『日本における退職給付債務の現状』 1 回目調査結果を発表〜業界間に給付格差、制度変更と投資行動で負債リスクを中和すべき
[11/12/13]
提供元:PRTIMES
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組織人事コンサルティングおよびアウトソーシングサービスの分野におけるグローバルリーディングカンパニーのエーオンヒューイットジャパン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:堀江徹、以下、エーオンヒューイットジャパン)は、日本経済新聞デジタルメディア社が提供するNEEDSのデータ、ならびに生命保険協会・信託協会等が毎事業年度末に発表しているデータ、日本銀行の資金循環統計等を元に退職給付会計の視点から業界別に独自の分析手法で調査した「日本における退職給付債務の現状」を今月まとめました。調査結果詳細レポートはエーオンヒューイットジャパンWebサイトで後述のURLよりダウンロードしていただけます。
= 確定給付年金制度持たない企業は2割 =
調査対象3,521社のうち2割程度は確定給付型年金制度を有していません。当該企業は退職金規定、確定拠出型年金制度等により退職給付を対応することになりますが、確定給付型年金制度の有無により1人あたりの退職給付債務には顕著な差異が存在していることは興味深い事実です。
確定給付企業年金制度に伴い、キャッシュバランス型制度は導入されました。有価証券報告書上認識されるキャッシュバランスプランは、積立金基準で見ると17%に達しています。
= 水産・農林・建設・電気機器・陸運・空運業界は積立不足傾向 =
退職給付債務に対応する財源調達が不十分であれば、将来において企業価値を毀損することも懸念されます。自己資本に対する積立不足の比率は対象企業全体では15%程度、「水産・農林」「建設」「電気機器」「陸運・空運」等では20%近傍に達しており、近い将来に何らかの対応が必要となるかもしれません。
= 一人あたりの退職給付債務が高いのは電気・ガス業、銀行業 =
業種別に比較すると、一人あたり退職給付債務水準の高い業界は「電気・ガス業」「銀行業」で、全業種平均の2倍以上となっています。これに「保険業」「石油・石炭製品」が続いています。ただし、退職給付債務の低い業界は前払いとして給与を増加させている、もしくは確定拠出型制度にシフトしている場合も考えられます。事実としては、当該退職給付債務の構成要素のうち、現在加入者の割合が高いのであれば、退職一時金制度及び年金制度を見直すことにより、水準を引き下げられることができるだろうということです。
= 課題は負債リスクを中和させる制度変更や投資行動 =
1人あたりの退職給付債務に加え、同勤務費用を抽出し、対前年比を参照すると9割以上減少している企業が毎年200社程度存在します。これは確定給付型年金制度から確定拠出型年金制度への変更が考えられますが、その背景には適格退職年金制度の廃止も影響しているものと推察されます。
経済環境の影響を振り返ると、市中金利の低下に伴う割引率低下は前年度と同水準の0.4%程度。一方、期待運用収益率の引き下げを行う企業数は2009年度(423社・20.3%)よりも低下(245社・12.5%)したものの、マーケットに対する見通しは大きく変化している様子はありません。日本銀行の資金循環統計からも確認できるように一貫して株式は売られ、債券が買われています。
企業年金制度のリスク回避的投資行動は最近のトレンドではないということです。
将来においてインフレが発生した場合に損失が発生するから債券を保有すべきではない」という主張を展開する論者も散見されますが、『ブレーク・イーブン・インフレ率』は2008年6月以降負値の状態にあります。また、資金循環統計で債券保有状況を確認すると日本は国債の国内消化率が極めて高く、債券の保有動向、すなわち債券価格及び金利に格付の影響を受けにくい環境にあります。そのような環境においてインフレ・リスクを考えるのであれば、資産運用側よりはむしろ、制度設計側に目を向けるべきかもしれません。とりわけキャッシュバランス型制度において、市場金利に連動する再評価率を与える場合にはインフレ・リスクに備える必要が生じます。負債と給付の金利感応度を抑制し、これに対応するように資産に金利感応度を与えるLiability Driven Investment(負債対応型投資:LDI)を実践する等の対応が必要です。
○調査結果詳細レポートURL○
http://www.aon.com/japan/product_services/by_specialty/human_capital_consulting/report/ahj_report_dec_2011.pdf
氏名: 門田伸一(もんでんしんいち)
所属: トータルベネフィットソリューションチーム, シニアコンサルタント
略歴:
2011年4月エーオンヒューイットジャパン入社。主たる業務は、退職給付制度の債務計算、制度設計、資産運用戦略等。
エーオンヒューイットジャパン入社以前は千代田生命、大同生命、野村證券に勤務。保険数理、年金数理、資産運用業務に従事した。
1988年3月東京理科大学理学部応用数学科卒業(理学士)、2004年3月一橋大学大学院国際企業戦略研究科修了(修士・金融戦略MBA), 2009年9月筑波大学大学院ビジネス科学研究科修了(博士・経営学)。日本アクチュアリー会正会員、日本年金数理人正会員、日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト。現在は非常勤講師として、法政大学理工学部で保険数理及び数理ファイナンスの講義を担当している。
【エーオンヒューイットジャパンについて】
組織人事コンサルティングおよびアウトソーシングサービスの分野におけるグローバルリーディングカンパニーのエーオンヒューイットは、クライアント企業のパートナーとして、福利厚生や人材管理に関連して組織が直面する、複雑な財務上の課題解決と業績向上をお手伝いします。エーオンヒューイットが提供するサービスは、人事管理、退職金・年金、投資管理、保険・福利厚生、報酬等、人材管理に関わる幅広い領域をカバーしており、クライアント企業に最適な提案、設計、導入、運用等を行います。
エーオンヒューイットの組織は世界90カ国/地域に展開し、29,000名のプロフェッショナルを抱えています。エーオンヒューイットのサービスはクライアント企業とその従業員に対してより働きやすい職場と環境の提供を実現するものです。
エーオンヒューイットジャパンは、旧エーオンコンサルティングジャパンと旧ヒューイット・アソシエイツの事業統合により20102010年10月に日本で営業を開始しました。2011年6月13日には、エーオンのグループ企業であるマクラガンパートナーズアジアインク(金融機関に特化した人事コンサルティング会社)と同じオフィス(東京都港区赤坂)に本社を移転しました。このオフィス統合によって、より幅広く、質の高いサービスをお客さまに提供できる環境が完成しました。
※エーオンヒューイットジャパンに関する詳細※
Webサイト http://www.aonhewitt.co.jp
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公式Facebookページ http://www.facebook.com/AonHewittJP
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※報道関係者お問い合わせ先※
エーオンヒューイットジャパン株式会社 広報 臼井
TEL: 03-3237-4319 FAX: 03-3583-0062 E-mail: info.jp@aonhewitt.com