【開催報告】世界トップ大学の日本人留学生が見た世界のSTEMキャリア!STEMガールズ・トークイベントを7月29日に実施
[23/08/30]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
公益財団法人山田進太郎D&I財団は、公益財団法人江副記念リクルート財団の協力を得て、内向き志向や経済的な課題といった留学に関連する問題を解決し、より多くの若者が世界の舞台で活躍できる機会を提供することを目的に、2023年7月29日(土)にオンラインイベント「世界トップ大学の日本人留学生が見た世界のSTEMキャリア!STEMガールズ・トークイベント」を開催しました。当日は約70人の中高生女子を中心とした学生と、保護者や教職員の皆さんにご参加いただきました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/83893/21/resize/d83893-21-c3ec3e25cee6bf0421e4-0.png ]
海外のトップクラスの大学でSTEM(理系)分野を専攻する先輩女性によるパネルディスカッション
ご登壇された3名の先輩女性が海外留学を選んだ経緯や、留学を検討している参加者に役立つ情報など、以下の4つのテーマに沿ってそれぞれの体験をお話いただきました。
ご登壇くださったのはこちらの3名の先輩女性たちです。
久保田 しおんさん(米国ハーバード大学、物理)
1997年神奈川県横浜市生まれ。高校まで日本の女子校で過ごしたのち、米国Mount Holyoke Collegeに進学。物理(専攻)、哲学(Certificate)、コンピューターサイエンス(副専攻)、数学(副専攻)を学び、2019年に卒業。卒業後は、ハーバード大学にて1年間客室研究員としてニュートリノ検出器のデザイニング・エンジニアリングの研究を行い、その後、ハーバード大学物理博士課程に進学。現在はマンチェスター大学物理学部にも在籍し、世界最大のニュートリノ研究グループであるDUNEのプロジェクトに携わる。
筧 路加さん(米国ペンシルベニア大学、化学)
2000年大阪府生まれ。高校2年まで日本の女子校で過ごしたのち、高2の夏に高校を中退しコスタリカのインターナショナルスクールに入学(United World College Costa Rica)。その後米国ペンシルベニア大学に進学し、化学(専攻)、栄養学(副専攻)を学ぶ。2022年は大学を1年休学し培養肉の研究を行い論文を執筆。培養肉の研究を通して、世界の食の定義を変え、テクノロジーの観点から向上させることを目指す。
原野 新渚さん(米国コロンビア大学、神経科学)
2000年東京生まれ。高校まで沖縄のアメリカンスクールで過ごしたのち、米国コロンビア大学へ進学。主に脳損傷後の感覚統合機能回復についての研究を行う。2023年秋からはニューヨーク大学医学部附属の神経科学のプログラム博士課程に進学し神経変性のメカニズムの解明に挑戦し、将来的には、現在確立されていない宇宙医療の分野に神経科学の観点からの貢献を目指す。
▼パネルディスカッションテーマ
高校生活と海外留学
今、STEM関連で大学で学んでいること
留学でかかる費用と捻出方法のヒント
海外生活の不安への対応方法
1.高校生活と海外留学
[画像2: https://prtimes.jp/i/83893/21/resize/d83893-21-5849c4d0bd8dfd7cdbd5-0.jpg ]
久保田さん:
理系での海外留学を目指すことになるとは全く思っておらず、高校までフルートに打ち込んで来た学生時代でした。高校3年生の時、歯の矯正をつけたらフルートの音が出なくなったことをきっかけに、実はフルートも流体力学が関係しているということを知って、そこから物理に興味を持ちはじめて、段々物理にのめり込んでいった感じでした。
海外留学を現実的な選択肢として見ることができたのも高校3年生になってからで、海外大学に進学した先輩に会って「日本人って海外留学するんだ」と知ったことがきっかけでした。
筧さん:
元々化学には関心がありました。高校生のとき「グローバルサイエンスキャンパス」というプログラムに参加して東京理科大学で研究する中で、ラボでの研究やSTEMを大学で選択した時の生活がどんなものかを学ぶことができました。
