アイルランドと国際金融サービス:Brexit後の欧州における挑戦と機会
[16/09/27]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
Ireland and international financial services: challenges and opportunities in a post-Brexit Europe
アイルランド政府の新たな国際金融サービス戦略促進のため、金融サービス担当大臣オーウェン・マーフィーが来日。2016年9月26日(月)、「アイルランドと国際金融サービス:Brexit後の欧州における挑戦と機会」をテーマに日本記者クラブで会見を行いました。以下に発言要旨を掲載いたします。
[画像: http://prtimes.jp/i/17681/8/resize/d17681-8-834992-0.jpg ]
はじめに
ありがとうございます。
2013年に東京でアイルランド首相が安倍首相と会談した際、両首相は、文化、観光、食、貿易における両国の関係拡大の大いなる可能性を認識し、共同宣言を出すことにより、さらなる関係の強化に向けたロードマップを示しました。
今回の私の訪日はその宣言に明記された公約に沿ったものであり、英語を主要言語とし、成長を続ける安定した欧州経済への投資に関心を持つ日本企業に対して、ぜひともアイルランドを事業拠点の候補地としてご検討いただきたく、お願いに参った次第です。
まだこちらへ来たばかりですが、アイルランドと日本は非常に遠く離れているにもかかわらず、両国の国民の間には緊密な親和性があるということを強く感じています。この親和性はすでに、在日アイルランド企業と在アイルランド日本企業の経済的成功によって実証されています。これらの企業の間では、何千もの雇用が直接的、間接的に支えられており、その労働力は今後数年間で大幅に拡大するに違いありません。
経済
他の多くの国と同様に、アイルランドもここ10年ほど、いくつかの大きな経済的課題に直面してきました。しかし現在、アイルランドの景気回復はしっかりと定着しています。
我が国の回復が最も顕著に見られるのはおそらく労働市場で、2012年のピーク時には15%を越えていた失業率は、現在では約8%まで下がりました。過去15四半期の着実な成長により、2009年前半以降初めて、アイルランドの雇用者数は200万人を超えました。
こうした景気回復は偶然の産物ではありません。堅実で一貫性のある財政・経済政策をしっかりと実施したことの結果です。
債務GDP比は急激な低下傾向にあり、2012年のピーク時の120%超から2015年末には79%となりました。現在、アイルランドのソブリン債は、すべての主要な信用格付け機関から「投資適格」の格付けを受けています。
財務省は、今年のGDP成長率を約5%、2017年は4%と予想しています。これは、2016年の成長率を5%前後とする欧州委員会、アイルランド中央銀行、IMFおよびOECDの予想とおおむね一致しています。
英国の国民投票
とはいえ、アイルランドは今後大きな課題に直面します。その1つはもちろん、欧州連合から離脱するという英国の決断によりもたらされる影響です。この点についてのアイルランド政府の見解についてお話ししたいと思います。
英国の決断は私たちが望んでいたものではありませんでしたが、アイルランド政府は英国の民主的プロセスにより導き出された結果を全面的に受け入れ、尊重します。
アイルランド政府は、今後間違いなく生じるはずの課題に対処するための準備を十分に整えています。アイルランドの第一の目的はこれからも、重要な経済的利益を含む自国の利益を守り、拡大することです。
言うまでもなく、アイルランドは今後もEUの加盟国であり続けます。アイルランドはこれからも欧州連合とユーロ圏の一員としての地位に全面的にコミットし続ける所存です。
EU加盟国としての地位は、これからも我が国の開放的で競争力のある経済が成功するために欠かせない要素です。またアイルランドは、価値観と利益を共有する、志を同じくする他の民主主義国とともにEUに参加し続けることを大変重視しています。
EUのメンバーシップは依然としてアイルランド国民から非常に強く支持されており、その事実は英国国民投票後に行われた世論調査の結果にも表れています。加盟後40年以上にわたって、アイルランドは他のすべての加盟国やEU機関との強力なパートナーシップを築き上げてきました。その絆はこれからも、我が国とその経済にとって大きな力となるでしょう。
日本の立場から見ると、英国とEU の交渉が非常に気にかかることと思います。そのことは、先日中国の杭州で開催されたG20サミットに先立って日本が提出した「英国およびEUへの要望書」にも表れています。私たちは日本が示した明確な姿勢を高く評価しています。これは、アイルランドにとっても、国際社会にとっても非常に有益なことです。
アイルランドも日本も、ビジネス、経済、および人やモノやサービスの自由な動きへの悪影響を最小限に抑えるよう配慮しつつ交渉が行われるべきだという点で意見を共にしています。
訪日の背景
今回私が東京を訪れた主な目的は、ヨーロッパでの投資や事業拡大を考えている日本企業の拠点候補としてアイルランドを宣伝することです。
アイルランドは、長年にわたり日本との間に素晴らしい貿易・投資関係を築いています。ここ数年、多くの日本企業、とくに金融サービスセクターの企業が、アイルランドで大規模な投資を行っています。ここにいらっしゃる皆様方の多くはご存知かと思いますが、アイルランドでの経験に関するこれらの企業からのフィードバックはきわめて肯定的です。しかしそれを何より証明するのは、これらの日本企業が実際に繁栄し、アイルランドでの事業を拡大し続けているということです。
なぜアイルランドなのか?
