子どもの風邪予防と軽症化に効果。注目されるウシの“初乳”
[08/09/26]
提供元:PRTIMES
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子どもはよく風邪をひく。子どもの風邪は、本人はもちろんだが、親も大変だ。夫婦共働きならなおさらで、「保育園にあずかってもらえないから、熱は出させたくない」という本音も聞こえてくる。
「地域医療において、予防医療は急務の課題」と話すのは、JR武蔵野線・船橋法典駅前にある「法典クリニック」(千葉県船橋市上山町)院長の加地展之氏。若い核家族が多いこの地域では、子どもの病気予防に関心が高く、法典クリニックでもそのニーズに応えて、小児の感染症予防には特に力を入れている。
加地氏はこれまでに、地域住民約200名の協力を得て、ウシの後期初乳※1に子どもの風邪を予防、軽症化する効果があることを確認している。「牛のミルクなので親しみがあり、子どもにも飲ませやすい。サプリメントなどに向くのでは」と、予防医療への応用に期待を寄せる。
■ 地域医療における「予防」の重要性
法典クリニックでは、「内科」「外科」「小児科」「眼科」のほか、予防接種や健診などを専門に行う「予防医療センター」が、独立して設けられている。待合室や受付、会計も別になっているため、予防目的で訪れた人と、病気の治療で訪れた人が接触することはない。
「3年前にここに移転するとき、600人ほどの患者さんにアンケートをお願いしました。9割以上の方から回答をいただいたのですが、子どもの予防接種などで来院したとき、よその子どもさんから風邪をうつされることを心配しているお母さんが、多くいらっしゃったんです」。
加地氏自身、それまでにも予防の重要性は痛感していた。地域医療では幅広い診療領域をカバーすることが期待される。加地氏は、予防の段階から介入すれば、簡便な検査で体のわずかな変化をすくい上げ、治療につなげることができると考えた。以前から抱いていた予防医療への思いを、アンケートの声に後押しされた形で、病気の予防に特化した予防医療センターの設置を実現させた。
■ 子どもの風邪に対する、ウシの後期初乳の効果
加地氏は、予防医療への取り組みの一つとして、免疫効果が知られるウシの後期初乳を用い、小児の上気道感染症に対する予防効果を調べている。上気道感染症とは、鼻やのどにウイルスや細菌が感染して起こる病気で、そのほとんどはいわゆる“風邪”である。
子どもは免疫力が未発達なうえ、親や他の子どもとの接触が密なため、大人に比べて感染が起こりやすい。加えていったん発症してしまうと、発熱によるけいれんや脱水など、症状が重くなりやすいのも特徴だ。
「最初に依頼元から試験デザインを見せてもらったとき、被験者の人数が200名に設定されていたという点も、この試験をやってみたいと思った理由です。薬とは違い、食品成分の効果は非常におだやかなものです。このくらいの人数で有効性が検証できなければ、クリニックとして太鼓判を押して患者さんに勧められません」と加地氏。
被験者の数に加えて、データの信憑性を高めるためには、単一地域で被験者を集めることが望ましい。感染症の場合、地域によって発症の状況が大きく異なるからだ。法典クリニックでは、子どものインフルエンザの予防接種に訪れた母親たちを中心に、参加者を募ったところ、3歳〜9歳の男女約200名を確保することができた。
試験では、被験者を2つのグループに分け、一方のグループ(後期初乳群)には、後期初乳を錠菓にしたものを1日3個(後期初乳乾燥粉末量では1日500mgに相当)、もう一方のグループ(プラセボ群)には、比較として脱脂粉乳でつくった錠菓1日3個を、それぞれかんで食べてもらった。上気道感染症の発症の有無については、8週間の試験期間中、のどの痛みが2日以上、またはせきが1日以上続く場合に「発症」、発熱を伴う場合には「重篤な上気道感染症」とカウントして、保護者が日記形式で記録をとった。
その結果、感染症に特に罹りやすいとされる3歳〜6歳の被験者において、発熱を伴うような「重篤な上気道感染症」を発症した場合の平均罹患日数(治癒までの日数)が、プラセボ群で8.14日だったのに対し、後期初乳群では4.67日と、有意に短縮されていた。3歳〜9歳の被験者においても、後期初乳群で平均罹患日数の減少傾向が見られたが、統計学的有意差を示すには至らなかった。
次に、両群間での上気道感染症の平均発症回数を比較してみた。その結果、後期初乳群はプラセボ群に比べて平均発症回数が有意に少なかった。また3歳〜6歳に限定して同様の比較を行ったところ、その減少効果はより顕著であった。さらに、その内容を精査したところ、後期初乳群では、期間中に複数回発症した子どもが少なく、一度も発症しない子どもが多数を占める、という傾向が見られた。
■ 口中で拡がり、のどで免疫バリアを強化?
