「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」第二期生となる7名を決定
[20/02/12]
提供元:PRTIMES
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日本の科学技術の発展に貢献することを目指して、世界最先端の基礎研究に取り組む学生を対象とした給付型奨学金を支給
独立系ベンチャーキャピタルANRIは、数学や物理学、生物学、化学などの分野において、実用化には時間がかかり得る基礎研究として重要な分野に取り組む若手研究者を対象とした給付型奨学金プログラム「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」を実施しています。この度、同プログラムの第二期生となる7名を決定したことをお知らせします。
[画像: https://prtimes.jp/i/40191/12/resize/d40191-12-678409-0.jpg ]
独立系ベンチャーキャピタルANRIは、数学や物理学、生物学、化学などの分野において、実用化には時間がかかり得る基礎研究として重要な分野に取り組む若手研究者を対象とした給付型奨学金プログラム「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」を実施しています。この度、同プログラムの第二期生となる7名を決定したことをお知らせします。
ANRIはこれまでに4本のファンドを立ち上げ累計で約200億円以上を運用し、未来を作る起業家を支援してきました。特に大学発ベンチャーの創業支援をする中で、これまでの日本の発展に貢献してきた基礎研究に資金が集まりづらくなっており、若手研究者には厳しい環境が続いていることを実感してきました。そのような課題感から、短期的には結果を出すのが困難で事業化には直結せずとも長期的には日本の科学技術において意味ある分野の研究支援をすべく、「ANRI基礎科学スカラーシップ」を昨年から開始しました。
世界に目を向けてみると、Peter ThielがThiel Fellowshipという奨学金プログラムやEric SchmidtがSchmidt Science Fellowsという奨学金プログラムを実施する等、ベンチャー経営者やVCが世界の発展の為に奨学金プログラムを運営しています。ANRIとしても、本取り組みを通じて若手研究者の支援を続けることで、今後の日本の科学技術の発展に寄与することを目指しております。
「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」第二期生となる7名は以下の通りです。本人コメントと共にご紹介いたします。
・木村直紀 東京大学大学院 学際情報学府 学際情報学専攻(学際情報学,ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)
私は次世代のコンピュータ・インタフェースとして,サイレントスピーチインタラクション(SSI)の研究を行なっています.SSIとは音を発することなく調音動作のみを行うサイレントスピーチ(つまり口パク)から,本来の発話内容や音声を推定する技術です.簡単に表現すれば「口パク音声インタフェース」です.本研究ではサイレントスピーチを用いた種々のインタラクションを提案します.
サイレントスピーチは未来を見据えたチャレンジングなテーマであるにも関わらず支援して頂き,本当に感謝しています.資金だけでなく知財のようなアカデミック特有の相談など,様々な側面からサポートして頂いております.
・真野智之 東京大学大学院 情報理工学系研究科 システム情報学専攻(神経情報科学)
生命が進化の過程で獲得した脳という器官は膨大な数の神経細胞が繋がりあうことで構築されています.具体的には,ショウジョウバエで約10万,マウスで約1億,ヒトでは約1000億個という数の細胞が,複雑な情報処理を支えています.自然が作り出した計算機の原理を理解するためには,この膨大な細胞システム全体を,一細胞の解像度で計測し理解することが必須になると考えられます.近年”組織透明化”と呼ばれる技術を使うことによって,そのような全脳レベルの定量解析が,高度に進化した哺乳類の脳を対象として実行することが可能になりました.例えば,私が参加した過去の研究により,マウス脳に存在する約1億個の細胞をすべてをイメージングし,解析する技術が示されました.現在の私の研究は,このような全脳解析技術を支える情報解析基盤を作出することです.特に,近年急速な低価格化と高性能化が進んでいるクラウドコンピューティング技術を援用したシステムを開発しています.最終的には,世界の研究者の全脳解析データを集積・統合し,新規の発見のハブとなるようなプラットフォームを目指したいと思っています.
ANRI奨学金は,(今年度の採択者の専門を見れば明らかなように)幅広い分野の学生を対象に,自由なテーマで自身のアイディアを試す機会を提供している,国内では数少ない研究支援の仕組みで,今回の採択に大変感謝しております.他の優秀な採択者の方たちとの科学の議論が楽しみです.