アイルランドを大手日本企業の海外直接投資先として望ましい国にしている要因はたくさんあります。
EU加盟国としての確固とした地位があります。
12.5%という競争上有利な法人税率の維持を約束します。
アイルランドの規制当局により承認された製品やサービスに関する、ヨーロッパ全域の金融サービス規制パスポート権にアクセスができます。
若く、十分な教育を受けた、英語を話す労働者が存在します。
EUおよびユーロ圏唯一の英語を主要言語とする国として、5億人超の消費者を抱えるEU市場へのバリアフリー・アクセスを提供することができます。
人口の40%が29歳未満と、EU諸国の中で国民の平均年齢が最も低い国です。
アイルランドの教育システムは世界のトップテンに入り、30〜34歳の国民の50%以上が第三レベル教育の学位を持っています。これはEU諸国の中で最も高い割合です。
アイルランドは、金融サービス・保険・会計分野で個別のIFS実習プログラムを構築しています。
アイルランドは、安定的で競争上有利な法人税制度と強力な研究開発インセンティブを備え、ビジネスに有利な環境を提供しています。
アイルランドは、ビジネスのしやすい国ランキングでつねに上位に入っています。このランキング結果は、アイルランドのビジネス・規制環境が企業にとって好ましいものであるということを示す証拠です。
そしてもちろん、今回の訪日の理由でもある、国際金融サービスセクターの発展に対し、政府は献身的にサポートします。
アイルランドのIFSセクター
私は先日、国際金融サービスの担当大臣に任命されました。このことは、金融サービスセクターがアイルランド経済においてきわめて重要な役割を果たしているという明確なメッセージを送っています。
アイルランドにおける国際金融サービスセクターの成長と発展は、過去30年ほどにわたる我が国の経済発展の目玉の1つです。
現在、このセクターは、400社を超える多国籍企業や現地企業において38,000人以上を雇用しています。その中には、シティグループ(Citigroup)、ステート・ストリート(State Street)、JPモルガン(JP Morgan)、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNY Mellon)、バンクオブアメリカ・メリルリンチ(Bank of America-Merrill Lynch)、チューリッヒ(Zurich)、マスターカード(Mastercard)、フィデリティ(Fidelity)など、金融サービス業界のビッグネームも含まれます。
重要なのは、三井住友銀行(SMBC)、三井住友信託銀行(SMTB)、三菱東京UFJ銀行、丸紅株式会社など、日本に本社を置く金融機関もアイルランドにプレゼンスを確立していることです。
高度な技能を有し、十分な教育を受けた労働者と、繁栄するITエコシステムによって、アイルランドは、革新的で専門的な金融サービスの最前線に自ら置くことができています。
その例として、以下のようなものがあります。
アイルランドは、オルタナティブ投資ファンドの拠点として世界第1位です。
世界のリース民間航空機の約50%がアイルランドに本社を置く企業によって所有または管理されています。
グローバルな航空機リース会社の上位10社中8社がアイルランドに本社を置いています。
IFS2020戦略
このように、アイルランドには競争上の優位性が数多くありますが、その栄光に満足するわけにはいきません。
昨年の3月、アイルランド政府は、アイルランドの国際金融サービスセクターの成長と発展を促すための「全政府的」なアプローチ「IFS2020」に着手しました。この戦略は、2020年までの5年間でアイルランドの国際金融サービスセクターを30%成長させるという野心的な目標を掲げています。これは非常に野心的な目標ではありますが、嬉しいことに、目標達成に向けて順調に前進しています。
IFS2020の5年間の実施期間中に、IFSサブセクターのすべてにおいて雇用が大幅に増加することが予想されます。アイルランドは、最高水準のガバナンスを備えた規制システムに支えられた起業・事業環境を構築することを目指しており、それによって我が国は、これから生まれるチャンスを最大限に活用することができるのです。
この戦略のビジョンについてですが、私たちはアイルランドを専門的な国際金融サービスのグローバルな拠点候補とみなされる国にしたいと考えています。人材、テクノロジー、イノベーション、そして卓越したクライアントサービスといった我が国の強みをさらに生かしていきたいと考えています。また、変化する市場において新たな機会をとらえ、最高の形のガバナンスを確立することに力を注いでいきます。