一方で他の分野にも興味があり、アメリカの大学は最初の2年間は専攻を決めなくて良いということもあって、大学での海外留学を選択しました。高校留学では、大学では行きそうにないところ、選択肢の中で日本から一番遠い国、かつ英語とスペイン語が公用語ということでコスタリカに留学しました。
原野さん:
中高は沖縄で過ごしたので、理系学問に触れられる機会は多くなく、また大学で何を学びたいのかを見つけたいという思いもあって、高校1年生の頃から長期休暇に開催されているプログラムに色々と応募していました。たまたま受かるものに理系が多くて、参加するうちに理系に興味を持ち始めました。
誰もがなりたいと一度は思う宇宙飛行士には、視力が悪くてなれなくてがっかりしたことから、「宇宙飛行士がかかる神経視覚障害を解明できたらかっこいいんじゃないか?」という思いが、いまの研究テーマでもある神経科学のきっかけにもなりました。
2.いま、STEM関連で大学で学んでいること
[画像3: https://prtimes.jp/i/83893/21/resize/d83893-21-1d349d371e1e6f0d421e-0.jpg ]
久保田さん:
物理の中でも基礎物理学という、人間の日常にはそんなに関係ないけれど、人類の知識としては知っておきたい謎を解明する学問です。その中でいま研究しているのが「素粒子物理学」です。
(手元にあった葛根湯の袋を元に)これをどんどん小さくちぎっていってどこまでできるかを極めた時、永遠に小さくできるわけではなくって、どこかでミニマムの単位になります。それが「素粒子」と呼ばれるものです。コーヒーも、私たちの体も、素粒子でできています。皆がレゴブロックでいろんな街やものをつくるのに色んな色や形のレゴがあるように、素粒子にもいろんな素粒子があります。電子とか、陽子とか、重さを与えるヒッグス粒子とか。
その種類のひとつに私がいま調べている「ニュートリノ」という素粒子があります。物質と滅多に相互作用しないので、見るのも聞くのも触ることもできない。いまそのニュートリノに関する世界最大の研究であるDUNE(デューン)実験装置の中で、ニュートリノの検出器をつくっています。
一時、素粒子物理学以外にも挑戦してみましたが、やはり素粒子物理学の研究を続けたいと思って、この分野に戻ってきました。
筧さん:
大学2年生と休学した1年間の計2年間は、培養肉についての研究をしていました。培養肉とは牛や家畜から細胞を取り出して実験室で増やしてお肉の形にするという、新しいお肉を作る研究です。
ペンシルベニア大学では有機化学系のラボで「アジリジン」という窒素を含んだ分子をいかに合成するかを研究していました。
この夏はサマーリサーチとして、ハーバードの公衆衛生系のスクールで、写真にあるようなラボの環境で癌の悪液質(あくえきしつ)という栄養衰弱になってしまう状態に関するファクターを研究し、また疫学関連ではカルシウムと結腸直腸癌の関係についても研究を進めています。
培養肉の研究を始めたのは、コロナで日本に帰っていたタイミングでどういったテーマで食品化学の研究をしようか考えていた中で、たまたま培養肉という概念を知ったことがきっかけでしたが、論文として成果を発表したり、アカデミックに貢献できたという自信がついたテーマでもありました。最初から考えていた研究ではなかったんですが、いまの自分を形作ってくれていると思います。
原野さん:
高校の時には研究室に入るという経験がなかなかできなかったので、大学1年生の1学期の最後あたりで、比較的早い段階で研究室に配属してもらいました。研究内容は、脳の一部にフォーカスしています。例えばキーボードのJとFはブラインドタッチできるように凸凹があって、目をつぶっていてもわかります。これを可能にしているのは一次体性感覚野という部分ですが、実際にどう情報が伝わっているかのプロセスかはあまり詳しくわかっていないのです。
最初はメンターについて学ぶという感じで研究を行っていましたが、徐々に自立してからは、脳損傷がその脳分野に与える影響や、どうすればその行動が回復するかなどを研究して、それが卒論になりました。
