サヘル地帯:緊急対応に終わらない、栄養失調への長期的対策を
[12/07/18]
提供元:PRTIMES
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プレスリリース
2012年7月18日
西アフリカのサハラ砂漠以南アフリカに位置するサヘル地帯において、例年備蓄食糧が不足する収穫期の狭間に悪化する栄養失調が既にピーク期に達した。さらに、政情不安や食糧価格の高騰、感染症の発生が追い打ちをかける事態となっている。2012年を通してサヘル地帯では、約100万人*の重度の栄養失調児が治療を受ける見込みで、過去に例を見ない人数である。国境なき医師団(MSF)は緊急の医療援助を拡大する一方で、サヘル地帯の栄養失調は長期的な解決策を要する公衆衛生上の問題であると警鐘を鳴らす。
2012年1月から6月までの間に、MSFがサヘル地帯の7ヵ国で実施した栄養失調の治療プログラムでは、約5万6000人の重度の栄養失調児が治療を受けてきた。この数は2011年の同時期と比べて同程度であるものの、より多い数である。
マリ、ニジェール、チャドにおけるMSFの活動統括責任者、ミシェル=オリビエ・ラシャリテは現地の状況をこう話す。
「栄養失調の危機は、サヘル地帯では毎年繰り返し発生する周期的なものです。ただ、食糧の市場価格の高騰、マリやナイジェリア北部での政情不安、チャド東部のはしかの流行などにより、栄養失調が通常よりも深刻化する地域が出ています」
さらに、ニジェール南部やチャド東部の一部地域では、特に深刻な雨季のために、マラリア感染が拡大する時期が予想よりも早まっている。子どもにとって、マラリアと栄養失調という組み合わせは致命的となる。MSFは、道路が雨で通行不能になる前に、できる限り多くの子どもを治療すべく緊急援助を拡大している。
2012年は、サヘル地帯で栄養失調が深刻な国すべてが、早期に警告を発した最初の年となった。2011年末には、複数の国際援助団体との協力のもと、大規模な対策が計画された。この対策には、推計100万人の重度の栄養失調児の治療と、子どもの栄養失調を未然に防ぐための、子どもの必須栄養素を満たした栄養食品の配給が含まれている。この対策を実践するには、各国政府、援助団体、資金拠出機関に多大な取り組みが要求される。しかしながら、MSFは、緊急援助が栄養失調に向けた唯一の対策となるべきではないと主張する。
MSFの小児科医で栄養専門家のスーザン・シェパード医師は次のように述べる。
「栄養失調は、サヘル地帯では公衆衛生上の問題であり、そうした観点から対策がなされることが望ましいでしょう。栄養失調の予防と治療を実施することで、多くの命を救うことができます。集団予防接種と同様に、小児を対象とした基礎的な保健医療対策に組み込むべきです。栄養失調対策で成果を上げている国はいずれも環境を整備し、無償の医療提供と子どもの適切な栄養摂取を実現しています。緊急対応から、長期的な対応への移行を始めることが何よりも重要です」
MSFは引き続き、サヘル地帯で栄養失調が危機的水準に達した際の治療活動を拡大する方針だが、一方で平時の治療プログラムにおいて、長期的かつ、より簡潔に実行可能な低コストの栄養失調対策も模索している。既に検討されている有望な戦略として、非医療従事者への一部活動の委託、栄養治療食や栄養補助食品の地元での製造、子どもに必要な食糧をより簡単かつ低コストに供給可能にするシステムの立ち上げなどが挙げられる。
*国連児童基金(UNICEF)による推計
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MSFが現在サヘル地帯で展開している合計21の栄養失調の治療プログラムのうち、9つはチャド、マリ、セネガル、モーリタニアで緊急対応として今年開始されたものである。また、現在もMSFのチームは栄養状態の調査を実施しており、少なくとも3つのプログラムが今後数週間で開始の予定である。サヘル地帯で2012年1月から6月末までにMSFが治療した5万6000人の重度の栄養失調児のうち、3万6000人以上がニジェールで治療を受けている。MSFはまた、マリの紛争で避難を余儀なくされた人びとに対しても、マリ北部、ニジェール、ブルキナファソ、モーリタニアの国々で援助を提供している。