これらの目標を達成するためには、アイルランドを、フィンテック、支払い、データ分析とガバナンス、投資マネージメント、リスクとコンプライアンス、航空機ファイナンスおよびリースといった分野を含む、専門的な国際金融サービスの主要拠点として位置付ける必要があります。
つまり、アイルランドの戦略目標は、金融サービスイノベーションの最前線に自らをしっかりと位置付けることです。イノベーションと専門化を重視するこの姿勢は、IFS企業自体が重点的な投資対象となっている戦略アジェンダに合致するものです。
バナーブランドの発足
その意味で、今日はIFS2020にとって非常に重要な日です。今日、アイルランドの新たなバナーブランドである「IFS Ireland」が日本で正式に発足します。
本日はIFS Irelandを皆様にご紹介する機会をいただき、大変嬉しく思います。今後、すべてのIFSステークホルダーは、国際的な舞台でアイルランドのプロモーションを行う際に、このブランドを共通のアイデンティティとして使用することになります。新ブランドの発足と合わせて、新しいウェブサイト www.ifsireland.com も立ち上げられました。
私たちが皆様にお伝えしたいメッセージはきわめて明快です。つまり、「アイルランドは専門的な国際金融サービスとイノベーションのグローバルな拠点候補になるという目標に向けて順調に前進している」ということです。
日本企業にとって、欧州への理想的な玄関口がアイルランドです。
欧州金融フォーラム2017
その意味で、皆様方にはぜひともアイルランドにお越しいただき、EU内の金融サービスの主要拠点として我が国が何を提供できるのか、ご自身の目でご覧いただきたいと思います。2017年1月24日に第2回欧州金融フォーラムがダブリンで開催されます。このイベントは、ディスカッションやディベートを通じて、官民のシニアビジネスリーダーの関与を促すためのプラットフォームとしての役割を果たします。
欧州金融フォーラムのコンセプトは、アジア金融フォーラムの成功に触発されたものです。欧州金融フォーラムは、日本を含む世界中の投資家や金融市場の主要意思決定者にとって、欧州の金融、ビジネス、フィンテック、および規制をめぐる展望を概観するまたとない機会です。
昨年の第1回欧州金融フォーラムには、世界中から600名を超える方々にお越しいただきました。アジア企業がアイルランドの金融サービスセクターにおいて果たす重要な役割をふまえて、今年のフォーラムではアジア関連のテーマを大きく取り扱います。
この場をお借りして、2017年1月の欧州金融フォーラムにぜひともご参加いただきますよう、また、EUの中心に位置する金融サービス拠点としてアイルランドが何を提供できるのか、じかにご覧いただきますよう、謹んでお誘い申し上げます。
結び
アイルランド政府は、引き続き国際金融セクターの発展に尽力していきます。ですから、皆様の企業が適切な投資を行うためのEU内の主要拠点として、ぜひともアイルランドをご検討いただきたいと思います。
アイルランドは、金融サービスセクターが直面しているさまざまなビジネス上の課題に皆様が対処できるようにするための、また、未来の金融サービス産業、すなわち堅実さ、顧客サービス、イノベーション、そして世界レベルのテクノロジーを重視するセクターの新たなる構築に向けて皆様と協力するための、卓越した支援と構造を整えています。
ありがとうございました。
アイルランド政府の新たな国際金融サービス戦略促進のため、金融サービス担当大臣オーウェン・マーフィーが来日。2016年9月26日(月)、「アイルランドと国際金融サービス:Brexit後の欧州における挑戦と機会」をテーマに日本記者クラブで会見を行いました。以下に発言要旨を掲載いたします。
[画像: http://prtimes.jp/i/17681/8/resize/d17681-8-834992-0.jpg ]
はじめに
ありがとうございます。
2013年に東京でアイルランド首相が安倍首相と会談した際、両首相は、文化、観光、食、貿易における両国の関係拡大の大いなる可能性を認識し、共同宣言を出すことにより、さらなる関係の強化に向けたロードマップを示しました。
