(株)ヘルスケアコンサルティングと神戸低侵襲がん医療センター、小細胞肺がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の転移の有無に着目した部分集団での臨床的有効性に関する解析結果をACLC 2024で発表
[24/10/21]
提供元:PRTIMES
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- 神戸低侵襲がん医療センターを中心とする8医療機関の電子カルテデータ及びレセプトデータを統合
- 電子カルテデータから全生存期間(OS)を始めとする有効性・安全性などの治療成績に関するデータ、レセプトデータから治療期間中に要した医療費のデータを取得し、患者ベースで一意に紐づけしたデータセットを構築
- 脳、骨および肝転移の有無別の部分集団における免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとデュルバルマブの臨床的有効性を検証
- 脳、骨および肝転移において、アテゾリズマブとデュルバルマブに同等の有効性があり、骨転移は全生存期間(OS)不良の重要な予後因子となる可能性があるとの結果
- 本研究結果を2024年10月開催の2024 Asia Conference on Lung Cancer (ACLC 2024)でポスター発表
株式会社ケアネットのグループ会社で医療ビッグデータの分析により健康・医療に関わる課題解決に取り組む株式会社ヘルスケアコンサルティング(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小久保 欣哉、以下、HCC)と神戸低侵襲がん医療センター 治験・臨床研究支援センター(所在地:兵庫県神戸市、センター長:秦 明登、以下、KMCC)を中心とする8医療機関の研究チームは、小細胞肺がんの患者の電子カルテデータとレセプトデータを患者ベースで一意に紐づけたデータセットを構築し、費用対効果分析および様々な部分集団における臨床的有効性の解析を推進しています。
この度、その成果として脳、骨、肝転移の有無に着目した部分集団における免疫チェックポイント阻害薬(以下、ICI)の臨床的有効性を解析した研究結果を2024年10月17日〜10月19日に開催された2024 Asia Conference on Lung Cancer (ACLC 2024)においてポスター発表をいたしました。
■ 学会発表について
タイトル:
Effectiveness for metastatic sites (brain, bone, and liver metastases): Atezolizumab vs. durvalumab in RWD of ED-SCLC
著者名:
Yuta Yamanaka; Akito Hata; Katsuya Hirano; Toshiyuki Sumi; Motohiro Tamiya; Yuki Sato5; Yuko Oya; Kosuke Hamai; Nobuyuki Katakami; Katsuhiko Iwasaki; Tatsuhiro Uenishi; Kinya Kokubo; Ataru Igarashi
学会名:
2024 Asia Conference on Lung Cancer (ACLC 2024)
開催期間(場所):
2024年10月17日〜10月19日(中国 香港及びOnline)
■ 研究の概要
背景・目的:
化学療法と免疫チェックポイント阻害薬(アテゾリズマブ及びデュルバルマブ)の併用レジメンは、進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)における一次治療の標準治療です。アテゾリズマブ併用療法とデュルバルマブ併用療法の有効性は同等であると考えられるが、脳転移、骨転移、肝転移などの転移を有する患者に対する臨床的有効性についてはあまり明らかにされていません。本研究は、脳、骨および肝転移を有する患者に対する臨床的有効性を検証することを目的としました。
なお、本研究に先立ち、全体集団(非高齢者も含む)および71歳以上の高齢者部分集団における解析結果を発表しており、全生存期間(OS)の観点ではレジメン間の有効性には差が見られないものの、医療費の観点からはアテゾリズマブの方が経済性に優れるという結果を報告しています。本研究は脳、骨、肝転移の有無に着目し、両レジメンの臨床的有効性を検討した部分集団解析となります。