・杉山 博紀 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系
「生命とは何か」という問いは,誰でも一度は考えたことがあると思います.問いの素朴さとは裏腹に,実際この質問にきちんと答えることは容易ではありません.私は,生命のように振舞うシステムを化学的にゼロから組み上げる試みを通じて,「生命とは何か」という問いに迫ることを目指しています.私は特に「進化」が生命現象の本質的な機能の一つと考え,生命の機能・構造の最小単位である細胞を念頭に,細胞のような分子集合体にどうやったら自己維持的な進化能を実装できるかを研究しています.
本研究は,応用研究への足がかりにもなるものの(新規薬剤送達システムや,薬剤スクリーニングなど),基本的にはまだ極めて基礎科学的色合いの濃い研究です.今回,若手の基礎研究を支援くださるANRI奨学金に採択いただき,大変感謝しております.応用的展開への志向性の一方で,本研究の成果によって得られる知的満足感が,多くの人にとって,応用研究のもたらす潜在的価値と同程度以上の直接的価値となるよう,今回の支援を活かして,いっそう魅力的な研究へと発展させたいと思います.
・岡本紘幸 東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻
私は体内で多様な生命現象を担っているタンパク質という分子に着目し、その立体構造を明らかにする研究をしています。数万種類にのぼるタンパク質が私たちの生命維持に重要な役割を果たしているのですが、その大半は立体構造情報が明らかになっておらず、薬剤開発などにおける障壁となっています。その中でも特に多くの疾患の原因となっているGタンパク質共役型受容体というタンパク質に着目し、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析という技術を利用して立体構造解明に取り組み、薬剤開発への応用を目指した基礎研究を行っています。ANRI基礎科学スカラーシップは基礎研究に取り組む大学院生・若手研究者への支援をして下さる数少ないプログラムの1つでありますので、いただいた支援を活かしてさらに研究を加速していきたいと考えています。
・小野清志郎 東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻
私が研究している物性物理学は、物質の様々な性質を微視的な観点から研究する分野です。近年、数学の概念である「トポロジー」が、物性物理学においても重要視されるようになってきました。私はこのトポロジーによって特徴付けられる物質群 (特に超伝導体) を、結晶が持つ「対称性」のみに着目して分類する手法の研究を行ってきました。
基礎研究を支えてくださる奨学金プログラムが少ない中、この度は本奨学金からご支援いただけることとなり、大変光栄です。いただいた支援を活かして、これまで以上に研究に邁進していきたいと思います。
・大岸誠人 ロックフェラー大学 PhD課程
自分は現在、Human genetics of infectious diseasesという領域の研究を行っております。適切な和訳がなくて恐縮ですが、いわゆるよくはやる病原体(インフルエンザなど)に罹ったときになぜか重症化してしまう"不運な"子どもや若者に着目し、彼ら彼女らの遺伝的異常を調べることで、本来は重症化しないはずの感染症が重症化する原因となっている免疫学的異常を解き明かす、という研究です。ヒトではマウスのように人為的に遺伝子変異を誘発させる実験はもちろん倫理的にアウトですので、あらかじめ遺伝的変異を有している"不運な"症例(Experiment of Nature)を深く研究することがヒトの生命現象を遺伝子レベルで解明する唯一の方法論と言えます。日本国内ではこのような観点で研究を行っているところがなかったので、思い切って現在のラボに留学することを決意しまして今に至ります。
ANRI奨学金は、海外からも応募できる数少ないプログラムです(文部科学省など政府系機関が主催する奨学金は残念ながらほとんどが国内限定のようでした)。頂いたご支援を活かし、医学やヒトの生命科学の発展に寄与する画期的な発見ができるようがんばっていきたいと思います。
・魏子夏 京都大学大学院 理学研究科物理学・宇宙物理学専攻
理論物理学は、世界の仕組みをできるだけ統一的な枠組みで記述することを目指して発展してきました。今日では、物質やそれらの間の相互作用はほとんど量子論の枠組みで記述されています。しかし、我々の日常にあふれている重力相互作用に関しては、その量子論への拡張は伝統的な方法では上手くいかないことが知られていて、量子重力理論の探究は現代理論物理の大きな課題として残っています。今日の量子重力の研究において、「ホログラフィーの原理」が重要な役割を果たしています。ホログラフィーの原理は「量子重力が、それより1次元低い、しかも重力を含まない量子論と等価である」と主張していて、実際の具体例もいくつか知られています。ホログラフィーの原理は、量子重力というよくわからないものを、重力を含まない量子論を用いて定式化できることを示唆しています。しかし、その目的を達成するには、ホログラフィーの原理における二つの理論の対応を具体的に知らなければなりません。最近の十数年間では、量子情報理論の道具を用いたホログラフィーの原理の根元を探る研究が盛んに行われています。私は現在特に量子情報理論の「多体間のエンタングルメント」に着目して、ホログラフィーの原理の研究を行っています。
