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コーポレート・ガバナンス改革・人的資本経営は開示を起点に取組みの中身が求められる段階に

〜「2023年指名・報酬ガバナンスサーベイ」結果公表〜

HRガバナンス・リーダーズ株式会社(代表取締役社長 CEO 内ヶ崎 茂、 以下「HRGL」)は、この度「2023年指名・報酬ガバナンスサーベイ」を実施しましたので、その結果概要を公表いたします。

本サーベイは企業のコーポレート・ガバナンスの要諦となる指名・報酬双方の領域を本格的にカバーしたサーベイで、今年度も大企業やプライム市場上場企業を中心に330社を超える企業にご参加いただきました。




【調査概要】
HRGLが2023年6月から2023年8月に実施した2023年指名・報酬ガバナンスサーベイに参加した企業(報酬領域:337社、指名領域:241社)を対象に、回答結果を集計し分析。

ただし経年比較においては、原則として比較対象とする年度すべてに継続参加した企業を母集団としている。


【エグゼクティブサマリー】
直近3年間(2021年〜2023年)における社長の総報酬額(中央値)は概ね増加傾向。最も伸びが大きかったのは時価総額1兆円以上の企業群で、2億1,328万円(前年比 6.2%増)であった。また、変動報酬比率(総報酬に占める賞与等の年次インセンティブや株式報酬等の中長期インセンティブ報酬の割合)も継続的に増加し、1兆円企業群では64.4%(2021年比14.4pt増)と欧州企業の水準に肉薄。

直近3年間(2021年〜2023年)における社外取締役の総報酬額(中央値)は概ね増加傾向。特に時価総額1兆円以上の企業群で1,800万円(2021年比12.8%増)と他の時価総額群に比べ増加。社外取締役に対して株式報酬制度を導入する企業も若干数増加。

インセンティブ報酬制度の評価指標(KPI)では、年次インセンティブ、中長期インセンティブの双方でE(環境)指標「温室効果ガス関連」、S(社会)指標「従業員満足度関連」といった、比較的定量評価しやすい非財務指標の採用が増加。

報酬委員会、指名委員会ともに開催回数が増加。指名委員会の審議事項では「次期社長・CEOの決定」が前年から最も増加。社長・CEOの後継者計画については「候補者・人材プール対象者の選抜」を実施する企業が最多。また、取締役会や指名委員会で後継者計画をモニタリングする企業は、その策定の浸透に伴い、増加傾向。

人的資本経営について、重要な要素である「経営戦略と人材戦略の連動」を進めている企業の中で、取締役会等の会議体で人財戦略や人的資本について議論、あるいはモニタリングする企業の割合はそれぞれ49.0%、37.7%。また、人的資本経営に関する取組みと開示の状況を課題ごとにみると、「従業員エンゲージメント」が昨年から最も進展。


今回の結果について、HRGLのコンサルタントは以下のように述べています。

指名・報酬ガバナンス部 西本優太
「時価総額1兆円以上の企業群におけるインセンティブ報酬の比率は欧州企業に肉薄しており、今後、これら企業群とそれ以外との二極化が進む可能性があります。また、インセンティブ報酬の評価指標(KPI)を見ると、昨年に続いて将来財務(非財務)KPIの採用が増加していますが、その中でも特に、定量的な運用を行うことが可能な指標(例:従業員満足度関連)を採用する動きが増加傾向にあることがわかりました。インセンティブ報酬に自社のマテリアリティに紐づく将来財務KPIを採用することは、自社が将来ありたい姿を実現するうえでの重要課題の解決・改善に向けた経営陣の覚悟を示すことに繋がり、結果として中長期的な企業価値向上にも結び付くと捉えられます。
 なお、報酬委員会の開催回数も増加傾向ですが、これは本年1月に公表された「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正により活動状況の開示が求められたことを一つの契機として、議論すべきアジェンダを含めた報酬委員会のあり方を再検討することで、自社の報酬戦略についてより実効的な議論がなされているものと考えられます。」

