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-b607705be199e7f9b332-16.png ]
科学と芸術の丘 2023 「Seeds of Hope 〜ここで、あそぶ時間〜」
公式サイト https://science-art-matsudo.net/
日時:<本祭>2023年10月21日(土)10:00 〜 16:30 、22日(日)10:00 〜 16:00
会場:千葉県松戸市(メイン会場:戸定が丘歴史公園、戸定邸、松雲亭、江戸川河川敷、松戸市内店舗 )
*トーク、ワークショップなどへの参加は別途予約が必要です。
[表: https://prtimes.jp/data/corp/87671/table/7_1_8a03dcc9cb41a05e9d786caa656225c0.jpg ]
『科学と芸術の丘』は、市民が中心となって立ち上げた、6回目を迎える国際アート&サイエンスフェスティバル。
今年のテーマに「Seeds of Hope ーここで、あそぶ時間ー」を掲げ、最新の科学、芸術、自然を体感できる内容となっています。
メイン会場で行われるエキシビジョンでは、世界的なメディアアート文化機関であるアルスエレクトロニカと共同でキュレーションした、国内外のアーティストの作品を展示しています。
環境破壊が進む中、虫たちの目線になった庭づくりを探求するアレクサンドラ・デイジー・ギンズバーグによって制作された《Pollinator Pathmaker》。ヴェレーナ・フリードリッヒのERBSENZAHLER Quality Sorter V1では、エンドウ豆の品質を実際に鑑賞者が選定することで、人間がいかに小さなことで他者を振り分けているかを体感することができます。香港出身のアーティスト・コーダーであるウィニー・スーンは、検閲でかき消されたウェブ上の呟きを発掘し、どんな思いがかき消されているのかに想像を寄せる作品です。アーティストとディレクターのコメントと見どころをご紹介します。
[画像1: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-5d8de0e791f6370590d4-14.png ]
公式サイト https://science-art-matsudo.net/
アーティストコメント&見どころ
■Pollinator Pathmaker / Alexandra Daisy Ginsberg(清水陽子による作品解説)
【Ars Electronica Selection】
[画像2: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-46a0705f0b170114a749-0.jpg ]
花粉を運ぶ昆虫(ポリネーター)は、わたしたちの生態系を維持しているにもかかわらず、環境破壊や人間中心的な活動によって減少しています。植物の植え方自体を昆虫視点で行うことで、気候変動への対策を呼びかけている作品です。さまざまな植物や昆虫やAIの専門家と協力し、ポリネーターにとって理想的な庭を自動的に生成するプログラムを開発しました。ここで見られる映像は、シュミレーション後の庭をポリネーター目線で庭を飛行した作品となっています。今回の展示では、イギリスの植生をベースにしたプログラムの体験版に触れられます。庭の広さや日当たり、好みを入力すると、ポリネーター目線の理想の庭が出力されます。今回は体験版のためダウンロードはできないものの、実際にはどんな植物を植えたらいいかという指示書が出てきます。アーティスト本人はこのテクノロジーを開発したのち、生成されたプログラムをもとに様々なイギリスの団体と協力して庭を作っています。欧州委員会のアワードでグランプリを受賞した作品です。この作品が評価された理由は、実際に植物を植えることで地球規模のムーブメントにしている点です。今後、日本の学者ともコラボレーションしていきたいと話しています。
■ERBSENZAHLER Quality Sorter V1 / Verena Friedrich
【Ars Electronica Selection】
[画像3: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-cbe9acd83668b7c94fe9-11.jpg ]
《ERBSENZAHLER Quality Sorter V1》は、鑑賞者自身にエンドウ豆の品質を判定してもらうインスタレーションです。ドイツ語で「豆を振り分ける人」は、細かなことを気にして人を判断する人のことを指すことがあります。エンドウ豆をひとつの生命や人生の象徴とし、それが現代社会でいかに容易く振り分けられているかを考える作品を制作しました。