いまのテーマに行き着く経緯としては、元々関心があった宇宙の未解明の病気についての研究室はまだ確立していなかったというのがあります。そこで、まずは基礎を身につけようと考えました。研究室を探す際には研究内容だけでなく、「この人から学びたい」と思える良いロールモデル、良いメンターというのが私にとっては大事なことだったので、そこにフォーカスして選んだのがいまの研究室です。
3. 留学でかかる費用と捻出方法のヒント
[画像4: https://prtimes.jp/i/83893/21/resize/d83893-21-4b3422b167db88a14c4f-4.jpg ]
久保田さん:
書いてあるとおり、色々な奨学金の機関にお世話になりました。江副記念リクルート財団には学部のときも大学院でもお世話になり、他にも孫正義育英財団やグルーバンクロフト基金というアメリカのリベラルアーツカレッジ専用の奨学金制度から奨学金をいただきました。いずれも全て返済不要の奨学金です。奨学金が無かったら留学できないような学費がアメリカの大学ではかかるので、ぜひ奨学金の活用を推奨したいと思います。
寮に住んでしまえば、費用は1年の最初にドンとかかるので、私は追加で費用がかかることはあまりなかったです。ただ、何かお金が必要なことがあれば、キャンパスでできる仕事でまかなったり、研究に必要なものであれば、財団から査読を経ていただいた研究費で賄うなどして、やりくりしていました。
筧さん:
私は高校でも大学でも留学したのですが、高校の時は経団連、大学では江副記念リクルート財団からいただきました。久保田さんが言う通り、本当にアメリカの大学はお金がかかります。財団のような外部の奨学金もありますし、大学からの奨学金もあります。
私の大学のキャンパスにも寮はあるのですが、とても高くて、一番いい部屋だと月20万くらいします。また3、4年生はキャンパスの外に住むことも多いので、私もキャンパスの外に住んでいます。街並みも可愛いし、ハロウィンではアメリカらしく飾られたり、結構気に入っています。
あとアメリカ国籍でない留学生は「F-1ビザ」を取るのですが、一般にはキャンパス内で大学に関わる仕事をすることが多いです。私はいまフィラデルフィアの高校生に食品化学を教えに行くというアウトリーチの仕事をしています。
原野さん:
上の写真がコロンビア大学の寮と食堂の様子です。1年生〜4年生まで寮に住むことが多いです。寮は1、2年生だと相部屋の可能性がありますが、3、4年生になると必ずシングルのお部屋に入れます。部屋はギリギリベッドと机が入るくらいですね。都会にあるので他の大学より少し高くて、1学年で200万円弱くらいかかります。物価も高いので、寮の食堂に行って節約しながら健康に暮らしています(笑)。
私も学費のご支援がなかったら絶対に叶わなかったことなので感謝しています。
4.海外生活の不安への対応方法
[画像5: https://prtimes.jp/i/83893/21/resize/d83893-21-813c65c5bfcf57a87046-0.jpg ]
久保田さん:
私の一番の大きな不安は英語で、初めてアメリカの大学に行った時にシャワーのお湯の出し方がわからないし、友だちの作り方もわからないし、発音に自信も無いし、最初の1週間半くらい水でシャワーを浴びて母に泣きながら電話したこともありました(笑)。
そんな私が行った大学は学部生だけのリベラルアーツの大学だったので教授と学生との距離が近かったこと、さらに英語ができないくせに私が他の人の3倍くらい授業を取っていたこともあって、教授や奥さんが見かねて色々面倒を見てくれました。馴染むのにエネルギーが必要そうだと思っている人、英語に自信がない人には、教授との距離の近いリベラルアーツの大学はおすすめです。
筧さん:
高校でコスタリカに行ったのですが、海外に住むということがどういうことか全く分からなかったからこそ飛び込めたと思います。最初は本当に英語で苦労しましたが、70か国くらいから学生が集まるインターナショナルな環境で、英語だけじゃなくどうやって友だちになるかということも学べたので、アメリカにも飛び込めたかなと思います。
逆に大学は高校と違ってすごく規模が大きくて戸惑った部分もありつつ、小さなクラスで友だちを作ったり、サークルで社交ダンスをやったり、ラボのメンバーで野球を見たり、そういった出会いが勉強以外の励みになりました。