試験結果について、加地氏は次のように話している。「本来、人間のだ液には、IgAなどの抗体が含まれており、これがある種の免疫のバリアとなって、のどや消化管の上部を、細菌やウイルスの感染から守っています。ウシの初乳には、IgGがたくさん入っていて、ウシの赤ちゃんは初乳を介してこれを譲り受けます。今回の試験では子どもがもともと持っていたIgAに、ウシの後期初乳由来のIgGが加わり、口中の免疫バリアが強化されたのではないかと推察されます」。
現在までのところ、日本国内ではウシの後期初乳を用いた健康食品やサプリメントは、商品化されていない。しかし、いったん腸で吸収されたあと、体内から免疫に働きかけるものと異なり、口の中で拡がり、のどに免疫効果のある膜を張る、というメカニズムは、直接的でわかりやすい。
また牛乳という素材も、子どもに受け入れられやすい。おいしくて安全な食品で、子どもを風邪から守ってやれるなら、こんないいことはない。今後、さらに効果の検証が行われることを期待したい。
※1 ウシの後期初乳
分娩後1週間以内の乳を、一般に「初乳」というが、特にここでは、1〜5日目までの乳を「初期初乳」、6、7日目の乳を「後期初乳」と区分する。日本ではウシの初期初乳の流通は認められていない。ウシの初乳については、これまでに感染症に対する効果や、細胞の再生に関する有用性が報告されている。
「地域医療において、予防医療は急務の課題」と話すのは、JR武蔵野線・船橋法典駅前にある「法典クリニック」(千葉県船橋市上山町)院長の加地展之氏。若い核家族が多いこの地域では、子どもの病気予防に関心が高く、法典クリニックでもそのニーズに応えて、小児の感染症予防には特に力を入れている。
加地氏はこれまでに、地域住民約200名の協力を得て、ウシの後期初乳※1に子どもの風邪を予防、軽症化する効果があることを確認している。「牛のミルクなので親しみがあり、子どもにも飲ませやすい。サプリメントなどに向くのでは」と、予防医療への応用に期待を寄せる。
■ 地域医療における「予防」の重要性
法典クリニックでは、「内科」「外科」「小児科」「眼科」のほか、予防接種や健診などを専門に行う「予防医療センター」が、独立して設けられている。待合室や受付、会計も別になっているため、予防目的で訪れた人と、病気の治療で訪れた人が接触することはない。
「3年前にここに移転するとき、600人ほどの患者さんにアンケートをお願いしました。9割以上の方から回答をいただいたのですが、子どもの予防接種などで来院したとき、よその子どもさんから風邪をうつされることを心配しているお母さんが、多くいらっしゃったんです」。
加地氏自身、それまでにも予防の重要性は痛感していた。地域医療では幅広い診療領域をカバーすることが期待される。加地氏は、予防の段階から介入すれば、簡便な検査で体のわずかな変化をすくい上げ、治療につなげることができると考えた。以前から抱いていた予防医療への思いを、アンケートの声に後押しされた形で、病気の予防に特化した予防医療センターの設置を実現させた。
■ 子どもの風邪に対する、ウシの後期初乳の効果
加地氏は、予防医療への取り組みの一つとして、免疫効果が知られるウシの後期初乳を用い、小児の上気道感染症に対する予防効果を調べている。上気道感染症とは、鼻やのどにウイルスや細菌が感染して起こる病気で、そのほとんどはいわゆる“風邪”である。
子どもは免疫力が未発達なうえ、親や他の子どもとの接触が密なため、大人に比べて感染が起こりやすい。加えていったん発症してしまうと、発熱によるけいれんや脱水など、症状が重くなりやすいのも特徴だ。
