弾性波式小型液相系センサの開発【産技助成Vol.16】
[08/08/05]
提供元:PRTIMES
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独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
静岡大学創造科学技術大学院
次世代モバイル電源として期待されるダイレクトメタノール燃料電池の実現に
不可欠なメタノール濃度センサ。弾性表面波(SAW)(注1)
素子を用いて小型・軽量・安価・高精度なメタノールセンサを実現する
(注1)弾性表面波素子:水晶やLiNbO3結晶のような圧電性材料で作られ、物体の表面に沿って伝わっていく波(弾性表面波:Surface Acoustic Wave)を発振したり、逆に液体粒子の表面を伝わる弾性表面波をセンシングすることにより液体の物性を検出することもできる
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、静岡大学創造科学技術大学院、准教授の近藤淳氏は、次世代モバイル電源として期待されるダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)の実現に不可欠な弾性表面波式の小型メタノール濃度センサの開発をしました。
本技術は、携帯電話などに電子部品として使われる弾性表面波(SAW)素子を利用し、浮き電極をもつ一方向性電極(FEUDT)に活用することより、小型で低コストかつ温度、濃度領域によらず誤計測の可能性が無い安定なセンサを実現する技術です。FEUDTを用いたSAWセンサは本研究が世界初です。またメタノールだけでなく、他の液体の濃度センサとしても活用できます。
具体的には、従来技術である音速による計測センサは特定の濃度に対して最大値を持つ2次関数となりますが(計測結果から2種類の濃度が導かれる)、一方,誘電率や密度は濃度に対して単調に減少するので,誘電率や密度の変化量から1つの濃度が特定できます.また濃度変化に対する誘電率の変化率は、濃度変化に対する密度の変化率と比べて大きいため,より容易に高精度なメタノール濃度推測が可能となります。
また、携帯電話等に使われている安価な小型電子部品をコアとしているので、小型、軽量、安価な実用品を実現することができます。
1.研究成果概要
弾性表面波(SAW)素子の上に液体を載せると、液体表面のわずかな変化によって波の極性(例えば振幅や速度)が変わります。その変化分を検出することで、液体を細かく識別することができます。本研究では、SAW素子のこうした特徴を利用し、浮き電極をもつ一方向性電極(FEUDT)を用いて、ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)のメタノール濃度を計測するセンサを開発しました。
機能が高度化する次世代モバイル機器の電源として期待されるDMFCは、メタノール濃度に依存するため、安価で精度の高い濃度センサが必要とされます。
既存技術としては、音速測定法や密度測定法がありますが、開発したセンサは音速や密度ではなく、メタノールの誘電率変化を捉えて濃度を測定します。このセンサの利用により、電池切れを予告するなどDMFCの管理が容易になります。弾性表面波を用いた濃度センサは、液体の密度と粘度の積、誘電率、導電率を同時に測定可能なので、液体識別、液体評価、水計測、バイオセンサなど様々な分野での応用が可能です。
2.競合技術への強み
1)高い分解能:液体の弾性表面波(SAW)の誘電率を測定することで、燃料電池のメタノール濃度を理論的には0.1%の分解能で検出することができます。
2)低コスト:SAW素子は1個100円以下と安価なため、コスト面でもたいへん優れています。
3)温度の影響を受けにくい:本センサシステムは、SAW信号発生器を内蔵することにより、液体の温度からの影響を低減しています。
4)広い応用分野:本研究で用いた技術は、液体識別、液体評価、水計測、バイオセンサなど様々な分野に応用できます。
5)世界初:浮き電極をもつ一方向性電極(FEUDT)を用いたSAWセンサは本研究が世界初。発表したところアメリカやスイスでも好評でした。
3.今後の展望
現在、連携企業の協力を得て温度による影響を受けないセンサを開発しています。これを利用することによって、メタノール濃度に対するシステムとしての分解能を0.1%にまで高めるための技術的検討を行っています。システムの低消費電力化についても追究していきます。そして、実際にDMFCを開発している企業との共同研究の実現を目指していきます。
