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DNAをテンプレートとした金属ナノ構造制御技術による革新的ハイブリッドナノ水素ガスセンサーの開発

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
大阪大学接合科学研究所


DNAとパラジウムによるハイブリッドナノ構造体を水素センサーに応用
従来より高速・高感度での水素ガス検知を可能にする



【新規発表事項】 
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、大阪大学の准教授、大原 智氏は、革新的なハイブリッドナノ水素ガスセンサーを開発しました。
水素エネルギー社会の実現に向け、水素ガスの漏れを高感度・高速で検知できる小型センサーは必要不可欠です。新規開発したパラジウム-DNAハイブリッドナノ構造体を用いたセンサーは、高速(検知に1秒以内)と高検知濃度(濃度500ppm以上)をともに実現しました。
家庭用燃料電池、燃料電池自動車、燃料電池パソコンの実用化および普及に欠かせない水素ガスの漏れ検知が、高速かつ高感度、さらに室温でできるようになります。
本研究で開発したハイブリッドナノ材料や高次構造制御技術が、従来のナノテクノロジーでは実現し得なかった革新的なナノテクノロジー領域を開拓すると期待できます。


1.研究成果概要
地球環境保全の見地から、水素エネルギーを利用する社会の実現は喫緊の課題となっています。そのためには、水素の製造技術、貯蔵・輸送技術、利用技術と並んで、安全性を確保するための水素検知技術が必要不可欠となります。水素は爆発の危険性が高く、しかも人間の五感では検知できません。にもかかわらず、その漏れを室温で高感度かつ高速で検知できる小型の水素ガスセンサーは現状では実現されていません。
本研究は、DNAの折り畳み構造相転移を活用し、新しく作製に成功したパラジウム-DNAハイブリッドナノ構造体を利用して、超高性能室温作動小型水素センサーを開発するものです。
DNAは表面に金属イオンを濃縮する性質があり、この性質を利用することによって、金、白金、銅、コバルトなどの金属ナノワイヤーを作製できます。DNAは通常ひも状ですが、カウンターイオン(陽イオン)濃度が増すと折り畳み構造相転移を示し、この構造を活用することで、ナノパーティクル、ナノネックレス、ナノリングという構造体の作製に成功しました。
作製したパラジウム-DNAハイブリッドナノ構造体は、水素ガスに対して良好な応答速度と感度および安定性を持つことが確認できました。また、水素を吸蔵することで体積膨張依存型の電気応答性を持つこと、水素以外のガスは検知に影響しないことなどから、従来型に比べ、より高感度で優れたガス選択性を有する水素センサーを実現することができました。


2.競合技術への強み
1)応答速度:水素濃度3%の条件下で、1秒以内という実験結果を得ています。
2)感度:水素ガスに対するナノ構造体の体積変化型の電気応答性を示し、電気信号のオン・オフスイッチング機構による検知が可能なので、より高感度のセンサー特性が期待できます。また、室温での検知が可能です。
3)検知濃度:500ppmという希薄な濃度での検知が可能です。
4)ガス選択性:水素以外のガスを吸着しても電流変化が生じないため、ガス選択性に優れます。
5)耐久性:繰り返し特性に優れます。


3.今後の展望
本研究を応用したパラジウム-ポリマーハイブリッドナノ粒子の作製とそれを用いた水素センサーは特許を取得済みです。今後は実用化に向け、パラジウム-DNAハイブリッドナノ材料のパッケージ・素子化を進めています。その後、水素ボンベストッカーやカートに搭載して実証実験を行います。また、数万円以下での販売という低コスト化を実現する必要があり、従来製品に関するコスト分析に取り組む予定です。また性能としては今後、100ppmの検知感度(現状、500ppm〜4%以上)と実用レベルでの耐久性の実現を目指します。
将来的には、DNA三次元テンプレートプロセスをもとにした機能性セラミックスナノ粒子の構造・集積化技術基盤の確立や、ハイブリッドナノ材料のドラッグデリバリーシステム等、医療分野への応用も視野に入れ、研究を進めていきます。
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