方法:
本研究は、神戸低侵襲がん医療センター及び試験参加医療機関(大阪国際がんセンター、函館五稜郭病院、宝塚市立病院、神戸市立医療センター中央市民病院、関西医科大学病院、JA尾道病院、藤田医科大学病院)の合計8医療機関から得られる実臨床のリアルワールドデータを解析する後ろ向き研究です。
小細胞肺がんと診断された患者のうち、2022年12月末までにPD-L1阻害薬併用化学療法(CDBCA+ETP+アテゾリズマブ、あるいは、CDDP/CBDCA+ETP+デュルバルマブ)を開始された症例を解析の対象としました。
有効性の指標として、全生存期間(OS)を評価しました。
患者背景、及び、有効性や安全性などの治療成績に関するデータは各医療機関の電子カルテデータより取得しました。
アテゾリズマブ併用療法群(ATZ-G)とデュルバルマブ併用療法群(DUR-G)の2群に分け、治療開始前の情報に基づき傾向スコアマッチングを実行し、両群の背景を同等とした集団を再抽出し、脳、骨、肝転移のそれぞれの有無により部分集団に分けて比較を行いました。
結果:
2018年8月から2022年12月までに8医療機関から274例(ATZ-G / DUR-G = 176 / 98)が抽出されました。そ傾向スコアのマッチングで背景が同等となった患者集団として128例(ATZ-G / DUR-G = 64 / 64)が抽出されました。
脳転移を有する患者におけるATZ-G (n = 22) 対DUR-G (n = 20)のOS中央値は、それぞれ13.9か月(95%信頼区間[CI]: 8.3-18.5)対12.3か月(95%CI: 8.9- not reached [NR])で有意差は認められませんでした(P= 0.930)。骨転移を有する患者におけるATZ-G (n = 21) 対DUR-G (n = 20)のOS中央値は、それぞれ11.7か月(95%信頼区間[CI]: 10.6-NR)対7.7か月(95%CI: 6.0-15.2)で有意差は認められませんでした(P= 0.117)肝転移を有する患者におけるATZ-G (n = 19) 対DUR-G (n = 21)のOS中央値は、それぞれ12.0か月(95%信頼区間[CI]: 8.3-18.5)対15.2か月(95%CI: 7.8-NR))で有意差は認められませんでした(P= 0.521)。
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Cox比例ハザードモデルによる分析では、OSに対してATZとDURの有意差は認められませんでした(ハザード比: 1.05、p=0.852)が、骨転移がOS短縮の有意な因子として特定されました(ハザード比:1.84、p=0.029)。
結論:
脳、骨および肝転移を有する患者において、ATZとDURの有効性が同等であることが示唆されました。また、骨転移はOS不良の重要な予後因子であり、この傾向はDURにおいてより顕著である可能性があります。
■ 今後の展開
HCCとKMCCは、本研究結果を2024 Asia Conference on Lung Cancer (ACLC 2024)で発表の後、論文化を予定しております。これらの研究活動を通して、小細胞肺がんの患者に応じた適切な治療選択に貢献して参ります。
本研究では、電子カルテデータとレセプトデータを患者単位で一意に紐づけたデータセットを利用し、小細胞肺がんの脳、骨および肝転移を有する患者に対する化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の臨床的有効性を検証しました。HCCでは、本研究の手法をモデルケースとして、非小細胞肺がんを始めとする他のがん種や、さらにはがん以外の疾患での検証も目指し、様々な医療機関との連携を目指していきたいと考えております。これまで多種多様なデータを解析し、エビデンス創出に取り組んできた経験を活かし、健康寿命の延伸と持続可能な社会の実現に貢献して参ります。
■ 株式会社ヘルスケアコンサルティングについて
本社: 東京都千代田区富士見一丁目8番19号住友不動産千代田富士見ビル
事業開始: 2021年11月
代表取締役: 小久保 欣哉
事業概要: ヘルスケア領域のコンサルティング、医療関連情報のデータサイエンス、エビデンスによるマーケティングとROI検証等
公式ホームページ: https://www.hc-c.co.jp/
■ 用語解説
※1 CDDP: シスプラチン
※2 ETP: エトポシド
※3 CBDCA: カルボプラチン
以上