原野さん:
言語というよりは環境に不安がありました。親元を離れるのも不安でしたし、勇気を振り絞って行きましたね。実際行ってみたら大学では1年生は結構寮に住んでいて、アメリカ国内でも色々なところから来ていたり、初めて親元を離れる子も多くて、必然的に仲良くなりました。
久保田さんの経験とはまた違う感じで、うちの大学はひと学年何千人と居るので、教授というよりは友だちが支えになるような感じでした。行ってしまえば楽しく過ごせるのではないかと、自分の経験から思います。
_____________________________________________
ゲストからのメッセージ
イベントの最後に、留学を検討する学生や保護者の皆さんに向けて、先輩女性の皆さんからメッセージをいただきました。
久保田さん:
「好き」の力を大事にするということが、やっぱり大事だと思っています。新しい環境に行って自分がやりたいことをやるというときに、逆境や言葉の壁などは実際にあります。ただ、どの幸せに向かってどの辛さなら超えられるかを選ぶことが大切だと思います。選ぶ時には「好き」の力を信じて、パッションに押されながら追求してほしいです。
筧さん:
もうすでにやりたいことが分かってる人も分かってない人も、中高生のうちは色々な経験をして、軸となる部分を見つけてもらえたら一番良いのではないかと思います。わたしが好きな言葉に「ダイヤモンドの原石はダイヤモンドでしか磨けない」という言葉があるのですが、英語で優秀な人たちとともに学ぶという環境は原石を磨くのに適していると思うので、海外経験がなくても、留学にぜひ挑戦してほしいと思います。
原野さん:
今までやってこれたのは、切磋琢磨できる仲間であったり、ロールモデルの存在が大きかったと思っています。特に女性の研究者がかっこよく見えて「私もああなりたい」と思います。一方で、そういう方々と出会うには、自分が踏み出さないとなかなかできなかったことでもありました。皆さんもぜひ勇気を出してロールモデルがいる世界に飛び込む機会を掴んでほしいと思っています。
【イベント概要】
イベント名称:世界トップ大学の日本人留学生が見た世界のSTEMキャリア!STEMガールズ・トークイベント
開催日:2023年7月29日(土) 20:00 - 21:30
場所:オンライン(ZOOM配信)
参加費:無料
プログラム内容:STEMに関する経験や留学の体験談を共有するパネルディスカッション、研究分野別ブレイクアウトセッション、各財団からの奨学金事業のご紹介
主催:公益財団法人山田進太郎D&I財団
共催協力:公益財団法人江副記念リクルート財団
https://www.recruit-foundation.org/
イベント公式サイト:https://www.shinfdn.org/posts/dM0LkGlO
■公益財団法人山田進太郎D&I財団について
誰もがその人の持つ能力を発揮し活躍できる社会の実現に寄与するために、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進する目的で、メルカリCEO山田進太郎が2021年7月に設立した公益財団法人です。
特に、STEM(理系)のジェンダーギャップに注目し、2021年より女子中学生/高校生がSTEM(理系)キャリアを前向きに検討し、積極的に自己決定するための機運を創ることを目的に奨学金事業を開始しました。2023年からは、さらに活動の幅を広げるべく、対象者となる女子生徒を取り巻くステークホルダーとなる保護者や学校等教育機関、企業、行政/省庁の皆様と連携しながら、各種教育支援イベント等を通じて若い女性の成長と社会進出を支援しています。
※STEM(S:Science / T:Technology / E:Engineering / M:Mathematics)
代表理事:山田 進太郎(メルカリ創業者、代表取締役社長兼CEO)
設立年月日:2021年7月1日(木)
公益財団法人山田進太郎D&I財団公式ウェブサイト:
https://www.shinfdn.org/
■2023年度の奨学金事業について
山田進太郎D&I財団は、2023年度もSTEM(理系)進学を選択しづらい現状にある女子学生が理系キャリアを前向きに検討し、積極的に自己決定するための機運を創るため、STEM(理系)女子奨学助成金の募集を7月6日より開始しました。詳細は以下をご参照ください。
