既知の未知なのでしょうか?
[20/02/07]
提供元:PRTIMES
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鎌倉企業倒産予測インデックスは、2.02%ポイント上昇し14.92%に信用度は34番目のパーセンタイルに下落
2020年2月4日(ニューヨーク):1匹の蝶の死が歴史的事実に対して大規模で広範囲な影響を及ぼす可能性がある、という考え方が最初に登場したのは、レイ・ブラッドベリによる1952年のSF短編SF小説、「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」の中においてでした。
短期リスクの上昇は、信用サイクルのシフトを示唆しているのでしょうか?
鎌倉企業倒産予測インデックス(R) (http://www.kamakuraco.com/Solutions/KamakuraRiskInformationSvcs/TroubledCompanyIndex.aspx) は、先月、2.02%ポイント跳ね上がり14.92%まで上昇し、デフォルト・リスクが大幅悪化。その結果、信用度が42番目のパーセンタイルから34パーセンタイルに下落しました。更に、先月のインデックスは、ボラティリティが1カ月間に10.35%〜14.92%の間で推移し、極めて大幅に上昇したことも示しています。このインデックスは、上場企業40,500社中で1%超のデフォルト確率を有する企業の割合を示したものです。インデックスの上昇は信用度の低下、インデックスの下落は信用度の改善を意味します。
1月末時点で、デフォルト確率1%〜5%の企業の割合は11.73%と、前月比1.64%上昇しています。デフォルト確率5%〜10%の企業の割合は1.93%と、前月比0.09%上昇。デフォルト確率10%〜20%の企業の割合は0.18%上昇して0.96%となっています。また、デフォルト確率20%超の企業の割合は前月比0.11%上昇し0.30%となっています。全ての確率区分において、デフォルト確率が上昇していますが、最も上昇幅が大きい確率区分は、デフォルト確率1%〜5%の企業のカテゴリーです。このことは、初期段階のストレスを抱えている企業の数が増大していることを示しています。
[画像1: https://prtimes.jp/i/37838/18/resize/d37838-18-187496-0.png ]
企業倒産予測インデックスの1月の数値は、14.92%と、1990年以来計測されてきた過去の企業信用度において, 34番目のパーセンタイルにまで下落しています。
1月時点で最もリスクの高い企業リストに含まれる10社のうち、6社が米国企業、2社がスペイン、残りが各々、ルクセンブルグ企業と英国企業でした。鎌倉コーポレーションの調査対象企業の中で最もリスクの高い企業は、世界最大のオリーブオイル生産業者であるスペインのDEOLEO社 (BME:OLE) でした。同社は、1月に倒産を避けるために特別措置を講じ、小口投資家に損失を生じせしめ、その結果、実質的に部分的なデフォルトを起こしたことになります。同社の1年以内KDP (鎌倉デフォルト確率) は51.58%となり、一カ月間で25%上昇、一年超の期間では30%以上も上昇したことになり、早期警戒が発せられる状態になっています。最もリスクの高い企業のうち6社がエネルギー関連企業です。更に、下図からも分かるように、最もリスクの高い企業群の短期(30日KDP)デフォルト確率の急伸も見られました。
最もリスクの高い企業10社 — 1年以内KDP
[画像2: https://prtimes.jp/i/37838/18/resize/d37838-18-654582-1.png ]
最もリスクの高い企業10社 — 1ヵ月以内KDP
[画像3: https://prtimes.jp/i/37838/18/resize/d37838-18-771359-2.png ]
世界中で格付けされている全ての企業に対する鎌倉累積期待デフォルト曲線は、1年以内の期待デフォルト確率が0.28%上昇して1.29%に悪化する一方、10年以内の期待デフォルト確率が14.23%に留まったため、縮小しました。
[画像4: https://prtimes.jp/i/37838/18/resize/d37838-18-137410-3.png ]
解 説
解説者:鎌倉コーポレーション 社長 兼 最高執行責任者 マーチン・ゾーン(Martin Zorn)
市場の動きやクレジット・サイクルの変化を、特に金融記者の論評を見て後講釈として説明するのは極めて容易なことです。情報の即時性と移り気の激しい今日の世界においては、例えば 「対イラン衝突の可能性後退で金価格が下落」 等、全ての動きがヘッドラインで説明されているようです。
イランについては、最近では新型コロナウイルス関連ニュースに取って代わられ、メディアやブログの世界から消えたようですが、イラン・リスクは本当に消滅したのでしょうか、或いは最も良性なクレジット・サイクルや歴史上、最長のブル・マーケットを破壊に導く可能性のある、単なるもう一つの事象なのでしょうか?