ANRIスカラーシップは、幅多岐にわたる基礎研究を支援していますが、これは日本国内において非常に珍しいと感じています。この度、ANRIスカラーシップに採択していただいて、大変ありがたく思っています。これから、ご支援のもとで、研究におけるより一層の躍進ができるよう努力していきたいと思います。
■「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」ついて
数学や物理学、生物学、化学などの分野における基礎研究に取り組む若手研究者の支援を目的に独立系ベンチャーキャピタルANRIが開始した、給付型奨学金プログラムです。
短期的には結果を出すのが困難で事業化には直結せずとも、長期的には日本の科学技術に意味ある分野の研究支援を行うことで、日本の科学技術の発展に貢献することを目指しています。
<ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowhip募集要項>
※第三期生の募集については、2020年春以降にANRI公式サイト上でお知らせいたします。募集開始の通知をご希望の方は 通知登録フォーム(https://forms.gle/pUL1SKxcfKJNcui99)に、メールアドレス等必要事項をご記入ください。また、本プログラムについて、ご質問等ございましたら、scholarship@anri.vc までご連絡ください。
1. 給付金額
-1人当たり50万円
2.募集人数
-最大10人
3.給付対象期間
-採択より1年
4.募集対象
-数学や物理学、生物学、化学などの分野において優秀な成績を収めた大学院生
(具体的な年齢の制限は設けません)
5.募集方法
scholarship@anri.vc まで略歴、業績、投稿済み論文(有れば)を連絡
6.選考方法
-書類選考(必要に応じて面接も実施)
独立系ベンチャーキャピタルANRIは、数学や物理学、生物学、化学などの分野において、実用化には時間がかかり得る基礎研究として重要な分野に取り組む若手研究者を対象とした給付型奨学金プログラム「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」を実施しています。この度、同プログラムの第二期生となる7名を決定したことをお知らせします。
[画像: https://prtimes.jp/i/40191/12/resize/d40191-12-678409-0.jpg ]
独立系ベンチャーキャピタルANRIは、数学や物理学、生物学、化学などの分野において、実用化には時間がかかり得る基礎研究として重要な分野に取り組む若手研究者を対象とした給付型奨学金プログラム「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」を実施しています。この度、同プログラムの第二期生となる7名を決定したことをお知らせします。
ANRIはこれまでに4本のファンドを立ち上げ累計で約200億円以上を運用し、未来を作る起業家を支援してきました。特に大学発ベンチャーの創業支援をする中で、これまでの日本の発展に貢献してきた基礎研究に資金が集まりづらくなっており、若手研究者には厳しい環境が続いていることを実感してきました。そのような課題感から、短期的には結果を出すのが困難で事業化には直結せずとも長期的には日本の科学技術において意味ある分野の研究支援をすべく、「ANRI基礎科学スカラーシップ」を昨年から開始しました。
世界に目を向けてみると、Peter ThielがThiel Fellowshipという奨学金プログラムやEric SchmidtがSchmidt Science Fellowsという奨学金プログラムを実施する等、ベンチャー経営者やVCが世界の発展の為に奨学金プログラムを運営しています。ANRIとしても、本取り組みを通じて若手研究者の支援を続けることで、今後の日本の科学技術の発展に寄与することを目指しております。
「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」第二期生となる7名は以下の通りです。本人コメントと共にご紹介いたします。
・木村直紀 東京大学大学院 学際情報学府 学際情報学専攻(学際情報学,ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)
私は次世代のコンピュータ・インタフェースとして,サイレントスピーチインタラクション(SSI)の研究を行なっています.SSIとは音を発することなく調音動作のみを行うサイレントスピーチ(つまり口パク)から,本来の発話内容や音声を推定する技術です.簡単に表現すれば「口パク音声インタフェース」です.本研究ではサイレントスピーチを用いた種々のインタラクションを提案します.