STEM(理系)女子奨学助成金募集要項:
https://www.shinfdn.org/scholarship2023/requirements
【一般のお問い合わせ先】
公益財団法人山田進太郎D&I財団事務局
Eメール:info@shinfdn.org
[画像1: https://prtimes.jp/i/83893/21/resize/d83893-21-c3ec3e25cee6bf0421e4-0.png ]
海外のトップクラスの大学でSTEM(理系)分野を専攻する先輩女性によるパネルディスカッション
ご登壇された3名の先輩女性が海外留学を選んだ経緯や、留学を検討している参加者に役立つ情報など、以下の4つのテーマに沿ってそれぞれの体験をお話いただきました。
ご登壇くださったのはこちらの3名の先輩女性たちです。
久保田 しおんさん(米国ハーバード大学、物理)
1997年神奈川県横浜市生まれ。高校まで日本の女子校で過ごしたのち、米国Mount Holyoke Collegeに進学。物理(専攻)、哲学(Certificate)、コンピューターサイエンス(副専攻)、数学(副専攻)を学び、2019年に卒業。卒業後は、ハーバード大学にて1年間客室研究員としてニュートリノ検出器のデザイニング・エンジニアリングの研究を行い、その後、ハーバード大学物理博士課程に進学。現在はマンチェスター大学物理学部にも在籍し、世界最大のニュートリノ研究グループであるDUNEのプロジェクトに携わる。
筧 路加さん(米国ペンシルベニア大学、化学)
2000年大阪府生まれ。高校2年まで日本の女子校で過ごしたのち、高2の夏に高校を中退しコスタリカのインターナショナルスクールに入学(United World College Costa Rica)。その後米国ペンシルベニア大学に進学し、化学(専攻)、栄養学(副専攻)を学ぶ。2022年は大学を1年休学し培養肉の研究を行い論文を執筆。培養肉の研究を通して、世界の食の定義を変え、テクノロジーの観点から向上させることを目指す。
原野 新渚さん(米国コロンビア大学、神経科学)
2000年東京生まれ。高校まで沖縄のアメリカンスクールで過ごしたのち、米国コロンビア大学へ進学。主に脳損傷後の感覚統合機能回復についての研究を行う。2023年秋からはニューヨーク大学医学部附属の神経科学のプログラム博士課程に進学し神経変性のメカニズムの解明に挑戦し、将来的には、現在確立されていない宇宙医療の分野に神経科学の観点からの貢献を目指す。
▼パネルディスカッションテーマ
高校生活と海外留学
今、STEM関連で大学で学んでいること
留学でかかる費用と捻出方法のヒント
海外生活の不安への対応方法
1.高校生活と海外留学
[画像2: https://prtimes.jp/i/83893/21/resize/d83893-21-5849c4d0bd8dfd7cdbd5-0.jpg ]
久保田さん:
理系での海外留学を目指すことになるとは全く思っておらず、高校までフルートに打ち込んで来た学生時代でした。高校3年生の時、歯の矯正をつけたらフルートの音が出なくなったことをきっかけに、実はフルートも流体力学が関係しているということを知って、そこから物理に興味を持ちはじめて、段々物理にのめり込んでいった感じでした。
海外留学を現実的な選択肢として見ることができたのも高校3年生になってからで、海外大学に進学した先輩に会って「日本人って海外留学するんだ」と知ったことがきっかけでした。
筧さん:
元々化学には関心がありました。高校生のとき「グローバルサイエンスキャンパス」というプログラムに参加して東京理科大学で研究する中で、ラボでの研究やSTEMを大学で選択した時の生活がどんなものかを学ぶことができました。
一方で他の分野にも興味があり、アメリカの大学は最初の2年間は専攻を決めなくて良いということもあって、大学での海外留学を選択しました。高校留学では、大学では行きそうにないところ、選択肢の中で日本から一番遠い国、かつ英語とスペイン語が公用語ということでコスタリカに留学しました。
原野さん:
中高は沖縄で過ごしたので、理系学問に触れられる機会は多くなく、また大学で何を学びたいのかを見つけたいという思いもあって、高校1年生の頃から長期休暇に開催されているプログラムに色々と応募していました。たまたま受かるものに理系が多くて、参加するうちに理系に興味を持ち始めました。
誰もがなりたいと一度は思う宇宙飛行士には、視力が悪くてなれなくてがっかりしたことから、「宇宙飛行士がかかる神経視覚障害を解明できたらかっこいいんじゃないか?」という思いが、いまの研究テーマでもある神経科学のきっかけにもなりました。
2.いま、STEM関連で大学で学んでいること
[画像3: https://prtimes.jp/i/83893/21/resize/d83893-21-1d349d371e1e6f0d421e-0.jpg ]
久保田さん:
物理の中でも基礎物理学という、人間の日常にはそんなに関係ないけれど、人類の知識としては知っておきたい謎を解明する学問です。その中でいま研究しているのが「素粒子物理学」です。
(手元にあった葛根湯の袋を元に)これをどんどん小さくちぎっていってどこまでできるかを極めた時、永遠に小さくできるわけではなくって、どこかでミニマムの単位になります。それが「素粒子」と呼ばれるものです。コーヒーも、私たちの体も、素粒子でできています。皆がレゴブロックでいろんな街やものをつくるのに色んな色や形のレゴがあるように、素粒子にもいろんな素粒子があります。電子とか、陽子とか、重さを与えるヒッグス粒子とか。
その種類のひとつに私がいま調べている「ニュートリノ」という素粒子があります。物質と滅多に相互作用しないので、見るのも聞くのも触ることもできない。いまそのニュートリノに関する世界最大の研究であるDUNE(デューン)実験装置の中で、ニュートリノの検出器をつくっています。
一時、素粒子物理学以外にも挑戦してみましたが、やはり素粒子物理学の研究を続けたいと思って、この分野に戻ってきました。
筧さん:
大学2年生と休学した1年間の計2年間は、培養肉についての研究をしていました。培養肉とは牛や家畜から細胞を取り出して実験室で増やしてお肉の形にするという、新しいお肉を作る研究です。
ペンシルベニア大学では有機化学系のラボで「アジリジン」という窒素を含んだ分子をいかに合成するかを研究していました。
この夏はサマーリサーチとして、ハーバードの公衆衛生系のスクールで、写真にあるようなラボの環境で癌の悪液質(あくえきしつ)という栄養衰弱になってしまう状態に関するファクターを研究し、また疫学関連ではカルシウムと結腸直腸癌の関係についても研究を進めています。
培養肉の研究を始めたのは、コロナで日本に帰っていたタイミングでどういったテーマで食品化学の研究をしようか考えていた中で、たまたま培養肉という概念を知ったことがきっかけでしたが、論文として成果を発表したり、アカデミックに貢献できたという自信がついたテーマでもありました。最初から考えていた研究ではなかったんですが、いまの自分を形作ってくれていると思います。
原野さん:
高校の時には研究室に入るという経験がなかなかできなかったので、大学1年生の1学期の最後あたりで、比較的早い段階で研究室に配属してもらいました。研究内容は、脳の一部にフォーカスしています。例えばキーボードのJとFはブラインドタッチできるように凸凹があって、目をつぶっていてもわかります。これを可能にしているのは一次体性感覚野という部分ですが、実際にどう情報が伝わっているかのプロセスかはあまり詳しくわかっていないのです。
最初はメンターについて学ぶという感じで研究を行っていましたが、徐々に自立してからは、脳損傷がその脳分野に与える影響や、どうすればその行動が回復するかなどを研究して、それが卒論になりました。
いまのテーマに行き着く経緯としては、元々関心があった宇宙の未解明の病気についての研究室はまだ確立していなかったというのがあります。そこで、まずは基礎を身につけようと考えました。研究室を探す際には研究内容だけでなく、「この人から学びたい」と思える良いロールモデル、良いメンターというのが私にとっては大事なことだったので、そこにフォーカスして選んだのがいまの研究室です。
3. 留学でかかる費用と捻出方法のヒント