今回の私の訪日はその宣言に明記された公約に沿ったものであり、英語を主要言語とし、成長を続ける安定した欧州経済への投資に関心を持つ日本企業に対して、ぜひともアイルランドを事業拠点の候補地としてご検討いただきたく、お願いに参った次第です。
まだこちらへ来たばかりですが、アイルランドと日本は非常に遠く離れているにもかかわらず、両国の国民の間には緊密な親和性があるということを強く感じています。この親和性はすでに、在日アイルランド企業と在アイルランド日本企業の経済的成功によって実証されています。これらの企業の間では、何千もの雇用が直接的、間接的に支えられており、その労働力は今後数年間で大幅に拡大するに違いありません。
経済
他の多くの国と同様に、アイルランドもここ10年ほど、いくつかの大きな経済的課題に直面してきました。しかし現在、アイルランドの景気回復はしっかりと定着しています。
我が国の回復が最も顕著に見られるのはおそらく労働市場で、2012年のピーク時には15%を越えていた失業率は、現在では約8%まで下がりました。過去15四半期の着実な成長により、2009年前半以降初めて、アイルランドの雇用者数は200万人を超えました。
こうした景気回復は偶然の産物ではありません。堅実で一貫性のある財政・経済政策をしっかりと実施したことの結果です。
債務GDP比は急激な低下傾向にあり、2012年のピーク時の120%超から2015年末には79%となりました。現在、アイルランドのソブリン債は、すべての主要な信用格付け機関から「投資適格」の格付けを受けています。
財務省は、今年のGDP成長率を約5%、2017年は4%と予想しています。これは、2016年の成長率を5%前後とする欧州委員会、アイルランド中央銀行、IMFおよびOECDの予想とおおむね一致しています。
英国の国民投票
とはいえ、アイルランドは今後大きな課題に直面します。その1つはもちろん、欧州連合から離脱するという英国の決断によりもたらされる影響です。この点についてのアイルランド政府の見解についてお話ししたいと思います。
英国の決断は私たちが望んでいたものではありませんでしたが、アイルランド政府は英国の民主的プロセスにより導き出された結果を全面的に受け入れ、尊重します。
アイルランド政府は、今後間違いなく生じるはずの課題に対処するための準備を十分に整えています。アイルランドの第一の目的はこれからも、重要な経済的利益を含む自国の利益を守り、拡大することです。
言うまでもなく、アイルランドは今後もEUの加盟国であり続けます。アイルランドはこれからも欧州連合とユーロ圏の一員としての地位に全面的にコミットし続ける所存です。
EU加盟国としての地位は、これからも我が国の開放的で競争力のある経済が成功するために欠かせない要素です。またアイルランドは、価値観と利益を共有する、志を同じくする他の民主主義国とともにEUに参加し続けることを大変重視しています。
EUのメンバーシップは依然としてアイルランド国民から非常に強く支持されており、その事実は英国国民投票後に行われた世論調査の結果にも表れています。加盟後40年以上にわたって、アイルランドは他のすべての加盟国やEU機関との強力なパートナーシップを築き上げてきました。その絆はこれからも、我が国とその経済にとって大きな力となるでしょう。
日本の立場から見ると、英国とEU の交渉が非常に気にかかることと思います。そのことは、先日中国の杭州で開催されたG20サミットに先立って日本が提出した「英国およびEUへの要望書」にも表れています。私たちは日本が示した明確な姿勢を高く評価しています。これは、アイルランドにとっても、国際社会にとっても非常に有益なことです。
アイルランドも日本も、ビジネス、経済、および人やモノやサービスの自由な動きへの悪影響を最小限に抑えるよう配慮しつつ交渉が行われるべきだという点で意見を共にしています。
訪日の背景
今回私が東京を訪れた主な目的は、ヨーロッパでの投資や事業拡大を考えている日本企業の拠点候補としてアイルランドを宣伝することです。
アイルランドは、長年にわたり日本との間に素晴らしい貿易・投資関係を築いています。ここ数年、多くの日本企業、とくに金融サービスセクターの企業が、アイルランドで大規模な投資を行っています。ここにいらっしゃる皆様方の多くはご存知かと思いますが、アイルランドでの経験に関するこれらの企業からのフィードバックはきわめて肯定的です。しかしそれを何より証明するのは、これらの日本企業が実際に繁栄し、アイルランドでの事業を拡大し続けているということです。
なぜアイルランドなのか?