[画像4: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-ad28d09c7898a33e3898-0.jpg ]
実際に装置を使い、ベルトコンベアで流れてくるエンドウ豆の品質を顕微鏡を使って検査し、いい豆は緑のボタン、悪い豆は赤いボタンを押していただきます。この判断は鑑賞者の皆さんに委ねています。振り分ける作業をしながら、いかに人々が小さなことで人やモノを判断しているかを考えるきっかけとなればと思います。また、判断されたエンドウ豆の画像は、アーカイブされ、さらに機械学習にも活用されます。それによって、AIなどのテクノロジーに人間の判断基準を学ばせることの危うさについても考えるためです。
人間がラベリングしたものを、人間が開発したテクノロジーに覚えさせて自動化することによって、人間自身も自動的に選別される。その行為が人生に与える影響についても考えさせられるプロジェクトになっています。AIのアルゴリズムも同様ですが、最初の開発者が知識を教えて、人や商品などの物の合格や不合格を決めます。自分がそういう立場になったとき、どう判断するのか。こんな風に些細なことで判断されているかもしれない。そういったときに私たちはどう考えるべきかということを考えさせられる作品です。
■Unerasable Characters Series (2020-2023) / Winnie Soon
【Ars Electronica Selection】
[画像5: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-7cc884a40b0cda01896d-11.jpg ]
「書き消すことのできない文字たち」は、WEB上で国家権力などの検閲にかかって消されてしまった市民の言葉を発掘しています。タワーのように積み上げられた資料は中国のweiboにアップされたのち、検閲で消されてしまったものをプリントアウトし展示しています。
[画像6: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-6c4272141a27f394b9fe-11.jpg ]
映像で流れているのは継続的に収集している市民の声たち。すぐに消されてしまうものもあれば1日経って消されるものもあり、どのくらいのタイムラグで消されるのかもシュミレーションされています。黒い部分が消された部分で時間の経過とともに消される様子を確認できるようになっています。奥のパソコンのモニターでは実際に黒い部分にカーソルを当てると消されたコメントを推測できるようになっています。
■European Union Prize for Citizen Science(清水陽子による解説)
【Ars Electronica Selection】
シチズン・サイエンスとは、オンラインプラットフォームやモバイルアプリケーション、あるいは現地にて、関心のある一般市民が参加する科学研究のことです。今回は欧州委員会で開始した賞のグランプリと準グランプリのプロジェクトを紹介します。
[画像7: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-a84b6d0a8c4f9cb0861e-0.jpg ]
グランプリの『Isala』はベルギーを中心に行われているプロジェクトです。大学の教授が中心となり、約6000名ものベルギーの女性市民が参加する世界最大規模の市民科学プロジェクトです。様々な国でタブー視されがちな女性の生殖や膣に関する研究などを進めています。
『Urban Belonging Project』は持続可能な社会のために多様な視点を取り入れた都市づくりを研究するデンマークとオランダのチームによるプロジェクトです。障害者、ホームレス、少数民族、LGBTQ+など、現代の社会で取りこぼされがちな人々の視点を調査し、多様な視点に基づいた情報を都市やまちづくりに生かすために市民と街を歩き、情報収集して今後のまちづくりに活かすプロジェクトです。
『The Restart Project』はロンドンで始まったプロジェクトです。電子機器や部品のゴミ問題について、修理のノウハウを集めたりボランティアの人と修理活動、リサイクルのための法整備、修理する権利のための法整備や活動をヨーロッパ全域を巻き込んで行われている市民活動です。壊れたらすぐ買い換えるのではなく、自ら修理して長く使う方法を模索し推進しています。
[画像8: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-cd25ff69139506d0d294-0.jpg ]