指名・人財ガバナンス部 見城大輔
「指名委員会で社長・CEOの選任に関する議論を行う企業が昨年から増加し、企業のトップである『社長・CEOを選定する』というガバナンスにおける根源的な役割を各社が指名委員会において模索し始めたと捉えられます。全体傾向として人財要件やスキルマトリックスについての議論の重要性が増しており、また時価総額の高い企業を中心に後継者計画への取組みが活発化しています。
 また、人的資本に関する情報開示が急速に進む中、経営戦略と人財戦略の連動を進めている企業であっても、取締役会が人的資本経営を主導し、モニタリングを行っている企業の割合は限定的でした。将来的な企業価値向上を見据え、取締役会において人的資本への投資判断を行えるよう『人的資本ガバナンス』の構築が求められ、過去の取組みの開示から、ステークホルダーとの対話を行いながら未来への投資を加速していくことが期待されます。」

<報酬ガバナンス領域サマリー>
1.報酬水準
■社長報酬額
直近3年間連続して本サーベイに参加している企業群において、2023年の社長の総報酬額(中央値)は8,000万円でした。時価総額別(「1,000億円未満」、「1,000億円以上5,000億円未満」、「5,000億円以上1兆円未満」、「1兆円以上」の4つの企業群)の推移をみると、概ね総報酬額は増加傾向を示していました(図表1)。「1兆円以上」の企業群では2億1,328万円となっており、昨年比6.2%と最も増加していました。

総報酬額が増加した要因の1つに変動報酬額の上昇が挙げられます。総報酬額における変動報酬額(賞与等の年次インセンティブと株式報酬等の中長期インセンティブの和)の比率をみると、「1兆円以上」の企業群においては直近3年間で14.4ptと最も大きく増加しており、64.4%でした。基本報酬が約30%、年次インセンティブ・中長期インセンティブがそれぞれ30%〜40%程度を占める欧州企業の報酬プラクティスの水準に近づいています。それ以外の時価総額の企業群においても同比率は上昇傾向にありました(図表2)。


図表1 社長総報酬額(時価総額別)
[画像1: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-52ec599954ccbc84be54-0.png ]

※N: 225社

図表2 社長 変動報酬比率(時価総額別)
[画像2: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-266986d4546d021c0ec1-1.png ]

※N: 225社

■社外取締役 報酬額
直近3年間連続して本サーベイに参加している企業群において、2023年の社外取締役の総報酬(中央値)は1,020万円でした。「1兆円以上」の企業群では1,800万円と、直近3年間で12.8%増加しました(図表3)。また、社外取締役に対して株式報酬制度を導入する企業は17社であり、2021年の9社、2022年の14社から若干数ですが増加しています。

なお、経営経験を有する社外取締役が在任している企業の割合は85.7%と2021年の70.8%、2022年の81.0%から増加傾向にあります。


図表3 社外取締役 総報酬額(時価総額別)
[画像3: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-936b51bf7bf59a60e525-2.png ]

※N: 206社

2.インセンティブ報酬制度の評価指標(KPI)
■KPIの採用状況
直近2年間連続して本サーベイに参加している298社を対象に、社長の年次インセンティブもしくは中長期インセンティブ制度の報酬額の決定にあたってのKPIを集計した結果、営業利益や当期純利益、売上高といった財務指標が上位を占めていました(図表4)。また、年次インセンティブ、中長期インセンティブの双方でE(環境)指標「温室効果ガス関連」、S(社会)指標「従業員満足度関連)といった、比較的定量評価しやすい非財務指標の採用が増加していました。中長期インセンティブにおいては、欧米企業において比較的多く採用されている、株主価値を表す指標であるTSR(株主総利回り)の採用も前年比で増加しています。


図表4 インセンティブ報酬制度における評価指標(KPI)採用状況
[画像4: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-d1e2cc91875c32d9f289-3.png ]

