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【IPCC 報告書―評価と提言】気候変動が食料の安全を脅かす

食料と気候変動の関係について今回IPCCが公表した第5次報告書の内容は、2007年に公表された前報告書の内容とは大きく異なったものとなっています。今回の報告書では、気候変動が食料に対して、これまでに考えられてきた以上の影響を与えると明確に結論づけました。

前回IPCCは、気候変動はある地域においては食料生産を減少させるものの、他の地域では生産量を増加させることもあるという、良い影響も悪い影響も見られるといったような玉虫色の報告をしていました。しかし今回は、気候変動により小麦やトウモロコシなどの主要作物の純生産量は世界全体で見ると既に減少しはじめていることが報告されています。つまり、気候変動の食料への脅威は遠い未来の話ではなく、私たちが今直面している現実なのです。

9億人近くが既に飢餓に苦しんでいる世界で、気候変動は、多くの人々が食べていくことをより困難にしています。

さらに、本報告書では、今後、世界の食料需要が増加する中、気候変動の影響で作物の収穫高は減り続けることを予測しています。食料収量の減少と需要の増加は、私たちにとって食料供給の確保された未来を意味するものではないということは誰の目にも明らかです。

今回、IPCCはその歴史上はじめて、気候変動と食料価格の関係について言及しました。気候変動は小規模農家はもちろん、大規模な食料輸出業者にとっても免れることのできない脅威です。食料価格の世界的な高騰は、国や地域、都市農村部に関係なく全ての人々に影響を与えるでしょう。

本報告書を読むと、飢餓への脅威が確実に高まってきていることが分かります。適応ならびに排出量削減へ向けて早急な行動を取らない限り、飢餓を撲滅するという目標は永遠に達成できないことになります。政策決定者は、私たちの世代が飢餓との闘いへの敗北を宣言してもいいのかどうか、自問するべきです。

政策決定者は、適応資金への拠出を緊急に行うべきです。本報告書では、特に貧困国において、適応に必要な額と実際に拠出されている額の間に大きな隔たりがあることをはっきりと指摘しています。オックスファムの調査分析によると、2009年のコペンハーゲン会議以降の3年間で貧困国が先進国から適応のために受け取った額は、必要額のたった2%程度です。温室効果ガスの排出に対する責任を最も負わない人々に対し、気候変動の影響に適応するための負担を強いるべきではありません。今こそ世界は、適応策に真剣に取り組むべきであり、裕福な国は、そのための資金を拠出すべきです。

科学者たちによって、気候変動の脅威は明らかとなりました。
政策決定者たちは、今こそ決断し、行動しなくてはなりません。

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※気候変動と食料に関し、3月31日にIPCCで公表された報告書の内容を評価した詳細は、添付の参考資料をご覧ください。
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