サイレントスピーチは未来を見据えたチャレンジングなテーマであるにも関わらず支援して頂き,本当に感謝しています.資金だけでなく知財のようなアカデミック特有の相談など,様々な側面からサポートして頂いております.
・真野智之 東京大学大学院 情報理工学系研究科 システム情報学専攻(神経情報科学)
生命が進化の過程で獲得した脳という器官は膨大な数の神経細胞が繋がりあうことで構築されています.具体的には,ショウジョウバエで約10万,マウスで約1億,ヒトでは約1000億個という数の細胞が,複雑な情報処理を支えています.自然が作り出した計算機の原理を理解するためには,この膨大な細胞システム全体を,一細胞の解像度で計測し理解することが必須になると考えられます.近年”組織透明化”と呼ばれる技術を使うことによって,そのような全脳レベルの定量解析が,高度に進化した哺乳類の脳を対象として実行することが可能になりました.例えば,私が参加した過去の研究により,マウス脳に存在する約1億個の細胞をすべてをイメージングし,解析する技術が示されました.現在の私の研究は,このような全脳解析技術を支える情報解析基盤を作出することです.特に,近年急速な低価格化と高性能化が進んでいるクラウドコンピューティング技術を援用したシステムを開発しています.最終的には,世界の研究者の全脳解析データを集積・統合し,新規の発見のハブとなるようなプラットフォームを目指したいと思っています.
ANRI奨学金は,(今年度の採択者の専門を見れば明らかなように)幅広い分野の学生を対象に,自由なテーマで自身のアイディアを試す機会を提供している,国内では数少ない研究支援の仕組みで,今回の採択に大変感謝しております.他の優秀な採択者の方たちとの科学の議論が楽しみです.
・杉山 博紀 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系
「生命とは何か」という問いは,誰でも一度は考えたことがあると思います.問いの素朴さとは裏腹に,実際この質問にきちんと答えることは容易ではありません.私は,生命のように振舞うシステムを化学的にゼロから組み上げる試みを通じて,「生命とは何か」という問いに迫ることを目指しています.私は特に「進化」が生命現象の本質的な機能の一つと考え,生命の機能・構造の最小単位である細胞を念頭に,細胞のような分子集合体にどうやったら自己維持的な進化能を実装できるかを研究しています.
本研究は,応用研究への足がかりにもなるものの(新規薬剤送達システムや,薬剤スクリーニングなど),基本的にはまだ極めて基礎科学的色合いの濃い研究です.今回,若手の基礎研究を支援くださるANRI奨学金に採択いただき,大変感謝しております.応用的展開への志向性の一方で,本研究の成果によって得られる知的満足感が,多くの人にとって,応用研究のもたらす潜在的価値と同程度以上の直接的価値となるよう,今回の支援を活かして,いっそう魅力的な研究へと発展させたいと思います.