※N:298社

3.報酬委員会の運営状況
直近2年間連続して本サーベイに参加している267社(報酬委員会設置済)を対象に報酬委員会の審議事項を確認すると、最も多く挙げられたのは「報酬水準・構成(MIX)」(87.3%)でした(図表5)。前年比で最も増加していたのは「クローバック・マルス条項の設定」(前年比6.4pt増)であり、次いで「会議体の運営方法」(同5.2pt増)でした。また、直近3年間連続して参加している229社(報酬委員会設置済)を対象に報酬委員会の開催回数をみると、2023年の平均値は4.7回であり、2021年の4.1回、2022年の4.4回から増加傾向にありました。


図表5 報酬委員会の審議事項
[画像5: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-1888ad64407021b8e33c-4.png ]

※複数選択、N: 267社

<指名ガバナンス領域(人的資本経営を含む)サマリー>
1.指名委員会
■指名委員会の活動状況
直近3年連続して本サーベイに参加している145社(指名委員会設置済)について、指名委員会の開催回数の平均値は2023年では5.1回であり、2021年の4.8回、2022年の4.0回から増加傾向にありました。また、直近2年間連続して参加している189社(指名委員会設置済)を対象に指名委員会の審議事項を経年比較したところ、昨年に続き「人材要件定義・スキルマトリックス」(74.1%)を挙げる企業の割合が最多でした(図表6)。昨年から比較すると、最も増加幅が大きかったのは「次期社長・CEOの決定」(前年比10.0pt増)であり、次いで「指名ポリシーの策定・開示」(同8.4pt増)、「現社長・CEOの退任後の処遇」(同8.0pt増)でした。


図表6 指名委員会の審議事項
[画像6: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-95383b2ffa09b0878ed8-5.png ]

※複数選択、N=189社

■後継者計画の実施状況
指名委員会の審議事項として「後継者計画」を挙げた企業128社を対象に、その具体的な実施事項を「社長・CEO」、「社内取締役」の対象別に集計しました(図表7)。社長・CEOを対象とした実施事項では、最も多かったのは「候補者・人材プール対象者の選抜」で67.2%と7割弱を占めていました。一方で、人材プールを設定していない企業も11.7%と1割程度みられました。また、社内取締役を対象とした実施事項では、後継者計画について議論していない企業の割合は24.2%でした。また、直近3年間連続して参加している178社について後継者計画のモニタリング状況をみると、52.2%の企業が「取締役会または指名委員会で実施している」と回答し、後継者計画の策定の浸透に伴い、2021年の38.4%、2022年の46.1%から増加傾向にありました。


図表7 後継者計画の実施事項
[画像7: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-169348ecf8dbb995d684-6.png ]

※複数選択、N=128社

2.人的資本経営の取組みと開示
■経営戦略と人財戦略の連動
人的資本経営の取組み状況を、人材版伊藤レポートにおいて提唱されている「3P・5Fモデル」の3つの視点別にみたところ、昨年からいずれの視点でも進捗していました。その中の1視点である「経営戦略を人材戦略の連動」について、人材戦略を経営戦略に反映済および反映に向けて取組み中と回答した企業を対象に、その具体的な取組みについて集計したところ、6割以上(64.7%)の企業が「経営戦略上の重要課題として、マテリアリティや主要リスクに人的資本関連テーマを設定」していました(図表8)。一方で、取締役会等の会議体で人財戦略等の議論、モニタリングを行っている企業の割合は、それぞれ49.0%、37.7%でした。
(注)2020年9月に公表された人材版伊藤レポートでは、人財戦略に求められる視点として、1.経営戦略と人材戦略の連動、2.As is‐To be ギャップの定量把握、3.人材戦略の実行プロセスを通じた企業文化への定着の3つを、共通要素として、1.動的な人材ポートフォリオ、個人・組織の活性化、2.知・経験のダイバーシティ&インクルージョン、3.リスキル・学び直し、4.従業員エンゲージメント、5.時間や場所にとらわれない働き方の5つを示しており、これらを「3P・5Fモデル」として整理している。