この部屋では、自分の意思表明ができる参加型の企画も用意されています。まずは自分の意志を絵馬型の用紙に書くことでアウトプットするところからはじめてみませんか。
■「ファット」な身体との付き合い方 / 津野青嵐
[画像9: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-1b653f0e6de07cba81cf-9.jpg ]
ファッション制作を通して「ファット」な身体との付き合い方を非言語的な当事者研究の実践を通した研究活動を行う津野青嵐。あたかも幽体離脱をしているようなフォルムの3Dペンドレスシリーズは関東での展示は初となります。
[画像10: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-d5032eb483a41cece7d8-0.jpg ]
服や靴、グローブの素材は3Dプリンターと同じでプラスチックの棒のような素材を使っています。3Dペンで一本一本手作業で線を引いて構成され、ネックレスのような形で首の前面にひっかけて体に対して浮くように作られています。そのほか、自身のボディイメージのドローイング作品や、エッセイ、実験中のマテリアルなどを展示しています。現在はファッション表現を使いながら、自分の体との付き合い方を主観的な感覚にフォーカスして言及するというテーマで大学院で研究しています。そこで、服を作ることが自分の体との付き合い方にどういう意味を持つのかを研究しています。
■Non-Retina Kinematograph (2017 - ) / 齋藤帆奈
[画像11: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-8f799c5ec398dcca7329-0.jpg ]
《Non-Retina Kinematograph》は粘菌に、人間には静止画に見える超スローモーション動画を見せています。また、粘菌の軌跡や好みが反映された編集が行われるようになっています。人間の知覚だけでないものにどうやってアクセスするのか、いろいろなデータや時間軸を変換することで、私たちの知覚に対して外から、あるいは内側にある別の視点で再考するための作品です。
[画像12: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-686791b782f26e868dee-10.jpg ]
私たちは映像を見るとき、網膜にある視細胞で光を受容し、その信号が視神経を伝わり、脳で処理が行われていますが、光の知覚は様々な原始的な生物も持っており、粘菌も光に反応しています。これまでの研究で分かっているのは、粘菌は黄色はあまり認識していないこと、赤い色は胞子を出すのに必要としている色だということ、青色や紫色は苦手ということです。今回の作品では、アニメーションを超低速で流したiPadの上にアメーバ形態の粘菌を培養しています。今回は展示期間が短いのでアーカイブの状態をご覧いただけます。粘菌は1時間に数cmしか動かず、人間とは異なる時間軸を持っているため、映像の再生速度を粘菌のスピードに合わせています。映像を見ている粘菌をさらにウェブカメラで撮影し、粘菌の形や好み次のフレームに反映させています。それをさらに粘菌ごと上から撮影し、人間にとって動画に見えるスピードに変換した動画をリアルタイムでプロジェクター投影する作品です。今回は、以前4ヶ月間ほど展示して変換された映像をプロジェクションしています。元の動画は動植物やキノコが擬人化されたアニメーションを用いています。キノコの精が躍るアニメを粘菌が変換する様子は、まるで粘菌がキノコを捕食しているように見えます。その様子は人間にしか感じられない視点ですが、本来粘菌はキノコを捕食するので、横に粘菌がシメジを実際に食べている様子を展示、さまざまな種、それらの知覚の絡み合いを示しています。
ディレクター&キュレーター コメント
■関口智子(総合ディレクター/一般社団法人ゼロファクトリアル代表理事)
[画像13: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-563069e89f15a33c73f9-0.jpg ]
今年で6年目を迎えた『科学と芸術の丘』のメイン会場となる戸定邸は、国の重要文化財となっている建物で、水戸藩最後の藩主である徳川昭武の邸宅です。ここを舞台としたのは、当時の最先端の文化や技術を取り入れた建物であることも理由のひとつです。
全体監修とアーティストのキュレーションはオーストリアのメディアアート研究機関であるアルスエレクトロニカが協力しています。