[画像4: https://prtimes.jp/i/83893/21/resize/d83893-21-4b3422b167db88a14c4f-4.jpg ]
久保田さん:
書いてあるとおり、色々な奨学金の機関にお世話になりました。江副記念リクルート財団には学部のときも大学院でもお世話になり、他にも孫正義育英財団やグルーバンクロフト基金というアメリカのリベラルアーツカレッジ専用の奨学金制度から奨学金をいただきました。いずれも全て返済不要の奨学金です。奨学金が無かったら留学できないような学費がアメリカの大学ではかかるので、ぜひ奨学金の活用を推奨したいと思います。
寮に住んでしまえば、費用は1年の最初にドンとかかるので、私は追加で費用がかかることはあまりなかったです。ただ、何かお金が必要なことがあれば、キャンパスでできる仕事でまかなったり、研究に必要なものであれば、財団から査読を経ていただいた研究費で賄うなどして、やりくりしていました。
筧さん:
私は高校でも大学でも留学したのですが、高校の時は経団連、大学では江副記念リクルート財団からいただきました。久保田さんが言う通り、本当にアメリカの大学はお金がかかります。財団のような外部の奨学金もありますし、大学からの奨学金もあります。
私の大学のキャンパスにも寮はあるのですが、とても高くて、一番いい部屋だと月20万くらいします。また3、4年生はキャンパスの外に住むことも多いので、私もキャンパスの外に住んでいます。街並みも可愛いし、ハロウィンではアメリカらしく飾られたり、結構気に入っています。
あとアメリカ国籍でない留学生は「F-1ビザ」を取るのですが、一般にはキャンパス内で大学に関わる仕事をすることが多いです。私はいまフィラデルフィアの高校生に食品化学を教えに行くというアウトリーチの仕事をしています。
原野さん:
上の写真がコロンビア大学の寮と食堂の様子です。1年生〜4年生まで寮に住むことが多いです。寮は1、2年生だと相部屋の可能性がありますが、3、4年生になると必ずシングルのお部屋に入れます。部屋はギリギリベッドと机が入るくらいですね。都会にあるので他の大学より少し高くて、1学年で200万円弱くらいかかります。物価も高いので、寮の食堂に行って節約しながら健康に暮らしています(笑)。
私も学費のご支援がなかったら絶対に叶わなかったことなので感謝しています。
4.海外生活の不安への対応方法
[画像5: https://prtimes.jp/i/83893/21/resize/d83893-21-813c65c5bfcf57a87046-0.jpg ]
久保田さん:
私の一番の大きな不安は英語で、初めてアメリカの大学に行った時にシャワーのお湯の出し方がわからないし、友だちの作り方もわからないし、発音に自信も無いし、最初の1週間半くらい水でシャワーを浴びて母に泣きながら電話したこともありました(笑)。
そんな私が行った大学は学部生だけのリベラルアーツの大学だったので教授と学生との距離が近かったこと、さらに英語ができないくせに私が他の人の3倍くらい授業を取っていたこともあって、教授や奥さんが見かねて色々面倒を見てくれました。馴染むのにエネルギーが必要そうだと思っている人、英語に自信がない人には、教授との距離の近いリベラルアーツの大学はおすすめです。
筧さん:
高校でコスタリカに行ったのですが、海外に住むということがどういうことか全く分からなかったからこそ飛び込めたと思います。最初は本当に英語で苦労しましたが、70か国くらいから学生が集まるインターナショナルな環境で、英語だけじゃなくどうやって友だちになるかということも学べたので、アメリカにも飛び込めたかなと思います。
逆に大学は高校と違ってすごく規模が大きくて戸惑った部分もありつつ、小さなクラスで友だちを作ったり、サークルで社交ダンスをやったり、ラボのメンバーで野球を見たり、そういった出会いが勉強以外の励みになりました。
原野さん:
言語というよりは環境に不安がありました。親元を離れるのも不安でしたし、勇気を振り絞って行きましたね。実際行ってみたら大学では1年生は結構寮に住んでいて、アメリカ国内でも色々なところから来ていたり、初めて親元を離れる子も多くて、必然的に仲良くなりました。
久保田さんの経験とはまた違う感じで、うちの大学はひと学年何千人と居るので、教授というよりは友だちが支えになるような感じでした。行ってしまえば楽しく過ごせるのではないかと、自分の経験から思います。