アイルランドを大手日本企業の海外直接投資先として望ましい国にしている要因はたくさんあります。
EU加盟国としての確固とした地位があります。
12.5%という競争上有利な法人税率の維持を約束します。
アイルランドの規制当局により承認された製品やサービスに関する、ヨーロッパ全域の金融サービス規制パスポート権にアクセスができます。
若く、十分な教育を受けた、英語を話す労働者が存在します。
EUおよびユーロ圏唯一の英語を主要言語とする国として、5億人超の消費者を抱えるEU市場へのバリアフリー・アクセスを提供することができます。
人口の40%が29歳未満と、EU諸国の中で国民の平均年齢が最も低い国です。
アイルランドの教育システムは世界のトップテンに入り、30〜34歳の国民の50%以上が第三レベル教育の学位を持っています。これはEU諸国の中で最も高い割合です。
アイルランドは、金融サービス・保険・会計分野で個別のIFS実習プログラムを構築しています。
アイルランドは、安定的で競争上有利な法人税制度と強力な研究開発インセンティブを備え、ビジネスに有利な環境を提供しています。
アイルランドは、ビジネスのしやすい国ランキングでつねに上位に入っています。このランキング結果は、アイルランドのビジネス・規制環境が企業にとって好ましいものであるということを示す証拠です。
そしてもちろん、今回の訪日の理由でもある、国際金融サービスセクターの発展に対し、政府は献身的にサポートします。
アイルランドのIFSセクター
私は先日、国際金融サービスの担当大臣に任命されました。このことは、金融サービスセクターがアイルランド経済においてきわめて重要な役割を果たしているという明確なメッセージを送っています。
アイルランドにおける国際金融サービスセクターの成長と発展は、過去30年ほどにわたる我が国の経済発展の目玉の1つです。
現在、このセクターは、400社を超える多国籍企業や現地企業において38,000人以上を雇用しています。その中には、シティグループ(Citigroup)、ステート・ストリート(State Street)、JPモルガン(JP Morgan)、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNY Mellon)、バンクオブアメリカ・メリルリンチ(Bank of America-Merrill Lynch)、チューリッヒ(Zurich)、マスターカード(Mastercard)、フィデリティ(Fidelity)など、金融サービス業界のビッグネームも含まれます。
重要なのは、三井住友銀行(SMBC)、三井住友信託銀行(SMTB)、三菱東京UFJ銀行、丸紅株式会社など、日本に本社を置く金融機関もアイルランドにプレゼンスを確立していることです。
高度な技能を有し、十分な教育を受けた労働者と、繁栄するITエコシステムによって、アイルランドは、革新的で専門的な金融サービスの最前線に自ら置くことができています。
その例として、以下のようなものがあります。
アイルランドは、オルタナティブ投資ファンドの拠点として世界第1位です。
世界のリース民間航空機の約50%がアイルランドに本社を置く企業によって所有または管理されています。
グローバルな航空機リース会社の上位10社中8社がアイルランドに本社を置いています。
IFS2020戦略
このように、アイルランドには競争上の優位性が数多くありますが、その栄光に満足するわけにはいきません。
昨年の3月、アイルランド政府は、アイルランドの国際金融サービスセクターの成長と発展を促すための「全政府的」なアプローチ「IFS2020」に着手しました。この戦略は、2020年までの5年間でアイルランドの国際金融サービスセクターを30%成長させるという野心的な目標を掲げています。これは非常に野心的な目標ではありますが、嬉しいことに、目標達成に向けて順調に前進しています。