・岡本紘幸 東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻
私は体内で多様な生命現象を担っているタンパク質という分子に着目し、その立体構造を明らかにする研究をしています。数万種類にのぼるタンパク質が私たちの生命維持に重要な役割を果たしているのですが、その大半は立体構造情報が明らかになっておらず、薬剤開発などにおける障壁となっています。その中でも特に多くの疾患の原因となっているGタンパク質共役型受容体というタンパク質に着目し、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析という技術を利用して立体構造解明に取り組み、薬剤開発への応用を目指した基礎研究を行っています。ANRI基礎科学スカラーシップは基礎研究に取り組む大学院生・若手研究者への支援をして下さる数少ないプログラムの1つでありますので、いただいた支援を活かしてさらに研究を加速していきたいと考えています。
・小野清志郎 東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻
私が研究している物性物理学は、物質の様々な性質を微視的な観点から研究する分野です。近年、数学の概念である「トポロジー」が、物性物理学においても重要視されるようになってきました。私はこのトポロジーによって特徴付けられる物質群 (特に超伝導体) を、結晶が持つ「対称性」のみに着目して分類する手法の研究を行ってきました。
基礎研究を支えてくださる奨学金プログラムが少ない中、この度は本奨学金からご支援いただけることとなり、大変光栄です。いただいた支援を活かして、これまで以上に研究に邁進していきたいと思います。
・大岸誠人 ロックフェラー大学 PhD課程
自分は現在、Human genetics of infectious diseasesという領域の研究を行っております。適切な和訳がなくて恐縮ですが、いわゆるよくはやる病原体(インフルエンザなど)に罹ったときになぜか重症化してしまう"不運な"子どもや若者に着目し、彼ら彼女らの遺伝的異常を調べることで、本来は重症化しないはずの感染症が重症化する原因となっている免疫学的異常を解き明かす、という研究です。ヒトではマウスのように人為的に遺伝子変異を誘発させる実験はもちろん倫理的にアウトですので、あらかじめ遺伝的変異を有している"不運な"症例(Experiment of Nature)を深く研究することがヒトの生命現象を遺伝子レベルで解明する唯一の方法論と言えます。日本国内ではこのような観点で研究を行っているところがなかったので、思い切って現在のラボに留学することを決意しまして今に至ります。
ANRI奨学金は、海外からも応募できる数少ないプログラムです(文部科学省など政府系機関が主催する奨学金は残念ながらほとんどが国内限定のようでした)。頂いたご支援を活かし、医学やヒトの生命科学の発展に寄与する画期的な発見ができるようがんばっていきたいと思います。
・魏子夏 京都大学大学院 理学研究科物理学・宇宙物理学専攻
理論物理学は、世界の仕組みをできるだけ統一的な枠組みで記述することを目指して発展してきました。今日では、物質やそれらの間の相互作用はほとんど量子論の枠組みで記述されています。しかし、我々の日常にあふれている重力相互作用に関しては、その量子論への拡張は伝統的な方法では上手くいかないことが知られていて、量子重力理論の探究は現代理論物理の大きな課題として残っています。今日の量子重力の研究において、「ホログラフィーの原理」が重要な役割を果たしています。ホログラフィーの原理は「量子重力が、それより1次元低い、しかも重力を含まない量子論と等価である」と主張していて、実際の具体例もいくつか知られています。ホログラフィーの原理は、量子重力というよくわからないものを、重力を含まない量子論を用いて定式化できることを示唆しています。しかし、その目的を達成するには、ホログラフィーの原理における二つの理論の対応を具体的に知らなければなりません。最近の十数年間では、量子情報理論の道具を用いたホログラフィーの原理の根元を探る研究が盛んに行われています。私は現在特に量子情報理論の「多体間のエンタングルメント」に着目して、ホログラフィーの原理の研究を行っています。
ANRIスカラーシップは、幅多岐にわたる基礎研究を支援していますが、これは日本国内において非常に珍しいと感じています。この度、ANRIスカラーシップに採択していただいて、大変ありがたく思っています。これから、ご支援のもとで、研究におけるより一層の躍進ができるよう努力していきたいと思います。
■「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」ついて
数学や物理学、生物学、化学などの分野における基礎研究に取り組む若手研究者の支援を目的に独立系ベンチャーキャピタルANRIが開始した、給付型奨学金プログラムです。
短期的には結果を出すのが困難で事業化には直結せずとも、長期的には日本の科学技術に意味ある分野の研究支援を行うことで、日本の科学技術の発展に貢献することを目指しています。
<ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowhip募集要項>
※第三期生の募集については、2020年春以降にANRI公式サイト上でお知らせいたします。募集開始の通知をご希望の方は 通知登録フォーム(https://forms.gle/pUL1SKxcfKJNcui99)に、メールアドレス等必要事項をご記入ください。また、本プログラムについて、ご質問等ございましたら、scholarship@anri.vc までご連絡ください。
1. 給付金額
-1人当たり50万円
2.募集人数
-最大10人
3.給付対象期間
-採択より1年
4.募集対象
-数学や物理学、生物学、化学などの分野において優秀な成績を収めた大学院生
(具体的な年齢の制限は設けません)
5.募集方法
scholarship@anri.vc まで略歴、業績、投稿済み論文(有れば)を連絡
6.選考方法
-書類選考(必要に応じて面接も実施)