「最初に依頼元から試験デザインを見せてもらったとき、被験者の人数が200名に設定されていたという点も、この試験をやってみたいと思った理由です。薬とは違い、食品成分の効果は非常におだやかなものです。このくらいの人数で有効性が検証できなければ、クリニックとして太鼓判を押して患者さんに勧められません」と加地氏。
被験者の数に加えて、データの信憑性を高めるためには、単一地域で被験者を集めることが望ましい。感染症の場合、地域によって発症の状況が大きく異なるからだ。法典クリニックでは、子どものインフルエンザの予防接種に訪れた母親たちを中心に、参加者を募ったところ、3歳〜9歳の男女約200名を確保することができた。
試験では、被験者を2つのグループに分け、一方のグループ(後期初乳群)には、後期初乳を錠菓にしたものを1日3個(後期初乳乾燥粉末量では1日500mgに相当)、もう一方のグループ(プラセボ群)には、比較として脱脂粉乳でつくった錠菓1日3個を、それぞれかんで食べてもらった。上気道感染症の発症の有無については、8週間の試験期間中、のどの痛みが2日以上、またはせきが1日以上続く場合に「発症」、発熱を伴う場合には「重篤な上気道感染症」とカウントして、保護者が日記形式で記録をとった。
その結果、感染症に特に罹りやすいとされる3歳〜6歳の被験者において、発熱を伴うような「重篤な上気道感染症」を発症した場合の平均罹患日数(治癒までの日数)が、プラセボ群で8.14日だったのに対し、後期初乳群では4.67日と、有意に短縮されていた。3歳〜9歳の被験者においても、後期初乳群で平均罹患日数の減少傾向が見られたが、統計学的有意差を示すには至らなかった。
次に、両群間での上気道感染症の平均発症回数を比較してみた。その結果、後期初乳群はプラセボ群に比べて平均発症回数が有意に少なかった。また3歳〜6歳に限定して同様の比較を行ったところ、その減少効果はより顕著であった。さらに、その内容を精査したところ、後期初乳群では、期間中に複数回発症した子どもが少なく、一度も発症しない子どもが多数を占める、という傾向が見られた。
■ 口中で拡がり、のどで免疫バリアを強化?
試験結果について、加地氏は次のように話している。「本来、人間のだ液には、IgAなどの抗体が含まれており、これがある種の免疫のバリアとなって、のどや消化管の上部を、細菌やウイルスの感染から守っています。ウシの初乳には、IgGがたくさん入っていて、ウシの赤ちゃんは初乳を介してこれを譲り受けます。今回の試験では子どもがもともと持っていたIgAに、ウシの後期初乳由来のIgGが加わり、口中の免疫バリアが強化されたのではないかと推察されます」。
現在までのところ、日本国内ではウシの後期初乳を用いた健康食品やサプリメントは、商品化されていない。しかし、いったん腸で吸収されたあと、体内から免疫に働きかけるものと異なり、口の中で拡がり、のどに免疫効果のある膜を張る、というメカニズムは、直接的でわかりやすい。
また牛乳という素材も、子どもに受け入れられやすい。おいしくて安全な食品で、子どもを風邪から守ってやれるなら、こんないいことはない。今後、さらに効果の検証が行われることを期待したい。
※1 ウシの後期初乳
分娩後1週間以内の乳を、一般に「初乳」というが、特にここでは、1〜5日目までの乳を「初期初乳」、6、7日目の乳を「後期初乳」と区分する。日本ではウシの初期初乳の流通は認められていない。ウシの初乳については、これまでに感染症に対する効果や、細胞の再生に関する有用性が報告されている。