図表8 「経営戦略と人材戦略の連動」に関する具体的な取組み状況
[画像8: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-8c8d9ed4f8c71694df0c-7.png ]

※複数選択、N=204社

■人的資本の開示
直近2年間連続して本サーベイに参加している企業を対象に、人的資本の開示状況を、先ほどと同様に「3P・5Fモデル」の人材戦略で求められる5つの要素(5F)に合わせて確認すると、全ての項目で昨年から開示が進んでいました(図表9)。最も開示が進んでいたのは「従業員エンゲージメント」であり、19.2pt増加しています。一方で、「動的な人材ポートフォリオ」「リスキル・学び直し」といった項目の開示はそれぞれ13.0%、16.3%でした。


図表9 人材戦略で求められる5つの要素(5F)のうち、実施済かつ開示済の企業の割合
[画像9: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-97a42169e6cba047d2fe-8.png ]

※N: 208社

■人的資本の開示に向けた障害
人的資本可視化指針で開示事項として示された19項目の開示状況について「検討中」または「開示予定なし」と回答した企業数は図表10のとおりです。これら企業を対象に開示していない理由を尋ねたところ、最も多かった理由は「開示できる取組みが現時点で無い」であり、19項目平均で42.5%を占めています(図表11)。「技術的にデータ収集困難」な指標には「スキル/経験」(31.5%)、「リーダーシップ」(31.3%)が上位となりました。また、「外部に公表したくない」指標は「採用」(13.4%)が最も多く、次いで「サクセッション」(9.0%)でした。


図表10 人的資本可視化指針の19項目の開示事項と、各開示事項の開示状況において「検討中」または「開示予定なし」と回答した企業数
[画像10: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-53f803de935e9f51ec23-9.png ]

※N=240社

図表11人的資本可視化指針の19項目別にみた開示していない理由(各理由の19項目平均値と上位3指標を掲載)
[画像11: https://prtimes.jp/i/66337/21/resize/d66337-21-475af4f191c33ad4df6d-10.png ]

※複数選択
※N:各事項の開示状況において「検討中」または「開示予定なし」と回答した企業数(図表10参照)

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2023年指名・報酬ガバナンスサーベイ 概要
サーベイ期間:2023年6月〜2023年8月
参加企業数:報酬領域:337社、指名領域:241社
現在、通常スケジュール後のご参加(レイト参加)も募集していますので、下記からお気軽にお問合せください。
https://www.hrgl.jp/service/compensationgovernance/compensationsurvey/
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HRGLウェビナー「2023年指名・報酬ガバナンスサーベイ結果報告会 指名・報酬ガバナンスの最新潮流」
HRGLでは、上記の内容も含めた詳細について、2023年10月20日にウェビナーを開催します。ご参加希望の方は下記からお申込みください。
https://www.hrgl.jp/info/info-8505/

「指名・報酬ガバナンスサーベイ」について
「指名・報酬ガバナンスサーベイ」は、企業のコーポレート・ガバナンスの要諦となる指名および報酬領域を本格的にカバーしたサーベイです。経営者を含む役員の報酬調査に加え、指名・報酬委員会の運営からスキルマトリックス、後継者計画、社外取締役の選任など、日本企業のプラクティスについての最新情報を提供し、貴社のガバナンスの向上を強力にサポートします。また、人的資本経営に関する設問も充実させています。
現在、通常スケジュール後のご参加(レイト参加)も募集しておりますので、お気軽にお問合せください。
https://www.hrgl.jp/service/compensationgovernance/compensationsurvey/

【HRガバナンス・リーダーズ株式会社 概要】
設 立:2020年4月(事業開始:2020年10月)
所在地:〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-4-5
代表者 :代表取締役社長 CEO 内ヶ崎 茂
事業内容:サステナビリティガバナンスコンサルティング
戦略・リスク・監査ガバナンスコンサルティング
指名・人財ガバナンスコンサルティング
指名・報酬ガバナンスコンサルティング
上記コンサルティングに関する商品開発および調査研究
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