我々には、上記の例以外にも、米国の弾劾裁判後に何が起こるかのような疑問等、地球規模で発生している 「既知の未知」 が数多く存在します。ブレグジットが既成事実となった今、英国や欧州で次に何が起こるのか?新型コロナウイルス伝染病が、健康上のリスクの他に、中国経済および世界経済にいかなる影響を及ぼすのか、等々。
未知の事象の結末を正確に預言出来るとしたら、私は今頃、くじ引き券を購入して早々に引退していたことでしょう。私は、決定論的ストレステストに安心出来ず、また、限定的数のリスク・ファクターに基づいた定量測定にも満足すること無く、はたまた正規分布曲線や対数正規分布曲線に安心せず、あるいは直感に反しない結論を導き出すという理由から受け入れられている、他のいかなるモデルにも満足することは出来ません。リスク管理に対する最善の備えは、恐らく、巨大な損失は素早く起こり得、一般的に事前にモデル化されていないリスクによって引き起こされると説いているロジャー・ロウエンスタイン著の素晴らしい書籍、「天才たちの誤算 (When Genius Failed)」 を読み返すことでしょう。
リスク・マネージャーとして我々は、適度な疑念を抱くことが義務付けられています。「パーティーが始まるとパンチボウルを引き下げる(つまり景気が上向いた時に引き締め策導入する)」 役割を規制当局だけに頼ることは出来ません。残念ながら、合理的なリスク調整がなされていない中での成長に内在するリスクに対して防衛する上で、金融当局や、銀行或いは市場に対してさえも依存することは出来ません。WeWork社のケースは、どんなに頭の良い人達でも「追い風」と「馬力」とを混同してしまうということを教えてくれました。リスク・マネージャーとして我々が望むのは、n-ファクター・リスクモデルやモンテカルロ・シミュレーション等の利用可能な最強のシミュレーション・ツールを利用してファット・テール・リスクを理解することです。
前回の下降局面は、流動性やカウンターパーティーの信頼度の崩壊によって引き起こされ、金融システムに伝播されました。次にどのような性格の循環がやって来るのかは分かりませんが、次回の循環の課題について事前に理解するために、可能な限り多くのシナリオ・モデルを構築しようとする努力を怠ることは、今日、可用なコンピュータの計算能力を考えると、それは単なる言い訳としか言えないでしょう。
2020年2月4日(ニューヨーク):1匹の蝶の死が歴史的事実に対して大規模で広範囲な影響を及ぼす可能性がある、という考え方が最初に登場したのは、レイ・ブラッドベリによる1952年のSF短編SF小説、「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」の中においてでした。
短期リスクの上昇は、信用サイクルのシフトを示唆しているのでしょうか?
鎌倉企業倒産予測インデックス(R) (http://www.kamakuraco.com/Solutions/KamakuraRiskInformationSvcs/TroubledCompanyIndex.aspx) は、先月、2.02%ポイント跳ね上がり14.92%まで上昇し、デフォルト・リスクが大幅悪化。その結果、信用度が42番目のパーセンタイルから34パーセンタイルに下落しました。更に、先月のインデックスは、ボラティリティが1カ月間に10.35%〜14.92%の間で推移し、極めて大幅に上昇したことも示しています。このインデックスは、上場企業40,500社中で1%超のデフォルト確率を有する企業の割合を示したものです。インデックスの上昇は信用度の低下、インデックスの下落は信用度の改善を意味します。
1月末時点で、デフォルト確率1%〜5%の企業の割合は11.73%と、前月比1.64%上昇しています。デフォルト確率5%〜10%の企業の割合は1.93%と、前月比0.09%上昇。デフォルト確率10%〜20%の企業の割合は0.18%上昇して0.96%となっています。また、デフォルト確率20%超の企業の割合は前月比0.11%上昇し0.30%となっています。全ての確率区分において、デフォルト確率が上昇していますが、最も上昇幅が大きい確率区分は、デフォルト確率1%〜5%の企業のカテゴリーです。このことは、初期段階のストレスを抱えている企業の数が増大していることを示しています。
[画像1: https://prtimes.jp/i/37838/18/resize/d37838-18-187496-0.png ]
企業倒産予測インデックスの1月の数値は、14.92%と、1990年以来計測されてきた過去の企業信用度において, 34番目のパーセンタイルにまで下落しています。