IFS2020の5年間の実施期間中に、IFSサブセクターのすべてにおいて雇用が大幅に増加することが予想されます。アイルランドは、最高水準のガバナンスを備えた規制システムに支えられた起業・事業環境を構築することを目指しており、それによって我が国は、これから生まれるチャンスを最大限に活用することができるのです。
この戦略のビジョンについてですが、私たちはアイルランドを専門的な国際金融サービスのグローバルな拠点候補とみなされる国にしたいと考えています。人材、テクノロジー、イノベーション、そして卓越したクライアントサービスといった我が国の強みをさらに生かしていきたいと考えています。また、変化する市場において新たな機会をとらえ、最高の形のガバナンスを確立することに力を注いでいきます。
これらの目標を達成するためには、アイルランドを、フィンテック、支払い、データ分析とガバナンス、投資マネージメント、リスクとコンプライアンス、航空機ファイナンスおよびリースといった分野を含む、専門的な国際金融サービスの主要拠点として位置付ける必要があります。
つまり、アイルランドの戦略目標は、金融サービスイノベーションの最前線に自らをしっかりと位置付けることです。イノベーションと専門化を重視するこの姿勢は、IFS企業自体が重点的な投資対象となっている戦略アジェンダに合致するものです。
バナーブランドの発足
その意味で、今日はIFS2020にとって非常に重要な日です。今日、アイルランドの新たなバナーブランドである「IFS Ireland」が日本で正式に発足します。
本日はIFS Irelandを皆様にご紹介する機会をいただき、大変嬉しく思います。今後、すべてのIFSステークホルダーは、国際的な舞台でアイルランドのプロモーションを行う際に、このブランドを共通のアイデンティティとして使用することになります。新ブランドの発足と合わせて、新しいウェブサイト www.ifsireland.com も立ち上げられました。
私たちが皆様にお伝えしたいメッセージはきわめて明快です。つまり、「アイルランドは専門的な国際金融サービスとイノベーションのグローバルな拠点候補になるという目標に向けて順調に前進している」ということです。
日本企業にとって、欧州への理想的な玄関口がアイルランドです。
欧州金融フォーラム2017
その意味で、皆様方にはぜひともアイルランドにお越しいただき、EU内の金融サービスの主要拠点として我が国が何を提供できるのか、ご自身の目でご覧いただきたいと思います。2017年1月24日に第2回欧州金融フォーラムがダブリンで開催されます。このイベントは、ディスカッションやディベートを通じて、官民のシニアビジネスリーダーの関与を促すためのプラットフォームとしての役割を果たします。
欧州金融フォーラムのコンセプトは、アジア金融フォーラムの成功に触発されたものです。欧州金融フォーラムは、日本を含む世界中の投資家や金融市場の主要意思決定者にとって、欧州の金融、ビジネス、フィンテック、および規制をめぐる展望を概観するまたとない機会です。
昨年の第1回欧州金融フォーラムには、世界中から600名を超える方々にお越しいただきました。アジア企業がアイルランドの金融サービスセクターにおいて果たす重要な役割をふまえて、今年のフォーラムではアジア関連のテーマを大きく取り扱います。
この場をお借りして、2017年1月の欧州金融フォーラムにぜひともご参加いただきますよう、また、EUの中心に位置する金融サービス拠点としてアイルランドが何を提供できるのか、じかにご覧いただきますよう、謹んでお誘い申し上げます。
結び
アイルランド政府は、引き続き国際金融セクターの発展に尽力していきます。ですから、皆様の企業が適切な投資を行うためのEU内の主要拠点として、ぜひともアイルランドをご検討いただきたいと思います。
アイルランドは、金融サービスセクターが直面しているさまざまなビジネス上の課題に皆様が対処できるようにするための、また、未来の金融サービス産業、すなわち堅実さ、顧客サービス、イノベーション、そして世界レベルのテクノロジーを重視するセクターの新たなる構築に向けて皆様と協力するための、卓越した支援と構造を整えています。
ありがとうございました。