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ゲストからのメッセージ
イベントの最後に、留学を検討する学生や保護者の皆さんに向けて、先輩女性の皆さんからメッセージをいただきました。
久保田さん:
「好き」の力を大事にするということが、やっぱり大事だと思っています。新しい環境に行って自分がやりたいことをやるというときに、逆境や言葉の壁などは実際にあります。ただ、どの幸せに向かってどの辛さなら超えられるかを選ぶことが大切だと思います。選ぶ時には「好き」の力を信じて、パッションに押されながら追求してほしいです。
筧さん:
もうすでにやりたいことが分かってる人も分かってない人も、中高生のうちは色々な経験をして、軸となる部分を見つけてもらえたら一番良いのではないかと思います。わたしが好きな言葉に「ダイヤモンドの原石はダイヤモンドでしか磨けない」という言葉があるのですが、英語で優秀な人たちとともに学ぶという環境は原石を磨くのに適していると思うので、海外経験がなくても、留学にぜひ挑戦してほしいと思います。
原野さん:
今までやってこれたのは、切磋琢磨できる仲間であったり、ロールモデルの存在が大きかったと思っています。特に女性の研究者がかっこよく見えて「私もああなりたい」と思います。一方で、そういう方々と出会うには、自分が踏み出さないとなかなかできなかったことでもありました。皆さんもぜひ勇気を出してロールモデルがいる世界に飛び込む機会を掴んでほしいと思っています。
【イベント概要】
イベント名称:世界トップ大学の日本人留学生が見た世界のSTEMキャリア!STEMガールズ・トークイベント
開催日:2023年7月29日(土) 20:00 - 21:30
場所:オンライン(ZOOM配信)
参加費:無料
プログラム内容:STEMに関する経験や留学の体験談を共有するパネルディスカッション、研究分野別ブレイクアウトセッション、各財団からの奨学金事業のご紹介
主催:公益財団法人山田進太郎D&I財団
共催協力:公益財団法人江副記念リクルート財団
https://www.recruit-foundation.org/
イベント公式サイト:https://www.shinfdn.org/posts/dM0LkGlO
■公益財団法人山田進太郎D&I財団について
誰もがその人の持つ能力を発揮し活躍できる社会の実現に寄与するために、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進する目的で、メルカリCEO山田進太郎が2021年7月に設立した公益財団法人です。
特に、STEM(理系)のジェンダーギャップに注目し、2021年より女子中学生/高校生がSTEM(理系)キャリアを前向きに検討し、積極的に自己決定するための機運を創ることを目的に奨学金事業を開始しました。2023年からは、さらに活動の幅を広げるべく、対象者となる女子生徒を取り巻くステークホルダーとなる保護者や学校等教育機関、企業、行政/省庁の皆様と連携しながら、各種教育支援イベント等を通じて若い女性の成長と社会進出を支援しています。
※STEM(S:Science / T:Technology / E:Engineering / M:Mathematics)
代表理事:山田 進太郎(メルカリ創業者、代表取締役社長兼CEO)
設立年月日:2021年7月1日(木)
公益財団法人山田進太郎D&I財団公式ウェブサイト:
https://www.shinfdn.org/
■2023年度の奨学金事業について
山田進太郎D&I財団は、2023年度もSTEM(理系)進学を選択しづらい現状にある女子学生が理系キャリアを前向きに検討し、積極的に自己決定するための機運を創るため、STEM(理系)女子奨学助成金の募集を7月6日より開始しました。詳細は以下をご参照ください。
STEM(理系)女子奨学助成金募集要項:
https://www.shinfdn.org/scholarship2023/requirements
【一般のお問い合わせ先】
公益財団法人山田進太郎D&I財団事務局
Eメール:info@shinfdn.org