1月時点で最もリスクの高い企業リストに含まれる10社のうち、6社が米国企業、2社がスペイン、残りが各々、ルクセンブルグ企業と英国企業でした。鎌倉コーポレーションの調査対象企業の中で最もリスクの高い企業は、世界最大のオリーブオイル生産業者であるスペインのDEOLEO社 (BME:OLE) でした。同社は、1月に倒産を避けるために特別措置を講じ、小口投資家に損失を生じせしめ、その結果、実質的に部分的なデフォルトを起こしたことになります。同社の1年以内KDP (鎌倉デフォルト確率) は51.58%となり、一カ月間で25%上昇、一年超の期間では30%以上も上昇したことになり、早期警戒が発せられる状態になっています。最もリスクの高い企業のうち6社がエネルギー関連企業です。更に、下図からも分かるように、最もリスクの高い企業群の短期(30日KDP)デフォルト確率の急伸も見られました。
最もリスクの高い企業10社 — 1年以内KDP
[画像2: https://prtimes.jp/i/37838/18/resize/d37838-18-654582-1.png ]
最もリスクの高い企業10社 — 1ヵ月以内KDP
[画像3: https://prtimes.jp/i/37838/18/resize/d37838-18-771359-2.png ]
世界中で格付けされている全ての企業に対する鎌倉累積期待デフォルト曲線は、1年以内の期待デフォルト確率が0.28%上昇して1.29%に悪化する一方、10年以内の期待デフォルト確率が14.23%に留まったため、縮小しました。
[画像4: https://prtimes.jp/i/37838/18/resize/d37838-18-137410-3.png ]
解 説
解説者:鎌倉コーポレーション 社長 兼 最高執行責任者 マーチン・ゾーン(Martin Zorn)
市場の動きやクレジット・サイクルの変化を、特に金融記者の論評を見て後講釈として説明するのは極めて容易なことです。情報の即時性と移り気の激しい今日の世界においては、例えば 「対イラン衝突の可能性後退で金価格が下落」 等、全ての動きがヘッドラインで説明されているようです。
イランについては、最近では新型コロナウイルス関連ニュースに取って代わられ、メディアやブログの世界から消えたようですが、イラン・リスクは本当に消滅したのでしょうか、或いは最も良性なクレジット・サイクルや歴史上、最長のブル・マーケットを破壊に導く可能性のある、単なるもう一つの事象なのでしょうか?
我々には、上記の例以外にも、米国の弾劾裁判後に何が起こるかのような疑問等、地球規模で発生している 「既知の未知」 が数多く存在します。ブレグジットが既成事実となった今、英国や欧州で次に何が起こるのか?新型コロナウイルス伝染病が、健康上のリスクの他に、中国経済および世界経済にいかなる影響を及ぼすのか、等々。
未知の事象の結末を正確に預言出来るとしたら、私は今頃、くじ引き券を購入して早々に引退していたことでしょう。私は、決定論的ストレステストに安心出来ず、また、限定的数のリスク・ファクターに基づいた定量測定にも満足すること無く、はたまた正規分布曲線や対数正規分布曲線に安心せず、あるいは直感に反しない結論を導き出すという理由から受け入れられている、他のいかなるモデルにも満足することは出来ません。リスク管理に対する最善の備えは、恐らく、巨大な損失は素早く起こり得、一般的に事前にモデル化されていないリスクによって引き起こされると説いているロジャー・ロウエンスタイン著の素晴らしい書籍、「天才たちの誤算 (When Genius Failed)」 を読み返すことでしょう。
リスク・マネージャーとして我々は、適度な疑念を抱くことが義務付けられています。「パーティーが始まるとパンチボウルを引き下げる(つまり景気が上向いた時に引き締め策導入する)」 役割を規制当局だけに頼ることは出来ません。残念ながら、合理的なリスク調整がなされていない中での成長に内在するリスクに対して防衛する上で、金融当局や、銀行或いは市場に対してさえも依存することは出来ません。WeWork社のケースは、どんなに頭の良い人達でも「追い風」と「馬力」とを混同してしまうということを教えてくれました。リスク・マネージャーとして我々が望むのは、n-ファクター・リスクモデルやモンテカルロ・シミュレーション等の利用可能な最強のシミュレーション・ツールを利用してファット・テール・リスクを理解することです。
前回の下降局面は、流動性やカウンターパーティーの信頼度の崩壊によって引き起こされ、金融システムに伝播されました。次にどのような性格の循環がやって来るのかは分かりませんが、次回の循環の課題について事前に理解するために、可能な限り多くのシナリオ・モデルを構築しようとする努力を怠ることは、今日、可用なコンピュータの計算能力を考えると、それは単なる言い訳としか言えないでしょう。