静岡大学創造科学技術大学院
次世代モバイル電源として期待されるダイレクトメタノール燃料電池の実現に
不可欠なメタノール濃度センサ。弾性表面波(SAW)(注1)
素子を用いて小型・軽量・安価・高精度なメタノールセンサを実現する
(注1)弾性表面波素子:水晶やLiNbO3結晶のような圧電性材料で作られ、物体の表面に沿って伝わっていく波(弾性表面波:Surface Acoustic Wave)を発振したり、逆に液体粒子の表面を伝わる弾性表面波をセンシングすることにより液体の物性を検出することもできる
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、静岡大学創造科学技術大学院、准教授の近藤淳氏は、次世代モバイル電源として期待されるダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)の実現に不可欠な弾性表面波式の小型メタノール濃度センサの開発をしました。
本技術は、携帯電話などに電子部品として使われる弾性表面波(SAW)素子を利用し、浮き電極をもつ一方向性電極(FEUDT)に活用することより、小型で低コストかつ温度、濃度領域によらず誤計測の可能性が無い安定なセンサを実現する技術です。FEUDTを用いたSAWセンサは本研究が世界初です。またメタノールだけでなく、他の液体の濃度センサとしても活用できます。
具体的には、従来技術である音速による計測センサは特定の濃度に対して最大値を持つ2次関数となりますが(計測結果から2種類の濃度が導かれる)、一方,誘電率や密度は濃度に対して単調に減少するので,誘電率や密度の変化量から1つの濃度が特定できます.また濃度変化に対する誘電率の変化率は、濃度変化に対する密度の変化率と比べて大きいため,より容易に高精度なメタノール濃度推測が可能となります。
また、携帯電話等に使われている安価な小型電子部品をコアとしているので、小型、軽量、安価な実用品を実現することができます。
1.研究成果概要
弾性表面波(SAW)素子の上に液体を載せると、液体表面のわずかな変化によって波の極性(例えば振幅や速度)が変わります。その変化分を検出することで、液体を細かく識別することができます。本研究では、SAW素子のこうした特徴を利用し、浮き電極をもつ一方向性電極(FEUDT)を用いて、ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)のメタノール濃度を計測するセンサを開発しました。
機能が高度化する次世代モバイル機器の電源として期待されるDMFCは、メタノール濃度に依存するため、安価で精度の高い濃度センサが必要とされます。
既存技術としては、音速測定法や密度測定法がありますが、開発したセンサは音速や密度ではなく、メタノールの誘電率変化を捉えて濃度を測定します。このセンサの利用により、電池切れを予告するなどDMFCの管理が容易になります。弾性表面波を用いた濃度センサは、液体の密度と粘度の積、誘電率、導電率を同時に測定可能なので、液体識別、液体評価、水計測、バイオセンサなど様々な分野での応用が可能です。
2.競合技術への強み
1)高い分解能:液体の弾性表面波(SAW)の誘電率を測定することで、燃料電池のメタノール濃度を理論的には0.1%の分解能で検出することができます。
2)低コスト:SAW素子は1個100円以下と安価なため、コスト面でもたいへん優れています。
3)温度の影響を受けにくい:本センサシステムは、SAW信号発生器を内蔵することにより、液体の温度からの影響を低減しています。
4)広い応用分野:本研究で用いた技術は、液体識別、液体評価、水計測、バイオセンサなど様々な分野に応用できます。
5)世界初:浮き電極をもつ一方向性電極(FEUDT)を用いたSAWセンサは本研究が世界初。発表したところアメリカやスイスでも好評でした。
3.今後の展望
現在、連携企業の協力を得て温度による影響を受けないセンサを開発しています。これを利用することによって、メタノール濃度に対するシステムとしての分解能を0.1%にまで高めるための技術的検討を行っています。システムの低消費電力化についても追究していきます。そして、実際にDMFCを開発している企業との共同研究の実現を目指していきます。