パンデミックの影響が少し落ち着き、今年は海外からのアーティストも実際にいらしていただくことができました。
今年のテーマは「Seeds of Hope 〜ここで、あそぶ時間〜」としました。『科学と芸術の丘』を通じて未来に向かって希望の種を蒔いていければと思っています。「ここであそぶ」ことを通して、日常生活や仕事へのアイデアといった創造性を高めること、それから自分自身がやってみたいことに挑戦する機会などに活かす機会にしていただけたらと願っています。
■清水陽子 (全体監修/Ars Electronica Futuerlab Key Researcher & Artist)
[画像14: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-6dc392ad9bae9bf5ed6d-0.jpg ]
『科学と芸術の丘』の立ち上げから関わり、今年で開催6年目を迎えました。パンデミックを乗り越え、今年はデジタル作品に加え、実際に触れるようなフィジカルな作品も展示できました。
オーストリア・リンツ市で開催したアルスエレクトロニカのフェスティバルも同様で、今年はフィジカルな作品についてもたくさんの方に体験していただきました。
現代社会において、本当か嘘かわからない情報がひしめき合っています。テクノロジーが進化する中で、わたしたち市民一人ひとりが真実を自分で調べたり、わたしたち自身で未来の希望を見出し、対話することが重要だと感じています。
今回のキュレーションで意識したのは、アーティストやイノベーターの方々が市民の皆さんと一緒になって様々なクリエイティブな手段を使いながら、未来の社会について楽しく体験したり議論ができるプロジェクトであること。実際にさわったり、思いついたアイデアを実際に紙に書くといった体験型の作品に積極的に参加していただけたら嬉しいです。
■海野林太郎(展示コーディネートディレクター/美術作家、マテリアルショップ・カタルシスの岸辺)
[画像15: https://prtimes.jp/i/87671/7/resize/d87671-7-b6506f00e24caca58fdf-0.jpg ]
アーティストのキュレーションには、戸定邸が持っている背景が関係しています。徳川昭武は14歳でパリに留学していたり、写真に本格的に取り組んでいたりなど、当時の最先端の技術や文化に触れる事にとても積極的な人物だったと聞きました。
そういったことから、多様で新しい表現をこの建物の中で紹介することに意味があると思っています。例えば、展示作家の1人である津野青嵐という日本のアーティストは3Dペンで服を作り、注目を浴びました。ただ新しい素材を使っている訳ではなく、作家の独自の経験とリアリティから必然性をもって、一般的に服を作る素材とは異なる新しい素材を用いて表現をしているアーティストです。
今はまだ一般的ではないけれど、精神的にも素材や技術としても、先進的な取り組みをしているアーティストを選出することが時間を超えて戸定邸という場所と調和すると思い、それを意識してキュレーションしました。ぜひ、新たな取り組みに挑戦するアーティストに注目していただけると幸いです。
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『科学と芸術の丘』は戸定が丘歴史公園、戸定邸、松雲亭をメイン会場に10/21(土)〜22日(日)まで行われます。
今年は松戸市は市制施行80周年、また千葉県誕生150周年という記念すべきメモリアルイヤーです。エキシビジョンの他にも、初の試みとなる江戸川河川敷でのライブ&マルシェ「川の夜市〜River Night Festival〜」や、4名の若手アーティストによる松戸市内の店舗での展示のほか、初の試みとしてかつて江戸川を挟んで河岸(かし)として栄えた松戸駅周辺に準え「マツカシ」と称したフリーマーケットも開催。回を増すごとに新たな広がりを見せる松戸市のお祭りをお楽しみください。
《Information》
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科学と芸術の丘 2023 「Seeds of Hope 〜ここで、あそぶ時間〜」
公式サイト https://science-art-matsudo.net/
日時:<本祭>2023年10月21日(土)10:00 〜 16:30 、22日(日)10:00 〜 16:00
会場:千葉県松戸市(メイン会場:戸定が丘歴史公園、戸定邸、松雲亭、江戸川河川敷、松戸市内店舗 )
*トーク、ワークショップなどへの参加は別途予約が必要です。
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